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2022-08

B.A.C.K  予告編

 「だからオレは、アンタが嫌いなんだ」
 
 
 目指したのは騎士が望み。
 否定したのはこの心。
 
 もう一度上を向く。
 今度はもう踏み外さない。
 もうこの《力》は使いたくない。
 
 だから、もうひとつあった道を再び歩きなおす。
 
 
 「わかってるなら聞かない方がいい。バカに見える」
 
 
 向かっていくのは自分の在り方。
 ここでなら、オレは目指せるかもしれない。
 
 ダメなら、なんて考えない。
 見つけてやる、絶対に。
 護ってやる、この想いを。
 

 「…… もしかして、嫌なん?」 
 
 
 人の温もりは、思い出す。
 思い出したのは、二度としないと誓ったこと。
 
 なぜ、そこまでしなければならなかった?
 
 
 《Stick out with you,sir.(共に手に入れましょう)》
 
 
 ここから、初まる。
 
 手に入れたはずだった、魔法の力。
 貰ったはずだった、勇気の心。
 その全てを投げ捨てた。
 手に入れたのは、新たな魔法―仲間―
 貰ったのは、新たな勇気―温もり―
 
 自分とは違う人に教えられ、自分とは違う人に救われた。
 
 
 
   魔法少女リリカルなのはStrikerS
 Bravery.Abamantine.Chivaly.Knigth
 
          始まります



  *************
 
これは予告編であり、実際の作品とは若干のズレが現れる可能性があることを、報告しておきます。期待を裏切られた、騙された、といった問題について草之は責任を負いかねますことを承知のうえ、作品をお待ち下さい。


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テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

B.A.C.K   Act:0-1

 新暦0072年 6月
 第46無人世界。 
 
 「ここはまかせて、お前らはバックアップ。いいな?」
 
 「しかし、副隊長!!」
 
 「死んでくれるなよ。年下の副隊長は、いつも背伸びがしたいんだ。わかってくれ」
 
 その言葉で渋っていた隊員は後ろに退がっていく。
 それを見届け、次に見据えるのは眼下の森。
 木々をかきわけて、蠢く影は一直線にこちらへ向かってくる。
 
 
 今回の任務は最初から面倒な類のものだった。
 
 『プロジェクトF.A.T.E』
 
 そいつを応用して合成獣を造り上げ、自分の使い魔として量産しているという魔導士がいるという情報がはいった。
 つまるところ、そいつを逮捕して、研究体の合成獣の捕獲、抵抗する場合は殺傷もやむなし。それが今回の任務。
 
 はっきりいって汚れ役だ。 
 まだ入局3年にもならないヤツらに任せられる任務じゃない。地上本部どころか海のほうも万年人員不足は伊達じゃない、か。
 自慢にも何にもならないが、こればっかりはどうしようもない。
 こなすしか、ない。
 
 「気負っているな。手を貸そうか」
 
 先陣を切って、捕まえた魔導士と捕獲した合成獣の運搬を護衛していた烈火の騎士こと隊長様が傍らに舞い戻る。
 
 「そうでもない。邪魔はいらないからな」
 
 「子供が無理をするな」
 
 「オバさんがでしゃばるな」
 
 「オバッ!? 貴様 …… 誰にそんな口を …… !」
 
 「隊長」
 
 もう一声なにか皮肉を言ってやりたかったが、そんな余裕はなくなったらしい。
 もう、すぐ下にまで来ている。
 
 「ジーク!」
 
 《Accele shooter》
 
 牽制としてアクセルシューターを撃ち込んでいく。
 攻撃はしてこない。様子見か、それとも動けないか …… 。
 いや、これは!
 
 「砲撃だとっ!?」
 
 「シールド張ってるわけじゃない、アイツとんでもなく硬い!!」
 
 射撃での牽制を止め、回避に専念。
 魔力が溢れ、こちらに向け放たれる。
 森をふっ飛ばして、炎熱の魔力変換された砲撃が迫る。
 その威力は誰が見ても一撃必殺の砲撃。さながら光の柱のように天を衝く。
 
 「っと。威力だけはとんでもないな、チクショウ!」
 
 「空に穴を穿つか …… 」
 
 隊長はそう囁く。
 見上げると曇天は払われ、空の一角に青空が覗く。
 なんて、バカ魔力。
 
 「高町教導官並か …… やっかいな」
 
 「そうでもない。高町さんはあれを抜き撃ちでするだろう? チャージがある分まだ戦い易い。餅は餅屋って言うだろう、ベルカ式の領分じゃない。少し黙っといてくれ」
 
 「そういう言い方は感心できない。お前だってベルカの適正を持っているのだろう? 悪口じみたその言葉、いただけるものではない」

 「はいはい」
 
 今度も砲撃を撃とうとしているのか、チャージが始まった。
 そう何度も同じことが通用するわけがない。森も吹き飛び、視界は良好。改めて合成獣の姿を確認する。
 竜種に近い容姿をしている。翼はないので、飛べはしないだろう。気をつけるなら跳躍か。
 
 そう思った矢先。
 前肢を地面に叩きつけ、後肢で地面を蹴り上げる。
 一瞬でオレたちのいる高度に達する。
 
 また、砲撃のチャージが出来あがったらしい。
 オレ一人なんて丸呑み出来そうな口を開け、魔力が迸る。
 
 《Blitz Action》
 
 なんとか避ける。ヨコはそれなりなのにタテ移動がとんでもなく速い。
 それこそ今みたいにブリッツアクションでギリギリ避けられるほど。
 跳躍に注意を払っていたから避けられたものの、跳躍が頭になかったときのことを考えるとぞっとする。
 
 「ジーク! チャージモード!!」
 
 《Yes,sir! Charge mode,standby》
 
 空中姿勢を整えながら命じる。
 カッと強い光を放ち、デバイスの形状が杖から突撃鎗へ姿を変える。
 
 鳥の嘴のようなヘッドの部分が全て延長巨大化し、杖の柄の部分まで装甲が伸び、先端はより鋭く直線的に剛性化し、青い魔力刃を展開。
 金色の平打紐状のコアがなびく。
 
 落下中なら、チャージも間に合わないし、元々飛べないのだから空中姿勢もなにもない。
 今なら討ち抜ける!
 魔法陣を展開、腰だめに構える。
 
 「突ッ貫!!」
 
 《Crush Charge》
 
 魔力を推進力に変換。
 ブリッツアクションに近い速度で突っ込む。
 いくら甲殻が硬いといえど、我が突撃には勝らない。
 
 魔力刃は竜種もどきの甲殻を突き破り、肉へ食い込む。苦しそうに、でもどこか幸せそうに啼く。
 その声は、自分が望んで生まれたのではない、という意思表現なのだろうか。
 ならせめて、一息に逝かせてやる。
 
 《Dragon smasher》
 
 「ディスチャージッ!!」
 
 自身の主砲撃魔法を放つ。
 視界を自分の青い魔力光が埋める。
 貫いた甲殻から順に崩れていく。まだだ、火力が足りない。
 
 「ヒート!」
 
 《Addition》
 
 いよいよ砲撃は自身の何倍もの大きさの竜種もどきを呑み込む。
 青い光の中、シルエットだけが消えていく。
 
 「無事か!?」
 
 「 …… 心配しなくても」
 
 「今の砲撃 …… いや、今まで見てきたお前の砲撃に限らず、全ての魔法の制御能力や変換効率がお前の魔導士ランクにしては荒い。お前は ――― 」
 
 「そんなに詮索しないでくれないか。あぁ、ご察しの通り元・騎士さ。いろいろあって封印したんだ。別に自惚れなんかじゃない。ミッド式に転向するときにはそれなりにリスクもあったさ。興味もあったし、なにより目指す場所はミッド式にあったんだ」
 
 自分の砲撃が吹き飛ばした大地を眺める。
 非殺傷設定を解いていたので、派手に穴が開いている。
 煙を上げてはいるが、火の手はない。
 
 「なら、お前の目指す場所というのはなんだ?」
 
 「もういいだろ。それと、部下のこと知らなさ過ぎるんじゃないか。それもまとめて、オレはアンタが嫌いなんだ」
 
 烈火の騎士には目もくれず、回れ右して武装隊のヘリまで戻る。
 そう遠くはなく、部下たちが笑って迎えてくれた。後に続いて降りてきた騎士をみて一同「あ、またか」と苦笑いを零す。
 
 「ユークリッド・ラインハルト三尉、ジークフリード、無事帰還。任務完了だな」
 
 誰に言うでもなく、独り言のように呟いた。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 『難しい年頃 …… 言うにしても、シグナムちょぉ嫌われすぎやな。いらんこと言うてへん?』
 
 「何とも、言えませんね」
 
 私も何を血迷ったのか、主はやてに相談などと。
 珍しい、と喜んで相談にのってくれたのはいい。
 らしくない、と言われてしまった。
 
 『他の人やったら論破しそうなもんを、なんでまた手ェ拱いて黙っとんのよ?』
 
 「さぁ …… 自分でもよくわかりません」
 
 確かに主はやての言う通りなのだが。
 今まで私はそうやって口答えをする輩を論破していったのは確かだ。
 『闇の書事件』以来、そのことで口を出すものも少なくはなかったからだ。
 
 『もしかせんでも、オバさん言われてんの気にしてるん?』
 
 「あ …… ぅ。そのような言葉言われたことがなく、情報としての知識でしかありませんでしたが …… なるほど、嫌がり、怒髪天を衝くという気持ちがわかった気がします。しかし、そういう理由ではないのです」
 
 『あはは。シグナムは困ったさんやなぁ』
 
 モニターの奥でう~ん、と唸って、一体何を考えているのかと思うと、『あ、そうかも』と何やら閃いたご様子。
 
 「なにか解決策が?」
 
 『うん、まぁな。確か今は …… っと』
 
 言ってからモニターの奥に映るカレンダーを覗いたので、誰かと会わせるつもりらしい。つまりスケジュールの確認をしているのだろう。
 ……… いや待て。カレンダーを見るだけでわかるような親密な者、ということか?
 となると私の知り合い、という可能性もある。
 しかしこういう相談事 …… といえばスクライア、ぐらいか。
 …… いやいや、スクライアならいつ訪ねてもある程度の対応はするはず。スケジュールの確認など必要ない。
 その点でいけばなのはの線もなし。今は我が隊の新人の教導をして頂いてるのだからな。いつでも会える。
 
 ………… 消去法でいけばテスタロッサか?
 
 「 …… なら、なぜテスタロッサに?」
 
 思わず呟く。
 
 『へッ!? あらぁ、シグナムよぉ分かったな。そうなんよ、フェイトちゃんに相談にのってもらお思て、今いけるか確認しててんよ』
 
 ずばり。
 それなりに確信があったのでそこまで驚くこともなかったのだが …… 。
 やはり疑問が残る。
 
 『ま、そこらへんは会って話せばわかるかもな。私もまぁ、近々その子に会う予定も会ったし、ちょうど良かった』
 
 うんうん、と一人で納得する主はやて。
 会う予定がある、ということは、つまり
 
 「ユーリも、主はやての部隊にと?」
 
 『ん、そういうこと。フェイトちゃんは明日オフみたいやからこっちでアポとっといたるな。そのかわりっちゃなんやけど、ラインハルト三尉の方、都合してもらわれへんかな? 明日で』
 
 「無茶な …… あー、いえ、しかし …… ふぅ、わかりました。とっておきましょう」
 
 『わはっ、ありがとなぁシグナム!』
 
 まったく、この人は …… 。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「で?」
 
 「ここで待っていてくれればいい。話のほうは主はやて …… 八神三佐がしてくれるからな。それから、私は今からフェイト・T・ハラオウン執務官との約束があるから隊舎から離れる。有事の際はまかせたぞ」
 
 ハラオウン執務官 …… フェイト? あぁ、妹さんの方か。
 まったく、ハラオウンの家系は全員が全員エリートだからな、すごいと思う反面ややこしい。
 
 「アンタがいなくなってせいせいするね。ハラオウン執務官にそのことよろしく言っといてくれ。私の部下が感謝してたぞってな」
 
 部屋から出て行く背中にわざと大きな声で皮肉をたれる。
 ピクッと反応すて、振り向き、何かを言おうとしたのだろうが、やはり何も言わず立ち去っていく。
 それでいい。
 
 《Is that a bit muth?(言い過ぎでは?)》
 
 「いいんだ。オレから離れてくれればそれで。ああいう優しさは …… いや、何でもないさ」
 
 《All ligth,sir.》
 
 まぁ、コイツはまた違う。
 優しさ、というよりは信頼に近いだろう。
 
 
 向こうが指定してきた時間から約10分。
 まだ来ない。さすがに心配になってきた。
 
 「なにかあったのか …… ?」
 
 シグナムの話を流してある程度聞いていている分には、少しドジっぽいらしい。
 まぁまぁ、さすがに迷子って言うことはないだろうけど …… 。
 
 「もしかして、シグナムが嫌がらせしたんじゃないだろうな」
 
 《No,sir.》
 
 「ま、わかってるけど」
 
 シグナムが自分の主を使ってまで嘘をつく理由がない。まさかオレが「付いて行かせろ」とか言うとは思ってないだろう。
 だとしたら、なぜ遅れてるんだ?
 
 「あれ~? ユークリッド君じゃない。なにしてるの?」
 
 「あ、高町さん」
 
 というか応接室に顔を出してるアンタは何やってるんですか、と言いたくなるが我慢しよう。
 
 「八神はやて三佐を待ってるんです」
 
 「あ、はやてちゃん来るんだ。じゃあ、やっぱり …… 」
 
 「? やっぱり …… 何ですか?」
 
 「にゃはは、何でもないよ。はやてちゃんが話すから」
 
 またそれか。
 オバ …… もといシグナムといい、高町さんといい。
 
 「あ、そうだ。午後から模擬戦するんだけど、ユークリッド君も手伝ってくれないかな?いつもはシグナムさんが一緒に仮想敵してくれるんだけど、今日はいないって言うから …… 」
 
 「あぁ、ハラオウン執務官と会うとか言ってましたが」
 
 「ありゃりゃ。そうなんだ」
 
 にゃはは、と苦笑い。
 ぱっと見はまだまだ少女なんだけど。その、体つきがこう …… 大人っぽいっていうか。それに管理局の制服って意外とぴったりするから体のラインもこう …… 。
 …… って、何考えてんだオレ。
 自重しろ。自重しろ。
 
 「 …… いいですよ、手伝います。ダメな隊長の尻拭いはしますよ」
 
 「にゃはは。むこうは一個中隊の多さだからね。一人じゃ大変なの。落とすのも時間がかかるし」
 
 「あはは …… 」
 
 コイツ悪魔か。
 さりげなくエグいこと言ってますよ。
 新人といえども中隊レベルの人数でかかってこられたら、普通圧倒は出来ない。
 波状攻撃され始めたら防戦せざるを得なくなる。
 それをこの人は『落とす』のが大変だと言ってらっしゃる。
 
 と、そんなこんなでいつの間にかまた10分経ってしまった。
 
 「遅いな …… 」
 
 「え、はやてちゃん遅れてるの?」
 
 「えぇ、20分ほど」
 
 珍しい、と驚く高町さん。
 さて、どういった理由でニ佐殿は遅れているのか。
 
 すると、ドアが開く音。
 そこには制服が着崩れて、全身汗だくの八神三佐がいた。
 
 「す、すいません …… 遅、れ …… ました」
 
 息も絶え絶え。おそらく走ってきたのだろう。それも隊舎の入り口じゃなく、もっと遠くから。
 
 「聖王教会、に …… 用事、が、あってんで …… その、帰り、に …… 渋滞に、おうてしもう、て …… 走って、きた、結果がこれ、です …… 」
 
 ぜひゅーぜひゅーと何かおかしな音をさせながらしゃべる姿は、なんとも言い難い。
 
 「ま、まずは休んで。話はそれからってことで」
 
 青い顔されてちゃこっちだって話しにくいしな。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 第一印象は最悪。遅刻のうえその身なり。
 何でこんな時に限って渋滞とか起こるんやろ。
 
 「落ち着いた、はやてちゃん?」
 
 「うん、ありがとな。ってあれ? あぁ、そうか。なのはちゃんは今ここで教導してたんやっけな」
 
 「うん、そうだよ。そうだ、午後から模擬戦するんだけど見学してく?」
 
 「そやな。余裕もあるし、そうさせてもらおかな」
 
 なのはちゃんも変わらへんなぁ。
 今も新人らをシバ …… もとい、愛ある教導してるんやろなぁ。
 
 「 ………… で?」
 
 「おっと、すいません。ついつい」
 
 目の前の少年を向き直す。
 アッシュブロンドに、アクアマリンのような碧眼。
 背はシグナムよりちょっと低め、筋肉のつき方も理想のつき方に近い。
 そんな少年は間違いなく美少年の類だ。食べたい。
 
 「なんでヨダレ?」
 
 「おっとと。はしたないところをすいません」
 
 グィっと袖でぬぐうと彼に向き直す。
 
 「自己紹介、いる?」
 
 「必要ないです。耳にタコですからね」
 
 なのはちゃんはにゃははと笑ってはいるが、こちらはそう笑えない。
 シグナム、なんつーかその。がんばりや。
 
 「第1039航空隊、第一分隊福隊長ユークリッド・ラインハルト三尉です。以後よろしくお願いします」
 
 「うん、よろしくな。ユー …… リ君でええんかな?」
 
 「止めてください。同じ言い方されるのは、ちょと」
 
 「ははは …… 。別の意味で特別やなぁ」
 
 ここまでヒドイくらいに嫌われるっていうんも珍しいなぁ。シグナム、無愛想やけど優しいし、気がきくし、頼りになるし、胸おっきいし。
 
 「じゃあユークリッド君。今日ここへ来た理由は君をスカウトしに来たからです」
 
 「スカウト……?」
 
 「古代遺物管理部機動六課 …… まだまだ先になるんやけど、私の部隊への、やね」
 
 「 ………… 」
 
 驚くでもなし。呆れるでもなし。
 何かを考えているのか、腕を組んで俯いている。
 
 「 …… 今、それに声をかけているメンバーは?」
 
 「私はもちろん、そこにいる高町なのは教導官、フェイト・T・ハラオウン執務官、そして私の騎士たち、ヴォルケンリッター。主なところはそんなところかな。あとはひのふのみの …… 」
 
 つらつらと説明していく。
 顔はできるだけ見たくなかったので指折り数える手のひらを見続ける。
 
 「そんな感じかな」
 
 「 …… くっ」
 
 「!?」
 
 なぜ笑われたかが分からず、思わず戸惑ってしまった。
 
 「そのメンバー、聞く限りオレなんかいらないんじゃないんですか? それを承知の上で誘ってるんですか。だとしたら八神三佐。あなたは大したタヌキだ」
 
 すっくと立ち上がり、話は終りだと雰囲気が語る。
 私は彼の力を信じて、スカウトしたんだ。悪いとは思っているわけない。
 
 「高町さん、午後の模擬戦 …… オレだけでやります。それを見てから決めても遅くはないでしょう」
 
 そういって、自重気味に笑った。
 
 「それは、つまり …… 紙の上で見らんと、実力を見てみろ。そういうことなんかな?」
 
 「わかってるなら聞かない方がいい。バカに見える」
 
 皮肉とかそういうんじゃなくて、ストレートに嫌味をぶつけてくる。
 私は認めている。
 人となりだっていろんな人から聞いてる。なによりシグナムが褒めるほどなんや。
 私の部隊になんの引け目もないと感じてる。
 でも、そこまで言うんなら私が見極めよう。
 この八神はやての指揮下に入れるかどうかを。
 
 
 


             Act:0-1  end


テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

B.A.C.K   Act:0-2

  
 「嬉しいお知らせがふたつほどありますが …… 皆さん、聞きますか?」
 
 おそるおそる、新人らが『はい』と答える。
 『嬉しい知らせ』というお題目の『キツイ訓練』かなにかだと思っているからかもしれない。
 もちろんそんなことはない。
 
 「ひとつ。私との模擬戦は中止です」
 
 とたん、雄叫びを上げて騒ぐ一同。
 そんなに嫌だったの?ちょっとショックだなぁ。
 
 「もうひとつ。八神はやて三佐がスカウトを兼ねてご見学します」
 
 嘘は言ってない。嘘は言ってないよ。
 そして、スカウトという言葉と、三佐という階級から部隊の引き抜きだと理解すると俄然やる気を出すみんな。
 なんていうか、現金な人が多いよね。
 
 「えーと、私との模擬戦はなくなりましたが、模擬戦自体はなくなりません。今日は第一分隊副隊長、ユークリッド・ラインハルト三尉とやってもらいます」
 
 その言葉で顔をしかめたのが数人。
 大半は「これなら希望はまだあるぜ!」「あの訓練に耐えたんだ、俺だって!」と倒す気マンマン。
 
 「あと、ご本人の希望で迎撃戦のシュミレートで行います」
 
 もちろん、ユークリッド君が攻める側。
 新人部隊が守る側。
 制限時間は30分で、勝敗決定は上空100mにある目標のスフィアを破壊すればユークリッド君の勝ち。守りきれば新人の勝ち、といういたってシンプルなもの。
 
 中隊と同等の人数で一人から目標、それもひとつを守る、というかなりのハンデ。
 新人の模擬戦、というよりユークリッド君の試練だ。間違っていってるわけでも、冗談半分で言ってるのでもない。
 これは、本当に試練といっても言い内容だ。
 
 「開戦[エンゲージ] は今から2分後。合図はないから、この2分でどれだけ迎撃準備ができるかが勝敗を分ける鍵だよ。じゃ、始め!!」
 
 目標であるスフィアを上空高くへ飛ばす。
 これが実質スタートの合図だ。
 ユークリッド君はこの演習場から大体2km離れた場所にスタンバイしている。
 
 飛行して接近するとして1、2分といったところ。
 砲撃で牽制するとして、30秒から1分弱。
 ジークフリードのチャージモードで突撃してくるとして、その時間実に10秒弱。
 
 組み合わせ次第でこちらに牽制だって、一気に破壊に追いこむ事だってできる。
 
 対して。
 そうされないための2分間を与えられた新人フォワード部隊はというと。
 
 目標であるスフィアにシールドを展開。3重くらいじゃ心もとないと思うんだけどなぁ。
 それでも、その脆弱さを補うためにスフィアの周りをフルバックのポジションで固め、センターガードがそのさらに二周りほど大きい円陣で魔力帯のような陣形を組む。そしてガードウィングは誰よりも高く、スフィアの真上10m辺りに陣取る。
 見事に2分以内に迎撃 “体勢” は完成。でも、準備は出来てないんだけど …… 気付いてるのかな、アレ。
 
 「そろそろ、2分やな」
 
 「うん。来るよ」
 
 はやてちゃんはもちろんのこと、私も真剣に見ている。
 だって、教え子たちがいったいどこまで彼に抵抗できるか …… 見てみたいじゃない。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「うんうん。いい陣形だ。フロントアタッカーがいない分、GWが前衛にならなきゃならない。誰よりも早く敵を見付けるには、そのためには誰より高くないといけない。SGも、三次元戦闘としてはいい陣形だ。FBも常に全方位からの攻撃に備える」
 
 さすが高町さん、と呟き感心する。
 たった2週間前にはぺーぺーだったのに、ここまでしっかり鍛えられてると、こちらも気が抜けない。
 
 事前に置いてあったサーチャーからの映像を閉じる。そろそろ2分か。
 
 「ふむ」
 
 突っ込んでいってもいいが、それは慢心か。蜂の巣にされるのはごめんこうむる。
 
 「 …… ふむ」
 
 とすれば、方法はひとつ。
 
 「ジーク、チャージモード」
 
 《Yes,sir! Charge mode,standby》
 
 「くく、SGはまだまだ甘いな。高町さんが言ってただろうに …… 『迎撃準備が鍵』だってな」
 
 上空を確認。
 …… 2時の方向、か。
 移動しよう。それと、スフィアも置いておかないとな。
 エンゲージは、大体20分後くらいかな?
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「遅いなぁ、昼寝でもしてんとちゃうか?」
 
 「いや、さすがにそれはないと思うよ。ジークフリードもいるわけだし」
 
 でもさすがに遅いかな。
 スタートからは23分。それらしい人影は現れない。
 教えた本人が言うのも変な話なんだけど、この陣形を真っ向勝負で打ち崩すとなるとかなりの力の差が必要になる。
 ユークリッド君のチャージモードのA.C.S.で突っ込むとしてもまず蜂の巣にされる。
 最低、SGの射撃魔法の雨で足止めされて、GWに包囲されて乱戦開始。
 また、砲撃を撃つとして、GWがその方向を見極めてFBに伝達してから突っ込んでいく。
 そうすると制空権は新人たちに移り、決定的に不利になる。
 
 「穴はあるんだけどね …… 」
 
 「私やったら、超長距離砲ぶっ放して終りやねんけどなぁ」
 
 「そう言うんじゃないってば」
 
 「わかってるって、サーチャー出してへんねんやろ? それよかこれをどう崩していくか、やね」
 
 そう、唯一の穴はそこ。
 相手の動きがわからないまま。結果、全方位に注意を払わないといけなくなる。
 とするとこの時間はトリックなのかもしれない。時間をかければそれだけ精神に負担をかける。また、同様に残り時間が少なくなるとそれだけ焦る。『早く終れ、早く終れ』と。
 
 と。
 
 「来たぞ! 八時の方向、射撃魔法だ!!」
 「GW、行くぞ!!」
 「SG迎撃準備! 逃がすなよ!!」
 
 全員が勝利に向かって動き始める。
 そうしている間に青い魔力光が迫ってくる。
 それより八時の方向? なんでそんなところから。
 それに砲撃じゃなくて射撃って …………
 
 あ。
 
 「この勝負、決まったよ。まったく、まんまと引っかかってる」
 
 「みたいやねー。ええわぁ、彼。看板に偽りなしやな!」
 
 そう、これは罠。
 スフィアを設置して、距離が距離だったからコントロールに集中。
 そして、GWが離れたと見るやいなや。食いついた魚は、あとは引き上げるだけ。
 
 「うわぁ!?」
 「なっ!!」
 「バインドッ!? どこからッ」
 
 FBがバインドの餌食になる。
 
 「突ッ貫!!」
 
 《Crush Charge》
 
 二時の方向上空から。すかさずSGが反応するも、これは …… !
 
 「ぢッ!?」
 「まぶしッ!!」
 「太陽が …… ッ」
 
 振り向いた全員が太陽の光で目潰しされる。
 光の中からシルエットがスフィアに突っ込む。
 
 二枚のシールドを突破して、最後の一枚で止まる。
 
 「くっ、硬い …… !」
 
 そりゃあ防御に定評がある私直伝のシールドだからね。ユークリッド君といえどもそう簡単には破りきれない。
 まぁ、最後の一枚に関しては私に限った話だけど。
 
 「ジーク!」
 
 《Dragon Killer》
 
 さながら杭打ち。
 クロスレンジ、それもゼロ距離における瞬間的なA.C.Sドライバーの発動と、それ自体にバリアブレイクを仕込ませた痛烈な一撃。
 一瞬の発動と、その一瞬に込める魔力によって『瞬間的なカートリッジシステム』をでっち上げる。
 そうすることで、砲撃に近い攻撃力を得られる。欠点らしい欠点といえば、ゼロ距離でかつ防御されたとき限定の隠し技だということ。
 結果、いわずもがな破壊である。
 
 「そこまでー!!」
 
 結局、新人たちは何をすることもせず惨敗。
 はやてちゃんはポカンとしている。でも、彼の二つ名くらい知ってるでしょう?
 
 「それぞれ反省点をレポートにまとめて今夜中に提出ね。自分がどのポジションなのか、しっかり把握はできてたけど、働きについてはまだダメだよ。そこらへんもしっかり書いておくこと!」
 
 最後の一週間はその辺りもしっかり復習して叩きこまないと。メニューの見直しもしないといけないかな。
 それを気付かせてくれたユークリッド君には感謝かな。
 で、そのユークリッド君はというと …………
 
 「君、ええよ! やっぱり欲しいわ!」
 
 「ちょっ、待っ!?」
 
 はやてちゃんにたかられている。
 …… そういえば、ユークリッド君のバリアジャケットって私よりも重装甲なのにフェイトちゃん並の高機動してるよね。ジークフリードの推力変換効率がかなりいいのかな? きっとそうなんだろう。だってユークリッド君普通に飛んだら私より遅かったはずだもんね。
 ちょっと前に話に聞いたけど移動系の魔法を3、4種類いれてるらしいし。
 射撃魔法は私が教えたアクセルシューターと、基本のディバインシューターのアレンジ。
 砲撃魔法はドラゴンスマッシャー、A.C.Sドラゴンキラー。
 移動魔法はブリッツアクションに、それのアレンジ。あとは聞いただけのものだけど、幻術みたいなのを組み合わせたブリッツアクション。
 防御は……あんまり見たことないなぁ。ほとんど避けてるし。
 
 「君のバリアジャケット、なんや騎士甲冑みたいやなぁ」
 
 「あ、まぁ。そうなんですけどね。ミッドチルダ式でアレンジ加えたいわば『魔導甲冑』てとこですね。ベルカ式はもう随分前に封印したんです」
 
 「…… ? でも、ベルカ式やった記録なかってんけど」
 
 「短かったからですよ、きっと。その間任務とか、つかず終いでしたから」
 
 「ふ~ん。なんで封印したん、て訊いたら答えてくれる?」
 
 「 ………… すいません。ただ、目指す場所はこっちにしかなかったんです。決してベルカ式をバカにしてるわけじゃないんですけどね」
 
 「うん。じゃあ気にせぇへんよ。で、スカウトの件やけど、入ってくれるかな?」
 
 「アナタがそれでいいなら。それに、アナタの下で働いてみたくなった。なんでこんなに物分りの度合いが違うのか …… シグナムとは違いますね。頭が柔らかいのは美徳ですね」
 
 ニコッと、とてもいい笑顔。
 ちょっと前から思ってたけど、けっこう毒舌家だよね彼。人当たりはいいのに。
 
 でもなんであんなにシグナムさんを嫌うんだろう。
 確かにこの前の任務から帰ってきてからミッドがどうだ、ベルカがなんだと軽く …… はないけど言い合ってるのを聞いている。でも彼が彼女を嫌っているのはもっと前かららしい。
 シグナムさんは厳しいし、堅いけど、とっても優しい人だ。私は嫌う理由が分からない。
 
 ベルカ式を封印したのと関係があるのかな。
 できればお話して欲しいけど、むこうから話してくれるのを待つしかないのかなぁ。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「シグナムが私に相談なんて、明日は雨かな?」
 
 「茶化すな。私だって悩みのひとつやふたつぐらいある」
 
 コトン、と紅茶が出される。
 気にするな、と言ったのだが『お客さんだから』という理由で一蹴された。
 
 「はやてから少し聞いてるよ。ユークリッド君、だっけ」
 
 「そう、ユーリについて少しな。どうも嫌われていて、このままではそのうち作戦行動にも支障がでるやもしれん」
 
 「ふふ」
 
 テスタロッサが急に笑うので睨み返す。こっちは真剣なのだ。笑うなど失礼にも程がある。
 
 「ごめんね。でも、本当はそれだけじゃないでしょ?」
 
 「ぬ …… ま、まぁ …… できればもっと頼ってほしいとか、こちらの個人的な情があるのも確かだ」
 
 私が配属されたときはもっと素直だったのに、一週間経たずにあんな風になってしまった。
 あまつさえ私をオバさん …… と。
 
 「すごい顔してるけど、なにかあったの?」
 
 「うん? そんな顔してたか」
 
 「鬼のような」
 
 「ひどいな …… 」
 
 「ごめん」
 
 「違う。私が、だ」
 
 なんと言われようと、アイツが気になってしまうんだから仕方ない。
 始めは怒っていても、すぐに冷めて悲しみに変わってしまう。
 この感情は、一体なんだ?
 
 「シグナムは優しいから」
 
 「か、関係ないだろ」
 
 「大ありだよ。心配で心配で …… 放っておけなくて、守ってあげたくて。そんな感じでしょ?」
 
 「む」
 
 当たり、なんだろう。
 自分でもよく分からないのだから、答えようもない。
 古代ベルカより続いて、こんなことは初めてなのだ。
 それもこれも、主はやてのおかげなのだろうな。戦うことが全てだった私たちヴォルケンリッターに “日常” を教え、与えてくれた。
 なによりも、返しがたい恩だ。
 そのおかげで、ユーリとどういればいいのか悩むとは、皮肉なものだ。
 
 「私とおんなじ。エリオとキャロのこと、話したよね?」
 
 「あぁ、聞いている。しかし同じとは?」
 
 「んー、保護欲っていうのは少し違うかな。うん、『母性』ってヤツかもね」
 
 「『母性』 …… この私が …… ?」
 
 「そうかもって話。それにシグナムだって女性じゃない。ありえない話じゃないよ。あと、少し調べさせてもらったよ」
 
 そう言ってモニターを展開させ、ユーリの顔写真から始まる彼の情報が羅列する。
 
 「ユークリッド・ラインハルト三尉。15歳。第1039航空部・第一分隊隊長補佐、及び副隊長。魔導士ランクはA+。デバイスはインテリジェントデバイスの『ジークフリード』。
 管理局には9歳の時に入局。の、はずなんだけどこれから4年くらいの記録がなんにもない。どこにもない。けれど13歳くらいから名前が知れ渡っていく。その4年の間にあった大きな事件と言えば私たちが当事者の『闇の書事件』くらい。あと、なのはのこともね。
 世間では『戦場の演出者』という二つ名で有名。曰く、『彼の者が指揮する部隊は損傷率、並び生存率が陸、海合わせてもトップクラスの成績を誇っている』とか。
 あと、推薦で執務官試験も受けてるみたいだけど落ちてる。それからは一回も受けてないみたいだね。でも推薦で受けたのになんで落ちたんだろう?」
 
 「わざとだな。ま、二浪してるお前にしてみれば推薦が貰えるだけ羨ましいだろうよ」
 
 「それは言わない約束だよ …… 」
 
 しかし、指揮能力が高いのは同じ戦場でいればよく分かる。素晴らしい、といってもいい。
 とすれば、なぜA+で止まってる?総合ランクならAAAも夢ではないだろう。
 
 いや、それよりなにより、入局始め4年の記録がない、というのが気になる。
 
 「テスタロッサ、嫌な予感がする。これ以上は嗅ぎ回らないほうがいい」
 
 「うん、分かってるよ。にしてもすごい人なんだね。なんでっていう感じは残るけど」
 
 「 …… 目指す場所へは、ミッド式の方が都合がいいらしい」
 
 「目指す場所 …… なにかの役職? それともそのままの意味でどこか …… ?」
 
 「わからない。聞いても答えてくれないからな」
 
 テスタロッサが申し訳なさそうにゴメンと言うのだが、お前が気にすることじゃない。
 だが、まぁなんだ。
 
 「私のこの気持ちの正体がおぼろげながら解っただけでも収穫だ。ありがとう」
 
 「私なんにもしてないけどね」
 
 「ふふ。では、そろそろ御暇しよう」
 
 立ち上がって上着を羽織る。
 玄関まで歩くと、うしろから
 
 「送るよ?」
 
 というお誘いを貰うが、そこまでしてもらうのも気が引ける。
 それに
 
 「いや、一人で帰りたい。いろいろ気持ちの整理もあるからな」
 
 「そうですか。なら、また」
 
 「あぁ、またなテスタロッサ」
 
 ハラオウン家を後にする。
 それにしても私が『母性』か。主が聞けばなんと言うだろうか。いや、あの人はわかってテスタロッサと会わせたんだろう。
 ヴィータあたりに言いうと笑い転げそうな話だ。
 
 帰ったら、付き合い方をもう少し考えようか。
 
 
 



             Act:0-2  end


テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

B.A.C.K   Act:0-3

 「それでは、以上で教導を終ります」
 
 ぐるりと全員を見直す。
 うん、みんないい顔。
 
 「おつかれさまでした」
 
 『『『『『おつかれさまでしたッ!!』』』』』
 
 一ヶ月に渡るこの隊での教導も終わりと思うと、名残惜しい。
 みんなもそれぞれがそうらしく、つらかったけど、楽しい教導でしたと言ってくれた。そう言われると教導官名利に尽きるというものだ。
 そんなみんなに囲まれ、別れを惜しむのもこのあたりまで。
 
 「みんなはまだまだこれからだからね。焦らずじっくり、がんばって。私も応援してるよ!」
 
 『『『『『ありがとうございましたッ!!』』』』』
 
 ゾロゾロと解散していく。
 その中で近付いてくる影が一人。
 
 「高町教導官 …… ありがとうございました」
 
 「シグナム三尉、おつかれさまです」
 
 「よければ食事をご一緒にどうです?」
 
 断るのも悪いし、それに断る理由がないし。
 それに、いろいろと話しておきたいこともあるし。
 
 「あぁ、いいですね」
 
 自然と返事は出ていた。
 シグナムさんも頷いて歩き出す。
 
 
 部隊の上官も一緒になって並んで歩いていく。
 どうやら教導の具合が気になるらしい。
 
 「本隊の魔導士たちはどうでしたか?」
 
 「いいですね。よく鍛えられてます。仮想敵もやりがいがありました」
 
 そう言うと、上官たちには聞こえないようにシグナムさんが吹いたのがわかった。どういう意味ですか。
 
 「では、我々はこれで。またよろしくお願いします、教導官」
 
 「はいっ」
 
 そうとだけ言って去っていく。
 向こうも向こうで、この後一杯するようで盛り上がっている。
 今頃みんなもそれぞれで楽しんでるんだろうなぁ。
 てことで、私もそろそろゆっくりしよう。
 
 「おつかれさまです、シグナムさん」
 
 さっきとは違う意味で使う。
 
 「あぁ、すまなかったな。気を張らせてしまった」
 
 二人で笑いあう。
 どうもこう言うのはいつまで経っても慣れそうにない。やっぱり、リラックスは大事だ。
 
 「食事は私の同僚たちとだけだ。気楽にしてくれ」
 
 「はい」
 
 わかってますよ、と返事をする。
 この7年でシグナムさんは随分柔らかくなったとつくづく思う。
 元々は敵同士、最後には協力っていうのもあったんだろうけど、『闇の書事件』が終ってから私たちと仲良くなるのは早かった。
 それでも入局当初は『寄らば斬る』といった雰囲気で、こうやって身内以外と仲良くなるまでには長い時間がかかった。
 まぁ、あの事件のことでちくちくと言われてたんだから、しょうがないと言えば、しょうがないんだけどね。
 
 そうしてる内、前に二人組みの人影が見え始めた。
 シグナムさんは一歩出て、
 
 「アルトは初対面のはずだが、ヴァイスのほうは ――― 」
 
 言い終わる前に、ヴァイスと呼ばれた男性のほうがずいっと前に出て敬礼する。あれ、確かこの人は ……
 
 「おつかれさまです!ヴァイス・グランセニック陸曹でありますッ」
 
 続けて、隣のアルトという女の子も敬礼する。
 
 「アルト・クラエッタ整備員でありますっ」
 
 小っちゃくて可愛い子だなぁ。
 それはそれとして、たしかヴァイス君と言えば …… あ、思い出した。
 
 「あー、地上本部のおもいろいヘリパイロットさんですね!」
 
 そうそう、彼だ。
 妙に軽くて緊張でガチガチだった新人たちをほぐした人だよね。
 
 「覚えていただいて光栄であります、教官殿」
 
 にしし、といった笑顔で、どう見ても恐縮してるようには見えない。でもそれくらいの方が私にはぴったりなのかもしれない。
 
 「顔合わせも済んだトコロだ。早速行こうか。話したいこともある」
 
 シグナムさんがそう言うと、とたんにヴァイス君がキョロキョロと周りを見出した。
 
 「どうしたの?」
 
 「いえね、ラインハルト三尉がいないなと思いましてね」
 
 「ユークリッド君? シグナムさん知ってます?」
 
 「主はやてと食事に出掛けた」
 
 空気が凍った。
 このとき、誰もが予想だにしなかった言葉、いわゆる爆弾発言というものをあっさりとシグナムさんは落としてしまった。
 そして、いつも氷を溶かすのはよく言えば熱き想いなのです。
 
 「う、うおぉ!? 姐さん、それはそういう事でいいんですかぃ!?」
 
 「そ、そうですよシグナム三尉! さらっと言ってますけど自分の主の春ですよ!? いっつも言ってたじゃないですか、『主に似合う男でしか認めない』って! そういう事で良いんですね!?」
 
 「 …… そっか。はやてちゃん、やっと幸せ見付けたんだ。よかったね」
 
 「お、おい。勘違いをするな。ユーリと主はそのような関係ではない。主が新たに作ると言っている部隊のことについて話があるらしいのだ。それでだな …… 」
 
 『『『それで!?』』』
 
 「だから違うと言っているだろう!!」
 
 だが確かにユーリならゴニョゴニョ …… という言葉も聞き逃さない。
 これは食事の時にゆっくりゆっくり。
 
 「お話、聞かせてほしいの」
 
 「ちょっと待て! なのはッ、お前目がすわってるぞ …… ッ!?」
 
 だって、気になるじゃないですか?
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「へっくしゅ!!」
 
 「ウワサ、ですかね?」
 
 「あんな、こういうときって『風邪?寒いなら僕の上着を …… 』ぐらいの甲斐性見せなアカンよ?」
 
 そんなことを言われても、くしゃみする直前までメチャクチャ元気だった人にそんな気を遣える方がスゴイと思うけど。
 
 「うりゃっ!!」
 
 「 ………… 何してるんですか」
 
 「何って …… 」
 
 自分がどういうことをしているか、もう一度確認してからニッコリ笑って
 
 「腕組み♪」
 
 「何でですか」
 
 「何でって …… もしかして、嫌なん?」
 
 ワザとだ。絶対ワザとだ。
 ここで相手のペースに乗ったらだんだんあらぬ方向に行ってしまうに違いない。きっとそうなる。
 
 「オレは別に。悪い気はしないですけど、どっかのパパラッチにでも撮られたら一切責任取りませんよ?」
 
 「したらシグナムかヴィータあたりは制裁をしに行って、シャマルとかは裏でエライことしそうやなぁ」
 
 「脅迫ですか」
 
 「そうとも言う」
 
 そうとしか言わない。
 本当にしそうだから、洒落にもなってない。
 
 「はぁ、世間体とこの暑いのにくっついてくる上官のためにさっさと行きますか」
 
 聞いてるのか聞いてないのか、無視してるからなのかなのか、ちょっとムキになってギュウギュウひっついてくる。
 あー、もう。だから無視したかったのに。
 
 「コッチもそんなに鈍感じゃないんですが?」
 
 「え~? 何が~?」
 
 あからさまにとぼけてる。
 本当にタヌキだなこの人。
 ていうか、この人どこまでが本気なんだか。
 
 「その …… 胸とか」
 
 「えっへへ、当てとるんよ~。さっ早よ行こ!」
 
 ひっつくだけだったのが急にグイグイ引っ張られる。まるで酔っ払いだよこの人。酔っ払ってもないのに。
 
 
 入った店は八神三佐が予約していたらしく、どうやら彼女の出身世界の料理店らしい。
 
 「 …… で。どういった話を?」
 
 「スカウトの件、つまり六課のこと。まだ詳しゅう話してへんかったやろ?」
 
 確かに。
 古代遺物、つまり『ロストロギア』 …… 管理部といったか。
 名前からするに、“何か”はもう決まっているみたいだが。
 
 「これ、知ってるかな」
 
 一枚の写真がテーブル越しに渡される。
 写っていたのは、卵形の、ロボットの残骸。撮ったのはちょうど去年。
 
 「いえ」
 
 「ロストロギア『レリック』の回収中に現れた個体で、今もまだようはわかっとらん。ただわかってんのが、コイツの厄介な機能だけ」
 
 「 …… ?」
 
 「『AMF』 …… アンチ・マギリンク・フィールド。魔法無効化フィールドの展開が確認されとる。どう見る?」
 
 どうもこうも、大犯罪の匂いがプンプンする。
 ロボということは誰かに作られた、という事であり、そして、それがロストロギアの回収中と来たもんだから、さぁ大変。
 
 「なるほど …… それが機動六課、ということですね」
 
 「ふふ、流石やね」
 
 何故か、とんでもなくイイ笑顔で言う。
 妙に色っぽくて困る。
 
 「ま、そういうことやね。そんでから、六課はほぼ完全な独立部隊として設立される」
 
 「武装隊と違って、独自の判断で現場に急行できる、と。メンバーを聞いたときから思ってましたが。よく許可が下りましたね」
 
 「ははは。お恥ずかしい限りで」
 
 そう言って食事に手をつける。少し冷めてしまったようだ。
 黙々と食べていると、さっきよりもまだ真剣な声がした。
 
 「それで、ユークリッド君にはフォワード部隊の分隊長をしてもらいたい」
 
 「は?」
 
 「独立部隊である六課のさらに独立分隊。基本的な役割はフォワードの新人らのための遊撃役。そして、前線指揮官っちゅーヤツもやってもらおうと思っとる。確かに、バックには私らがついてサポートするし、指揮もする。けどな、その場でしかわからんこともある」
 
 待て待て。
 いくらなんでもその役はオレを買い被りすぎだ。
 そんなものは執務官であるハラオウン女史に任せればいい。
 確かに、自分は中隊指揮までのライセンスは持っているが、それでも指揮能力で言えば執務官の方が圧倒的に経験値がある。
 
 「これは、フェイトちゃんの推薦もあって言うとる。曰く『あの人にだったら大隊、艦隊指揮だって任せてもいい。彼に任せれば誰も死なない』言うてましたけど?」
 
 なんだそれは、ふざけてるのか?
 大隊指揮? 艦隊指揮? 百歩譲って大隊指揮までは許容しよう。艦隊指揮ってなんだ? 提督、またはそれ以上の地位がする仕事じゃないか。
 そんなふざけた執務官と一緒の職場でこれから働かないといけないのか。今から胃が痛い。
 
 「なんや、むずかしい顔しとるけど。お返事はどうでしょうか?」
 
 「いいでしょう。失敗の責任をハラオウン執務官が取るというなら」
 
 「え」
 
 「推薦した本人にも責任があるのは自明の理でしょう」
 
 「うぅ、そ、そうやね」
 
 これは最低条件だ。
 やるならやってやるさ。
 しかし執務官ね。何を考えてるんだか、紙の上だけを見て決めるのは止めてもらいたいところだ。
 
 「にしても、君けっこう凄いらしいな。フェイトちゃんがそこまでいうから改めて調べてきたけど『戦場の演出家』いうらしいやん」
 
 気を遣って話題を変えてみたようだが、余り変わってないような気がする。
 けど、その気持ちは素直に嬉しい。
 
 「らしですね。まったく誰が言い出したんだか」
 
 「ふふ。1039部隊に行ったとき医務室にもいったんやけど、医務官いうとったで? 『この部隊で医務官してると給料泥棒してる気分だ』ってな。なのはちゃんが来てからは疲労で運ばれる人が多て久しぶりに仕事したよ~、とも言うてたな」
 
 「なにが給料泥棒だ。しっかり働いてから言えってんだ」
 
 「あはは」
 
 いつのまにか場が和んでしまった。
 ギスギスした空気より大分マシだから、いいとしよう。
 
 「ふふ。やっぱり」
 
 「?」
 
 「なんでもないよ~」
 
 なんだっていうんだ。本当タヌキだな。
 
 それきりさっきの言葉の意味もいわず、八神三佐は食事に集中してしまった。
 言えることは全て言ったらしい。
 さっきの言葉『やっぱり』というのがどういう意味なのかを素直に聞くのも癇に障るので、こっちも黙して食事に戻る。
 目の前にニヤニヤする人がいなかったらもっと美味しかっただろうに、コンチクショウ。
 
 
 「オレが払います。先に出ててください」
 
 「え? やけど ――――― 」
 
 「甲斐性見せろって言ったのあなたでしょう?ほら行って」
 
 不承不承とでていく八神ニ佐。
 案の定、払い終わって外に出てみると、ふくれっ面で睨んできた。
 そのまま無言でまた腕を組んでくる。
 聞いてもどうせ『ええやろ』って言われるだけだろうから聞きはしない。
 
 もう夏か …… 夏ね。
 
 などと感慨にふけっていると突然、八神三佐が素早く、力強く路地へ飛びこむように入って、もちろん腕組みをしているオレも例外なく引き込まれる。
 
 「どうしたんです?」
 
 「なのはちゃんがおった。シグナムと、あと多分シグナムの同僚のアルトとヴァイス君。やっばー …… みんなも外に食べに出てたんか。マズイなぁ …… 」
 
 「アルトとヴァイス、知ってるんですか」
 
 「ん? まぁな。シグナムの推薦であの子らも六課に入る予定」
 
 はぁ、と気のない返事をしてしまう。
 それもそうだ。見事な身内固めだからな。
 独立部隊だし、そのほうがイイのかもしれないけど。
 
 「で、なんで隠れたんですか?」
 
 「バレたくないから。てか、見つかったら面倒やで? なのはちゃん、あぁ見えてそういう話好きやから」
 
 あぁ、確かに高町さんは厳しいイメージがあって、そういうのには感心なさそうだしな。
 見た感じだけではそうでもないんだけど。
 あ …… でも女の子って一応みんなそういう話好きなのかもな。
 
 「んぁっ!! シグナムのアホーッ!!」
 
 と急に声を殺して叫び散らす八神三佐。念話でもしていたのだろうか?
 
 「どうしました?」
 
 「逃げながら話す。行くで!!」
 
 「え、えぇえ?」
 
 これ、何が起こってるんだ?
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 ―― シグナム、聞こえてるか?
 
 急に念話が入ってきた。
 
 「主はやて?」
 
 ―― ちょっ! アホーッ!!
 
 「何? はやてちゃん?」
 
 「うむ、念話が入ってな。すぐに切れてしまったが」
 
 アホと言われたと肩を落とす。
 私は何か悪い事をしてしまったのだろうか?
 
 「念話ってコトは、まだこの近くにいるってコトなんだ。へぇ …… 」
 
 高町がなにやら思いついたらしく、待機状態のレイジングハートを取り出す。
 なにをするつもりなのか、と見ていると
 
 「レイジングハート、ワイド・エリア・サーチ、行って!」
 
 《W・A・S,get set.Start》
 
 サーチャーを10個ほど作り出して散開させていく。
 どうやら、本気で主を見つけにかかるらしい。
 
 5分もしなかっただろうか。
 主はやては見事に見付かった。

 
 



             Act:0-3  end


テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

B.A.C.K   Act:0-4

 「あの、何でこんなことになってるんかな~? とか」
 
 「それはお話をしてもらうためなの」
 
 「あの、何でお話やのに何でバインドなんかな~? とか」
 
 「それは逃げないようにするためなの」
 
 「あの、何でレイジングハートのヘッドこっちむいてんのかな~? とか」
 
 「それは嘘を言えないようにするためなの」
 
 嘘言うたらぶっ放すってコト!?
 何でそないに必死やねん、なのはちゃんは!!
 
 「じゃあ、何で逃げたの?」
 
 「ここまでとは思ってなかったけど最低尋問される思たから」
 
 「じゃあ、シグナムさんに念話したのは?」
 
 「さりげなくどっか行ってもらおうと思てやな …… 」
 
 そうだったのか! って顔を今頃するシグナムが恨めしい。
 すごい申し訳なさそうにしてるから許す。
 
 「じゃあ、なんでユークリッド君とお食事してたの?」
 
 「それは六課のことをやな、いろいろと話してたんよ?」
 
 「手とり足とり?」
 
 「そうそう、手とり足とり ――― って、オイ!」
 
 「ディバイ ――――…… ン」
 
 「アッ ―――― !! 待って待って待って!! バスター!?」
 
 「違うよ、シューターだよ」
 
 てへ、って笑おうてる。
 嘘やで。絶対嘘や。問答無用でバスターな感じやった。魔力の集まり方がバスターやった!
 この子本気やっ、殺す気やっ!
 
 「大丈夫だよ。非殺傷設定だから死にはしないの」
 
 「 …… ってそれバスター撃つ気マンマンやったんやんか!!」
 
 もう怖い。
 もう嫌や。
 天国のお父さんお母さん、娘はもうすぐそこに逝きます。
 
 「 …… じゃあ、なんで? なんで私たちと一緒にお食事しなかったの?」 
 
 「そ、れは …… その」
 
 「うぅっ、ディバイ ―――…… ン」
 
 「わぁっわぁっわぁっ! それはそのっなっ!?」
 
 「それは自分を気遣ってのことです」
 
 「へ?」
 
 思わずなのはちゃんと声が重なる。
 ユークリッド君は急に話し始めたと思ったら、どことなく的外れな事を言い出した。
 私、気ぃ遣こうた覚えないんやけど?
 
 ―― まかせてください。
 
 「え?」
 
 念話が入り、ユークリッド君が私となのはちゃんの間に割って入る。
 
 「ここで言うのも何なのですが、自分はシグナム三尉が苦手です。むしろ嫌いです。そのことを八神三佐はご存知だったので、では、話し易いようにと二人での食事に相成りました。言いよどんだ理由は自らの騎士を傷つけないための八神三佐の優しさゆえです! ですから、皆さんとお食事できない原因は自分にあります。誠にすいませんでした!!」
 
 ガバッと頭を下げるユークリッド君。
 他の4人も私と同じように面を食らっている。
 
 確かに、シグナムには悪いけど筋は通っている。
 
 「なんだ、そうなんだ …… ゴメンね、はやてちゃん」
 
 「いや、こっちこそゴメンな」
 
 バインドを解いて、レイジングハートも待機状態に戻っていく。
 さりげなくユークリッド君が近付く。
 
 「大丈夫ですか? すいません、オレのせいで …… 」
 
 「そんなん …… 迷惑かけたんはこっちやんか。気にしぃなや」
 
 そっと手を差し伸べるあたり、本当にいい人だなぁと思う。
 あぁ、私こういうのちょっとヤバイかもしれへん …… 。
 
 「あそこでシグナムなんかに念話するからですよ?」
 
 「なんか、とは随分だなユーリ。さぁ、さっさと主から離れろ!」
 
 ぐぃぐぃっ、と引き剥がされる。
 ユークリッド君はやれやれと肩をすくめ、とんとんと離れていく。
 あぅ、シグナムのあほぉ。
 
 「 …… じゃあ、悪者はここらへんで退散します。アルト、ヴァイス、お前らもハメを外しすぎるなよ?」
 
 「は、はいっ」
 
 アルトは真面目に返事を返したワケなんやけど
 
 「ラインハルト三尉! 俺も付き合いますよっ」
 
 たたたっと駆け寄るヴァイス君にむけ、ユークリッド君が返したのは
 
 「オレは直帰だっての! 何だ、お前ももう帰るのか?お前みたいな色男、他にいないぞ」
 
 多分、このまわりは皆女の子という状況を言ってるんだろう。
 なんのことはない。ヴァイス君は、う、と唸って迷うことなく戻ってくる。モロすぎるわなぁ。
 
 ふ、とユークリッド君はこちらを向き直って軽く敬礼をする。
 
 「では。また会いましょう、八神三佐」
 
 なんの心残りもないのか、さっと振りかえって路地から本通りに出て行った。
 むこうには心残りはないだろうが、こっちはそうもいかないらしい。
 さっきから何かが引っかかっていて、気持ち悪いくらいの思い残しがあるような、ないような、どっちやねん! て突っ込みたくなるような、ないような?
 
 「あ」
 
 すぅっと本通りに出た彼の背中が見えなくなったとき、思わず声が漏れていた。
 近くにいたシグナムには聞こえてしもぅたみたいで、こちらをチラリと見られた。
 
 「はァ …… 」
 
 「む、なんやのん」
 
 「まぁ、私も甘いということですよ」
 
 「へ?」
 
 どん、と背中を押され前のめりになって倒れそうになる。
 
 「あぁ、主はやて。そんなに酔ってしまって、明日も仕事が朝からあるのでしょう? ほら、今日はもう帰ってください。こちらは私が面倒を見ておきますので」
 
 あー …… 。
 うん、その気遣いはスッゴイ嬉しいんやけどな。その大根役者っぷりどうにかならんかったんかなぁ。
 台詞がうそ臭いし、なにより棒読みって …… 。
 黙っといた方が自然って思うくらい、不自然。
 
 けど、まぁ、ここはありがたく行かせてもらうとしよう。
 
 まだ、お礼も言うてへんしな。
 
 
 *  *  *  *  *

 
 「やれやれ、と。帰ってシャワー浴びて寝るとしますかねっと」
 
 休める時に休んでおく。これは戦士の鉄則だ。
 戦士かどうかは、この際どうでもいいが、一応ここ最近で一番の『戦い』から生きて帰って来れた。それでいい。うん、こじつけ。
 
 街並もだんだんと店の灯りが消えていき、人の数も少なくなっていく。
 自分の足音が分かる程度の人の数っていうのが、ちょうどいい。逆にいえば、それは他の人にも言えるコトだったりする。
 
 足音が走って近付いてくる。
 こんな大きな通りで、しかもこの時間ランニングなんてするヤツがそうそういるだろうか?普通いない。
 
 「ジーク」
 
 《Yes,sir》
 
 念のため、合図だけは送っておく。
 ジークもそのことを了解してくれたようで、返事を返してくる。
 返してきたのだが ……
 
 《sir》
 
 「なんだ」
 
 《Misunderstanding.(勘違いです)》 
 
 なんだ、勘違いって。
 オレに警戒の必要はないと言ってるのか?
 そう思っていると、足音がすぐ後ろで止まった。
 
 振りかえると、そこには八神はやて三佐がいた。
 
 「八神三佐 …… なんでここに?」
 
 「なんでもかんでも、探したでー? 全く、なんで真っ直ぐ隊舎に帰らんのよ」
 
 それは一種の職業病、というか日課というか。
 行動範囲を絞らせないためにワザと迷走する。
 確かに、普通に帰るよりも二倍ほどの時間がかかるが、またこれによる副産物も多い。たとえば、美味いレストランを見つけるとか。
 だが、今回はその副産物が悪い方に出てしまったらしい。
 初めて会ったときよりかはマシだが、息は乱れ、汗も滲んでいる。
 
 「どうかしたんですか?」
 
 「いや、なんつぅーか、やな」
 
 ふぅっと一息ついて、服装を正す。
 
 「ありがとうな。今日は私のアホに付き合ってくれて」
 
 「いえ、そんな。なかなか有意義でしたよ」
 
 確かに、『アホ』という部分は否定できない。
 一瞬空気が悪くはなったがそれ以外はたのしいものだったし、それに表面上呆れてはいたけど、デート風味なのも正直悪くはなかった。
 オレだって男だ。そして八神三佐は間違いなく美人の部類に入る。そりゃうれしいさ。
 
 「じゃあ、ついでやし …… 何個かお願いしてもええかな?」
 
 「この際です、聞けることがあるなら」
 
 「うん …… やっぱり、ユーリって呼んだらアカンかな?」
 
 「え …… 」
 
 俯き加減に、恥ずかしそうに口元を握り拳で隠し、上目遣いにこちらを見てきて、そんな“お願い”をする。
 この人は …… 。
 自分がどんな顔して言ってるのかわかってやってたら本当にタヌキだ。
 
 「シグナムとおんなじ呼び方されんの、やっぱ、嫌かな?」
 
 ずいっと前のめりに近付かれる。
 天然? ワザと? 狙ってる? ド天然?
 
 「あぁもう、わかりました。いいですよ!」
 
 「ぃよぉっしゃぁっ!!」
 
 ぐわっしゃーっとガッツポーズ。
 そんなに嬉しいのか?
 
 「それで …… ?」
 
 「うん。敬語もいらへん。歳もひとつしか違わんし、タメ口でええよ。もちろん公共の場でやったらそれなりの態度にはなるけど、普段からそんなに畏まらんでええよ」
 
 「 ………… そう、か。なら、オレからもいいか?」
 
 「どんときて!」
 
 どん、と胸を叩いてふんぞり返る。
 さらっとタメ口になったのがそんなに嬉しいのか、ニコニコと笑っている。
 
 「はやてって呼ぶから、そのつもりで」
 
 「~~~っ!?」
 
 ガッと顔を赤くして煙が出そうなほど髪が逆立つ。
 お返しにと思ってやったのだが、予想以上に参ってるみたいでいい気味だ。
 でも、これはさすがにやりすぎか。まだ2回しか会ってないっていうのにファーストネームっていうのもな。
 
 「じゃ、八神でどうだ?」
 
 「あ、あややややややっ!! はやて、はやてでええよっ!!」
 
 「ん、そうか。じゃあ、それだけ?」
 
 「うん、こんなけ」
 
 しゅるるるるっと風船の空気が抜けていくようにはやてはしぼんでいく。
 どうにも、タヌキに懐かれてしまったようだ。こんなに可愛いタヌキなら歓迎だけど。
 
 「じゃ …… またな、はやて」
 
 「あ、う、うん! またな、ユーリ!!」
 
 ブンブンと手が千切れそうな勢いで振っている。
 呆れて笑いながら、今日は過ぎていった。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「何の真似だよ」
 
 「それはこちらの台詞だ」
 
 隊舎の食堂。時間は朝食時。
 机を挟んで、私とユーリは睨み合う。レヴァンティンを喉元に突き付けたまま、それでもユーリは臆することなくしゃべりだす。
 
 「これじゃメシも食えない。その棒を早くしまえ」
 
 「貴様ッ! 私のみならず我が剣にまで!!」
 
 じとりと見上げられる。
 もちろんレヴァンティンはユーリの喉元に突き付けたまま。
 
 「朝っぱらから発情して、ワケもわかっていない相手に向ける剣をどうして“剣”といえる。
 猿が振る剣を棒といって何が悪い。
 騎士が奮うからこそ剣は“剣”という」
 
 その言葉にドキリとする。
 その通りだ。私はまた、先走って何をしている。
 
 「 …… すまなかった。レヴァンティンも」
 
 《Ja》
 
 待機状態へ戻してから定食を注文してユーリの前に座る。
 蜘蛛の子を散らすように周りから人が引いていく。申し訳ないことだ。
 
 「で、何がなんだって?」
 
 「そうだ。お前昨晩主はやてに何かをしただろう。昨晩帰ってきてから様子がおかしいのだ」
 
 「たとえば、どんな風に?」
 
 「む …… 」
 
 とは言うものの、オカシイ行動はひとつだけしかしていない。
 
 「ぼぅっとしていたかと思うと突然自分の名前を言って悶絶するのだ。心当たりは?」
 
 「あ ――――…… 」
 
 「あるのか! あるんだなッ!? そこに直れッ!!」
 
 レバンティンを構え直し、今度は鼻先に突き付ける。
 外野はドタドタと食堂から逃げるように退散していく。
 
 「あるにはあるけど、悶絶って …… そこまで」
 
 「いいから、さっさと言え!」
 
 またじとりと睨みつけられる。
 あぁ、くそ。またか。
 
 「すまん。レヴァンティン」
 
 《Ja》
 
 ユーリが言っていた通りの猿になってしまうところだった。
 正当な理由があるなら、それを聞くべきだ。
 …… 少々、主に構いすぎるクセがあるな。直していった方がいいのかもしれん。昔のようにもう、何も出来なかった少女ではないのだから。
 
 「で、心当たりというのは?」
 
 「その前に、そんな行動してる理由を聞いたのか?」
 
 「聞いた。だが『何でもない』の一点張りでな。だからお前に聞いているのだが?」
 
 「ならオレも『何もない』。話すことは『何もない』」
 
 「な、バカをいうな。さっさと話せ!」
 
 「ひとついいか、お前は秘密だと言ってるのに子供みたいにしつこく聞いてくるほどガキなのか?」
 
 「ぐ …… むぅ」
 
 「わかっただろう。簡単に人に話せるようなもんじゃないんだ」
 
 これで話は終りだ、と言ってから朝食に戻る。
 コイツはいつも正論ばかりを言う。口だけなら私よりも達者なんじゃないのか。
 
 「わかった。なら、私ももう聞くまい。主はやてに迷惑はかけたくないからな」
 
 「 ………… 」
 
 じっと目を見開いてこちらを眺められる。まるでハトが豆鉄砲を食らったみたいな顔そのまんまだ。
 
 「なんだ」
 
 「いや、いつもなら食い下がってくるのに」
 
 「言っただろう、主はやてには迷惑はかけられん。これ以上は聞かないし、私がそれを知ってどういう行動をとるか、私にもわからんからな」
 
 「あっそ」
 
 あくまで主のため。
 コイツだけの問題なら食い下がっていただろうがな。
 にしても、秘密か。あまりいい記憶がないな。
 
 「じゃ、お先に」
 
 トレイを持ち上げて立ち去っていく。
 私も朝食に戻るとしよう。
 ………… 今日は朝食前に家を飛び出したからな。主はやてに連絡もいれてない。主は怒っているだろうか。
 
 かちゃり、とバターナイフの音がいつもより大きく聞こえた。
 気のせいか、と思ったがそうでもないらしい。
 
 「あぁ、そうだったな」
 
 一人だけの食堂はとても静かだった。
 
 
 



             Act:0-4  end


テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

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Author:草之 敬
ブログは若干放置気味。
『優星』の完結目指してラストスパート中。
 
現在は主に一次創作を書いて活動中。
過去作を供養する意味もあって、いい発表の場はないものかとネットをさまよっている。

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