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2008-09

B.A.C.K   Act:0-1

 新暦0072年 6月
 第46無人世界。 
 
 「ここはまかせて、お前らはバックアップ。いいな?」
 
 「しかし、副隊長!!」
 
 「死んでくれるなよ。年下の副隊長は、いつも背伸びがしたいんだ。わかってくれ」
 
 その言葉で渋っていた隊員は後ろに退がっていく。
 それを見届け、次に見据えるのは眼下の森。
 木々をかきわけて、蠢く影は一直線にこちらへ向かってくる。
 
 
 今回の任務は最初から面倒な類のものだった。
 
 『プロジェクトF.A.T.E』
 
 そいつを応用して合成獣を造り上げ、自分の使い魔として量産しているという魔導士がいるという情報がはいった。
 つまるところ、そいつを逮捕して、研究体の合成獣の捕獲、抵抗する場合は殺傷もやむなし。それが今回の任務。
 
 はっきりいって汚れ役だ。 
 まだ入局3年にもならないヤツらに任せられる任務じゃない。地上本部どころか海のほうも万年人員不足は伊達じゃない、か。
 自慢にも何にもならないが、こればっかりはどうしようもない。
 こなすしか、ない。
 
 「気負っているな。手を貸そうか」
 
 先陣を切って、捕まえた魔導士と捕獲した合成獣の運搬を護衛していた烈火の騎士こと隊長様が傍らに舞い戻る。
 
 「そうでもない。邪魔はいらないからな」
 
 「子供が無理をするな」
 
 「オバさんがでしゃばるな」
 
 「オバッ!? 貴様 …… 誰にそんな口を …… !」
 
 「隊長」
 
 もう一声なにか皮肉を言ってやりたかったが、そんな余裕はなくなったらしい。
 もう、すぐ下にまで来ている。
 
 「ジーク!」
 
 《Accele shooter》
 
 牽制としてアクセルシューターを撃ち込んでいく。
 攻撃はしてこない。様子見か、それとも動けないか …… 。
 いや、これは!
 
 「砲撃だとっ!?」
 
 「シールド張ってるわけじゃない、アイツとんでもなく硬い!!」
 
 射撃での牽制を止め、回避に専念。
 魔力が溢れ、こちらに向け放たれる。
 森をふっ飛ばして、炎熱の魔力変換された砲撃が迫る。
 その威力は誰が見ても一撃必殺の砲撃。さながら光の柱のように天を衝く。
 
 「っと。威力だけはとんでもないな、チクショウ!」
 
 「空に穴を穿つか …… 」
 
 隊長はそう囁く。
 見上げると曇天は払われ、空の一角に青空が覗く。
 なんて、バカ魔力。
 
 「高町教導官並か …… やっかいな」
 
 「そうでもない。高町さんはあれを抜き撃ちでするだろう? チャージがある分まだ戦い易い。餅は餅屋って言うだろう、ベルカ式の領分じゃない。少し黙っといてくれ」
 
 「そういう言い方は感心できない。お前だってベルカの適正を持っているのだろう? 悪口じみたその言葉、いただけるものではない」

 「はいはい」
 
 今度も砲撃を撃とうとしているのか、チャージが始まった。
 そう何度も同じことが通用するわけがない。森も吹き飛び、視界は良好。改めて合成獣の姿を確認する。
 竜種に近い容姿をしている。翼はないので、飛べはしないだろう。気をつけるなら跳躍か。
 
 そう思った矢先。
 前肢を地面に叩きつけ、後肢で地面を蹴り上げる。
 一瞬でオレたちのいる高度に達する。
 
 また、砲撃のチャージが出来あがったらしい。
 オレ一人なんて丸呑み出来そうな口を開け、魔力が迸る。
 
 《Blitz Action》
 
 なんとか避ける。ヨコはそれなりなのにタテ移動がとんでもなく速い。
 それこそ今みたいにブリッツアクションでギリギリ避けられるほど。
 跳躍に注意を払っていたから避けられたものの、跳躍が頭になかったときのことを考えるとぞっとする。
 
 「ジーク! チャージモード!!」
 
 《Yes,sir! Charge mode,standby》
 
 空中姿勢を整えながら命じる。
 カッと強い光を放ち、デバイスの形状が杖から突撃鎗へ姿を変える。
 
 鳥の嘴のようなヘッドの部分が全て延長巨大化し、杖の柄の部分まで装甲が伸び、先端はより鋭く直線的に剛性化し、青い魔力刃を展開。
 金色の平打紐状のコアがなびく。
 
 落下中なら、チャージも間に合わないし、元々飛べないのだから空中姿勢もなにもない。
 今なら討ち抜ける!
 魔法陣を展開、腰だめに構える。
 
 「突ッ貫!!」
 
 《Crush Charge》
 
 魔力を推進力に変換。
 ブリッツアクションに近い速度で突っ込む。
 いくら甲殻が硬いといえど、我が突撃には勝らない。
 
 魔力刃は竜種もどきの甲殻を突き破り、肉へ食い込む。苦しそうに、でもどこか幸せそうに啼く。
 その声は、自分が望んで生まれたのではない、という意思表現なのだろうか。
 ならせめて、一息に逝かせてやる。
 
 《Dragon smasher》
 
 「ディスチャージッ!!」
 
 自身の主砲撃魔法を放つ。
 視界を自分の青い魔力光が埋める。
 貫いた甲殻から順に崩れていく。まだだ、火力が足りない。
 
 「ヒート!」
 
 《Addition》
 
 いよいよ砲撃は自身の何倍もの大きさの竜種もどきを呑み込む。
 青い光の中、シルエットだけが消えていく。
 
 「無事か!?」
 
 「 …… 心配しなくても」
 
 「今の砲撃 …… いや、今まで見てきたお前の砲撃に限らず、全ての魔法の制御能力や変換効率がお前の魔導士ランクにしては荒い。お前は ――― 」
 
 「そんなに詮索しないでくれないか。あぁ、ご察しの通り元・騎士さ。いろいろあって封印したんだ。別に自惚れなんかじゃない。ミッド式に転向するときにはそれなりにリスクもあったさ。興味もあったし、なにより目指す場所はミッド式にあったんだ」
 
 自分の砲撃が吹き飛ばした大地を眺める。
 非殺傷設定を解いていたので、派手に穴が開いている。
 煙を上げてはいるが、火の手はない。
 
 「なら、お前の目指す場所というのはなんだ?」
 
 「もういいだろ。それと、部下のこと知らなさ過ぎるんじゃないか。それもまとめて、オレはアンタが嫌いなんだ」
 
 烈火の騎士には目もくれず、回れ右して武装隊のヘリまで戻る。
 そう遠くはなく、部下たちが笑って迎えてくれた。後に続いて降りてきた騎士をみて一同「あ、またか」と苦笑いを零す。
 
 「ユークリッド・ラインハルト三尉、ジークフリード、無事帰還。任務完了だな」
 
 誰に言うでもなく、独り言のように呟いた。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 『難しい年頃 …… 言うにしても、シグナムちょぉ嫌われすぎやな。いらんこと言うてへん?』
 
 「何とも、言えませんね」
 
 私も何を血迷ったのか、主はやてに相談などと。
 珍しい、と喜んで相談にのってくれたのはいい。
 らしくない、と言われてしまった。
 
 『他の人やったら論破しそうなもんを、なんでまた手ェ拱いて黙っとんのよ?』
 
 「さぁ …… 自分でもよくわかりません」
 
 確かに主はやての言う通りなのだが。
 今まで私はそうやって口答えをする輩を論破していったのは確かだ。
 『闇の書事件』以来、そのことで口を出すものも少なくはなかったからだ。
 
 『もしかせんでも、オバさん言われてんの気にしてるん?』
 
 「あ …… ぅ。そのような言葉言われたことがなく、情報としての知識でしかありませんでしたが …… なるほど、嫌がり、怒髪天を衝くという気持ちがわかった気がします。しかし、そういう理由ではないのです」
 
 『あはは。シグナムは困ったさんやなぁ』
 
 モニターの奥でう~ん、と唸って、一体何を考えているのかと思うと、『あ、そうかも』と何やら閃いたご様子。
 
 「なにか解決策が?」
 
 『うん、まぁな。確か今は …… っと』
 
 言ってからモニターの奥に映るカレンダーを覗いたので、誰かと会わせるつもりらしい。つまりスケジュールの確認をしているのだろう。
 ……… いや待て。カレンダーを見るだけでわかるような親密な者、ということか?
 となると私の知り合い、という可能性もある。
 しかしこういう相談事 …… といえばスクライア、ぐらいか。
 …… いやいや、スクライアならいつ訪ねてもある程度の対応はするはず。スケジュールの確認など必要ない。
 その点でいけばなのはの線もなし。今は我が隊の新人の教導をして頂いてるのだからな。いつでも会える。
 
 ………… 消去法でいけばテスタロッサか?
 
 「 …… なら、なぜテスタロッサに?」
 
 思わず呟く。
 
 『へッ!? あらぁ、シグナムよぉ分かったな。そうなんよ、フェイトちゃんに相談にのってもらお思て、今いけるか確認しててんよ』
 
 ずばり。
 それなりに確信があったのでそこまで驚くこともなかったのだが …… 。
 やはり疑問が残る。
 
 『ま、そこらへんは会って話せばわかるかもな。私もまぁ、近々その子に会う予定も会ったし、ちょうど良かった』
 
 うんうん、と一人で納得する主はやて。
 会う予定がある、ということは、つまり
 
 「ユーリも、主はやての部隊にと?」
 
 『ん、そういうこと。フェイトちゃんは明日オフみたいやからこっちでアポとっといたるな。そのかわりっちゃなんやけど、ラインハルト三尉の方、都合してもらわれへんかな? 明日で』
 
 「無茶な …… あー、いえ、しかし …… ふぅ、わかりました。とっておきましょう」
 
 『わはっ、ありがとなぁシグナム!』
 
 まったく、この人は …… 。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「で?」
 
 「ここで待っていてくれればいい。話のほうは主はやて …… 八神三佐がしてくれるからな。それから、私は今からフェイト・T・ハラオウン執務官との約束があるから隊舎から離れる。有事の際はまかせたぞ」
 
 ハラオウン執務官 …… フェイト? あぁ、妹さんの方か。
 まったく、ハラオウンの家系は全員が全員エリートだからな、すごいと思う反面ややこしい。
 
 「アンタがいなくなってせいせいするね。ハラオウン執務官にそのことよろしく言っといてくれ。私の部下が感謝してたぞってな」
 
 部屋から出て行く背中にわざと大きな声で皮肉をたれる。
 ピクッと反応すて、振り向き、何かを言おうとしたのだろうが、やはり何も言わず立ち去っていく。
 それでいい。
 
 《Is that a bit muth?(言い過ぎでは?)》
 
 「いいんだ。オレから離れてくれればそれで。ああいう優しさは …… いや、何でもないさ」
 
 《All ligth,sir.》
 
 まぁ、コイツはまた違う。
 優しさ、というよりは信頼に近いだろう。
 
 
 向こうが指定してきた時間から約10分。
 まだ来ない。さすがに心配になってきた。
 
 「なにかあったのか …… ?」
 
 シグナムの話を流してある程度聞いていている分には、少しドジっぽいらしい。
 まぁまぁ、さすがに迷子って言うことはないだろうけど …… 。
 
 「もしかして、シグナムが嫌がらせしたんじゃないだろうな」
 
 《No,sir.》
 
 「ま、わかってるけど」
 
 シグナムが自分の主を使ってまで嘘をつく理由がない。まさかオレが「付いて行かせろ」とか言うとは思ってないだろう。
 だとしたら、なぜ遅れてるんだ?
 
 「あれ~? ユークリッド君じゃない。なにしてるの?」
 
 「あ、高町さん」
 
 というか応接室に顔を出してるアンタは何やってるんですか、と言いたくなるが我慢しよう。
 
 「八神はやて三佐を待ってるんです」
 
 「あ、はやてちゃん来るんだ。じゃあ、やっぱり …… 」
 
 「? やっぱり …… 何ですか?」
 
 「にゃはは、何でもないよ。はやてちゃんが話すから」
 
 またそれか。
 オバ …… もといシグナムといい、高町さんといい。
 
 「あ、そうだ。午後から模擬戦するんだけど、ユークリッド君も手伝ってくれないかな?いつもはシグナムさんが一緒に仮想敵してくれるんだけど、今日はいないって言うから …… 」
 
 「あぁ、ハラオウン執務官と会うとか言ってましたが」
 
 「ありゃりゃ。そうなんだ」
 
 にゃはは、と苦笑い。
 ぱっと見はまだまだ少女なんだけど。その、体つきがこう …… 大人っぽいっていうか。それに管理局の制服って意外とぴったりするから体のラインもこう …… 。
 …… って、何考えてんだオレ。
 自重しろ。自重しろ。
 
 「 …… いいですよ、手伝います。ダメな隊長の尻拭いはしますよ」
 
 「にゃはは。むこうは一個中隊の多さだからね。一人じゃ大変なの。落とすのも時間がかかるし」
 
 「あはは …… 」
 
 コイツ悪魔か。
 さりげなくエグいこと言ってますよ。
 新人といえども中隊レベルの人数でかかってこられたら、普通圧倒は出来ない。
 波状攻撃され始めたら防戦せざるを得なくなる。
 それをこの人は『落とす』のが大変だと言ってらっしゃる。
 
 と、そんなこんなでいつの間にかまた10分経ってしまった。
 
 「遅いな …… 」
 
 「え、はやてちゃん遅れてるの?」
 
 「えぇ、20分ほど」
 
 珍しい、と驚く高町さん。
 さて、どういった理由でニ佐殿は遅れているのか。
 
 すると、ドアが開く音。
 そこには制服が着崩れて、全身汗だくの八神三佐がいた。
 
 「す、すいません …… 遅、れ …… ました」
 
 息も絶え絶え。おそらく走ってきたのだろう。それも隊舎の入り口じゃなく、もっと遠くから。
 
 「聖王教会、に …… 用事、が、あってんで …… その、帰り、に …… 渋滞に、おうてしもう、て …… 走って、きた、結果がこれ、です …… 」
 
 ぜひゅーぜひゅーと何かおかしな音をさせながらしゃべる姿は、なんとも言い難い。
 
 「ま、まずは休んで。話はそれからってことで」
 
 青い顔されてちゃこっちだって話しにくいしな。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 第一印象は最悪。遅刻のうえその身なり。
 何でこんな時に限って渋滞とか起こるんやろ。
 
 「落ち着いた、はやてちゃん?」
 
 「うん、ありがとな。ってあれ? あぁ、そうか。なのはちゃんは今ここで教導してたんやっけな」
 
 「うん、そうだよ。そうだ、午後から模擬戦するんだけど見学してく?」
 
 「そやな。余裕もあるし、そうさせてもらおかな」
 
 なのはちゃんも変わらへんなぁ。
 今も新人らをシバ …… もとい、愛ある教導してるんやろなぁ。
 
 「 ………… で?」
 
 「おっと、すいません。ついつい」
 
 目の前の少年を向き直す。
 アッシュブロンドに、アクアマリンのような碧眼。
 背はシグナムよりちょっと低め、筋肉のつき方も理想のつき方に近い。
 そんな少年は間違いなく美少年の類だ。食べたい。
 
 「なんでヨダレ?」
 
 「おっとと。はしたないところをすいません」
 
 グィっと袖でぬぐうと彼に向き直す。
 
 「自己紹介、いる?」
 
 「必要ないです。耳にタコですからね」
 
 なのはちゃんはにゃははと笑ってはいるが、こちらはそう笑えない。
 シグナム、なんつーかその。がんばりや。
 
 「第1039航空隊、第一分隊福隊長ユークリッド・ラインハルト三尉です。以後よろしくお願いします」
 
 「うん、よろしくな。ユー …… リ君でええんかな?」
 
 「止めてください。同じ言い方されるのは、ちょと」
 
 「ははは …… 。別の意味で特別やなぁ」
 
 ここまでヒドイくらいに嫌われるっていうんも珍しいなぁ。シグナム、無愛想やけど優しいし、気がきくし、頼りになるし、胸おっきいし。
 
 「じゃあユークリッド君。今日ここへ来た理由は君をスカウトしに来たからです」
 
 「スカウト……?」
 
 「古代遺物管理部機動六課 …… まだまだ先になるんやけど、私の部隊への、やね」
 
 「 ………… 」
 
 驚くでもなし。呆れるでもなし。
 何かを考えているのか、腕を組んで俯いている。
 
 「 …… 今、それに声をかけているメンバーは?」
 
 「私はもちろん、そこにいる高町なのは教導官、フェイト・T・ハラオウン執務官、そして私の騎士たち、ヴォルケンリッター。主なところはそんなところかな。あとはひのふのみの …… 」
 
 つらつらと説明していく。
 顔はできるだけ見たくなかったので指折り数える手のひらを見続ける。
 
 「そんな感じかな」
 
 「 …… くっ」
 
 「!?」
 
 なぜ笑われたかが分からず、思わず戸惑ってしまった。
 
 「そのメンバー、聞く限りオレなんかいらないんじゃないんですか? それを承知の上で誘ってるんですか。だとしたら八神三佐。あなたは大したタヌキだ」
 
 すっくと立ち上がり、話は終りだと雰囲気が語る。
 私は彼の力を信じて、スカウトしたんだ。悪いとは思っているわけない。
 
 「高町さん、午後の模擬戦 …… オレだけでやります。それを見てから決めても遅くはないでしょう」
 
 そういって、自重気味に笑った。
 
 「それは、つまり …… 紙の上で見らんと、実力を見てみろ。そういうことなんかな?」
 
 「わかってるなら聞かない方がいい。バカに見える」
 
 皮肉とかそういうんじゃなくて、ストレートに嫌味をぶつけてくる。
 私は認めている。
 人となりだっていろんな人から聞いてる。なによりシグナムが褒めるほどなんや。
 私の部隊になんの引け目もないと感じてる。
 でも、そこまで言うんなら私が見極めよう。
 この八神はやての指揮下に入れるかどうかを。
 
 
 


             Act:0-1  end


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テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

気がつけば

もう4日かよ……。

疲れて寝てばっかでいたらここも間をあけてしまう始末。
土曜日曜で二本はあげたい。切実な希望。

打つのが遅いからいつも苦労する。
そういえば、ドイツ語打ったりとかどうするんだろ?
uとかの上に点々ついてたりするじゃない?
アレってどうすんのさ?
知ってる人いたら教えて欲しいです。

では、ここらへんで。


テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

夢は夢であるように


 また夢を見た。
 彼が出てくる、とても狂おしい夢。
 いつもいつも、彼は消えていく。今と言うときに、私は目覚めてしまう。
 
 彼は表面上、私のお友達。
 学校に行くと、決まって中庭の芝生に寝転んでいて、夢とは全くの別人。
 おだやかで、やさしくて、でもいつも何かを考えている。
 
 何を考えているの?
 それは人のこと?
 ならそれは私のこと?
 
 何を考えているの?
 それは物のこと?
 ならそれは私にくれるプレゼント?
 
 何を考えているの?
 それは時間のこと?
 ならそれは私との時間のこと?
 
 知りたいの。貴方のことが、知りたくて堪らないの。
 夢のように、甘く刺激的に、熱く情熱的に …… 私を挑発してみせて欲しいの。
  
 また夢を見る。
 真紅に染まった薔薇を部屋中にいっぱい敷き詰めて、それとは対照的な真っ白いシルクのベッドで。
 私たちは朝までかけて、愛し合うの。
 それでも、私は貴方の十分な愛を受けられない。
 だってこれは、夢なのだから。
 
 
 白昼夢。この頃私は起きていても夢を見る。
 それが我慢できなくて、私は貴方を何度も、何度も誘うけれど、貴方はいつでも上の空。
 頼んだカフェ・オレはいつの間にか冷めきって、まるで私と貴方のよう。
 
 いつでも、どこでも、どんなときでも。
 私は期待しつづけてるのに、貴方は絶対に私を見ない、見てくれない。
 期待しつづけてるの、ずっと、ずっと。
 期待はしてるけれども、気分は落ちていく。
 
 これ以上は貴方の迷惑なの?
 それは私だから?
 なら私の期待に一回でいい、答えて。
 
 これ以上は貴方の迷惑なの?
 それは私がいるから?
 なら私の期待に一回でいい、答えて。
 
 これ以上は貴方の迷惑なの?
 それは私といる時間なの?
 なら私の期待に一回でいい、答えて。
 
 感じたいの、貴方のことを。一回だけでいい。
 夢じゃない、人として野性的に、獣のように官能的に。
 
 夢は続いてく。
 今日に限って、この夢はいつもと違うの。
 広がっているのは薔薇の部屋じゃなくて、広い広い野原。
 私は貴方の隣で声が枯れるまで好きだって、愛してるって、叫んでる。
 走って走って、このどこまでも続いてる野原のように、私は永遠の愛を叫び続けてるのに。
 それでも、私は貴方の愛を十分に受けられない。
 夢だって知ってる。だから。
 
 
 夢は続いてく、ずっとずっと。
 私の想いが彼に届くまで。
 薔薇に囲まれたベッドでいつまでも愛し合っていたい。
 
 目覚めさせない、この夢は。
 だって、彼が私を見てくれる限りのある時間だから。
 彼はいつでもエンドレステープのように耳元で囁いてくれる。
 邪魔は誰にだって出来ない。これは私の夢なんだもの。
 
 夢は限りない、ずっとずっと。
 私の想いが彼に届くまで。
 息が出来ないくらい走ったって、私は叫び続ける。
 貴方が好きで、好きで堪らない。
 
 飾らない涙で、全てを伝えたい。
 悲しみさえも私と分かち合って。
 何処にも、見たことも聞いたこともないような、愛を、本当の愛を手に入れるまで。
 私は眠り続けていたい。
 
 
 夢は夢であるように、また、夢は望むものであるように。
 夢は夢であるように、また、夢は目指すものであるように。
 
 止まらない想いは、私を動かしてくれた。
 


 「愛してるの」
 


 彼は微笑む。
 いつもの顔じゃなくて、本当の笑顔を。
 きゅっと心が動いた。心地のいい、今まで夢では感じたことのない感情。
 
 
 
 「ずっと、君が心から離れなかった」
 
 
 
 彼は夢とは違った言葉で、好きだと告げた。
 伝わらなかったと思っていた心は、感情は、想いは、彼も感じていてくれていた。
 
 それはそれは素敵なことだ。
 
 たとえ、一晩中愛し合ったとしても。
 たとえ、息が死ぬぐらい叫び続けなくても。
 たとえ、夢から覚めなくても。
 
 夢は夢であるように、現《うつつ》 は現《うつつ》 でしかない。
 
 だから、夢でいくら愛してもらっても、彼の愛は十分じゃなかった。
 いくら私が愛を伝えても、夢でしかない。
 
 現は現であるように、起こらないと始まらない。
 現は現であるように、起こさないと始まらない。
 これが私たちの、愛のかたち。
 
 
 ―――――― IN MY DREAM.
 
 
 
 
 
 
 
 ***************
 
 原曲:IN MY DREAM 《真行寺恵理》
 
 草之の自己解釈で綴られた1000HIT記念短編。


テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学

その優しい星で…  Navi:6

 毎日毎日、暑いことこの上ない。
 そんな今は14月。
 夏真っ盛りだ。
 
 にしてもこの6ヶ月は早く過ぎていった。
 こんなのんびりした空気が流れていても、進む時間は早いのかと感心する。
 
 あと、夏に入ってすぐだったか。
 灯里がウンディーネとして正式にデビューした。そう、お客をとったのだ。
 名前も、あまつさえ料金さえ貰うのを忘れるという散々な結果だったらしいのだが、いやはや。なんとも灯里らしい。
 聞けば火炎之番人[サラマンダ―] らしいじゃないか。ぜひ会ってみたいものだ。
 
 あとは、大掃除のときの社長の一日家出くらいかな?
 結局、夕方には帰ってきてアリシアの料理をばくばく食っていたんで、あんまり心配はなさそうだったけど。
 
 
 そして、今朝のことだ。
 アリシアがニコニコといつもより少し早めにやって来て、一言。
 
 「買い物に行きません?」
 
 と言ったのが事の始まり。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「これは …… 」
 
 「『夜光鈴』と呼ばれる、いわばアクアの特産品ってとこです」
 
 「へぇ …… 風鈴みたいなもんか。懐かしいな」
 
 今私は士郎さんを誘って、アクアの夏の風物詩である『夜光鈴市』に来ている。
 サン・マルコ広場いっぱいに屋台が並び、風が吹くたび綺麗な音の波にさらわれそうになる。
 
 「『夜光』ってことは、夜光るのか?」
 
 「そうなのだ!」
 
 「お?」
 
 ひとつの屋台に立ち寄ったとき、その屋台の店主が士郎さんの言葉に反応して返答する。
 
 「ふむ。じゃあこれはどうやって光ってるんだ?」
 
 「それは夜光鈴の中の玉、そうそれ。が、アクアだけで採れる夜光石で出来ているからなのだ。
 石の中のルシフェリンがルシフェラーゼという …… え? そうそうホタルとかの発光を触媒する酵素の。お兄さん詳しいのだ。で、そのルシフェリンがルシフェラーゼという酵素作用で酸素と結びついて、分解するときに効率よく光るのだ。
 夜光石が発する光は『冷光』といって温度がとても低く、光の減少とともに石も小さくなっていって大体一ヶ月で消えてしまうのだ …… お、そうそう。本当にホタルのようなのだ。お兄さん、話せる人なのだ。だけど、ごく稀に綺麗な結晶となって残ることがあるのだ。別れを惜しむ持ち主の気持ちがそうさせるのか、はたまた神様の悪戯か。とにかく滅多にないことなのだ。
 いやはや。ロマンチックな話なのだ。お兄さんはどう思うのだ?」
 
 「そうだな …… 確かに。いや。結晶を残す夜光鈴は、少しワガママに思うよ」
 
 「ワガママ …… ? それはまたどういう意味なのだ?」
 
 「いやなに、俺個人の意見なんて流してくれればいい。ためになったよ、ありがとう」
 
 「? どういたしましてなのだ」
 
 と、買いもせず、説明をありがとうと言って立ち去る。
 私も今まで『珍しい』とか、『素敵なこと』としか考えたことがなかったから、『ワガママ』と言った士郎さんがわからなかった。
 きっと、どうしてと聞いても、さっきのように返ってくる言葉は決まっている。
 なぜか、胸がモヤモヤして鼓動が高まった。きゅっと絞めつけるこの苦しさは何?
 
 「あれ …… アリシアちゃん?」
 
 急に声を掛けられてビックリする。
 またそれが囁くくらいの小ささで、背筋がぞっとした。
 振りかえると、15mもなく離れたところに彼女はいた。
 
 「あ、やっぱり。久しぶり~」
 
 ふら~と歩きながらウンディーネの制服を着た人物が近付いてくる。
 小麦色の肌にアッシュブロンドのショートボブ。いつになっても子供のように無邪気な姿は見間違えることも、忘れることもない、親友の姿。
 
 「アテナちゃ ―――― 」
 「危ないっ!!」
 
 士郎さんは言うが早いか、走りぬけた。
 見ると、アテナちゃんは体を傾け、屋台へと倒れていく。
 しかも屋台といえる屋台ではなく、お祭りでお面とかを売っているようなもの。
 倒れこんでぶつかれば、そのまま屋台も倒れ、割れた夜光鈴は ―――― !!
 
 『同調、開始[トレース・オン] ―――― !!』
 
 駆け出したとほぼ同時に士郎さんが何かを呟く。
 でもこの距離じゃ …… !
 
 「間に合えぇぇぇぇぇっ!」
 
 風のように走り込む。
 間に合わないと思った距離を、瞬きする間に縮めていって ……
 
 「あっダメ ―――― !」
 
 アテナちゃんを受け止めたまでは良かった。
 けど、無理矢理な姿勢で受け止めたからか、勢いだけが強くなって、屋台へ激突する。
 
 「 ―――――― ッ!」
 
 血の気が引いた。
 さぁっと体が冷たくなって、冷や汗が吹き出る。
 
 皿を何枚も同時に割ったような音が響き、周りから音が消える。
 凍る空気の中、夜光鈴の玉だけがむなしくチリチリと綺麗な音をたてながら、地面を転がっていく。
 
 頭の中には、血で塗られた夜光鈴が。
 そのうえで、苦しそうに唸る士郎さんがいて ……
 
 「士郎さん! アテナちゃん!」
 
 私も駆け出す。
 どんどん近付いてく惨劇の場所。
 
 「士郎さんっ! アテナちゃんっ!!」
 
 体中にうっとうしいくらいの汗が流れてくる。
 唇にまで垂れる『汗』は、しょっぱい。
 
 「はぁっ、はぁっ ――――――――― ぅぁっ」
 
 倒れ伏す士郎さんと、その彼に守られるように抱きしめられているアテナちゃん。
 想像していた、赤い血はなかった。
 
 「どう、して?」
 
 荒れる息を整えながら、彼と会った日のことを思い出す。
 
 ―――――― 俺は魔法使いです。
 
 「い、つつ」
 
 「士郎さん!?」
 
 彼はのそりと起きあがる。
 その顔はいつもの顔で、ほっとして …… 。
 腰が抜けそうになった。
 
 「ちょっと、影へ行こう」
 
 屋台のおじさんに謝りつつ、弁償はいいから早く病院にでも行け。と言われた。
 
 迷惑おかけします。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「日射病だよ。もう心配ない」

 影に入ると、彼女の症状を診る。
 熱中症でなかったのが救いか。
 
 ちなみになんで俺が無事だったかというと、ご存知、『強化』の魔術で服を強化して、剛質化させたというわけだ。
 ま、でないとこの子より俺のほうがヒドイことになってるはず。
 
 「アリシア、知り合い?」
 
 「幼馴染です。アテナ・グローリーって名前です。知りませんか?」
 
 「うん、どこかで聞いたな」
 
 街を歩いていると、アリシアと同じくらいに聞く名前が二人ほどいる。
 大概はアリシアを含めた三人の名前で議論じみたことをしている三、四人の集まりでよく小耳に挟む。
 その中の一人が『アテナ』という名前だったような気がする。
 
 「にしても、危なかったな」
 
 「そうですけど、士郎さんも無茶しないでください」
 
 「無茶なんかじゃないさ」
 
 さてと、どうしようか。
 今だ寝ている少女を見て、日光の下でやっている『夜光鈴市』を眺める。
 
 「この子の面倒は見とくから、夜光鈴選んできたら?」
 
 「親友をほったらかしてなんて行けませんよ」
 
 「うん、そりゃそうだ。じゃあ後は頼むよ、アリシアの分も選んどくけど、いいかな?」
 
 「はい、ぜひ」
 
 そう言ってから笑って、親友の看病に戻った。
 時計を見ると、9時あたり。
 灯里を起こさないで出発したのが8時前。朝食は作り置きしいておいたし、手紙も置いてあったから心配はないだろうけど …… 。
 お土産で夜光鈴買っていってやろうか?
 …… いやいや。こういうのは自分で選ぶから楽しいんであって、アリシアの場合は仕方なくだけど。
 
 「おぉい、兄ちゃん!」
 
 「あ? はい」
 
 急に後ろから呼びとめられ、振り向くと数人の集まりが近付いてくる。
 
 「どうかしましたか?」
 
 「いやぁ、どうもこうもねぇ。アテナ嬢は?」
 
 「ええ、彼女は大丈夫ですよ。ただの日射病でしたから。今はツレが面倒を見てます」
 
 『『『ありがとう!!』』』
 
 ガバッと数人の男女が一斉に頭を下げる。
 何だってお礼を言われるか分からないから、こちらも戸惑う。
 
 「アンタは俺らのアテナ嬢を守ってくれて、看病までしてくれた。これはほんのお礼だ。受け取ってくれ!」
 
 チリン、と可愛い音を響かせ、差し出されたのはもちろん夜光鈴。
 ただ、見るからに屋台で売られているような夜光鈴とは造り込みが違う。他のどの夜光鈴とも、造り手の錬度が違う。
 
 「こんないいもの、貰えませんよ。それに、当たり前のことをしただけで ―――――― 」
 
 「いいや、兄ちゃんは体を張ってアテナ嬢を守ってくれた。それに当たり前のことだっても、それが大きいことに感じるヤツだっているんだ」
 
 そんなこと言われても、なんとも言い難い。
 が、気がつけばいつの間にか周りにギャラリーが出来ている。
 これは、受け取らないと悪者かな …… 。
 それに
 
 「じゃあ、ありがたく」
 
 俺はこの人たちの幸せを守ったのかもしれない。
 夜光鈴がチリーン、と鳴いて、コイツからも感謝されている気分だ。
 
 「ついでに、ワガママ言ってもいいですか?」
 
 「もちろん、なんでも言ってくれよ!!」
 
 気持ちのいい返事を返してくれ、俺は広場に繰り出した。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「う …… んぅ」
 
 「あ、気が付いた?」
 
 膝枕をしていたので、アテナちゃんは自然と見上げてくる。
 うつろに開いた瞳は、まだよく見えてないみたい。
 
 「あ、れ。アリシアちゃん …… ?」
 
 「うん」
 
 しばらくの沈黙。
 何かを思い出したようにハッとして
 
 「ひさしぶり~」
 
 微笑んでみせる。
 相変わらず少し抜けてるなぁ。
 
 「久しぶり、じゃないよ? アテナちゃん、倒れたんだから」
 
 アテナちゃんの頭を軽くなでる。
 サラサラと指の間を抜けていく髪がくすぐったい。
 私が言ったことにはて、と考えてから
 
 「あはは。朝早くから来てて、どれにしようかな~ってずっと迷ってたら、ちょっと限界が来たのかも」
 
 「朝早く、っていうのはいつ頃から? こんな日光の下であんまり感心しないな」
 
 声が聞こえ、頭を上げると士郎さんが帰ってきていた。
 夜光鈴をふたつ持ってきている。
 
 「?」
 
 「ん、あぁ。俺か?」
 
 コクンコクンと横になりながら頷くアテナちゃん。
 
 「俺は衛宮士郎。ARIAカンパニーで家政夫してるんだ」
 
 「本当?」
 
 「えぇ、本当よ。ちょうど春の終わりくらいから、かな」
 
 信用ないな、と士郎さんは苦笑い。
 
 「んー、ま。なんだ。無事でよかったよ」
 
 苦笑いから、いつもの笑顔に戻る士郎さん。
 やっぱりギャップがあって、少しどきどきする。
 
 「あ、これ。アリシアの分」
 
 「あ、ありがとうございます」
 
 綺麗な花の模様が入っている夜光鈴をもらい、ふと気付く。これってスゴク高価なものなんじゃ?
 見てみると士郎さんの夜光鈴の装飾なんて、お手軽に買えるような品物じゃない。
 一体どんな買い物をしたらこんなものを買えるのか。
 ふたつ合わせて、下手をしたら30ユーロは軽いかもしれない。
 
 「どうしたんですか、これ?」
 
 「あぁ、貰ったんだ。『アテナ嬢を助けてくれたお礼だ』ってね」
 
 さすが、ファンの人の行動力はすごい。
 それというのも、アテナちゃんの魅力のおかげかな。
 不謹慎かもしれないけど、ありがとうなんて。
 
 「アテナ、でいいかな?」
 
 コクンと頷き返している。
 
 「じゃあ、よかったらアテナのも選んでくるけど」
 
 また、コクンと頷く。
 
 「そっか。じゃもう一回行ってくるよ。アリシア、俺のも預かっといてくれ」
 
 自分の夜光鈴も私に預け、もう一度広場の方へ歩いていく。
 影から日向に出て行くとき、その背中がなぜだろう、一段と大きく見えた。
 
 「アリシアちゃん、衛宮さんのこと、どう思ってる?」
 
 「へっ?」
 
 急にそんなことを聞くもんだから、出したことがあるかどうかもわからないぐらい素っ頓狂な声をあげた。
 士郎さんを、どう思ってるか、か。
 
 「う~ん …… 不思議な人、かな」
 
 「私を助けたって、ホント?」
 
 「うん。日射病で倒れて、夜光鈴売り場に倒れこみそうになったところを受け止めたの。でもやっぱり突っ込んじゃったんだけどね、アテナちゃんにケガがないように抱いててくれたんだよ」
 
 「そう …… なんだ。あの人、ケガはなかったの?」
 
 「うん。彼、魔法使いなんだって。多分アテナちゃんを助けたときに使ったんだと思う」
 
 アテナちゃんはそう、とだけ答えて、それきり何も言わなくなってしまった。
 数分もしないうちに士郎さんも帰ってきて、アテナちゃんにそれを渡すと、一礼して帰っていった。
 
 何だったんだろう …… なにか、知ってるような
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 一ヶ月が経った。
 灯里も俺たちが帰ってきたあとに夜光鈴を買いに行って、お気に入りを見つけたらしく、毎日毎日船首にくっつけて練習に行っている。
 そして夜。
 彼女とアリア社長は海へ出て、夜光鈴の光を頼りにまったりとお茶している。巷じゃ『海に浮かぶ人魂』なんて言われてるなんて知らずに。
 とにかく、一ヶ月は早かった。
 
 「あれれ? 元気ないぞぅ」
 
 練習中は夢中で気付かなかったのか、日が落ちてきて光が見えやすくなって気付いたのか。
 どちらにせよ、ポッポッと点滅を繰り返して光っている。迎えに出ていたアリシアも看板にぶら下げている自分の夜光鈴を見上げ、点滅しているのを確認した。
 カウンターに吊っている俺の夜光鈴もそう言えば点滅していたような。
 
 「 …… そろそろ夜光鈴の寿命みたいね」
 
 「そっかぁ」
 
 大変残念そうに、けれど同時に思うところもあるようで
 
 「もう一ヶ月経ったんですねぇ」
 
 涼しげに響く鈴の音。
 この一ヶ月、不思議とそこまで暑いとは思わなかったような気もする。
 ホント、不思議なもんだ。
 
 「今日は、私もここに泊まろうかな」
 
 「え?」
 
 「は?」
 
 アリシアが急にそんなことを言い出したのには、わけがあった。
 
 
 夜。
 灯里たちがお茶をしに行く時間。
 いつもなら一人と一匹なのだが、今は三人と一匹だ。
 
 「はい、アリシアさん」
 
 「ありがとう」
 
 「士郎さんも、どうぞ」
 
 「あぁ、ありがとう」
 
 灯里がパパッと紅茶を配っていく。
 アリシアはへぇ、と感心していた。ん、確かにおいしい。一ヶ月の日課の賜物だな。
 
 この際だから言っておこうかな。
 
 「『海に浮かぶ人魂』っていう話、知ってるか?」
 
 「あ、知ってます! 私は見たことないんですけど、幽霊って本当にいるんですねぇ」
 
 「私も一応聞いたことはありますよ」
 
 どうやら二人とも (犯人含む) 知っているらしい。
   
 「俺は毎晩見てたんだけどな」
 
 「え!?」
 
 「あらあら、本当に?」
 
 「正体も知ってたりする」
 
 「おぉー。さすが魔法使いさんです!」
 
 それは全く関係ないけどな。
 なんていうか、シュールだな。
 
 「正体は、灯里だぞ?」
 
 「はひっ!?」
 
 いきなりの名指しで困惑してる様子。
 足があるかどうかなんてことを確認してる始末。
 
 「ま、正確に言うなら『灯里の夜光鈴』なんだがな」
 
 「あぁ、なるほど。うふふ」
 
 「はぅ~」
 
 などと話をしていると、思い出したようにアリシアが話を持ち出す。
 
 「なら今晩はびっくりするかもね」
 
 「え?」
 
 「夜光鈴の中の玉が夜光鈴だって話は聞いたわよね?」
 
 「はい」
 
 さて、なんだろうかと俺も耳を傾ける。
 
 「石は光の消失と共にどんどん小さくなっていって、最後には器からポトリと落ちてしまうの。だから、このネオ・ヴェネツィアではね、夜光鈴との最後の別れを惜しんで水辺に繰りだす風習があるの」
 
 へぇーっと感心する灯里の後ろ。海岸沿いに夜光鈴を持った人たちが集まってきている。
 
 「ほら灯里、人魂がいっぱいだぞ?」
 
 「あぅ。士郎さんがイヂワルしますよぅ!」
 
 ひしっとアリシアにくっつく灯里。
 あはは、と笑っているうちににも、人の数は増え続けている。
 
 「夜光鈴は、夜光鈴市の3日間でしか売られないの。だから、今日あたりから夜光鈴を買った街中の人がいっぱい集まってくるわよ」
 
 また、そう言ってるうちに増える人々。
 周りを見ると、俺たちと同じようにゴンドラの上にも、おそらくこのためだけに出てきた旅客船までにも人が溢れている。
 
 これは壮観だ。
 そう、本当にホタルのの群れでも見てるような。
 
 「わぁーっ、すごーい!」
 
 その一言に尽きる。
 しばらくその景色を楽しんでいると、ポツリポツリと海へ光が消えていった。
 
 「光が …… 落ちていく」
 
 「なぁ、アリシア。夜光石ってもしかしてアクアの海底で採れたりするんじゃないのか?」
 
 「そう、よく分かりましたね」
 
 その次の瞬間、アリシアの夜光鈴の玉がトロリととろける様に落ちていった。
 光がポッポッと点滅しながら沈んでいく。
 その姿は、どこか懐かしい。
 
 「だから、最後の輝きを見送りながら海へ還してあげるんです」
 
 今、海の中はルミネセンスたる蛍光によって空と同じくらいに点々と星が輝いている。
 
 「士郎さんと灯里ちゃんのも、もうすぐね」
 
 アリシアがそう言って俺たちの夜光鈴にそれぞれ視線をよこす。確かに、そろそろ落ちそうだ。
 そういえばルシフェラーゼ、というのは『生物発光』の元だったはず。それなら『落ちる』なんていうのはダメだな。
 
 「もう逝くのか」
 
 返事など期待するわけもなく呟き、もちろん返事などなくアイツは還って逝った。
 
 「淋しくなりますか?」
 
 「いや、まさか」
 
 感慨深くはあるかな、と付け足しておく。
 そういうのを淋しくなる、というのならそうなのかもしれない。
 
 「あ、アリシアさん! これ …… 」
 
 「あらあら、まぁっ」
 
 灯里の夜光鈴の糸の先。
 雫のかたちをした、結晶がくっついてる。
 
 「これって滅多に残らないっていう夜光石の結晶よ。すごいじゃない、灯里ちゃん!」 
 
 アリシアも見るのは初めてらしく、いつになく興奮気味に語っていた。
 
 「えへへーラッキーですぅ」
 
 どうやら、残った雫は灯里の雫まで呼んでしまったようだ。
 
 「あれ?」
 
 ぽろぽろと涙を流す灯里は、最後の最後までそのりゆうがわからなかったそうだ。
 それは一体、寂しさなのか、嬉しさなのか。
 本人でない俺にはわかるはずもないわけで。
 
 
 
 「はいよ、お待たせ」
 
 アリシアと藍華、それぞれにアイスティーを配る。
 
 「ありがとうございます、衛宮さん …… にしても毎日暑いですよねー」
 
 「あぁ、さすがに堪えるな」

 「灯里のヤツ …… 休憩時間だってのに何がんばってんだか」
 
 「さぁな。ちょっと無理したくなるときだってあるさ」
 
 昨日の夜、ああいうことがあったから、というワケでもないみたいだけど …… 誰にだって、何かをやりたくなる時はあるもんさ。
 
 「灯里には、灯里の考えがあるんだろうさ」
 
 「なんですかそれ …… 体を壊しちゃ意味ないじゃないですか」
 
 「はは。全くその通りだ」
 
 
 吹きぬけた風は、今はもう光ることのない風鈴を鳴らしていった。
 
 
 
 
 
                Navi:6  end


テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

まだ続くのか、この暑さはよぅ

涼しくなったと思ったのも、たった一週間。

ていうかこれ前にも書きましたっけ?
今年の夏は長引きそうだなぁ。
うん、かなりつらい。

扇風機はない、クーラーなんてもちろんない。
あるのはうちわとタオルだけ。

これであの猛暑を乗り切ったのかということが、いまだに信じられない。
よく生きてたな俺。
思い返せば頭痛くなったり、目眩したりしてた記憶があったりなかったり。

基本冬が好きなんですよ。
寒いと手がかじかむんですが、汗だくだくになるよか幾分マシですし。
一番好きなのは秋ですね。
小春日和は好きじゃないです。「あぁ、もうすぐ夏か」とか思い出すから。

かなりどうでもいいこと書きましたが……。

1000hitありがとうございます!
着実に読者様も増えているようで。
一応これから500hit毎くらいで短編出していきます。


と、ここで次回の更新予定。
おそらく週中と週末。どちらも『B.A.C.K』です。
主人公とそのデバイスのオマージュ気付いたの何人くらいだろ?


それはそれとして、ではまた会いましょう!


テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

てれれれってれー

歯車屋敷はレベルが上がった!
掲示板が追加された!


て、ことで感想掲示板なるものを作ってみました。
これまた友人が「どうにしろ掲示板ぐらい作りやがれ!」
と、いうアドバイス(?)をもらい、作った次第でございます。

なので、これからの作品の感想などはぜひこちらに書き込んでください。
草之の返事もそこにあるはず。
今までよりかは書き込みやすくなった……はず。


では、今日のところはここらへんで!!
しーゆーねくすたーいむ!!


追記
身内の方々はそっち方面の書き込みは断固ご遠慮願いたい。
あくまで、感想掲示板ですから(某執事風)


テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

B.A.C.K   Act:0-2

  
 「嬉しいお知らせがふたつほどありますが …… 皆さん、聞きますか?」
 
 おそるおそる、新人らが『はい』と答える。
 『嬉しい知らせ』というお題目の『キツイ訓練』かなにかだと思っているからかもしれない。
 もちろんそんなことはない。
 
 「ひとつ。私との模擬戦は中止です」
 
 とたん、雄叫びを上げて騒ぐ一同。
 そんなに嫌だったの?ちょっとショックだなぁ。
 
 「もうひとつ。八神はやて三佐がスカウトを兼ねてご見学します」
 
 嘘は言ってない。嘘は言ってないよ。
 そして、スカウトという言葉と、三佐という階級から部隊の引き抜きだと理解すると俄然やる気を出すみんな。
 なんていうか、現金な人が多いよね。
 
 「えーと、私との模擬戦はなくなりましたが、模擬戦自体はなくなりません。今日は第一分隊副隊長、ユークリッド・ラインハルト三尉とやってもらいます」
 
 その言葉で顔をしかめたのが数人。
 大半は「これなら希望はまだあるぜ!」「あの訓練に耐えたんだ、俺だって!」と倒す気マンマン。
 
 「あと、ご本人の希望で迎撃戦のシュミレートで行います」
 
 もちろん、ユークリッド君が攻める側。
 新人部隊が守る側。
 制限時間は30分で、勝敗決定は上空100mにある目標のスフィアを破壊すればユークリッド君の勝ち。守りきれば新人の勝ち、といういたってシンプルなもの。
 
 中隊と同等の人数で一人から目標、それもひとつを守る、というかなりのハンデ。
 新人の模擬戦、というよりユークリッド君の試練だ。間違っていってるわけでも、冗談半分で言ってるのでもない。
 これは、本当に試練といっても言い内容だ。
 
 「開戦[エンゲージ] は今から2分後。合図はないから、この2分でどれだけ迎撃準備ができるかが勝敗を分ける鍵だよ。じゃ、始め!!」
 
 目標であるスフィアを上空高くへ飛ばす。
 これが実質スタートの合図だ。
 ユークリッド君はこの演習場から大体2km離れた場所にスタンバイしている。
 
 飛行して接近するとして1、2分といったところ。
 砲撃で牽制するとして、30秒から1分弱。
 ジークフリードのチャージモードで突撃してくるとして、その時間実に10秒弱。
 
 組み合わせ次第でこちらに牽制だって、一気に破壊に追いこむ事だってできる。
 
 対して。
 そうされないための2分間を与えられた新人フォワード部隊はというと。
 
 目標であるスフィアにシールドを展開。3重くらいじゃ心もとないと思うんだけどなぁ。
 それでも、その脆弱さを補うためにスフィアの周りをフルバックのポジションで固め、センターガードがそのさらに二周りほど大きい円陣で魔力帯のような陣形を組む。そしてガードウィングは誰よりも高く、スフィアの真上10m辺りに陣取る。
 見事に2分以内に迎撃 “体勢” は完成。でも、準備は出来てないんだけど …… 気付いてるのかな、アレ。
 
 「そろそろ、2分やな」
 
 「うん。来るよ」
 
 はやてちゃんはもちろんのこと、私も真剣に見ている。
 だって、教え子たちがいったいどこまで彼に抵抗できるか …… 見てみたいじゃない。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「うんうん。いい陣形だ。フロントアタッカーがいない分、GWが前衛にならなきゃならない。誰よりも早く敵を見付けるには、そのためには誰より高くないといけない。SGも、三次元戦闘としてはいい陣形だ。FBも常に全方位からの攻撃に備える」
 
 さすが高町さん、と呟き感心する。
 たった2週間前にはぺーぺーだったのに、ここまでしっかり鍛えられてると、こちらも気が抜けない。
 
 事前に置いてあったサーチャーからの映像を閉じる。そろそろ2分か。
 
 「ふむ」
 
 突っ込んでいってもいいが、それは慢心か。蜂の巣にされるのはごめんこうむる。
 
 「 …… ふむ」
 
 とすれば、方法はひとつ。
 
 「ジーク、チャージモード」
 
 《Yes,sir! Charge mode,standby》
 
 「くく、SGはまだまだ甘いな。高町さんが言ってただろうに …… 『迎撃準備が鍵』だってな」
 
 上空を確認。
 …… 2時の方向、か。
 移動しよう。それと、スフィアも置いておかないとな。
 エンゲージは、大体20分後くらいかな?
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「遅いなぁ、昼寝でもしてんとちゃうか?」
 
 「いや、さすがにそれはないと思うよ。ジークフリードもいるわけだし」
 
 でもさすがに遅いかな。
 スタートからは23分。それらしい人影は現れない。
 教えた本人が言うのも変な話なんだけど、この陣形を真っ向勝負で打ち崩すとなるとかなりの力の差が必要になる。
 ユークリッド君のチャージモードのA.C.S.で突っ込むとしてもまず蜂の巣にされる。
 最低、SGの射撃魔法の雨で足止めされて、GWに包囲されて乱戦開始。
 また、砲撃を撃つとして、GWがその方向を見極めてFBに伝達してから突っ込んでいく。
 そうすると制空権は新人たちに移り、決定的に不利になる。
 
 「穴はあるんだけどね …… 」
 
 「私やったら、超長距離砲ぶっ放して終りやねんけどなぁ」
 
 「そう言うんじゃないってば」
 
 「わかってるって、サーチャー出してへんねんやろ? それよかこれをどう崩していくか、やね」
 
 そう、唯一の穴はそこ。
 相手の動きがわからないまま。結果、全方位に注意を払わないといけなくなる。
 とするとこの時間はトリックなのかもしれない。時間をかければそれだけ精神に負担をかける。また、同様に残り時間が少なくなるとそれだけ焦る。『早く終れ、早く終れ』と。
 
 と。
 
 「来たぞ! 八時の方向、射撃魔法だ!!」
 「GW、行くぞ!!」
 「SG迎撃準備! 逃がすなよ!!」
 
 全員が勝利に向かって動き始める。
 そうしている間に青い魔力光が迫ってくる。
 それより八時の方向? なんでそんなところから。
 それに砲撃じゃなくて射撃って …………
 
 あ。
 
 「この勝負、決まったよ。まったく、まんまと引っかかってる」
 
 「みたいやねー。ええわぁ、彼。看板に偽りなしやな!」
 
 そう、これは罠。
 スフィアを設置して、距離が距離だったからコントロールに集中。
 そして、GWが離れたと見るやいなや。食いついた魚は、あとは引き上げるだけ。
 
 「うわぁ!?」
 「なっ!!」
 「バインドッ!? どこからッ」
 
 FBがバインドの餌食になる。
 
 「突ッ貫!!」
 
 《Crush Charge》
 
 二時の方向上空から。すかさずSGが反応するも、これは …… !
 
 「ぢッ!?」
 「まぶしッ!!」
 「太陽が …… ッ」
 
 振り向いた全員が太陽の光で目潰しされる。
 光の中からシルエットがスフィアに突っ込む。
 
 二枚のシールドを突破して、最後の一枚で止まる。
 
 「くっ、硬い …… !」
 
 そりゃあ防御に定評がある私直伝のシールドだからね。ユークリッド君といえどもそう簡単には破りきれない。
 まぁ、最後の一枚に関しては私に限った話だけど。
 
 「ジーク!」
 
 《Dragon Killer》
 
 さながら杭打ち。
 クロスレンジ、それもゼロ距離における瞬間的なA.C.Sドライバーの発動と、それ自体にバリアブレイクを仕込ませた痛烈な一撃。
 一瞬の発動と、その一瞬に込める魔力によって『瞬間的なカートリッジシステム』をでっち上げる。
 そうすることで、砲撃に近い攻撃力を得られる。欠点らしい欠点といえば、ゼロ距離でかつ防御されたとき限定の隠し技だということ。
 結果、いわずもがな破壊である。
 
 「そこまでー!!」
 
 結局、新人たちは何をすることもせず惨敗。
 はやてちゃんはポカンとしている。でも、彼の二つ名くらい知ってるでしょう?
 
 「それぞれ反省点をレポートにまとめて今夜中に提出ね。自分がどのポジションなのか、しっかり把握はできてたけど、働きについてはまだダメだよ。そこらへんもしっかり書いておくこと!」
 
 最後の一週間はその辺りもしっかり復習して叩きこまないと。メニューの見直しもしないといけないかな。
 それを気付かせてくれたユークリッド君には感謝かな。
 で、そのユークリッド君はというと …………
 
 「君、ええよ! やっぱり欲しいわ!」
 
 「ちょっ、待っ!?」
 
 はやてちゃんにたかられている。
 …… そういえば、ユークリッド君のバリアジャケットって私よりも重装甲なのにフェイトちゃん並の高機動してるよね。ジークフリードの推力変換効率がかなりいいのかな? きっとそうなんだろう。だってユークリッド君普通に飛んだら私より遅かったはずだもんね。
 ちょっと前に話に聞いたけど移動系の魔法を3、4種類いれてるらしいし。
 射撃魔法は私が教えたアクセルシューターと、基本のディバインシューターのアレンジ。
 砲撃魔法はドラゴンスマッシャー、A.C.Sドラゴンキラー。
 移動魔法はブリッツアクションに、それのアレンジ。あとは聞いただけのものだけど、幻術みたいなのを組み合わせたブリッツアクション。
 防御は……あんまり見たことないなぁ。ほとんど避けてるし。
 
 「君のバリアジャケット、なんや騎士甲冑みたいやなぁ」
 
 「あ、まぁ。そうなんですけどね。ミッドチルダ式でアレンジ加えたいわば『魔導甲冑』てとこですね。ベルカ式はもう随分前に封印したんです」
 
 「…… ? でも、ベルカ式やった記録なかってんけど」
 
 「短かったからですよ、きっと。その間任務とか、つかず終いでしたから」
 
 「ふ~ん。なんで封印したん、て訊いたら答えてくれる?」
 
 「 ………… すいません。ただ、目指す場所はこっちにしかなかったんです。決してベルカ式をバカにしてるわけじゃないんですけどね」
 
 「うん。じゃあ気にせぇへんよ。で、スカウトの件やけど、入ってくれるかな?」
 
 「アナタがそれでいいなら。それに、アナタの下で働いてみたくなった。なんでこんなに物分りの度合いが違うのか …… シグナムとは違いますね。頭が柔らかいのは美徳ですね」
 
 ニコッと、とてもいい笑顔。
 ちょっと前から思ってたけど、けっこう毒舌家だよね彼。人当たりはいいのに。
 
 でもなんであんなにシグナムさんを嫌うんだろう。
 確かにこの前の任務から帰ってきてからミッドがどうだ、ベルカがなんだと軽く …… はないけど言い合ってるのを聞いている。でも彼が彼女を嫌っているのはもっと前かららしい。
 シグナムさんは厳しいし、堅いけど、とっても優しい人だ。私は嫌う理由が分からない。
 
 ベルカ式を封印したのと関係があるのかな。
 できればお話して欲しいけど、むこうから話してくれるのを待つしかないのかなぁ。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「シグナムが私に相談なんて、明日は雨かな?」
 
 「茶化すな。私だって悩みのひとつやふたつぐらいある」
 
 コトン、と紅茶が出される。
 気にするな、と言ったのだが『お客さんだから』という理由で一蹴された。
 
 「はやてから少し聞いてるよ。ユークリッド君、だっけ」
 
 「そう、ユーリについて少しな。どうも嫌われていて、このままではそのうち作戦行動にも支障がでるやもしれん」
 
 「ふふ」
 
 テスタロッサが急に笑うので睨み返す。こっちは真剣なのだ。笑うなど失礼にも程がある。
 
 「ごめんね。でも、本当はそれだけじゃないでしょ?」
 
 「ぬ …… ま、まぁ …… できればもっと頼ってほしいとか、こちらの個人的な情があるのも確かだ」
 
 私が配属されたときはもっと素直だったのに、一週間経たずにあんな風になってしまった。
 あまつさえ私をオバさん …… と。
 
 「すごい顔してるけど、なにかあったの?」
 
 「うん? そんな顔してたか」
 
 「鬼のような」
 
 「ひどいな …… 」
 
 「ごめん」
 
 「違う。私が、だ」
 
 なんと言われようと、アイツが気になってしまうんだから仕方ない。
 始めは怒っていても、すぐに冷めて悲しみに変わってしまう。
 この感情は、一体なんだ?
 
 「シグナムは優しいから」
 
 「か、関係ないだろ」
 
 「大ありだよ。心配で心配で …… 放っておけなくて、守ってあげたくて。そんな感じでしょ?」
 
 「む」
 
 当たり、なんだろう。
 自分でもよく分からないのだから、答えようもない。
 古代ベルカより続いて、こんなことは初めてなのだ。
 それもこれも、主はやてのおかげなのだろうな。戦うことが全てだった私たちヴォルケンリッターに “日常” を教え、与えてくれた。
 なによりも、返しがたい恩だ。
 そのおかげで、ユーリとどういればいいのか悩むとは、皮肉なものだ。
 
 「私とおんなじ。エリオとキャロのこと、話したよね?」
 
 「あぁ、聞いている。しかし同じとは?」
 
 「んー、保護欲っていうのは少し違うかな。うん、『母性』ってヤツかもね」
 
 「『母性』 …… この私が …… ?」
 
 「そうかもって話。それにシグナムだって女性じゃない。ありえない話じゃないよ。あと、少し調べさせてもらったよ」
 
 そう言ってモニターを展開させ、ユーリの顔写真から始まる彼の情報が羅列する。
 
 「ユークリッド・ラインハルト三尉。15歳。第1039航空部・第一分隊隊長補佐、及び副隊長。魔導士ランクはA+。デバイスはインテリジェントデバイスの『ジークフリード』。
 管理局には9歳の時に入局。の、はずなんだけどこれから4年くらいの記録がなんにもない。どこにもない。けれど13歳くらいから名前が知れ渡っていく。その4年の間にあった大きな事件と言えば私たちが当事者の『闇の書事件』くらい。あと、なのはのこともね。
 世間では『戦場の演出者』という二つ名で有名。曰く、『彼の者が指揮する部隊は損傷率、並び生存率が陸、海合わせてもトップクラスの成績を誇っている』とか。
 あと、推薦で執務官試験も受けてるみたいだけど落ちてる。それからは一回も受けてないみたいだね。でも推薦で受けたのになんで落ちたんだろう?」
 
 「わざとだな。ま、二浪してるお前にしてみれば推薦が貰えるだけ羨ましいだろうよ」
 
 「それは言わない約束だよ …… 」
 
 しかし、指揮能力が高いのは同じ戦場でいればよく分かる。素晴らしい、といってもいい。
 とすれば、なぜA+で止まってる?総合ランクならAAAも夢ではないだろう。
 
 いや、それよりなにより、入局始め4年の記録がない、というのが気になる。
 
 「テスタロッサ、嫌な予感がする。これ以上は嗅ぎ回らないほうがいい」
 
 「うん、分かってるよ。にしてもすごい人なんだね。なんでっていう感じは残るけど」
 
 「 …… 目指す場所へは、ミッド式の方が都合がいいらしい」
 
 「目指す場所 …… なにかの役職? それともそのままの意味でどこか …… ?」
 
 「わからない。聞いても答えてくれないからな」
 
 テスタロッサが申し訳なさそうにゴメンと言うのだが、お前が気にすることじゃない。
 だが、まぁなんだ。
 
 「私のこの気持ちの正体がおぼろげながら解っただけでも収穫だ。ありがとう」
 
 「私なんにもしてないけどね」
 
 「ふふ。では、そろそろ御暇しよう」
 
 立ち上がって上着を羽織る。
 玄関まで歩くと、うしろから
 
 「送るよ?」
 
 というお誘いを貰うが、そこまでしてもらうのも気が引ける。
 それに
 
 「いや、一人で帰りたい。いろいろ気持ちの整理もあるからな」
 
 「そうですか。なら、また」
 
 「あぁ、またなテスタロッサ」
 
 ハラオウン家を後にする。
 それにしても私が『母性』か。主が聞けばなんと言うだろうか。いや、あの人はわかってテスタロッサと会わせたんだろう。
 ヴィータあたりに言いうと笑い転げそうな話だ。
 
 帰ったら、付き合い方をもう少し考えようか。
 
 
 



             Act:0-2  end


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なにやら

コメントや書き込みを見てみると『背徳の炎』が一番人気らしいのか?
まぁ、歯車屋敷の中で一番敷居の低い、ていうと言い方が悪いので『皆さんが知っていそう』なのが『ネギま!』デスからね。

FateはもともとPCゲームで、アニメも深夜枠。漫画もエースでしたっけ?
ARIAは月刊ブレイド。アニメも深夜枠(でも三期までしてOVAもあったんだよ?)、そして連載も無事終了。

リリカルなのははやっぱり元はPCゲーム『とらいあんぐるハート』通称とらハのスピンオフアニメ。これだって三期までしてたんだけどな。

ギルティギアはご存知格闘ゲーム。初心者には敷居の高いゲーム性(ゲーセンで乱入されたら終わりだと思っていい)で、格ゲーをそもそもしない人にはわからない。漫画もドラマCDもあるんだけどね。

対してネギま!は週刊少年マガジンの看板と言っても過言ではない作品。アニメの一期は深夜だったけど二期の『ネギま!?』はゴールデン手前でしてたし、三期の『白き翼』もOADで出たし。知名度は段違いですかね。

てことで、偶数とか奇数とかいわずに3話ごとぐらいで『B.A.C.K』と交互に更新したいと思います。あくまでサブなんで。

なんだか愚痴っぽいですね、すみませんでした。
『背徳の炎』ほか2作品も今後ともよろしくお願いします!!

では!


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祭りです

祭りです。
地元の祭りです。
 
だんぢり祭りですよ。
んで、今日はガッコあったんですよね。
いつもより早く家出ましたよ。だっていつもと違って、通れる道が通れなくなりますからね。

嫌いじゃないんです、そうなんですよ。
決して嫌いじゃない。

ただ、草之は人がいすぎるとストレス感じるんです。
視界いっぱいにうじゃうじゃと人が動くわけですね。まだ難波とか大阪あたりの流れのある人ごみならいいんですよ。ベクトルが定まってない人ごみは進むにしても進めない。あれキツイすよ?

あと、観光客に自分らの町の名前間違われると気分悪いです。
そこらへんは岸和田っこぽいです。

明日はなんもないし、日がな一日家の前でグータラしてようかな。
親戚一同が揃う数少ないイベントですし。

え、草之は曳かないのかって?
残念ながら、青年団は学校とかで全然行けなくて抜けたんです。もう曳けません。
あれ、結構走ってて、曳いててしんどいとか感じないんです。常にランナーズハイはいってますから。だから毎年熱中症とかで運ばれる人が多いんです。あと急性アルコール中毒。
あと、はちまきとか洗わずに干してたら塩が採れます。ありえねぇ。髪の毛とか風呂入った後みたいになりますからね。常に。

今もこうしてるうちに何台か家の横通りすぎてます。
大太鼓叩くと家がゆれます。冗談じゃなくて、ホントに。あれ直径2m近いですしね。


と、住んでるところを暴露した草之でした。
それではまた今度!!


追記
次回更新は『背徳の炎』です。
ていうか掲示板作った意味あったのかな?


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背徳の炎  track:4

 
 俺、アクセル・ロウは今大変な状況下にいる。
 
 ところで、人は好きなやつにちょっかいを出したくなるらしい。かくいう俺もその一人だ。めぐみはからかうとスッゲー可愛いんだぜ?
 ゲフン。
 その考えでいって、神様も同じだとするとだ、運命の女神様ってのァ俺にお熱なんじゃねェのか?
 
 イャッホゥ!!
 
 「なぁーんていってる場合か俺よー」
 
 「?」
 
 「あ、気にしないで。続けて続けて。どうぞどうぞ」
 
 「じゃあ、次に ―――――― 」
 
 
 さて、状況整理としゃれ込もうかぃ。
 解り易いように説明口調で言ってみっか。
 
 まず、俺は時間転移をした。いつものことだ、気にしちゃいない。
 で、その後が問題で、落ちた先はソルのダンナの目の前。ダンナはロボ娘ちゃんとロリッ娘をボコッたあとみたいだったな。てっきり新たな扉開いちゃったのかと思ったぜ?
 そこから見まわすと、周りにはダンナを囲む数人の人物。べっぴんさんが一人に、野郎のなかにまた数人の可愛娘ちゃんたちが。
 でだ、その中でもダンナと正面きって立っている老人 ――東洋の神秘“仙人”ってヤツだな―― がいて。
 
 そっれから、向こうさんのお話によるとここはジャパンの麻帆良学園~とかいう学園都市らしい。
 こんなデッケェのありかよ!? とはじめは思ったさ、けどな冷静になって考えりゃ、ツェップほどじゃねェ。アレは空飛んでるうえにここよりデケェつの。
 
 しかしながらふと疑問が湧いてきた。
 時間を逆行したにしても、ジャパンにこんなデッカイ街なんてあったか?
 その疑問に答えてくれたのは案の定ダンナだった。
 
 『世界を逸脱した、つまりここは異世界だ。お前がこっちに来たのは …… 余波だな』
 
 余波ってなによ。
 何? また俺なんか変なのに巻き込まれちゃったわけ?
 勘弁してくれよ、マジで。
 
 てなことを話してたら向こうの仙人が『こんなところじゃ何だからワシんとこ来なさい』言い出して。
 
 今俺とダンナは学園長室なるところにいる。
 俺はもちろんピシッと座っている。変な事して変なコトになりたくないからな、コレ以上。
 ダンナはというと、深く腰掛けて、腕組み足組み、どっかりソファにもたれかかって俯いている。いかにもダンナらしい。
 
 「先ず、名前を聞こうかの?」
 
 「あ、アクセル・ロウでっす!」
 
 「 ………… 」
 
 「ちょっ、ダンナ …… !」
 
 ムスッとしたまま俯いている。
 さすがにだんまりはまずいんでない?
 
 「言っておくが、俺はどちらかというと被害者だ。お前らのやってることはどうゆうことか、分かってんだろうな?」
 
 「ほっ。こりゃ失礼。この学園の学園長の近衛近右衛門じゃ」
 
 「タカミチ・T・高畑だ」
 
 …… ま、ダンナの言ってることはわからんでもないね。
 それにしてもあの美人さんはどこなのよ。あのシスター。あのエキゾチックビューティーは。
 何が嬉しくて野郎だけでしゃべらにゃいかんのよ。
 
 「ソル=バッドガイ」
 

 そんなことがあったってワケだ。
 
 「じゃあ、次にどうしてここへ?」
 
 「いやもう、コッチもサッパリ。ダンナは?」
 
 「知るか」
 
 「だ、そうで」
 
 向こうの二人はむむ、と唸って考え込む。
 そりゃそうだ。あんだけ引っ掻き回したヤツらが来た理由をその本人らすらが知っていないんだから。
 
 「ところで、君たちは『魔法』を知っとるかね?」
 
 とは仙人。
 そう言えば俺ってばあんまり《魔法》のこと知らんな。
 ギアを産み出した技術で、今(俺たちの世界)の主流技術ってことぐらいか。ていうかもともとあの時代の人じゃないし俺。
 
 「ダンナのほうが知ってるんじゃないの?」
 
 「お前、俺に何を聞いてたか忘れたのか。こいつらの『魔法』と、俺らの《魔法》はニュアンスが違う」
 
 「あ、そっか」
 
 「どう言う意味じゃ?」
 
 ダンナが言うはずもなく、渋々と俺が話すことになる。
 嫌だなぁ、これ。絶対変なヤツとか思われるって。時間旅行してるだけですでにおかしいのに。
 
 「えーっと。ダンナが言うには俺たちは異世界から来たとか、なんとか」
 
 「異世界?じゃあ君たちの言う《魔法》って言うのは?」
 
 コレは俺お手上げだぜ?
 違いを説明しろって、こっちが聞きたいっつーの。
 
 「 …… チッ、しゃぁねェな」
 
 ギロリと睨まれる。
 コレ後で殴るとかなしよ?
 
 「こっちの『魔法』とやらは『技』のようだが、こちらの《魔法》は《技術》だ」
 
 ………… あー!
 なるほどねー、そうなんだ。
 うん、てことはだ、
 
 「こっちの《法術》がむこうの『魔法』ってこと?」
 
 返事はない。そう言うことでいいらしい。
 だけどなんで俺ってば睨まれてるの?怖いからヤメテ。
 
 「《法術》 …… ? なんじゃそれは」
 
 「 …… ち」
 
 あー、はいはい、そういうことね。
 こりゃ、めんどくっさいわ。ホント。
 
 「だーから、そっちの『魔法』が、こっちの《法術》ね。O.K?」
 
 「む、う」
 
 「異世界、《法術》 …… これで彼らから魔力反応がない理由が分かりましたね」
 
 どうやらむこうはこれで納得してくれたらしい。
 じゃ、今日はコレで解散ってことか。寝るところどうしよっかなー。
 
 「 ………… して。赤い服の女楽師とは何者かね?」
 
 「なっ! ダンナぁ …… 余波ってそういうことだったのかよ!?」
 
 「アクセル君、君も知っているのかね」
 
 「知ってるも何も、何回殺されかけたか! あの胸、あの足、あのくびれ!! くーっ、思い出しただけでたまらん!」
 
 「それは、どう殺されかけたのかね?」
 
 呆れ気味に仙人が問い掛けてくる。
 ごめん、そういうつもりはなかったんだ。
 でもよ、あのバディが俺の中の獣を呼んでいるんだよ!
 ごめん、自重する。

 「真面目にだよ。ミンチにされかけた」
 
 「得物は、何を?」
 
 タカミチとやらが心配そうに呟く。
 コレ聞いたらまた変な顔するぜ、まったく嫌ンなるね。
 
 「ギターだよ。Duesenberg Starplayer II っぽいの」
 
 「な、な、なん?」
 
 仙人はちんぷんかんぷんらしいが、タカミチの方は『そんなギターを武器に』と驚いている。
 
 「あと、エナメルみたいなエロい服来てるから見たらすぐ分かる。名前はイノ、だったよなダンナ?」
 
 こくりと頷く。
 
 「して、実力は?」
 
 仙人にはそれが一番重要なことらしく、ずいと体を乗り出す。
 
 「とりあえずあのガキとは互角か、それ以上」
 
 「なんと …… !?」
 
 「だが、まぁ、アイツのハンデがなしだとすれば、どうだろうな」
 
 二人が固まって青い顔をする。
 またなんか気に障るようなこと言っちゃったんじゃないの、ダンナ。
 
 「君は、すごいな …… 一体どこまで理解しているんだ?」
 
 「俺の知らないこと以外だ」
 
 「フォフォフォフォ! 面白い、まっこと面白い! さてだて、ここで相談なんじゃが、君らが転移した方法を聞かせてもらえんかの。もしかしたら、何か出来るやもしれん」
 
 ダンナはまただんまり。
 力になってくれるって言ってんだから、言っとけばいいのに。
 とことん一匹狼だことで。
 こんなのに女なんて出来るはずがない。
 
 「 …… 激しい力の衝突。それで時間は歪み、飛ぶ。おそらく、さらに激しい力の衝突が世界を逸脱する方法。不確定、不安定だが、何か“デカイ力”が補助で入るなら、より確実ではあるはずだ」
 
 で、その衝突の余波と俺の時間移動がたまたま重なって、俺はとばっちりを受けた、と。
 カッコワルイぜ、ったく。
 
 「それなら学園祭最終日が狙い目かのぅ。あと二ヶ月、待ってみるだけの価値のある“デカイ力”がその時に出現する」
 
 「なら、それまでは勝手にさせてもらうぜ? 文句はないだろう」
 
 「待ちなよダンナ。金はどうすんのさ? 食事は、寝床は、女の子はっ!?」
 
 「そうじゃのう、どうするつもりじゃ」
 
 「寝床さえあれば後はどうとでもなる。最低野宿すりゃ問題ねェ」
 
 「それは、ちょっとのぉ。ワシも君らを預かる身じゃし、君にはお金だけでも渡しておこうかの」
 
 フン、と鼻であしらって、足を組みなおす。
 また余計なこと言わなきゃいいんだけど。
 
 「何をして欲しい?」
 
 「ほっ! 君には敵いそうもないわい。いや、まいったまいった。フォフォフォフォ …… !」
 
 「食えねェ爺ィだ」
 
 なんか、俺がいないとこでドンドン話が進んじゃってるんですけど。
 これ俺もなんかさせられるみたいなノリ?
 
 「君には露払い、つまり戦闘をして欲しい。君のことじゃ、細かい事情なぞどうでもいいじゃろう? その日が来れば連絡する」
 
 「分かってんじゃねェか。金は必要になれば取りに来る。じゃあな」
 
 すっくと立ちあがっていつものように剣を片手に、もう一方の手をポケットに引っ掛けてのそのそと歩いていく。
 
 「ちょっとダンナ。流石に剣をそのまま持ちあるくってのはどうなのよ?」
 
 「ソル君!」
 
 タカミチが大きめの布を丸めて投げる。
 
 「その布でも巻いておいてくれ。頼むよ」
 
 「 …… ふん」
 
 まるでマントを羽織るように布を広げ、器用に片手で巻きつけていく。
 巻き終わってみれば、なにか大事なものでも持ってるみたいに見えなくもない。

 ダンナはそのまま無言で部屋を出て行った。
 相変わらず無愛想なことで。
 
 「さて、アクセル君。君のことじゃが、君も彼と同じような扱いでいいのかね」
 
 「へ!? と、とんでもない!! 野宿なんてまっぴらゴメンだし、食事だって腹いっぱい食べたいし、女の子とも触れ合いたい!!」
 
 「何て言うか、正直者だね、君は」
 
 コレが俺なんだからしょうがないさ。
 にしても、そうなると今度はどんなこと言って来るやら。
 
 「じゃ、君、勉強はどれくらい出来るかね?」
 
 「人並みさ。こっちとそっちじゃ違うかもしんないけど、ジャパンがあるってコトはこっちもそんなに変わんないだろうし」
 
 「ほほう。君も中々の洞察力をもっとるようじゃの」
 
 「ありがとよ」
 
 さてと、この際どんな頼み事が来ても驚かない。
 ああ言った手前、ダンナとは違うことをさせられるだろうけど、ま、どんとこいってんだ。
 
 「こっちもそんなに変わらない、とのことじゃが、君はどこ出身なんじゃ?」
 
 「イギリスのスラムさ」
 
 「ほう、イギリス? 本当に変わらんようじゃの。ならちょうどいい、君には教師をしてもらおうかの」
 
 「きょーし、って『教師』のこと!?ムリムリ!!そこまで頭良くねェよ、俺」
 
 「そうか、じゃあ残念じゃが、野宿じゃのう。金も渡せん」
 
 「んげ!? なにそれ!!」
 
 ふふん、と不敵に笑う仙人野郎。
 チクショ …… きたねぇ!
 
 「無職はよくないのー、無職はダメじゃのー」
 
 (殴ってやろうか …… このジジイッ)
 
 っていうか教師ってばスーツとかビシッと着とかにゃダメなんだろ。
 堅っ苦しくて耐えらんないよ俺。
 
 「なに、別に四六時中スーツをしっかり着なくともよい。できればそうしてほしいんじゃがの、テキトーに着崩してもらっても構わん。それに何も授業しろとは言わんよ、ある担任の補助として付いてほしいのじゃ」
 
 「だぁからって、なぁ …… 」
 
 「女子校の先生じゃぞ?」
 
 「んなにぃっ!?」
 
 いや、でも待てよ。
 教師と生徒ってのも背徳感があって中々そそるが ………… でもそれってつまり生殺し?
 
 「騙されねぇ!!」
 
 「おや、ダメかのぅ」
 
 しょんぼりと肩を落とす仙人。
 危うく自分から死地に赴くところだったぜ。
 
 「仕方ない、本音を言おうかの。実は孫を守って欲しいのじゃ。先程のソル君の話とイノとか言う女楽師の存在を知れば尚のこと」
 
 「あん? どういう …… 」
 
 待てよ? この仙人は『魔法』とやらを知っていて、使っているいわゆる『魔法使い』とか言うやつで、孫を守って欲しい。
 カエルの子はカエル、その子供もカエルなわかだから、その子も『魔法使い』?
 しかもダンナの話って―と『激しい力の~』ってやつだろ?
 で、元の世界に確実に戻ろうとするには“デカイ力”の補助が必要で、イノもそれを狙ってくる可能性が限りなく高い。
 
 ここで、お孫さんにその“デカイ力”に匹敵するだけの力があると仮定すれば?
 
 繋がった。
 
 「はぁ、そゆこと。“デッカイ力”を持ってる『魔法使い』のお嬢さんを守ってくれ、そう言うことだな?」
 
 「ご名答。じゃが、孫には『魔法』のことを伏せてある。本当に一般人なんじゃよ。わざわざこちらの世界で生きることもないと思っていての、知らさずに育てておる」
 
 「それでいいのかよ。俺なら『なんで黙ってた!』ってブチ切れるぜ、ばらした時にな」
 
 「親の心子知らず。また逆も然り。ということじゃ」
 
 そのまま机に手をついて、グッと頭を下げて
 
 「頼まれてはくれんか」
 
 ………… 。
 ま、朱に交われば赤くなる、だっけか?
 えっと、郷に入っては郷に従え?
 とにかく、そういうことなら断る理由がどこにもねぇってことだ!
 
 「義理人情には厚い男、それがアクセル・ロウさ。その頼み、受けさせてもらうぜ!」
 
 「ほ、本当か! ありがとう!! 本当に有り難いことじゃ!!」
 
 「ひとつ、断っとくけどな。俺はダンナみたく強くはねェ。イノにだってできんのは時間稼ぎ、それも命がけのな。それだけはわかっといてくれよ?」
 
 「承知した。こちらも出来うる限り尽力していこう。それについては今日はもう遅い。明日、朝の7時くらいにもう一度来てくれんか。そのときに話そう」
 
 「わかった。じゃ、今夜は俺も適当に寝るから、じゃあな!」
 
 扉をくぐって、廊下に出る。
 2ヶ月、か。
 長いようで短いな、こりゃ。
 
 
 ………… アクセル先生、か。
 お? なんかイイ感じじゃねぇ?
 
 
 
 
               track:4  end


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その優しい星で…  Navi:7


 秋。
 あれから『浮き島』の花火大会を見に行ったり、衣替えがあったり。
 何より、ようやく涼しくなってきた。
 
 それから、余談ではあるが、『浮き島』にはいろいろと驚かされた。
 空にあんな巨大なものが浮いている時点で驚きなのだが、それそのものが環境管理システムだといいうことに何より驚いた。
 人も住んでいる。生活している。なんと言う不思議だ。
 サラマンダーについても、出雲 暁という青年からいろいろ聞いた。『環境自体が崩れてはその星で生き物は生きていけない』。そんな天秤の上に置かれている役職、それが火炎之番人[サラマンダー] だ、『正義の味方だ!』と、胸を張って言いきっていた。
 なるほど、それも正義の味方の見かたのひとつなのだろう。
 
 閑話休題。
 
 今日はゴンドラの陸揚げをするらしい。ようするに船底の洗濯だ。
 手伝うのもよかったんだが、やはりこういうことは自分でやった方がいいだろう。
 
 そういうワケか、どうなのかは知らないが、
 
 「士郎さん、今日は一日お休みしてていいですよ。お休みも、体には必要なんですから」
 
 そう、アリシアが言ったのだ。
 
 と、まぁ、そういうことを急に言われてもこちらも手持ち無沙汰になるわけであって、どうしようと悩んでしまう。
 ここらへんの地理もまだそこまで詳しく知ってるわけじゃないし、探索がてら散歩しよう、と考えをまとめる。
 
 「行ってきます」
 
 「「いってらっしゃ~い」」
 
 「ぷぷいにゅ~!」
 
 二人と一匹に見送られつつ、俺は出発した。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 今日は久しぶりのお休みの日。
 そういうわけだから、本を買いに街へ出てきた。
 好きな作家の新刊がつい先日発売されたので、それが今日のメインなんだけど、まだあるだろうか。
 
 行き付けの本屋に入ると、慣れ親しんだ紙の匂いがする。決して匂い紙のような香りではなく、芳ばしい、そんな匂い。
 
 「えっと …… 」
 
 新刊の並ぶ本棚に向かってお目当ての本を探す。
 ない。
 ちょっと、泣いちゃいそうだ。
 
 どうしよう、あぁ、こんな時に限ってレジが混んでて店員さんに聞けない。
 どうしようどうしようどうしよう。
 
 「あれ、君は、確か ………… 」
 
 ビックーと体を浮かせてビックリする。
 なんの動物か忘れたけど、驚いたら死んだフリするやつみたいに固まった。
 
 「あぁ、やっぱり。アレから体の調子崩れることなかったか? えっと …… アテナ」
 
 くるりと振りかえると、白いセーターに黒のジーパンという格好でいる、肌と、髪の色が私そっくりな人 …… 衛宮さんがいた。
 私が呆けていると、ちょっと心配になったのか、苦笑いを浮かべる。
 
 「あれ、もしかして覚えてなかったりする?」
 
 「いえ、その …… 衛宮さん、ですよね」
 
 「よかったぁ」
 
 ぱっと無邪気な笑顔を浮かべる。
 普段の彼とはイメージが違うその笑顔はとっても素敵だった。
 
 「可愛い笑顔 …… 」
 
 「え?」
 
 「 …… なんでもないです」
 
 思わず呟いてしまった。
 それぐらい意外な表情だったから。
 
 「何してたの? って、本屋なんだし、やることは決まってるもんか」
 
 「はい、好きな作家さんの新刊を買いに」
 
 そうかー、と返事した後、少し考える風にして俯く。
 その隙にレジは今どうなっているだろうと確認する。あ、あとちょっとでお客がいなくなる。
 
 「アテナのオススメとか、ないかな?」
 
 「え?」
 
 振りかえってまた顔を合わせる。
 と言われても、その人の好みとかあるわけだし、一概に『オススメです』と渡したところで、その人が気に入るとは限らない。
 どうしても、というんなら、あるにはあるけど。
 
 「たとえば、アレとか。作家さんがここ最近テレビに出てましたよ」
 
 「あぁ、あれか。うん、俺も見たよ」
 
 などと新刊の本棚の一角を指してそういう。
 ちらりとレジを確認。あ、いなくなってる。
 衛宮さんには悪いけど、ちょっと席を外させてもらおうかな。
 と。
 
 「他にはないのかい?やっぱり視点を固めるんじゃなくて、いろいろ見て確かめたいんだ」
 
 「ふぇ」
 
 思わす変な声を漏らす。
 出足を挫かれたとか、そういうんじゃない、と思う。
 ただ、何てタイミングが悪いんだろう。レジにまた数人のお客が並び始める。
 
 「えっと、じゃあ ………… 」
 
 結局、そのあと自分が読んだことのある本を一通り説明し終え、疲れきったところで衛宮さんが手に取った本。
 題名は
 
 『PRIMAVERA』
 
 プリマヴェーラ、春という意味のイタリア語。
 そして、私が一番好きで、探していた作家さんのデビュー作。
 案の定、その横にお目当ての新刊が置いてあった。発売から少し日が経っていたから移動していたんだ。
 
 私が手に取ったのはその続編、全4部作の最終巻『INVERNO』。冬。
 
 「アテナの言ってた新刊ってそれだったのか。じゃあ、ネタばれとか言っちゃダメだからな」

 変なところでムキになる衛宮さん。
 でも、私ドジだし、うっかりしゃべっちゃうかもしれないし、気を付けよう。
 
 「衛宮さんは、なんでそれ、買おうとしたんですか?」
 
 「んー? そうだな、似てるから、かな」
 
 「似てるって、なにがですか?」
 
 「俺と、この主人公のヒロインとの出会い方が」
 
 あらすじが書いてある帯をみて、そうそっと呟く。
 思い出した、たしかこの人、彼女が言ってた ――――
 
 「そう、ですか」
 
 そのままレジに向かって会計を済ます。
 外に出て、街中の時計を見ると午前10時少し回ったところ。
 今から寮に帰ったらだいたい10時半ってとこかな。
 
 「ん」

 ふと、思いつく。
 別に寮に帰って読む必要はないわけで、それに今日は久々のお休みなんだし、こんなに天気もいいんだし、外でのんびり読むっていうのも気持ちいいかもしれない。
 そうと決まればいく場所はひとつだけだ。
 
 「どこ行くの?」
 
 「カフェ・フロリアンです。そとで読もうと思って」
 
 また少し考えてから、衛宮さんは遠慮がちにこう言った
 
 「俺もご一緒して、いいかな?」
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 なんていうか、そういう日もあるということだ。
 探索がてら、と言っておきながら『今更なぁ』と考え直してしまう自分の思考を心底恨んだ。せっかく決めていた行動を自分で壊したのだから。
 さてどうするか、と考え始めた矢先。たまたま本屋が目に入った。
 思い返すと自分は本を全くといっていいほど読んでいない。遠坂の家にあった魔術書はほとんど読み尽くしたのだが(けれども魔術自体が上達したわけもなく)、こういう文学ものは一切読んだことのある覚えがなかった。
 
 「ダメだなぁ、俺」
 
 そう思うと無償に読みたくなってしまうから不思議なもんだ。
 何を読みたい、なんていう目的もなく立ち寄った本屋の中で、俺はある人と再会する。
 
 アテナ・グローリィ。
 
 彼女に助言してもらいつつ、選んだ本は『PRIMAVERA』。
 主人公はなんの変哲もない少年で、ヒロインは頑固な喧嘩屋。
 出会いは突然、巻き込まれるのは必然、といった感じのラブコメディらしい。
 大きく違うが、なにか似たものを感じて手に取った。
 
 そして。
 
 
 「「 ………… 」」
 
 サン・マルコ広場に面するカフェ・フロリアン。
 その一角に腰を下ろし、カフェ・オレを注文して本を開く。
 アテナも同じような行動をして、縮こまって本を読む。その姿がどうも小動物チックで和む。
 
 「 …… なんですか?」
 
 「ん、なにが?」
 
 「いえ、こちらを向いてたみたいなんで」
 
 「あぁ、ゴメン。なんでもないんだ」
 
 そういって俺たちはまた読書に戻る。
 何時の間にか置かれていたカフェ・オレは少し冷めていて、中途半端に温かった。
 
 まだ昼前ということもあって広場は賑やかで、でもそれが耳障りになることはない。
 そんな空間の時間は知らずゆっくりゆっくり流れていく。
 
 と、大鐘楼の鐘がひとつだけ鳴らされる。
 広場に広がって、次いでネオ・ヴェネツィアに響き渡る鐘の音に、少々顔を曇らせる。
 
 「あれ、もう1時か」
 
 「時間忘れてましたね、すっかり」
 
 いつ12時の鐘が鳴ったのだろう。
 それはそれとして、時間を思い出すと急に空腹感に襲われる。
 
 「何か食べる?」
 
 アテナは一度だけ頷き返すとそのまま本に没頭する。
 何がいいかだけでも聞きたかったんだけど、この際なんでもいいだろう。
 サンドイッチを注文して、俺も本に視線を戻す。
 しばらくして、注文どうりサンドイッチがテーブルに置かれる。
 
 「じゃ、食べようか」
 
 「いただきます」
 
 俺もいただきますと呟いて、サンドイッチに手をつけていく。
 さすが元祖ファストフード。サンドイッチ伯爵は偉大だ。お手軽に腹を満たしてかかった時間は10分もあるかないか。
 そしてまた、俺たちは誰に邪魔されることもなく本に集中する。
 
 どれくらい時間がたっただろうと身近な時計を見てみると、その針は4時少し前を指していた。
 こんなにひとつのコトに集中するのなんて、魔術以来なかったことだ。それも、この世界の空気が俺にそうさせるのかもしれない。

 聖杯戦争が終り、高校を卒業と同時に遠坂とロンドンへ渡った。そこで俺は確実に自分の魔術に磨きをかけ、着実に『正義に味方』となるための力を蓄えていった。そして、とうとう我慢しきれず、世界を旅し始めた。戦場から戦場へ。殺し合いから殺し合いへ。全ての救える人を、救えるだろう人を、救えないだろう人も、関係なく俺は駆け巡った。ただがむしゃらに、理想に近付くために。あの少女に笑われないように。
 そして、聖杯戦争から10年。
 俺はこの世界へ辿り着く。争いのない、『正義の味方』が必要のないこの世界へ。
 初めは落ちつかない一心だった。調べてみると、地球暦という単語がでてきた。数字の羅列から、おそらく西暦のことだろうと結論付け、その数に驚いた。
 地球暦2309年。
 俺がいた時代から、約300年もの未来。
 遠坂、お前はふたつじゃなくて、みっつの魔法を同時行使したことになる。まったく、きっと遠坂の家系で最強のうっかりなんだろうな。
 それはそれとして、ここは『アクア』旧名・火星。
 そして『マンホーム』 …… 人間の家という名前に変わってしまった旧名・地球。
 そこにはもはや争いなどなく、全てが管理、管制された人類の理想郷と化していた。
 ただ、地球暦2100年くらいまで管理システムが完全ではなかったため、地球温暖化などの影響で随分地形は変わってしまっていた。日本なんて俺の知っている面積の10分の1も無くなっていた。
 
 俺は、どうしようもなく『独りぼっち』だったのだ。
 
 「 …… そろそろ、帰らないとな」
 
 「 ………… 」
 
 アテナは無言で本を閉じ、つ、と視線をこちらに向けた。
 
 「聞きたいことがあるんです」
 
 「また急だなぁ」
 
 「 ………… 『アーサー王伝説』って、面白いですか?」
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「 ………… 『アーサー王伝説』って、面白いですか?」
 
 衛宮さん顔色が変わった。
 一瞬だったけど、確かに。
 
 「読んだことは無いけど、聞いたことはあるし …… “視た”こともある」
 
 最後の“ミタ”というのはどういう意味だろうか。
 『彼女』の言った通りなら、そのままの意味なんだろう。
 
 「付いて来てもらっても、いいですか?」
 
 「どこに?」
 
 「『彼女』に会いにです」
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 半信半疑なんてもんじゃない。
 『彼女』 …… 誰のことだ。
 もしかして、そう思っている。
 ありえない、そう感じている。
 
 あぁもう、頭がぐちゃぐちゃだ。
 こんなことならいっそ考えない方がいいのかもしれない。
 
 「着きました」
 
 そう言って、歩を止める。
 目の前にある建物は、創業してまだ浅いという『オレンジぷらねっと』。その宿舎だ。
 たしか、老舗である『姫屋』と肩を並べるまでに成長しているとか。経営陣が優秀なのか、現場が優秀なのか、知ったことではないが。
 
 「俺が入ってもいいのか?」
 
 「私のお客様ですから」
 
 そう言って中に入っていく。
 お客、といっても向けられる視線が痛い。
 
 歩くこと1、2分といったところか、おそらく自室の前にきて、ノックする。
 
 「アリスちゃん、いる?」
 
 『はい、開いてますよ』
 
 「 …… ちょっとだけ、待っててください」
 
 どれくらい待っただろうか。
 歩くなら、その歩数で時間がわからなくもないのだが、立っているだけだとどうも落ち着かない。

 と、かちゃんという扉の開く音。
 中から出てきたのはアテナではなく、中学生くらいの見た目の少女。多分、アリスと呼ばれた少女なのだろう。
 
 彼女は俺を見た瞬間石のように固まって、じとっとした沈黙が続く。
 その空気に耐えられなくなってこっちから話しかけてみる。
 
 「自己紹介とか、いるかな?」
 
 「でっかい必要ありません」
 
 ズバッと切って捨てられた。
 取り付く島も無い感じだ。まぁ、いいなら、いいけど。
 
 「アリスちゃん、案内、して欲しいの」
 
 「どうして私がそこまでしなきゃならないんですか。でっかい面倒です。場所を言いますから、勝手に行ってください」
 
 「えっと …… 」
 
 「屋上ですから」
 
 あたふたとしているアテナにそれだけを言い残して部屋へ戻っていった。
 難しい年頃ってヤツなのかもな。仕方ない。
 パタン、と扉が閉まって俺とアテナが取り残される。
 
 「行きましょう」
 
 アテナは仕方なく屋上への道案内を始めた。
 
 ふと考える。
 このまま俺は着いていっていいのか、と。
 もし、『彼女』が“彼女”なら、俺のことを話しているというのはまぁわかる。だけど、なんでアテナは俺を『彼女』とやらに会わそうとする?会う必要があるのか?会わなければならない義務があるのか?
 ない。
 そんなものは決してない。
 じゃあなんで今俺はこの足を動かして、一歩一歩歩いている?
 義務とか、必要性とか、そう言うのをなしに、俺は違ってもいい。『彼女』に会ってみたいと、そう思っているからじゃないのか?
 それも違う。わからない、なにがどう違うのかがわからないが、とにかくそういうんじゃない。
 それとも、もっと単純なことなのかもしれない。例えば『そこにいることを最初から知っているから会いに行く』。つまり、昨日にまた明日、と言った挨拶を交わした友人に今日会うような、そんな感じ。
 会うのが当たり前で、会うのが日常。
 俺が俺であるから、彼女も彼女足り得てまた歩み寄る。
 
 「 ………… ここです」
 
 いつのまにか、屋上への扉の前に到着していたようだ。
 
 「会わせたい人は、この先です。あなたを待っている人が、ここにいる」
 
 アテナはそのまま通路の脇の方によって俺の道を空けてくれる。
 
 「 …… どうぞ」
 
 ドアノブに手を添える。
 ここに来てもまだ迷っている自分がいじらしい。
 それは『彼女』という存在がそうさせるのか、それともただ自分が認めたくないだけなのか。
 
 このドアは開けちゃいけない気がする。
 もし『彼女』がいたとして、俺はどうなる?
 わからない。開けてしまうのがとてつもなく怖い。
 
 「どうしたんですか?」
 
 「怖いんだ」
 
 「え?」
 
 「どうしてか、それはわからないけど …… すごく怖いんだ」
 
 声に出して言ってしまうと、現実味が増して余計ダメになる。
 
 「衛宮さん …… 」

 「はは、情けないよな。これは多分、どこかでまだ会えないって思ってるんだと思う」
 
 「どうして?」
 
 「さぁ。だから怖い」
 
 自分のなにかが自分を否定してる。
 会えば、何か積み上げてきたものが崩れてしまいそうで。
 
 「会ってみれば、いいんですよ」
 
 「何を …… 」
 
 「会って、話して、それが正解かどうかなんてやってみるまでわからないんですもの」
 
 「 ………… 」
 
 「会ってみてください。貴方はそのためにここにいるんですから」
 
 「 ………… あぁ、そうだな。そうだよ」
 
 自分がここにまで来て、何をしている ―― そう聞かれたなら、そう答える。
 逃げるためにここまで来たのか? 否。
 誤魔化すためにここまで来たのか? 否。
 恐れるため? 弱く見せるため? 慰めてもらうため? 否定するため?
 否、否、否。
 断じて否!
 それは決して選択するものではない。
 
 答えがあるなら、その答えに至る道など、万とある。

 『…… では問おう、衛宮士郎』
 
 旅立つ直前、あの人が言ったこと。
 
 『お前は、どうした?』
 
 「俺は行動する。決まってる運命が変わらないなら、決まってない運命から変えてやる」
 
 呟くように言って、ドアノブを握り直す。
 後悔はないように、この場で一番したいことを選択する。
 会いたい ………… !
 『彼女』に会いたい!
 
 今だけ、この扉を開くその瞬間だけでいい。
 俺がこの世界に来て初めての、世界への抵抗。その傷を残せるなら、俺は迷わない。
 
 「 …… 行くか」
 
 開ける。
 キ、キ、キ、と軋んでゆっくり開いていくドア。
 
 開ききったドアから最初に目に入ったのは、燃えるような茜空。
 
 
 ―――――― そして





                Navi:7  end
 
 
 

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うわぁ、散々だなコレ。

ども! 草之です。

てなわけで、今日文化祭だったんです。はい。
草之が所属するバンドも体育館のステージで演奏しました。

プロフィールにある通り、草之はドラムです。ついでに言えば、なんちゃってボーカルでした。

やったのは
『DARKER THAN BLACK 黒の契約者』後半OP
アンティック-珈琲店-で
『覚醒ヒロイズム~THE HERO WITHOUT A ”NAME”』


 
『ROCKMAN X 8』OP
Janne Da Arcで
『WILD FANG』



ご存知(?)
SEX MACHINEGUNSで
『みかんのうた』(笑)


このみっつのうち『覚ヒロ』と『WF』は自分がドラム。『みかん』はなんちゃってボーカル。

そして演奏が始まった!
『覚ヒロ』は上手くいった。ベスト。
『WF』がね、最後のサビでね、スポーンてね、スティックが飛んでっちゃった。予備とかね、前日の練習で折れてたんですよね。え?二組しかスティックないのかって?ビンボーですから。
そして問題の『みかん』。スティックと一緒に記憶(歌詞)も飛んでっちゃった。上手いこと言ったつもりか。

必死に『みかん みかん みかん!』て連呼ですよ。
ほかほとんど飛んだ。一番前のおばちゃんが『がんばれ!』て言ってくれた。
今だから言うけど、がんばったところで飛んでった歌詞は戻ってこない。でも、ありがとう、嬉しかったよ。

でもさ、楽しかったしいいじゃないか。
ちなみにこれについてなにか感想及び励ましなどがあったりしたら『歯車の気持ち』までよろしくお願いします。といいながら別に気にせず当日のブログでカキコしてる俺ってば何なんだ?

では、以上。草之でした。


テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

なにこれ。本物?

リンク先の『駄文同盟.com』様。
検索エンジンなんですよね。

何気なく見たランキング。つい2日前くらい。
今週のアクセスランキングですよ。


18位『歯車屋敷』


え、コレなんてドッキリ?
ホントかどうかを知りたい人は先週のアクセスランキングで見てみてください。
草之自身、信じられません。
だというのにオススメサイトへの道のりは長い。HOPEでも良いからつけてくれたら嬉しいなんていうのは自惚れ。

あ、今夜ぐらいに『背徳の炎』更新しまする。
アクセル多め?お楽しみに!!

では、草之でした!


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大変申し訳ない

本当に、申し訳ない。
今日、というか明日の夜ぐらいまで更新できそうにないです。

推敲をしてどうにも納得が、というか内容にまとまりがないというか。

とにかく、いい作品をお送りする為の準備期間だと思って気長に一日だけ待って貰えないでしょうか?
本当に申し訳ないです。

今晩更新するなんて言っておきながら、はい。

では、また明日。



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背徳の炎  track:5


 朝。7時10分前。
 俺、アクセル・ロウは迷っていた。
 
 「ここどこだ ――― っ!!」
 
 やばいぞ。とてつもなくヤバイ。
 何とか正門らしきところまで戻って来れたはいい。
 
 「どーやって行ったっけ!?」
 
 朝も早くから正門 ――しかも女子中らしいじゃん―― の前で挙動不審でいてキョロキョロあたりを見回す男ってスゴくやばい絵だ。
 さっきから真面目に部活の朝練に精を出す子たちには冷たい、というか完全に怪しまれ、道を聞くに聞けない。
 
 「ってゆーか広すぎなんだよこの学校!!」
 
 どうなってんだ!? と怒りを地面にぶつけるも、いや待てと冷静になろうとする。
 こういう時は焦ったら負けなんだよ、落ち着け。
 と。
 
 「あの、どうかしましたか?」
 
 「おう、坊主。この際君でもいいから教えてくれ。学園長室ってどこにあるの?」
 
 声を掛けられ、振りむいたそこにはメッシュになった髪の少年がいた。
 ちょこん、と『そんな眼鏡で大丈夫なの?』というくらいちっこい眼鏡をかけている、ローティーンだ。
 
 「学園長室ですか。なら、一緒に行きましょう。僕もそこに行くところなんです」
 
 スーツをビシッとキメて着た少年は、何かその年齢には似つかわしくない険しい表情をしてそう言った。
 そんな歳でそんな顔してちゃ老化は早いよ?
 
 ま、何はともあれ、間に合いそうだ。
 
 
 おお、そうそうこんな感じの道だった、と抜けたことを考えながら着いて行くこと5分あるかないか。
 
 「ここです」
 
 「おぅ、サンキュ。俺先に入るよ?」
 
 「え?あ、どうぞ」
 
 ノックして入室。正面にはあの仙人。
 
 「よ。おはようさん、ジィさん」
 
 「おお、アクセル君。よぅ来てくれた」
 
 「あ、あとなんか坊主も来てんぜ。ほら、入んな」
 
 「失礼します」
 
 坊主は険しかった表情をより険しくして仙人を睨んでいる。
 …… あっれぇ、何この重い空気。お呼びでない?
 仙人まで黙りこくっちゃって、一体どうしたってのよ。
 
 「学園長、エヴァさんはどうなったんですか?」
 
 「無事じゃ。それに目立った外傷もない。内臓にもダメージはなかった。今は自宅で寝とるよ」
 
 「茶々丸さんは?」
 
 「そちらはなんとも言えんのじゃ。メモリーは無事だったらしいのじゃが、フレーム …… つまり体が大破しとってのぅ。イチから造り直すしかないんじゃ」
 
 「そんな …… ッ」
 
 「まぁ、最後まで聞きなさい。しかしじゃ、あと一週間もあれば前々から造っておったスペアが完成するとのことでの、基本的にはなんの問題もない。大丈夫じゃ」
 
 それを聞いた坊主は『はああぁぁっ』と特大のため息を、本当にもうこれでもかってくらい搾り出すように吐いた。
 よっぽど安心したらしい。腰も少し抜けてしまった感じでふらつく。
 
 「なんかよくわかんねェけど、よかったな坊主」
 
 「はい!」
 
 やっと子供らしい顔になりやがった。こっちもそれでなぜか安心する。
 いやでも、うん、よかったよかった。
 
 「じゃ、次はアクセル君じゃの」
 
 「ん?おぉ、そうだったな」
 
 「その子じゃ」
 
 「は?」
 
 急に指差された坊主も頭に『?』をつけてこちらを向く。
 いや、そこはあの仙人を見ろ。
 
 「ネギ君。彼の名前はアクセル・ロウ。今週末からここ麻帆良学園女子中等部3‐Aの副担任をしてもらうことになった。タカミチ君はいろいろと他の仕事が押してるようなのでな、補助として入ってもらうことになったんじゃ。何かあれば彼に相談しなさい」
 
 「坊主、アクセル・ロウだ、よろしく …… って、何?もしかしなくても担任ってコイツがしてんの?」
 
 ジャパンじゃなくても、こんな頭良いっても自分よりガキに教えられるってさぁ、シャクじゃね?
 いや、もう何も言うまい。成り立ってんならそれでいい。ココのデタラメさは学園の広さでよくわかってっから。
 
 「ネギ・スプリングフィールドです。アクセル先生、週末から、よろしくお願いします」
 
 「彼もイギリス人じゃ、気楽に頼るとよいぞぃ」
 
 「へぇ、そうなんですか! 僕、ウェールズ出身なんですよ。アクセル先生は?」
 
 「名もないスラムさ」
 
 「あ ………… スイマセン」
 
 急にしょぼーんと肩を落とす坊主。ネギっつったな。
 
 「別に気にすんなよネギ! どこ出身だろうと、どんな肌の色だろうと、例え人でなくたって俺は俺。アクセル・ロウは生きている! なぁんて素晴らしい!!」
 
 なんかちょっと元気付けようとしてハイテンションで言ってみたりしたんだけど、なんか電波受信してる人みたいになっちゃったかなぁ。
 ちょっち反省。
 
 「す、すごいです! その思想、とっても素晴らしいと思います!! 感動しました!!」
 
 「お、おぅ! どんな時でも楽しく、前を見て進む、人生なるようになったもん勝ちだぜ!」
 
 こういう言葉がある。
 結果オーライ。
 
 「意気投合したところで、ネギ君。放課後彼を案内してやってくれんか」
 
 「はい、わかりました! では、僕はこれで失礼させてもらいます」
 
 「うむ。授業がんばってな」
 
 もう一度元気に返事をして、学園長室から退室していくネギを見送ってから改めて仙人を睨む。
 
 「面倒なことになりそうな匂いがプンプンする」
 
 「そうかの~? ワシはわくわくしてきたぞぃ」
 
 「ジィさんが楽しんでどうすんのさ」
 
 フォフォフォ~と無責任に笑い飛ばし、こっちはこっちでぶっ飛ばしてやろうかと考えて止めた。
 わざわざこんな用事だけで呼んだわけもないだろうしな。
 
 「ふむ。ソル君のほうは、自分で勝手に調べそうなもんじゃから言わんかったが、君には話しておこうと思っての。君は気付いておるか?」
 
 「何が?」
 
 漠然と言われても気付くことが多くてどれのことだか。はっきり言ってもらいたいね。
 
 「君はあまり歓迎されていない、ということじゃ」
 
 「はいはい、そのコトね。十分わかってますとも、ああ、もう嫌ってくらいにね」
 
 「と、言ってもソル君ほどではない。彼はこの学園で一、ニを争う実力者をあっさり倒しとるからの」
 
 「あの、ロボ娘ちゃん?」
 
 首を横に振る仙人。
 するってぇと …… 残るのは、
 
 「え、あのロリッ娘!?」
 
 「見た目だけじゃよ。齢600を越える真祖の吸血鬼じゃ、油断してるときゅっとくびり殺されるぞぃ?」
 
 んな、笑って言うことかよ。
 からかったりすんのちょっと考えよう。
 
 「話を戻してくれよ、脱線してるぜ」
 
 「おぉ、すまんな。とにかく、君らは今、全く信用されてないということじゃ。信用がない、ということは『教師』という職業上最も必要なファクターが抜け落ちている、ということじゃ。わかるの?」
 
 「だろうねぇ。ま、だからこその『仕事』だろ?」
 
 「ご名答。もうしばらく待ってくれんか、紹介したい人がいるでのぅ」
 
 教師、ねぇ。一生にあるかないかの体験だね、職員免許もなしにガッコのセンセするなんざよ。
 それはともかく、信用はいつだって欲しい。なんたって潤いがなくなるってんだから、結果的に。そいつは困る。
 
 コッチコッチという時計が秒針を刻む音だけが部屋に響いている。
 そろそろ生徒も登校し初める時間なのか、そとには都会並の喧騒が聞こえてきた。
 さすが、伊達に広いわけじゃないってか?
 
 ―――――― コン、コン
 
 『失礼します』『し、失礼します!』
 
 お。女の子の声だ。もちろん入ってきたのも正真正銘女の子。ってあらぁら?
 
 この子ら、昨日一緒にいたよな?
 あのよくわからん包囲網のなかにいたよな?
 
 ということで、あの時はごたごたでよく見れなかったし、改めて確認しとこっかなぁ、と。
 ちっこい方の子は、確かコッチを一番睨んでた子と同じ制服を着ていて、まだまだ発展途上。将来に期待。
 で、いろいろとおっきい方の子は、シスター服みたいなワンピースの制服を着ている。金髪。
 
 「紹介しようかの。こちらが、高音・D・グッドマン …… 高音君と」
 
 おっきい方がタカネちゃんね。
 
 「佐倉愛衣 …… 愛衣君じゃ」
 
 ちっこい方がメイちゃん、と。
 OK、覚えたぜ。
 
 「高音君、愛衣君。こちら ――― 」
 「アクセル・ロウってんだ。よろしく」
 
 言われる前に言う。コレ基本ね。
 何故かっていうのは、男なら自分から行くのが普通だから。
 
 さておいて、立ちあがってキメる。
 握手を女性にする時は、向こうが手を差し出した時にすればいい。覚えとけ。
 ジャパンはどうだか知らんけど。
 ま、これで昨日のイメージを拭えたとは思えないが、少なくともマイナスではないはず。ないと思いたい。
 
 「 ………… ふん」
 
 「お、お姉さまっ」
 
 ないと思いたいと思ったばっかりなのに。
 どうやらミス・タカネは心底俺を信用してないらしい。軽く鼻であしらわれ、スタスタと凛とした様子を崩さず俺の横を通りぬけていく。
 
 対して、メイちゃんの方は握手はしないものの、ペコリと頭を下げてからタカネちゃんを追いかけるようについていく。
 いい娘だなぁ。将来絶対いい女になるな。
 
 「学園長。呼び出しに応じてみれば何ですか、コレは。昨日の男の仲間と会わせて、一体何をさせようというのです。答えようによっては、この件、断らせて頂きますが?」
 
 「フォフォフォ。そう気を立てるでない、高音君」
 
 「しかし!」
 
 どうやらトンだ嫌われようらしい。予想してたとはいえ、実際に目の当たりにするとキツイもんがあるな。あ、目から汗が。
 
 「先ずは話を聞いてみるべきではないかね、高音君。決めつけるのは、それからでいい」
 
 「う」
 
 仙人こえぇぇぇ。
 何あの威圧感。ダンナに煩わしそうに睨まれた時と同じくらい凄かった。そりゃ黙るわ。

 「では話すとしようかの。今日の警備時、彼を君たちの班に入れてもらいたいのじゃ。彼の無害を証明するために」
 
 「なぜ私たちに!? 適任の先生方が他にもいるでしょう!」
 
 「君らが一番都合がいいからじゃよ」
 
 ちらりとこちらを向く高音ちゃん。一応手を振っておく。案の定ガン無視。
 
 「なるほど …… ふん、まぁいいでしょう。この仕事、お引き受けします」
 
 「ありがとう、高音君。期待しとるよ」
 
 「何にですか? ばかばかしい」
 
 くつくつと笑うタカネちゃんは、なんと言うか、女の子って感じじゃなかった。
 ぞっとするような、妖艶な、上品なエロス。つまり、達観した女性って感じだ。わかる? この魅力。正直たまらん。
 
 タカネちゃんはすれ違いざま、ただ一言。
 
 「足だけは、引っ張らないように。では、また今夜」
 
 足音を高々と響かせ、その場を去っていった。
 
 
 *  *  *  *  * 
 
 
 夕暮れ時。
 “デカイ力”がなんなのか …… それを少しでも把握しようと一番クサイ巨樹の前の広場まで出てきた。
 そこに、うんざりするほど面倒くさそうなヤツらがいた。
 
 「なんの真似だ?」
 
 長い日本刀を俺の喉に突きつけて、女は威圧するようにこちらを睨む。
 その後ろにはサングラスをかけたヒゲ面の野郎。見た感じ、『魔法使い』ってヤツか。
 
 「今ココには強力な人払いの結界が張ってある。防音、防光の結界もだ。わかるか」
 
 つまるトコ、やる気マンマンってコトだろうがメンドくせェ。
 首をゴキリと鳴らして、前を向き直す。まだしっかり睨んでやがる。
 
 「適当に流す。死なねェ程度にかかって来い」
 
 瞬間、女の顔が怒りで潰れる。
 瞳は黒く輝き、髪はその色の如く炎のように揺らめいた。
 
 「見縊るなッ!!」
 
 すでにヤツのテリトリー。一撃目を避けるという選択肢は存在しない。
 だから防御する。斬られてやるほど優しい性格じゃないのは自分でよくわかってるつもりだ。
 
 「まだッ!」
 
 続けて斬り返し。
 その長刀からは想像の出来ない連戟。
 防御しながらも後退して抜ける隙を窺う。あることはある。だがその全て、後ろのヒゲ面が睨みをきかせている。迂闊に抜けようものならば、『魔法』とやらが飛んでくるだろう。
 
 まったく、めんどくせェ。
 
 「私はお前を信用していない。この学園に来た理由がなんであろうと、百害あって一利なしッ!!」
 
 刀の剣閃同様、その言葉ですら鋭く突き刺そうとしてくる。
 ま、そう簡単に信用されるようじゃ底が知れるというものだ。逆に安心した。こいつらは『闘える』。
 
 「どうした、口だけかッ!? 反撃のひとつでもしてみせろ!!」
 
 「ごちゃごちゃうるせェ!」
 
 抜けずに斬り返せる隙間を見つける。
 女が叫んだ際に生まれたわずかなズレ。攻勢時に安っぽい挑発をするからこうなる。
 
 右拳を柄を握る腕の手首目掛けて一閃する。見事に命中。
 
 「あづッ!?」
 
 刀の握りが一瞬甘くなり、またそこをつま先で払うように蹴り上げる。それでも刀は離さないのは流石と言っておこう。
 そこから勢いを殺し、空中で停止。そのまま足を振り下ろし、肩を狙う。もちろん刀を持つ方の。
 
 「あッ …… か!」
 
 ゴキリ、という痛々しい音。
 流石にマズイと思ったのか、大きくバックステップして距離をとる。
 
 「 ………… く、この …… っ!」
 
 もう一度ゴクンという音。
 外れた肩を戻したのだろう。諦めれば良いものを、めんどくせェ。
 そも、剣での打ち合いになればこちらの苦戦は必死。剣の練度で言えば、向こうが圧倒的に上なのは確か。ならばどこでフォローすべきか。
 
 「しゃぁねェな」
 
 封炎剣に巻いていた布を解く。先程まで防御に使っていたから所々ぼろぼろになっている。
 諦めないなら、徹底的に潰せばいい。敵わないと解って喧嘩するほどバカでもないだろう。
 
 「ま、がんばんな」
 
 「舐めてッ!」
 
 一瞬の空白の後、女は目の前に移動する。振り始めた刀の軌道に会わせて封炎剣を壁にして地面に突き刺す。
 
 「な …… ッ!?」
 
 「誰が打ち合うって言った?」
 
 胸倉を掴んで持ち上げる。
 そのまま腕の力だけで背負い投げのように地面に叩きつけ、その勢いを殺しきれずバウンドした体に蹴りを叩きつける。
 
 「か …… っひ!?」
 
 肺から空気が抜ける音と、鳴き声とが合わさった声を出しながら吹き飛んでいく。
 
 「次、お前か」
 
 ヒゲ面の野郎を睨みつける。
 流石にここまで見せて闘うなんていう選択をするなら、さっきの評価は取り消さなければならない。
 
 「 ………… いいのか、こっちを向いていて」
 
 「あん?」
 
 「 ――――――――――― 斬・空・閃ッ!!」
 
 「!?」
 
 横っ飛びをしてその場から離脱。
 瞬間、今までいた場所のタイルが弾け飛び、切り裂かれた。
 飛ぶ斬撃 …… いや“気”というヤツを飛ばしたのか?
 
 「なに、勝った気になってるんですか?」
 
 「ち」
 
 砂埃にまみれ、服が所々地面との摩擦で破けているところを除けば、眼には光が輝き、全身には“気”の奔流を感じ取れる。
 まだまだだってことかよ、本当にめんどくせェ。
 
 「ここからですよ、油断はしないことです。今まで通りでいいと言うなら、私はそれで構いません。勝つのは私ですからね!」
 
 「うるせェな。口を伴わなけりゃ威勢を保ってらんねェのか、テメェらはよ」
 
 「コレは見栄切り、というものですよ。神鳴流の技の数々、御見せ致しましょう!!」
 
 ああクソ。
 なんだってこんなことになってやがる。
 アイツはアイツで、楽しんでる節までありやがる。
 
 封炎剣を引き抜き、仕方なく体を向き直す。
 


 「言っただろうが。適当に流す、死なねェ程度にかかって来いってな」



               track:5  end


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なんて言うか、幸せ?

『ぼかぁ、幸せものだなぁ』

と言ってみたり。
感想掲示板にも常連さまができつつあり、時々ながらも一日の来訪者(?)が50人を超えるようになってきたんです。

もっといろんな人に自分の作品を見てもらいたいと思うし、今の連載のひとつが終ったらオリジナルも載せたいと思ってるし、まだまだやりたいことはたくさんあります。

中でも一番やりたいのは、イラストを載せたかったり。
草之は元々、というより本職(という名の趣味)が絵のほうなんで。
友人には一応プロフ通り「お前が描くとなんかムカツク」みたいなことを言われる反面、「お前大学なんで芸大ちゃうねん、おかしいやろ」とも言われたり。ペンタブがないんですよ。流石にペイントにマウスで描いた絵なんて載せられるわけないし。

いつか載せられるといいなぁ、と思いつつ、今日はこの辺で。
以上、草之でした!

追記
『B.A.C.K』だけが未だに感想を貰えない作品。
指摘でもイイので出来れば感想がほしいところ。人気は一番ないかな。てことで、こちらの作品もよろしくお願いします!!



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B.A.C.K   Act:0-3

 「それでは、以上で教導を終ります」
 
 ぐるりと全員を見直す。
 うん、みんないい顔。
 
 「おつかれさまでした」
 
 『『『『『おつかれさまでしたッ!!』』』』』
 
 一ヶ月に渡るこの隊での教導も終わりと思うと、名残惜しい。
 みんなもそれぞれがそうらしく、つらかったけど、楽しい教導でしたと言ってくれた。そう言われると教導官名利に尽きるというものだ。
 そんなみんなに囲まれ、別れを惜しむのもこのあたりまで。
 
 「みんなはまだまだこれからだからね。焦らずじっくり、がんばって。私も応援してるよ!」
 
 『『『『『ありがとうございましたッ!!』』』』』
 
 ゾロゾロと解散していく。
 その中で近付いてくる影が一人。
 
 「高町教導官 …… ありがとうございました」
 
 「シグナム三尉、おつかれさまです」
 
 「よければ食事をご一緒にどうです?」
 
 断るのも悪いし、それに断る理由がないし。
 それに、いろいろと話しておきたいこともあるし。
 
 「あぁ、いいですね」
 
 自然と返事は出ていた。
 シグナムさんも頷いて歩き出す。
 
 
 部隊の上官も一緒になって並んで歩いていく。
 どうやら教導の具合が気になるらしい。
 
 「本隊の魔導士たちはどうでしたか?」
 
 「いいですね。よく鍛えられてます。仮想敵もやりがいがありました」
 
 そう言うと、上官たちには聞こえないようにシグナムさんが吹いたのがわかった。どういう意味ですか。
 
 「では、我々はこれで。またよろしくお願いします、教導官」
 
 「はいっ」
 
 そうとだけ言って去っていく。
 向こうも向こうで、この後一杯するようで盛り上がっている。
 今頃みんなもそれぞれで楽しんでるんだろうなぁ。
 てことで、私もそろそろゆっくりしよう。
 
 「おつかれさまです、シグナムさん」
 
 さっきとは違う意味で使う。
 
 「あぁ、すまなかったな。気を張らせてしまった」
 
 二人で笑いあう。
 どうもこう言うのはいつまで経っても慣れそうにない。やっぱり、リラックスは大事だ。
 
 「食事は私の同僚たちとだけだ。気楽にしてくれ」
 
 「はい」
 
 わかってますよ、と返事をする。
 この7年でシグナムさんは随分柔らかくなったとつくづく思う。
 元々は敵同士、最後には協力っていうのもあったんだろうけど、『闇の書事件』が終ってから私たちと仲良くなるのは早かった。
 それでも入局当初は『寄らば斬る』といった雰囲気で、こうやって身内以外と仲良くなるまでには長い時間がかかった。
 まぁ、あの事件のことでちくちくと言われてたんだから、しょうがないと言えば、しょうがないんだけどね。
 
 そうしてる内、前に二人組みの人影が見え始めた。
 シグナムさんは一歩出て、
 
 「アルトは初対面のはずだが、ヴァイスのほうは ――― 」
 
 言い終わる前に、ヴァイスと呼ばれた男性のほうがずいっと前に出て敬礼する。あれ、確かこの人は ……
 
 「おつかれさまです!ヴァイス・グランセニック陸曹でありますッ」
 
 続けて、隣のアルトという女の子も敬礼する。
 
 「アルト・クラエッタ整備員でありますっ」
 
 小っちゃくて可愛い子だなぁ。
 それはそれとして、たしかヴァイス君と言えば …… あ、思い出した。
 
 「あー、地上本部のおもいろいヘリパイロットさんですね!」
 
 そうそう、彼だ。
 妙に軽くて緊張でガチガチだった新人たちをほぐした人だよね。
 
 「覚えていただいて光栄であります、教官殿」
 
 にしし、といった笑顔で、どう見ても恐縮してるようには見えない。でもそれくらいの方が私にはぴったりなのかもしれない。
 
 「顔合わせも済んだトコロだ。早速行こうか。話したいこともある」
 
 シグナムさんがそう言うと、とたんにヴァイス君がキョロキョロと周りを見出した。
 
 「どうしたの?」
 
 「いえね、ラインハルト三尉がいないなと思いましてね」
 
 「ユークリッド君? シグナムさん知ってます?」
 
 「主はやてと食事に出掛けた」
 
 空気が凍った。
 このとき、誰もが予想だにしなかった言葉、いわゆる爆弾発言というものをあっさりとシグナムさんは落としてしまった。
 そして、いつも氷を溶かすのはよく言えば熱き想いなのです。
 
 「う、うおぉ!? 姐さん、それはそういう事でいいんですかぃ!?」
 
 「そ、そうですよシグナム三尉! さらっと言ってますけど自分の主の春ですよ!? いっつも言ってたじゃないですか、『主に似合う男でしか認めない』って! そういう事で良いんですね!?」
 
 「 …… そっか。はやてちゃん、やっと幸せ見付けたんだ。よかったね」
 
 「お、おい。勘違いをするな。ユーリと主はそのような関係ではない。主が新たに作ると言っている部隊のことについて話があるらしいのだ。それでだな …… 」
 
 『『『それで!?』』』
 
 「だから違うと言っているだろう!!」
 
 だが確かにユーリならゴニョゴニョ …… という言葉も聞き逃さない。
 これは食事の時にゆっくりゆっくり。
 
 「お話、聞かせてほしいの」
 
 「ちょっと待て! なのはッ、お前目がすわってるぞ …… ッ!?」
 
 だって、気になるじゃないですか?
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「へっくしゅ!!」
 
 「ウワサ、ですかね?」
 
 「あんな、こういうときって『風邪?寒いなら僕の上着を …… 』ぐらいの甲斐性見せなアカンよ?」
 
 そんなことを言われても、くしゃみする直前までメチャクチャ元気だった人にそんな気を遣える方がスゴイと思うけど。
 
 「うりゃっ!!」
 
 「 ………… 何してるんですか」
 
 「何って …… 」
 
 自分がどういうことをしているか、もう一度確認してからニッコリ笑って
 
 「腕組み♪」
 
 「何でですか」
 
 「何でって …… もしかして、嫌なん?」
 
 ワザとだ。絶対ワザとだ。
 ここで相手のペースに乗ったらだんだんあらぬ方向に行ってしまうに違いない。きっとそうなる。
 
 「オレは別に。悪い気はしないですけど、どっかのパパラッチにでも撮られたら一切責任取りませんよ?」
 
 「したらシグナムかヴィータあたりは制裁をしに行って、シャマルとかは裏でエライことしそうやなぁ」
 
 「脅迫ですか」
 
 「そうとも言う」
 
 そうとしか言わない。
 本当にしそうだから、洒落にもなってない。
 
 「はぁ、世間体とこの暑いのにくっついてくる上官のためにさっさと行きますか」
 
 聞いてるのか聞いてないのか、無視してるからなのかなのか、ちょっとムキになってギュウギュウひっついてくる。
 あー、もう。だから無視したかったのに。
 
 「コッチもそんなに鈍感じゃないんですが?」
 
 「え~? 何が~?」
 
 あからさまにとぼけてる。
 本当にタヌキだなこの人。
 ていうか、この人どこまでが本気なんだか。
 
 「その …… 胸とか」
 
 「えっへへ、当てとるんよ~。さっ早よ行こ!」
 
 ひっつくだけだったのが急にグイグイ引っ張られる。まるで酔っ払いだよこの人。酔っ払ってもないのに。
 
 
 入った店は八神三佐が予約していたらしく、どうやら彼女の出身世界の料理店らしい。
 
 「 …… で。どういった話を?」
 
 「スカウトの件、つまり六課のこと。まだ詳しゅう話してへんかったやろ?」
 
 確かに。
 古代遺物、つまり『ロストロギア』 …… 管理部といったか。
 名前からするに、“何か”はもう決まっているみたいだが。
 
 「これ、知ってるかな」
 
 一枚の写真がテーブル越しに渡される。
 写っていたのは、卵形の、ロボットの残骸。撮ったのはちょうど去年。
 
 「いえ」
 
 「ロストロギア『レリック』の回収中に現れた個体で、今もまだようはわかっとらん。ただわかってんのが、コイツの厄介な機能だけ」
 
 「 …… ?」
 
 「『AMF』 …… アンチ・マギリンク・フィールド。魔法無効化フィールドの展開が確認されとる。どう見る?」
 
 どうもこうも、大犯罪の匂いがプンプンする。
 ロボということは誰かに作られた、という事であり、そして、それがロストロギアの回収中と来たもんだから、さぁ大変。
 
 「なるほど …… それが機動六課、ということですね」
 
 「ふふ、流石やね」
 
 何故か、とんでもなくイイ笑顔で言う。
 妙に色っぽくて困る。
 
 「ま、そういうことやね。そんでから、六課はほぼ完全な独立部隊として設立される」
 
 「武装隊と違って、独自の判断で現場に急行できる、と。メンバーを聞いたときから思ってましたが。よく許可が下りましたね」
 
 「ははは。お恥ずかしい限りで」
 
 そう言って食事に手をつける。少し冷めてしまったようだ。
 黙々と食べていると、さっきよりもまだ真剣な声がした。
 
 「それで、ユークリッド君にはフォワード部隊の分隊長をしてもらいたい」
 
 「は?」
 
 「独立部隊である六課のさらに独立分隊。基本的な役割はフォワードの新人らのための遊撃役。そして、前線指揮官っちゅーヤツもやってもらおうと思っとる。確かに、バックには私らがついてサポートするし、指揮もする。けどな、その場でしかわからんこともある」
 
 待て待て。
 いくらなんでもその役はオレを買い被りすぎだ。
 そんなものは執務官であるハラオウン女史に任せればいい。
 確かに、自分は中隊指揮までのライセンスは持っているが、それでも指揮能力で言えば執務官の方が圧倒的に経験値がある。
 
 「これは、フェイトちゃんの推薦もあって言うとる。曰く『あの人にだったら大隊、艦隊指揮だって任せてもいい。彼に任せれば誰も死なない』言うてましたけど?」
 
 なんだそれは、ふざけてるのか?
 大隊指揮? 艦隊指揮? 百歩譲って大隊指揮までは許容しよう。艦隊指揮ってなんだ? 提督、またはそれ以上の地位がする仕事じゃないか。
 そんなふざけた執務官と一緒の職場でこれから働かないといけないのか。今から胃が痛い。
 
 「なんや、むずかしい顔しとるけど。お返事はどうでしょうか?」
 
 「いいでしょう。失敗の責任をハラオウン執務官が取るというなら」
 
 「え」
 
 「推薦した本人にも責任があるのは自明の理でしょう」
 
 「うぅ、そ、そうやね」
 
 これは最低条件だ。
 やるならやってやるさ。
 しかし執務官ね。何を考えてるんだか、紙の上だけを見て決めるのは止めてもらいたいところだ。
 
 「にしても、君けっこう凄いらしいな。フェイトちゃんがそこまでいうから改めて調べてきたけど『戦場の演出家』いうらしいやん」
 
 気を遣って話題を変えてみたようだが、余り変わってないような気がする。
 けど、その気持ちは素直に嬉しい。
 
 「らしですね。まったく誰が言い出したんだか」
 
 「ふふ。1039部隊に行ったとき医務室にもいったんやけど、医務官いうとったで? 『この部隊で医務官してると給料泥棒してる気分だ』ってな。なのはちゃんが来てからは疲労で運ばれる人が多て久しぶりに仕事したよ~、とも言うてたな」
 
 「なにが給料泥棒だ。しっかり働いてから言えってんだ」
 
 「あはは」
 
 いつのまにか場が和んでしまった。
 ギスギスした空気より大分マシだから、いいとしよう。
 
 「ふふ。やっぱり」
 
 「?」
 
 「なんでもないよ~」
 
 なんだっていうんだ。本当タヌキだな。
 
 それきりさっきの言葉の意味もいわず、八神三佐は食事に集中してしまった。
 言えることは全て言ったらしい。
 さっきの言葉『やっぱり』というのがどういう意味なのかを素直に聞くのも癇に障るので、こっちも黙して食事に戻る。
 目の前にニヤニヤする人がいなかったらもっと美味しかっただろうに、コンチクショウ。
 
 
 「オレが払います。先に出ててください」
 
 「え? やけど ――――― 」
 
 「甲斐性見せろって言ったのあなたでしょう?ほら行って」
 
 不承不承とでていく八神ニ佐。
 案の定、払い終わって外に出てみると、ふくれっ面で睨んできた。
 そのまま無言でまた腕を組んでくる。
 聞いてもどうせ『ええやろ』って言われるだけだろうから聞きはしない。
 
 もう夏か …… 夏ね。
 
 などと感慨にふけっていると突然、八神三佐が素早く、力強く路地へ飛びこむように入って、もちろん腕組みをしているオレも例外なく引き込まれる。
 
 「どうしたんです?」
 
 「なのはちゃんがおった。シグナムと、あと多分シグナムの同僚のアルトとヴァイス君。やっばー …… みんなも外に食べに出てたんか。マズイなぁ …… 」
 
 「アルトとヴァイス、知ってるんですか」
 
 「ん? まぁな。シグナムの推薦であの子らも六課に入る予定」
 
 はぁ、と気のない返事をしてしまう。
 それもそうだ。見事な身内固めだからな。
 独立部隊だし、そのほうがイイのかもしれないけど。
 
 「で、なんで隠れたんですか?」
 
 「バレたくないから。てか、見つかったら面倒やで? なのはちゃん、あぁ見えてそういう話好きやから」
 
 あぁ、確かに高町さんは厳しいイメージがあって、そういうのには感心なさそうだしな。
 見た感じだけではそうでもないんだけど。
 あ …… でも女の子って一応みんなそういう話好きなのかもな。
 
 「んぁっ!! シグナムのアホーッ!!」
 
 と急に声を殺して叫び散らす八神三佐。念話でもしていたのだろうか?
 
 「どうしました?」
 
 「逃げながら話す。行くで!!」
 
 「え、えぇえ?」
 
 これ、何が起こってるんだ?
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 ―― シグナム、聞こえてるか?
 
 急に念話が入ってきた。
 
 「主はやて?」
 
 ―― ちょっ! アホーッ!!
 
 「何? はやてちゃん?」
 
 「うむ、念話が入ってな。すぐに切れてしまったが」
 
 アホと言われたと肩を落とす。
 私は何か悪い事をしてしまったのだろうか?
 
 「念話ってコトは、まだこの近くにいるってコトなんだ。へぇ …… 」
 
 高町がなにやら思いついたらしく、待機状態のレイジングハートを取り出す。
 なにをするつもりなのか、と見ていると
 
 「レイジングハート、ワイド・エリア・サーチ、行って!」
 
 《W・A・S,get set.Start》
 
 サーチャーを10個ほど作り出して散開させていく。
 どうやら、本気で主を見つけにかかるらしい。
 
 5分もしなかっただろうか。
 主はやては見事に見付かった。

 
 



             Act:0-3  end


テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

なんというか、すっげー不安。

ども、草之です。

ええ、そうなんですよ。
『B.A.C.K』のことです。
ここははっきりさせとかないといけないな、と思いまして。

はたして、この作品は読まれているのか?

これにつきます。
かなり自惚れみたいな言い方ですけど、この作品、本当に読まれているのかどうか、この問題はほかの作品にも影響があったりなかったり。
つまり、時間の問題ですね。読んでる人がいないなら更新がひとつ分余計に遅れている、という事なんで。
それでは他の作品を心待ち、かどうかは別として待っていてくれている人に対してかなりドギツイ焦らしになっちゃいますし。

もし、読んでくれている人がいるなら感想掲示板までご連絡を!!
あと、わざわざ『読んでない』などのコメントは書き込みに来ないよう注意しときます。

草之はいつでもこれが心配で、不安です。
お早めのご連絡、お待ちしております。
ちなみに凍結とか本気で考えてるんで、あしからず。

以上、草之でした。


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今日のアニメ  #6 『突撃ラブハァァァァ――ット!!』

最終回ですよー!

なにが悔しいって、途中でよじれるくらいの腹痛に襲われて始めの5分くらい見れてないってこと。
あれかな、眠いし風呂の中で暇を潰すついでに寝たのが不味かったのかな。

それはそれとして。
なにあの『ニコニコ組曲』以上に神がかってる言うなれば『フロンティア組曲』?
いやでもアレ『愛・おぼえていますか』使ってたような?
じゃあ


『マクロス組曲』でいいやー!!


あとオズマカッコイイー!
『いくぞ!突撃ラブハァ――ト!!』て!!
やってくれましたよ、ファイヤー!ボンバー!
あそこでシェリルカバーの『突撃ラブハート』かかってたらかなり神。残念。
そういや、オズマってファイヤーボンバーの大ファンっつー裏(公式?)設定があるらしい。
2話でカーステレオで聞いてたのも『突撃ラブハート』だったし。いや、確かにあれはいい曲だよ。草之も大好きですし。でも、ミンメイの『私の彼はパイロット』には勝てん。もうね、『キューンキューン』のレベルがランカとは桁違いに可愛いからアレ。あと藤原誠さんの『マクロス』ね、あれスッゴイ渋い。7にもFにもないかなり渋いOPですよー。

マークーロス!マークーロス!マァークロォース!

て!
いまこんなの聴けないよ!?
あと、『ランナー』も好きだよ。あれは勇気を貰える。

でね、最後の最後に

『マクロスF 映画始動!』

みたいなのが出てきたの。
なに、これは殺す気ですか。
見に行くしかないでしょうが、こんなの。
友人が速攻で『行くんか?』とメールを送ってきたわけですよ。
それに『え?愚問』て返しましたから。

うーん。明日のDVDが楽しみだー。ところでなんで先月DVD出さなかったんだろ?
なにか臭いものを感じる。

最後に草之は初代マクロスをリアルタイムでは見てませんよ?念のため言っときますけど。
あーでも忘れかけてるからもう一回借りてこようかなー。

と、グダグダしてたらいつまでも終りそうにないのでここまでです!

以上、草之でした!


追記
『B.A.C.K』は続けます。
末永く、生暖かく見守ってください。


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今日のアニメ  #7 『オリジナルなビジュアルとアニメーション。つまりOVA』

ども、草之です!
OVAといえばゴーショーグン。
オヴァさんですね、関係ないですすいません。

らき☆すたのOVA買ってきました。
ひとつ言えるのが、テレビとあんま変わってないよね、ってこと。雰囲気がね。
ネタの内容はさらに酷くなってますが(笑)

誰より、つかさの暴走がすげェ(爆)
あと一番ときめいたのが水原薫さん。ジョジョのSEみたいな。ズキュゥゥ~ン!!てね。
『ヴぁ』で一躍有名(?)になった人ね。日下部みさお。彼女はきっとソル使いだと信じてる。
なんのこと?と思う人はあれ何話だっけ、まぁ、何話かでみさおが

「うぉっ!?やるなポチョムキン……」

と言ってたんで。
きっとギルティやってたんだよ!電話しながらするってのも凄いけどな、止めよう。電話中だゾ。

で、まぁ相変わらずひよりは可愛かった。
安心した。ひよりが可愛くて安心した。あとみなみちゃんの扱いが酷いと思ったのは俺だけだろうか?

みwikiさんもかなりタイムリーなネタを振られる始末。
まさかの隊長がまた出演。もうええやろ。

では、絞めとくとしよう。

君ら自重しろ(笑)

以上、草之でした。


テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

その優しい星で…  Navi:8

 「ただいま帰りました ――― って、士郎さーん?」
 
 いつもなら即答に近いスピードで返ってくる返事がないことに気付く。
 それに、がらんとしていて、それでいて晩ご飯の香りもしない。
 隠れているのかな、と思ってキョロキョロ見てみるものの、やっぱりいない。
 
 「あらあら、今日は士郎さんが当番の日だったんだけど、仕方ないわね。私がぱっぱって作っちゃうから、待っててね」
 
 「あ、はーい!」
 
 アリシアさんはそのままパタパタと二階に駆け上がっていった。どことなく、嬉しそうに。
 
 「 …… 士郎さん、どうしたんでしょうねぇ。ねぇ、アリア社長?」
 
 「ぷいにゅ」
 
 
 * ~ * ~ * ~ * ~ *
 

 「あぁ、長い長い夢だ……」
 
 そう言ってから、彼は ――― いや、彼女はゆっくり目を閉じる。
 その傍ら、ひとりの男が立ち、彼女のことを見守っている。いや、見送っている、かもしれない。
 と。
 
 「 ………… 夢の続きは、どうすれば見られるのだろうか。べディヴィエール、お前は、知っているか」
 
 薄く目を開け、そう男に問い掛ける。
 
 「はい。そう願い、安らかな気持ちで目を閉じれば、きっと続きが見れます。私にも、そういった経験がありますから」
 
 「そうか。お前は、物知りだな」
 
 そのまま薄く開いていた瞳も閉じられ、すぅ、と最後にひとつ、息をもらした。
 
 そしてそのまま、音も出さず、金に輝く前髪だけが風に揺られ、彼女は長い長い『王』の命を絶った。
 
 「 …… 王。夢の続きを …… 見て、おられるのですか」
 
 男の声は、どこか幸せそうに。男の瞳は、どこか悔しそうに。男の心はどこか遠くへ、行ってしまったようだった。
 
 
 * ~ * ~ * ~ * ~ *
 
 
 「 ……… セ、イバー …… ?」
 
 一瞬、目の前の“ホントウ”が信じられなかった。今まで一体何が俺を悩ませていたのかなんて、全部吹き飛んだ。
 ただ、髪型だけが違っていた。といっても大した違いなどない。
 アップにしていたあの髪型ではなく、首のあたりをリボンで纏めただけの簡単なもの。
 
 それ以外、何に違いがある。
 ココからは横顔しか見えない。けどそれがどうした。
 茜に燃ゆ空にも一歩も劣らぬ程、燦然と輝く黄金の絹糸のような髪。
 凛と、草原よりもなお広い深さの深緑の瞳。
 雪すら溶け込む、真白い肌。
 『彼女』は間違いなく『彼女』だ。
 
 「セイ、バー …… 」
 
 一歩。また一歩と。
 まるで足元を確認しながら歩くように、慎重に歩いていく。
 近付けば、逃げていってしまいそうな気もする。
 けど、我慢なんて出来るはずがなかった。
 
 「セイバー!!」
 
 駆け寄りはしなかった。
 ただその場で、その名を呼んだ。
 
 つ、と横を向いていた顔がこちらを向く。
 大きく目を見開き、俺を、見た。
 
 「アー …… チャー? いえ、違う。分かる …… あぁっ貴方が分かる …… っ」
 
 たまらず走り出したのは向こうの方だった。
 その走り寄る姿はひとりの騎士でもなく、王でもない。
 ただひとりの少女として、走ってきている。
 
 「シロウ …… っ」
 
 ぼふん、と胸に飛び込んでくる。その体はあの時のままで、今の俺の、本当に胸ぐらいまでしかない。
 
 「あれからどれだけ経ったのですか!? そんなに大きくなって、どれだけ ……… っ」
 
 「10年だよ。あれから10年だ」
 
 「10、年 …… それほど、長く。なるほど、変わってしまうのも道理ですね」
 
 泣きそうな顔をぎこちなく笑顔に変える。
 たまらなく愛しくて、ぎゅっと抱きしめた。
 
 「俺の想いは変わってない …… 」
 
 「シロウ …… もちろんです、私も」
 
 今は、今だけは、お互いを認めたい。
 
 
 セイバーがなんでこちらに来てしまったのか …… 今はまだわからなくてもいい。
 今はまだ、居てもいい。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「士郎さん、遅いですねー」
 
 「ぷいにゅ~」
 
 「きっと、もうすぐ帰ってくるわよ」
 
 夕焼けもなくなって、お空は焼き残った炭のように暗い。
 その暗さを和らげようと、たくさんの星やふたつの月が浮かんでいる。
 
 晩ご飯はいまさっき出来あがったばかり。今まではどんなに遅くても晩ご飯には間に合うように帰ってきてたのに …… 本当にどうしたんだろう。
 
 「は、まさか事故!?」
 
 「灯里ちゃんてば、縁起でもない」
 
 「でも心配なんですよぅ」
 
 落ち着いて見えるアリシアさんも内心はきっとハラハラしてると思う。
 と。
 
 「ただいまー。ごめんな、遅くなっちゃったよ」
 
 一階から、待ちに待った『ただいま』の声。続けるように謝ってくれたあの声はまぎれもなく士郎さんの声だ。
 
 「わーいっ!」
 
 たたっと素早く駆け降り、一階に顔を出す。と、こちらに気付いた士郎さんはニッコリ笑って手を振ってきた。
 こっちも力いっぱい目いっぱい手を振り返す。
 
 「ご飯できてますよー。ささっ手を洗って一緒に食べましょーよー!」
 
 「そう急かすなよ。話しておきたいこともあるんだ」
 
 「 …… 話したいこと、ですか?」
 
 「うん、まぁ …… いろいろとワケありでな。アリシアは?」
 
 士郎さんが言うが早いか、アリシアさんがひょこっと顔を覗かせた。
 
 「おかえりなさい。いい休日は過ごせましたか?」
 
 「あぁ、おかげさまで。ありがとうな」
 
 アリシアさんは怒った様子もなく、いつも通りに士郎さんを迎えた。なんだかそれが少しうらやましく思うのは、なんでだろう。
 と、士郎さんが遠慮がちに口を開いた。
 
 「で、だ。あー、その。驚かないでくれよ?」
 
 『?』
 
 プレゼントか何かかな?
 士郎さんは扉から顔を出してすぐ引っ込ませたのでその線は薄いかもしれない。ちょっと残念。
 
 「 …… その、悪いとは思ってるんだけど。先に謝っとく、ごめん …… じゃあ、入ってくれ」
 
 そう士郎さんが言うと、扉の影からものすごい美人な人が入ってきた。
 金髪で、肌は真っ白で、瞳はキレイなグリーン。
 
 「ふわぁ」
 
 「あらあら、まぁ」
 
 きりっとした表情は男の子っぽいけど、でも、それすらが魅力的な女の子。
 士郎さんの知り合いなのかなぁ?
 
 「えっと、じゃあ改めて」
 
 士郎さんが促すと、女の子はペコリとお辞儀する。
 
 「初めまして。セ …… シロウ、どちらがいいでしょうか?」
 
 名前を言いかけたと思ったら、なぜか士郎さんに質問する。まるで助けを求めるみたいに。
 
 「そうだな。サーヴァントとしてじゃないんだったら、きっと名前のほうがいいと思うけどな」
 
 「そうですか、なら、私のことはアルトリアと」
 
 「うん、よろしくね!」
 
 「うふふ」
 
 私たちの様子を見て、士郎さんはほっとしているみたい。
 きっと、上手く馴染んだからなんだと思う。当たり前、友達は多い方が絶対いいんだから。
 
 「で、セイバー、こっちは …… 」
 
 「シロウ。今貴方自身で言ったことをもう忘れたのですか」
 
 むっとした様子でアルトリアちゃんがいう。
 セイバーっていうのはアダ名なのかな?
 
 「いや、なんて言うか。今更かなぁって」
 
 「なにが今更なのです。聖杯戦争もサーヴァントも関係なく、私は今こうして貴方の前に居るのです。それなのに …… 」
 
 「あぁもうわかった! わかったから! えっと、じゃあ …… アルトリア」
 
 珍しく恥ずかしそうにしながら士郎さんが呟くように言う。
 ちょっと面白い。
 アルトリアちゃんはうんうんと頷いて
 
 「それでいいのです」
 
 「 ………… で、えっと。こっちが灯里」
 
 私を指してから、アルトリアちゃんがこっちを向く。
 うーん。やっぱり美人さんだなぁ。
 
 「水無灯里ですっ!」
 
 「では、アカリと呼びましょう」
 
 ふわっと体が軽くなったような錯覚を感じた。
 彼女はただ微笑んだだけなのに、やっぱり美人な人がすると雰囲気が違うなぁ。
 アリシアさんとも初めて会ったときはこんな感じだったっけ。
 
 「で、こっちが ―――― 」
 
 今度はアリシアさんに向けて手を向ける。
 と。 
 
 「存じています。アリシア・フローレンス、ですよね。アテナからいつも聞き及んでいます」
 
 「あらあら、まぁ。アテナちゃんの知り合いなの?」
 
 「知り合い、といいますか …… 私は今までアテナに世話になっていましたから、どちらかというと友人ですね」
 
 「じゃあ、私たちとも友達ね」
 
 「あ …… ありがとうございます、アリシア」
 
 そこで、士郎さんがよし、と区切りをつけた。
 みんながそっちをむいた後
 
 「とりあえず、ご飯にしよう。出来てるんならあったかい時に食べなきゃ失礼だろ?」
 
 あ、そういえば。出来てたんだった、ご飯。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「ごちそうさまでした」
 
 「ぷいにゅ~」
 
 全員が口を揃えて食べ終わる。
 見た目とは裏腹に、ひょいパクひょいパクとご飯を口に運んでいくアルトリアちゃんには正直ビックリしたけど、それ以外、いつも通りの食卓だった。
 夕食の片付けは遅れたお詫び、ということで士郎さんが。そこに士郎さんだけじゃ、ということで灯里ちゃんが手伝っている。
 
 「 …… ふぅ」
 
 自然と私はアルトリアちゃんと二人になる。
 アルトリアちゃんは食後のお茶を嗜みながら、懐かしそうに士郎さんの背中を眺めている。
 と、急にこちらをむいて
 
 「アリシア」
 
 「ん、なに?」
 
 きりっとした目でこちらを見つめ、口を開く
 
 「大変美味でした。食べたことのあるものでも、やはり作る者が違うと味も変わってくる。その中でも、あなたの料理は本当においしい」
 
 「うふふ、ありがとう。私も、そう言ってもらえると作った甲斐があるわ」
 
 なんだろうと思って身構えてみれば、なんでもない。
 喜んでくれたなら、なにも問題はないんだから。
 
 歳は、灯里ちゃんと同じくらいかな。
 の、割にはすごい経験則ゆたかなしゃべり方してて、なんだか不思議な感じ。
 
 「アルトリアちゃん」
 
 「はい、なんでしょうか」
 
 「士郎さんって、どんな人だったの?」
 
 「 …… 聞いてないのですか? 付き合いは12ヶ月近いと聞きましたが」
 
 それはそうなんだけど、あの傷をみたら、そんなこと聞くに聞けない。
 それに、まだ彼がよくわからないってこともある。
 
 「 …… そう、ですね。シロウは一言で言えば『偽善者』だったのでしょう。出会ってすぐは、私もそう思っていましたし、そのことに怒りを覚えたこともある」
 
 「『偽善者』 …… ?」
 
 「彼の夢は聞いたことがありますか?」
 
 「いえ、ないわ」
 
 「なら、話はここまでです。この先はシロウの中だ」
 
 それもそう。正論すぎる正論。
 でも、偽善者 …… 。
 …… 聖杯 …… 戦争って何なんだろう。
 
 「でも」
 
 アルトリアちゃんは続ける。
 
 「彼はその偽善を信じ続けた。例え誰にも理解されなくとも、誰に無理だ諦めろと言われてもなお彼は『理想』を追い続けた」
 
 「え?」
 
 それじゃあ、彼は独りぼっちじゃないか。
 
 「だけど、理解は出来なくても、支えることは出来た。それが私の誇りでもあったし、彼の誇りでもあった。支えてくれる人が居るから、彼は自分の『理想』を追い続けられた」
 
 「支える、誇り?」
 
 分からない。
 そこまでして士郎さんが求めているものが。
 
 「アリシア」
 
 「は、はい?」
 
 「あなたが、シロウを支えてあげてほしい。私には ―――― 」
 「セイ …… アルトリア! ちょっと来てくれないか?」
 
 言い終わる前に、士郎さんからお呼びのかかったアルトリアちゃんはパタパタと走っていく。
 立ち上がる時に、少し唇が動いた気がしたけど …… それがなんだったのかはわからなかった。
 
 
 戦争、体の傷、アルトリアちゃん。
 偽善者。
 ―――――― 魔法使い。
 
 貴方は、一体何者なんですか?
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「えっと、じゃあ改めて紹介しとこうか。名前はアルトリア。見ての通り女の子で、あと剣の腕は一級品。えっと、年齢は」
 
 どうするべきか、今になって迷ってしまう。
 見た目は16、17歳くらいなんだけど、実際俺よりは歳上なんだよな?
 …… 考えなかったことにしよう。
 そうだな、世間体には触れない程度の年齢っていったらどのくらいなんだ?
 
 「 …… はぁ。このナリですが、私は20です」
 
 「えっ、ハタチさんですか!? てっきり同い歳ぐらいと思ってました」
 
 20歳か …… 妥当だろうな。
 それについて灯里は思ったとおりビックリしているし、アリシアはなぜか納得の表情。
 
 「そういうこと。俺の ――― 」
 
 「あっ!!」
 
 「? どうしたんだ、灯里?」
 
 聞いたら聞いたで恥ずかしくなったのか、しゅんと体を小さくしておずおずとしながら
 
 「『希望の丘』で言ってた大切な人って、アルトリアさんのことだったんですか?」
 
 「あ …… よく覚えてたなあんなこと。けど、うん。そうだな」
 
 「つまり、恋仲ということを言いたいのですか、シロウ?」
 
 ……………… 。
 あ、俺この沈黙知ってる。
 あんまりいい沈黙ではないのは火を見るよりも明らか、と言うやつである。
 
 「士郎さんの …… 恋人?」
 
 セイバー……アルトリアが言う分にはそうらしい …… ってちょっと待った!!
 
 「セイバー!!」
 
 「何ですかシロウ。貴方がそういう風なことを言ったのでしょう。それとも嫌ですか、なら仲間です。“大切”な」
 
 う。
 言葉の裏の圧力が痛い。
 
 「いや、セイバー …… それでいい。灯里、そういうことで恋人 …… だ」
 
 「あ、はい」
 
 「シロウ?」
 
 「なんですか、セイバーさん」
 
 そっと彼女は唇に人差し指をあて、少しふくれ気味に睨んできた。
 あぁ、もう!
  
 「アルトリア …… そういうやつだったっけ?」
 
 「この12ヶ月で、この世界に慣れたのでしょう。世俗に染まるのも無理はないと考えますが?」
 
 世俗って……。
 つまり、言い方は悪いけど騎士道バカだったあの頃と違って今はサーヴァントでもないし、女の子っぽくなったって言いたいのか?
 そりゃあ、女性しかいない水先案内人[ウンディーネ]の職場やら寮にいたわけだから、そうなるのも分からなくもないけどさ。
 そうなると、それはそれでまた困る。
 なぜなら、アルトリアは間違いなく美人なんだから。
 俺の知ってるコイツは、あくまで騎士然とした立ち振る舞いをしていた。無意識に女の子っぽいところが垣間見えていたりしたけど、それも本当に時々というレベル。
 それが自然と振舞われるとなると、どうだ。
 たまったもんじゃない。いい意味で。
 
 「とりあえず、そういうことらしいから、よろしくやってくれると俺も嬉しい」
 
 多分、顔が赤くなっているだろう。
 たまったもんじゃない。ホントに。
 
 「でだ。俺と一緒にここに世話になってもいいかな?って話なんだけど」
 
 「 …… いいですよ」
 
 少しだけ考えて、あっさりと返事するアリシア。
 
 「アリシア、本当にいいのですか?」
 
 「ええ。一人も二人も変わりないもの」
 
 アルトリアとの関係に少し驚いていたみたいだけど、特に悪いイメージはなかったようだ。と考えていいのだろうか。
 だが、さすがにアリシア一人だけの稼ぎじゃ苦しくはないだろうか。そう彼女に聞いてみると
 
 「乗りかかった船、というやつですよ。それに、余裕はあるんですから」
 
 「そうは言ってもな …… なら俺の給料はなくてもいい。ここに世話になってるんだから」
 
 「士郎さん …… 大丈夫ですよ」
 
 俺の言葉を全て聞いてくれるものの、それを肯定することはない。
 ただ。
 
 「大丈夫、ですから」
 
 「わかった。そこまで言うなら今まで通りでいい。いいけど、生活面全てをまかせてもらう」
 
 「え?」
 
 何を、といった顔で見詰められる。
 そりゃそうだ。今から言うのは屁理屈といってもいいんだから。
 
 「家政夫 …… つまり『家を政つ夫』。家のことを仕切る者だ。なら、ARIAカンパニーの生活をし切るのも俺だろう?」
 
 「あ、あの …… ?」
 
 何かとんでもないことを言っている俺を制止しようとしているのだろうが、今は聞かない。
 
 「家事全般、そして生活費については全権を握らせてもらう。もちろん、経済面まで口を出すことはないから安心していい。まぁ、アルトリアも増えることだし、それがいいんだよ」
 
 「なっ、どういう意味ですかシロウ!」
 
 「とにかく、そうさせてもらうことが俺の頼みだ。っていうかそうさせてもらうからな!」
 
 ポカンとしていたアリシアの顔に表情が戻り、慌てて取り繕う。
 
 「でも、それじゃあ …… っ」
 
 「大丈夫だってば。俺が何だか知ってるだろう?」
 
 「な、にを …… 」
 
 「俺は、魔法使いだ」
 
 安心させる意味もこめて、笑顔で言う。
 こうでもしないと、本当に無理をしてしまいそうだった。もしかしたら無理をしてたのかもしれない。倒れてからじゃ遅いんだ。
 
 「 ………… 」
 
 何かを言おうとして口をパクパクさせているが、肝心の言葉が出てこないみたいだ。
 しばらくして、観念したように首を振った。
  
 「仕方、ないですよね」
 
 アリシアはなぜか悲しそうに、どこか嬉しそうに、力なく笑うだけだった。
 
 「わかりました。これからも、よろしくお願いします」
 
 笑い終わると、いつものアリシアで、いつもの微笑みだった。
 
 「あぁ、こちらこそ」
 
 
 
 
 
                Navi:8  end


テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

上のコメント

ども、はる……草之です!

うん、しばらく変えない。
知らない人には、ちょっと(?)つらい文章だけど。

『はぐやし』はその場の勢いだけの短絡的思考によって産み出されたかなりいい加減な名前なのであまり鵜呑みにしない方がいいです。

試験的に追記を使ってみる。
以下、アイマス知ってる人でないと耐えられないくらいプロデューサーしてるかも。
いえ、そこまで酷くないですけどね?多分。


では、今日はこの辺で。
草之でした。


全文を表示 »

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

大鐘楼は人の心に

 
 君と僕はよく、というよりいつも一緒にいた。
 もしかしたら、それぞれの家族以上に一緒にいたと思う。
 
 そのことにお互い全く疑問を感じなかったし、むしろ家族以上に家族だったと思う。
 
 君は僕の、僕は君の。
 そう、一部といって差し支えない。
 
 だけどある日、僕と君とよく一緒に遊んでいた女の子がたった一言、ポツリと言った。
 
 
 「アナタたちは、お互いがアナタたちなのね」
 
 
 君も僕も、はっとした。
 僕たちはどっちが僕でどっちが君なんだろう。
 境界がとても希薄。
 僕は僕、君は君であるはずなのに。
 

 僕と君は決意した。
 探そう、君は君を。僕は僕を。
 
 僕は街の北口から、君は街の南口から。
 僕等が自分を知るために、僕等が自分を探すために、ずっと一緒と思ってきた僕等は初めて“手”を離した。
 
 
 最初はワケが解らなかった。
 君がいないと僕はダメなんだって思っていたから、僕はなにも解らない。
 きっと君も同じ。
 
 この世界はいつも夜が来る。
 普通、夜は足を止める。方角を見失いかねないし、暗くなるから。
 けれど僕はずっと歩いた。
 ある人は『勇気ある冒険者』と称えてくれた。
 ちがう。そうじゃない。
 
 立ち止まる勇気がないから、ひとりで寝る勇気がないから、歩き続けるんだ。
 僕はみんなが思うほど強くない、そう強くはない。
 
 
 
 どちらが言ってしまったんだろう。
 君は君を、僕は僕を探そうなんて、どっちが言ってしまったんだろう。
 今、僕は初めて君に怒っている。きっと君から言い出したんだって。
 
 また一夜通して歩いていた。
 ずっと怒っていた。
 なにか、何でもいいから、このムシャクシャを止めたかった。
 
 嫌だから。君を疑うなんて嫌だから。
 いつのまにか、君にじゃなくて、こんなことを思ってしまった自分に怒っていた。

 そんな気持ちのまま、街に着いた。
 いつものように、慣れてきた感じで必要なものを買って補充する。
 お金の稼ぎ方も分かってきた。多分、次の街ぐらいで働くことになるだろう。
 
 ふと、こんな気持ちだからだろうか。
 君に、僕を知ってほしくなった。今の自分を、知ってほしくなった。
 教会の大鐘楼の鐘が街に響く。
 なぜだろうか、これがいいと思ったのは。
 
 
 
 街を出て、街が見えなくなった頃、手に持った、街で買ったランタンサイズの鐘を思いきり叩いた。
 教会の鐘よりも高く、より多く体を打つ音。
 教会の鐘よりも、どんな鐘よりも、君にはこれが聴こえると思った。
 
 ゴメンね。
 そんな気持ちをこめて、最初の鐘を打った。
 許してくれるだろうか。もし、逆だったら許してあげられるだろうか。
 
 きっと許してくれるし、僕も許す。
 もしかしたら、君も同じことを考えていたのかもしれない。だとしたら、痛み分けだ。
 すぅっと、気持ちが軽くなった。
 
 
 
 朝もやに僕の鐘がこだまする。
 一度打っては、一度返ってくる。
 距離はわからない。けれども、わかる。
 この鐘の音は遠くない、そう遠くはない。
 
 僕は君の、君は僕の。
 一部のようで、はっとした。
 僕って誰だろう、君って誰だろう。
 
 だから、僕は僕を。君は君を知るために初めたこの旅で、あることに気付いた。
 
 君は君らしく、僕は僕らしくある。ということはつまり孤独なんじゃないの?
 ほら、この旅がまるでそのまんまだ。
 
 今僕はひとりで、君もきっとひとり。
 気付いたんだ。
 
 僕は僕らしく、君が君らしくある以前に、僕たちは、僕たちらしくあればいい。
 人はひとりじゃダメなんだ。光と影があるように、コインの表裏のように。
 
 どちらともがないと、どちらともがありえない。
 光がないところに出来るのが影じゃない。光の届かないところに、フォローするのが影なんだ。
 
 世界はとても、フラクタル。
 一部が全てになって、全ては一部足り得る。
 人が見る世界が、世界という一部なら、またその一部は、人の見る世界の全て。
 世界は白か黒。荒荒しくいえば、平和か争い。
 
 僕と君もそう。
 僕は君が認めて始めて僕で、君は僕が認めて始めて君。
 僕が見る君は、君の一部分だけかもしれない。でも、僕にとってそれは君の全てなんだ。
 
 だから、戻ろう。君と僕へ。
 君がいて、僕がいるあの世界へ。
 
 鐘を鳴らす。
 僕はここだよ、君はそこだね。
 近付いている、そうきっと近付いている。
 
 僕は今、とても嬉しい。
 君もそうだろ?だって世界はフラクタルだから。
 
 見つけるよ、あと少し。
 
 ほら聴こえる。君の鐘の音だ。
 
 僕も応えよう。
 
 
 ―――― 鐘を鳴らして。







 ***************
 
 原曲:鐘を鳴らして 《BONNIE PINK》
 
 草之の自己解釈で綴られた2000HIT記念短編。

テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学

B.A.C.K   Act:0-4

 「あの、何でこんなことになってるんかな~? とか」
 
 「それはお話をしてもらうためなの」
 
 「あの、何でお話やのに何でバインドなんかな~? とか」
 
 「それは逃げないようにするためなの」
 
 「あの、何でレイジングハートのヘッドこっちむいてんのかな~? とか」
 
 「それは嘘を言えないようにするためなの」
 
 嘘言うたらぶっ放すってコト!?
 何でそないに必死やねん、なのはちゃんは!!
 
 「じゃあ、何で逃げたの?」
 
 「ここまでとは思ってなかったけど最低尋問される思たから」
 
 「じゃあ、シグナムさんに念話したのは?」
 
 「さりげなくどっか行ってもらおうと思てやな …… 」
 
 そうだったのか! って顔を今頃するシグナムが恨めしい。
 すごい申し訳なさそうにしてるから許す。
 
 「じゃあ、なんでユークリッド君とお食事してたの?」
 
 「それは六課のことをやな、いろいろと話してたんよ?」
 
 「手とり足とり?」
 
 「そうそう、手とり足とり ――― って、オイ!」
 
 「ディバイ ――――…… ン」
 
 「アッ ―――― !! 待って待って待って!! バスター!?」
 
 「違うよ、シューターだよ」
 
 てへ、って笑おうてる。
 嘘やで。絶対嘘や。問答無用でバスターな感じやった。魔力の集まり方がバスターやった!
 この子本気やっ、殺す気やっ!
 
 「大丈夫だよ。非殺傷設定だから死にはしないの」
 
 「 …… ってそれバスター撃つ気マンマンやったんやんか!!」
 
 もう怖い。
 もう嫌や。
 天国のお父さんお母さん、娘はもうすぐそこに逝きます。
 
 「 …… じゃあ、なんで? なんで私たちと一緒にお食事しなかったの?」 
 
 「そ、れは …… その」
 
 「うぅっ、ディバイ ―――…… ン」
 
 「わぁっわぁっわぁっ! それはそのっなっ!?」
 
 「それは自分を気遣ってのことです」
 
 「へ?」
 
 思わずなのはちゃんと声が重なる。
 ユークリッド君は急に話し始めたと思ったら、どことなく的外れな事を言い出した。
 私、気ぃ遣こうた覚えないんやけど?
 
 ―― まかせてください。
 
 「え?」
 
 念話が入り、ユークリッド君が私となのはちゃんの間に割って入る。
 
 「ここで言うのも何なのですが、自分はシグナム三尉が苦手です。むしろ嫌いです。そのことを八神三佐はご存知だったので、では、話し易いようにと二人での食事に相成りました。言いよどんだ理由は自らの騎士を傷つけないための八神三佐の優しさゆえです! ですから、皆さんとお食事できない原因は自分にあります。誠にすいませんでした!!」
 
 ガバッと頭を下げるユークリッド君。
 他の4人も私と同じように面を食らっている。
 
 確かに、シグナムには悪いけど筋は通っている。
 
 「なんだ、そうなんだ …… ゴメンね、はやてちゃん」
 
 「いや、こっちこそゴメンな」
 
 バインドを解いて、レイジングハートも待機状態に戻っていく。
 さりげなくユークリッド君が近付く。
 
 「大丈夫ですか? すいません、オレのせいで …… 」
 
 「そんなん …… 迷惑かけたんはこっちやんか。気にしぃなや」
 
 そっと手を差し伸べるあたり、本当にいい人だなぁと思う。
 あぁ、私こういうのちょっとヤバイかもしれへん …… 。
 
 「あそこでシグナムなんかに念話するからですよ?」
 
 「なんか、とは随分だなユーリ。さぁ、さっさと主から離れろ!」
 
 ぐぃぐぃっ、と引き剥がされる。
 ユークリッド君はやれやれと肩をすくめ、とんとんと離れていく。
 あぅ、シグナムのあほぉ。
 
 「 …… じゃあ、悪者はここらへんで退散します。アルト、ヴァイス、お前らもハメを外しすぎるなよ?」
 
 「は、はいっ」
 
 アルトは真面目に返事を返したワケなんやけど
 
 「ラインハルト三尉! 俺も付き合いますよっ」
 
 たたたっと駆け寄るヴァイス君にむけ、ユークリッド君が返したのは
 
 「オレは直帰だっての! 何だ、お前ももう帰るのか?お前みたいな色男、他にいないぞ」
 
 多分、このまわりは皆女の子という状況を言ってるんだろう。
 なんのことはない。ヴァイス君は、う、と唸って迷うことなく戻ってくる。モロすぎるわなぁ。
 
 ふ、とユークリッド君はこちらを向き直って軽く敬礼をする。
 
 「では。また会いましょう、八神三佐」
 
 なんの心残りもないのか、さっと振りかえって路地から本通りに出て行った。
 むこうには心残りはないだろうが、こっちはそうもいかないらしい。
 さっきから何かが引っかかっていて、気持ち悪いくらいの思い残しがあるような、ないような、どっちやねん! て突っ込みたくなるような、ないような?
 
 「あ」
 
 すぅっと本通りに出た彼の背中が見えなくなったとき、思わず声が漏れていた。
 近くにいたシグナムには聞こえてしもぅたみたいで、こちらをチラリと見られた。
 
 「はァ …… 」
 
 「む、なんやのん」
 
 「まぁ、私も甘いということですよ」
 
 「へ?」
 
 どん、と背中を押され前のめりになって倒れそうになる。
 
 「あぁ、主はやて。そんなに酔ってしまって、明日も仕事が朝からあるのでしょう? ほら、今日はもう帰ってください。こちらは私が面倒を見ておきますので」
 
 あー …… 。
 うん、その気遣いはスッゴイ嬉しいんやけどな。その大根役者っぷりどうにかならんかったんかなぁ。
 台詞がうそ臭いし、なにより棒読みって …… 。
 黙っといた方が自然って思うくらい、不自然。
 
 けど、まぁ、ここはありがたく行かせてもらうとしよう。
 
 まだ、お礼も言うてへんしな。
 
 
 *  *  *  *  *

 
 「やれやれ、と。帰ってシャワー浴びて寝るとしますかねっと」
 
 休める時に休んでおく。これは戦士の鉄則だ。
 戦士かどうかは、この際どうでもいいが、一応ここ最近で一番の『戦い』から生きて帰って来れた。それでいい。うん、こじつけ。
 
 街並もだんだんと店の灯りが消えていき、人の数も少なくなっていく。
 自分の足音が分かる程度の人の数っていうのが、ちょうどいい。逆にいえば、それは他の人にも言えるコトだったりする。
 
 足音が走って近付いてくる。
 こんな大きな通りで、しかもこの時間ランニングなんてするヤツがそうそういるだろうか?普通いない。
 
 「ジーク」
 
 《Yes,sir》
 
 念のため、合図だけは送っておく。
 ジークもそのことを了解してくれたようで、返事を返してくる。
 返してきたのだが ……
 
 《sir》
 
 「なんだ」
 
 《Misunderstanding.(勘違いです)》 
 
 なんだ、勘違いって。
 オレに警戒の必要はないと言ってるのか?
 そう思っていると、足音がすぐ後ろで止まった。
 
 振りかえると、そこには八神はやて三佐がいた。
 
 「八神三佐 …… なんでここに?」
 
 「なんでもかんでも、探したでー? 全く、なんで真っ直ぐ隊舎に帰らんのよ」
 
 それは一種の職業病、というか日課というか。
 行動範囲を絞らせないためにワザと迷走する。
 確かに、普通に帰るよりも二倍ほどの時間がかかるが、またこれによる副産物も多い。たとえば、美味いレストランを見つけるとか。
 だが、今回はその副産物が悪い方に出てしまったらしい。
 初めて会ったときよりかはマシだが、息は乱れ、汗も滲んでいる。
 
 「どうかしたんですか?」
 
 「いや、なんつぅーか、やな」
 
 ふぅっと一息ついて、服装を正す。
 
 「ありがとうな。今日は私のアホに付き合ってくれて」
 
 「いえ、そんな。なかなか有意義でしたよ」
 
 確かに、『アホ』という部分は否定できない。
 一瞬空気が悪くはなったがそれ以外はたのしいものだったし、それに表面上呆れてはいたけど、デート風味なのも正直悪くはなかった。
 オレだって男だ。そして八神三佐は間違いなく美人の部類に入る。そりゃうれしいさ。
 
 「じゃあ、ついでやし …… 何個かお願いしてもええかな?」
 
 「この際です、聞けることがあるなら」
 
 「うん …… やっぱり、ユーリって呼んだらアカンかな?」
 
 「え …… 」
 
 俯き加減に、恥ずかしそうに口元を握り拳で隠し、上目遣いにこちらを見てきて、そんな“お願い”をする。
 この人は …… 。
 自分がどんな顔して言ってるのかわかってやってたら本当にタヌキだ。
 
 「シグナムとおんなじ呼び方されんの、やっぱ、嫌かな?」
 
 ずいっと前のめりに近付かれる。
 天然? ワザと? 狙ってる? ド天然?
 
 「あぁもう、わかりました。いいですよ!」
 
 「ぃよぉっしゃぁっ!!」
 
 ぐわっしゃーっとガッツポーズ。
 そんなに嬉しいのか?
 
 「それで …… ?」
 
 「うん。敬語もいらへん。歳もひとつしか違わんし、タメ口でええよ。もちろん公共の場でやったらそれなりの態度にはなるけど、普段からそんなに畏まらんでええよ」
 
 「 ………… そう、か。なら、オレからもいいか?」
 
 「どんときて!」
 
 どん、と胸を叩いてふんぞり返る。
 さらっとタメ口になったのがそんなに嬉しいのか、ニコニコと笑っている。
 
 「はやてって呼ぶから、そのつもりで」
 
 「~~~っ!?」
 
 ガッと顔を赤くして煙が出そうなほど髪が逆立つ。
 お返しにと思ってやったのだが、予想以上に参ってるみたいでいい気味だ。
 でも、これはさすがにやりすぎか。まだ2回しか会ってないっていうのにファーストネームっていうのもな。
 
 「じゃ、八神でどうだ?」
 
 「あ、あややややややっ!! はやて、はやてでええよっ!!」
 
 「ん、そうか。じゃあ、それだけ?」
 
 「うん、こんなけ」
 
 しゅるるるるっと風船の空気が抜けていくようにはやてはしぼんでいく。
 どうにも、タヌキに懐かれてしまったようだ。こんなに可愛いタヌキなら歓迎だけど。
 
 「じゃ …… またな、はやて」
 
 「あ、う、うん! またな、ユーリ!!」
 
 ブンブンと手が千切れそうな勢いで振っている。
 呆れて笑いながら、今日は過ぎていった。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「何の真似だよ」
 
 「それはこちらの台詞だ」
 
 隊舎の食堂。時間は朝食時。
 机を挟んで、私とユーリは睨み合う。レヴァンティンを喉元に突き付けたまま、それでもユーリは臆することなくしゃべりだす。
 
 「これじゃメシも食えない。その棒を早くしまえ」
 
 「貴様ッ! 私のみならず我が剣にまで!!」
 
 じとりと見上げられる。
 もちろんレヴァンティンはユーリの喉元に突き付けたまま。
 
 「朝っぱらから発情して、ワケもわかっていない相手に向ける剣をどうして“剣”といえる。
 猿が振る剣を棒といって何が悪い。
 騎士が奮うからこそ剣は“剣”という」
 
 その言葉にドキリとする。
 その通りだ。私はまた、先走って何をしている。
 
 「 …… すまなかった。レヴァンティンも」
 
 《Ja》
 
 待機状態へ戻してから定食を注文してユーリの前に座る。
 蜘蛛の子を散らすように周りから人が引いていく。申し訳ないことだ。
 
 「で、何がなんだって?」
 
 「そうだ。お前昨晩主はやてに何かをしただろう。昨晩帰ってきてから様子がおかしいのだ」
 
 「たとえば、どんな風に?」
 
 「む …… 」
 
 とは言うものの、オカシイ行動はひとつだけしかしていない。
 
 「ぼぅっとしていたかと思うと突然自分の名前を言って悶絶するのだ。心当たりは?」
 
 「あ ――――…… 」
 
 「あるのか! あるんだなッ!? そこに直れッ!!」
 
 レバンティンを構え直し、今度は鼻先に突き付ける。
 外野はドタドタと食堂から逃げるように退散していく。
 
 「あるにはあるけど、悶絶って …… そこまで」
 
 「いいから、さっさと言え!」
 
 またじとりと睨みつけられる。
 あぁ、くそ。またか。
 
 「すまん。レヴァンティン」
 
 《Ja》
 
 ユーリが言っていた通りの猿になってしまうところだった。
 正当な理由があるなら、それを聞くべきだ。
 …… 少々、主に構いすぎるクセがあるな。直していった方がいいのかもしれん。昔のようにもう、何も出来なかった少女ではないのだから。
 
 「で、心当たりというのは?」
 
 「その前に、そんな行動してる理由を聞いたのか?」
 
 「聞いた。だが『何でもない』の一点張りでな。だからお前に聞いているのだが?」
 
 「ならオレも『何もない』。話すことは『何もない』」
 
 「な、バカをいうな。さっさと話せ!」
 
 「ひとついいか、お前は秘密だと言ってるのに子供みたいにしつこく聞いてくるほどガキなのか?」
 
 「ぐ …… むぅ」
 
 「わかっただろう。簡単に人に話せるようなもんじゃないんだ」
 
 これで話は終りだ、と言ってから朝食に戻る。
 コイツはいつも正論ばかりを言う。口だけなら私よりも達者なんじゃないのか。
 
 「わかった。なら、私ももう聞くまい。主はやてに迷惑はかけたくないからな」
 
 「 ………… 」
 
 じっと目を見開いてこちらを眺められる。まるでハトが豆鉄砲を食らったみたいな顔そのまんまだ。
 
 「なんだ」
 
 「いや、いつもなら食い下がってくるのに」
 
 「言っただろう、主はやてには迷惑はかけられん。これ以上は聞かないし、私がそれを知ってどういう行動をとるか、私にもわからんからな」
 
 「あっそ」
 
 あくまで主のため。
 コイツだけの問題なら食い下がっていただろうがな。
 にしても、秘密か。あまりいい記憶がないな。
 
 「じゃ、お先に」
 
 トレイを持ち上げて立ち去っていく。
 私も朝食に戻るとしよう。
 ………… 今日は朝食前に家を飛び出したからな。主はやてに連絡もいれてない。主は怒っているだろうか。
 
 かちゃり、とバターナイフの音がいつもより大きく聞こえた。
 気のせいか、と思ったがそうでもないらしい。
 
 「あぁ、そうだったな」
 
 一人だけの食堂はとても静かだった。
 
 
 



             Act:0-4  end


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お詫びと訂正の連絡

『B.A.C.K』です。

大筋の変更はないのですが、今日改めてStSのファンブックを見直していて、年表のところで大きな問題を発見。

変更前は『0-1』から『0-4』まですべて新暦0074年だと思っていたら、0072年でした。
しかも冬みたいな書き方をしていたんですが、6月でした。

ここのあたりを変更、服装や台詞に矛盾が出来ないように書き直しました。
物語自体は変わってませんので、わざわざ絶対に読み返さないといけない、という事はないので安心です。これからはこの様な事のないよう、十分注意して執筆していきます。

これからも、歯車屋敷をよろしくお願いします。

では、草之でした!


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プロフィール

草之 敬

Author:草之 敬
ブログは若干放置気味。
『優星』の完結目指してラストスパート中。
 
現在は主に一次創作を書いて活動中。
過去作を供養する意味もあって、いい発表の場はないものかとネットをさまよっている。

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