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2009-09

逆輸入はあるかと期待してはいたけどやはりあった。

ども、草之です。
9月に入って間もなく腸炎が発症し、2日半ほど高熱にうなされ、未だに絶食状態が続くなかの更新です。いやほぼ絶食ですけどね。この4日ほどで食べたものと言ったらリンゴ半分くらいに、ゼリーも半分以下。おかゆもおたまに半分くらい。あれ、こうやって書くと結構食べてる気がする不思議。アハハッ!
 
さておき。
タイトル以外にも話したいことはいろいろありますが、まずはヴェスペリア一応1週クリアです。
GG2とBB買ってきました。BBのライチのボイスに「ジューシーポーリーイエイ」があったのには驚いて目玉が飛び出そうになりました。英語音声のほうにもあったのには涙がちょちょぎれました。
 
GG2のほうはあれ、なかなかいい難易度してますね。
なれるまでイージー必須、かもしれない。結構ヌルゲーマーだから、草之は。東方もなんだかんだでイージーシューターから卒業できないキモイ奴ですし……。かなこつおい。
 
まぁ、あれですよ。
Live環境が整っていません、といったのは前に言ったとおりなんですけど、出来るようになったら募集するかも。……出来ないまま終わるかもしれませんけどね。
 
とりあえず。
言いたいことは流して言ったので本題に入りましょう。
 
みなさん
「仮面ライダー龍騎」はご存じですよね。
まぁ、正直言ってしまえば日曜日だけなぜか寝起きが悪い草之はちゃんと視聴出来てませんでしたけど、一応見てましたよ。隣で母が「これ“弁当”って聴こえるよなー」と爆笑してたこともよく覚えてますともさ。
まぁ、アメリカに輸出されてたんですよ、去年ぐらいに。
知ってる方は多いでしょうけども。
リメイク作品として。リメイク作品として。大事なことなので2回言いました。
 
さて
「KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT」仮面ライダードラゴンナイト。
これが向こうで放映された龍騎のタイトル。
なんとなくさまよっていたようつべで発見したPVを見て一目ぼれはいいのだけれど、結局続けてみることは根気的に無理だった。
それがどうやら逆輸入されるらしいことを今朝知った。
 
10月あたりから東映チャンネルで、来年から地上波でも放映されるとかなんとか。
結構期待できそうです。アクションとか面白そうだし。ただ、ストーリーはまったく違うので初見の方はこれが「龍騎」だと勘違いはなさらないように。放映されるのは「ドラゴンナイト」です。
でも、珍しいですよね、逆輸入するのって。
 
 
 
 
 

更新予告は立てませんが、一応来週中には『背炎』を更新します。
では、草之でした。
 
 

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テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

ちょっとした息抜きと拍手レス。

ども、草之です。
前々からちょっとずつ更新していた気がする『B.A.C.K』の設定を今回も更新しました。
更新内容はクリームヒルトのところ。バスト、フルショットのキャラ画と内容を少々推敲して書き直し更新しました。
興味のある方はカテゴリから飛んでみてくださいね。
 
 
と、『背炎』の執筆の息抜きでこんなことをしてました。
食欲(胃腸)以外、ほとんど回復したので、全快とは言い難いですが、腸炎治りました。きっと。
 
肝心の『背炎』は明日……出来るかなぁ。
不安ではありますが、明日更新します。
 
 
では、短いですけど以下拍手レスです。
草之でした。
 
 

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テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

背徳の炎  track:28

 
 「――――始め」
 
 やけに甘く、その声は響いた。
 だというのに、いつになっても変化らしい変化……つまり試験は始まりそうになかった。
 どういうことなのだろう、と顔をあげてエヴァンジェリンさんの方を見上げた。
 
 「んん? どうした、ぼうや。ほら、気合を入れて立ってろ」
 
 「あ、はい」
 
 構えだけは解かずに、周囲を警戒する。
 もしかしたら、奇襲のような感じで試験が始まるのかもしれない。
 緊張だけがどんどん高まっていく。
 
 …………………………。
 ……………………。
 ………………。
 …………。
 ……。
 …………。
 ………………。
 ……………………。
 …………………………。
 
 どれほど立っていただろうか。
 周囲への警戒は解かずに、目だけで世界樹広場の時計を見た。
 午前0時28分。開始から、約30分といったところ。
 夏に差し掛かる晩春の夜明けは早い。早ければ5時を回ったあたりで日の出が始まるだろう。
 
 緊張だけが高まり、同時にとてつもないストレスがのしかかる。
 何もない時間ほど退屈でストレスのたまるものはない。
 
 「…………う、うぅ」
 
 後ろでなにか唸り声が聞こえた。
 
 「うがあ――――――ッ!! もー、我慢できないわ、ちょっとエヴァちゃん、さっさと始めなさいよ、試験とかいうのを!!」
 
 「は? バカだとは思っていたが、ここまでバカか神楽坂明日菜。もうとっくに試験は始まってるだろう」
 
 「はぁ!? だから、突っ立ってるアレのどこがどういう試験なのよ!!」
 
 「言ったのを聞いてなかったのか、オイ。朝日が出るまでどんなことをしてもいいからくたばるな、と言ったんだ。それとも何か。ドンパチやらかすのが全てだとでも思ってたのか、野蛮人め」
 
 「や、野蛮人!?」
 
 エヴァンジェリンさんとアスナさんが口論を始めた。
 その間も、なにが起こるのか分からない中で緊張だけが積もっていく。口論が遠く聞こえ始める。
 
 「まったく。ぼうやが痺れを切らせたら、と思ってたが、そこまでやりたいなら始めてやる。おい、茶々丸。ぼうやにこれを飲ませろ」
 
 「はい」
 
 エヴァンジェリンさんから渡されたものを持ちながら、茶々丸さんがこちらへ向かって歩いてくる。
 一旦構えを解き、茶々丸さんと正面から見つめ合う。
 
 「神楽坂明日菜、私は言ったな。仮契約者も、そいつの実力のうちである、と。それが果して正しい選択であったのか、よくよく考えるがいい。……茶々丸」
 
 「はい。……ではネギ先生、これをお飲み下さい」
 
 「これは?」
 
 「分かりません。私どころか、この試験の全てを知っているのはマスターただひとりだけなので」
 
 「…………」
 
 ビーカー程度の瓶を受け取った。
 手に取った瞬間のずっしりとした重さは、まるで水銀が入っているかのようでもあった。しかし、中に入っているのはどろりとした水銀などではなく、鮮やかな赤色の液体。……あるいは、血液なのかもしれない。
 
 「さぁ、どうした。飲め」
 
 上からエヴァンジェリンさんが催促してくる。
 覚悟を決め、ビーカーに口をつける。まだ傾けてはいない。ただ、動くたびに上からの視線が鬼気迫るものになってきているような気がしてならない。心臓が警鐘を鳴らす。飲むな、飲んではいけない、と。
 
 「――――ッ」
 
 一気に喉に、胃に流し込む。
 瞬間、視界が明滅した。歪む視界と、言いようもない強力な呪。……やはり、魔法薬。寸でのところで倒れないでいる。
 体中に力が入らない。それどころか、魔力もうまく組み上がってくれない。
 
 「が……ごえッ!?」
 
 「……所詮はその程度か。それを飲んだのはお前の“ミス”だ、ぼうや。せいぜいこの状況を作り出した神楽坂明日菜と、素直に従ってしまった自分を恨め」
 
 なんて言った?
 これを飲んだのが、僕の“ミス”……!?
 あぁ、そういうことなのか、と今更理解した。これは、こういう試験なんだ。騙し騙され、なにかをトリガーに、たった一言が破滅を招くデスワルツ。つまり、アスナさんが痺れを切らさずにいて、あのまま朝日が出るまで立ち続けていられれば試験には無事合格出来ていたというわけだ。もしさっき僕があの魔法薬を投げ捨てていれば、僕自身こんなことにはならずに済んだんだ。
 そうだ、エヴァンジェリンさんは「私が言うことは絶対である」とは言っていなかった。ただ、素直すぎた僕が、いけない。
 
 それをみんなに伝えようとして、しかし――――
 
 「みな、がふッ!? げ、おぇッ、ああああああああああああああああああッ!!」
 
 声が出せない。
 それどころか、劇痛が走った。杭で全身を打たれたような、鈍い劇痛だ。
 
 「ね、ネギ? な、なんなのよ、これ……ちょっと、エヴァちゃん、ネギになに飲ませたのよ!!」
 
 「飲ませたんじゃない。ぼうやが勝手に自主的に、あくまで自己の判断で飲んだんだ」
 
 「そんなことはどうでもいいわよっ! なに飲んだのよっ」
 
 「なにって、今日のために採っておいた私の血だ。もちろん、魔法薬として細工はしてあるがな」
 
 「は、はぁ!?」
 
 やっぱり、血だった。
 それもエヴァンジェリンさんの血。それが指す意味。そして、毒となる魔法薬を用意していて、そして全員を巻き込んだ試験だとすると、きっとある。
 ――――解毒剤、この試験の“本当の毒”が。
 
 「そして、ここに取り出したるはその魔法薬の解毒剤。一口飲めばたちまち先の魔法薬の効果を打ち消す即効薬だ」
 
 霞む視界で、エヴァンジェリンさんの手にある、同じように赤い液体を見る。
 そして、月を背に、口元を歪ませたエヴァンジェリンさんの笑顔を垣間見た。
 
 「そうら、欲しいだろう。取りにくれば渡してやるぞ。これは“本当”だ」
 
 「ん。……嘘じゃないのよね?」
 
 「嘘じゃないさ、本当だともそうだとも。本当と言ったことは本当だし、嘘と言ったことは嘘だ」
 
 「それじゃ、取りにいかせてもらうわ」
 
 ダメだ、アスナさん。
 近づかないで……“僕”に近づいちゃダメだ……ッ!!
 
 「ラ……ス・テル……マ・スキル……マギステル」
 
 口が勝手に詠唱を始める。
 今まで組み上げられなかった魔力が、嘘のように組み上がっていく。
 杖が上がる。その杖先が狙うのはただひとつ、アスナさんだ。
 
 「に、げ……がああああああああああああああっ!?」
 
 声を出そうにも、出そうとした瞬間に劇痛が走る。
 声にならない声は、アスナさんには届かない。それどころか、こちらに向かってきてしまっている。
 
 「ネギ!」
 
 ダメだ。ダメなんだ。
 こっちに来ないで。走って、逃げて……!!
 
 「え?」
 
 呪文が完成する。
 輝く三柱の魔法の射手。光属性を持つ、物理破壊に特化した魔法の射手。
 発射された。ごく近距離にいたアスナさんは避ける暇もなく……――――
 
 「きゃっ!?」
 
 まただ。
 アスナさんへ向かった魔法の射手がかき消される。
 ここでは、まずは良かったと言っておくべきか。
 
 「ネ、ネギ? なにしてんのよ……なんで」
 
 「どうした、神楽坂明日菜。解毒剤はここだぞ、さっさと取りに来い」
 
 改めて見上げたエヴァンジェリンさんの顔は、歪みに歪んでいた。
 ただ、それは、僕がこの試験の内容を知っているからで、アスナさんには嫌味っぽく笑ってるようにしか見えていないかもしれない。
 止めようと伸ばした手は、いつの間にか拳を作り、一直線に振り向いたアスナさんの後頭部を狙いすましていた。
 
 「う、があああああああああああッ」
 
 「ぎゃっ!?」
 
 気付いて、と絞り出した声は届かず、せめてどうにか逸れてと願った拳は、背中を強く叩いただけにとどまった。
 と、言うものの、魔力で威力が今僕が繰り出せる極限まで高められた拳だ。
 地面を二転三転とアスナさんが転んでいく。そして、また詠唱が始まった。
 
 「仮契約を交わしてるヤツらなら誰でもいいぞ。早くこれをぼうやに飲ませてやれ」
 
 詠唱は止まらない。
 練り上げられていく魔力は、僕が今までにしたことがないような効率で組み上がり、また洗練された鋭さを持っていた。
 それゆえに、直撃すればタダで済むはずもない。
 杖先が狙うのは、ギャラリー。特に、こちら側の人間ではない、古老師、まき絵さん、アキラさん、亜子さん、ゆーなさんの方を向いている。
 視線だけで見たアスナさんは、苦しそうに俯いて伏せったままだ。
 
 「に、ぎゃああああああああああああああッ!!」
 
 声が出せない。
 それがどうした。諦めて堪るもんか。
 
 「うがああああああああああああああああああああッ!!」
 
 止まれ、止まれ止まれ……!!
 
 「はっはっはっはっは!! どうした、刹那、お前でもいいんだぞ? 近衛木乃香でもなっ」
 
 止まってくれ、止まって、お願いだ、止まって……!!
 
 「あっはっはっはっはっはっはっはァ!!」
 
 と、ま、れぇぇぇええええええええええええええ!!!!
 
 ――ブツンッ!
 
 「あ?」
 
 「が、ぎゃ……あ、があっ」
 
 な、んだ……なんなんだ、これ。
 暴れる……魔法が、体の中で……蠢く……止まらない……とめ、られない……熱い、痛い……吐く……声……止まれ……止めて……どうか……暴れ、るな……食べられる……食べないで……もう……止めなくちゃ……でも……痛い……熱い……気持ち、悪い……蠢く……膨らむ……破裂する……壊れる……破れる……腕が……足が……身体が……僕自身が……保てない……………………。
 
 「ち。勝手に真似事なぞするからそうなる。だがまぁ、そこは褒めてやろうか、ぼうや。よく自分の中に“閉じ込める”などという選択を下したな。さすがだ、“先生”。クックック」
 
 「お、ご……!?」
 
 腕を見た。
 ふつふつと血が泡立ち、肌から滲みだしている。
 魔力の暴走と、それに伴う媒体への暴食。
 
 魔力が僕を食べている。
 
 「エヴァちゃん! なに、なんなん!? ネギ君、あれどうなっとるん!?」
 
 「なに、簡単なことさ。“飲まれかけてる”んだよ」
 
 「なっ」
 
 「自らの生徒を傷つけまいと、無理矢理魔法を“自分の中に閉じ込めた”。放出されるべき魔力は身体という閉所に閉じ込められ、果ては抑えきれずに暴れ出す。そして、魔力は外を目指して術者を喰らう。しかるに、待っているのは死だ。もうこの解毒剤も意味をなさない。ここで教えてやろう。もしぼうやを助けようとするならば、戦え。殺すつもりでな。今私に近づこうとするヤツは無条件にぼうやに狙われるからな。もちろん、近づかないまでも、ここにいる全員にすでに目をつけているだろうがな。これが私が作り、ぼうやが飲んだ操作薬だ」
 
 そうか、魔力、の、放出……。
 暴れられないくらいの少量にまで魔力を減らして…………。
 あぁ。ダメだ。
 
 「だがな、今ぼうやの魔力消費率はとてつもないくらいに良好だ。それに試験に備えて体力魔力とも万全。さて、なくなるのはいつになることやら。あぁ、これは別に仮契約者でなくとも戦う事を許そう。なぁ、カイ?」
 
 「な……、き、気付いていたのですか」
 
 「馬鹿が。生きた年月が違うわ。わざと言葉に穴を開けたのもそのためだ。これが最後の試練になるように、な」
 
 「貴女という人は……」
 
 最後、の試練?
 ダメだ。そろそろ出さないと……耐えられないっ。
 
 「ネギ先生、お相手しましょう」
 
 「が、ぐう」
 
 刹那さんが飛び降りてくる。
 構えた刀は、抜かれている。本気だ。離れて、避けて、と伝えたかった。
 だけど、どうしても、声が出せない。
 
 「行きますっ」
 
 たった一歩で目の前にまで近づかれる。
 わからなかった。まるでフィルムを抜かしたような速さだった。
 
 「斬空閃――!」
 
 身体を横に大きくズラす。今度は自分の動きに驚いた。
 ――速い。
 
 「っく、魔力で強化を……!?」
 
 「うわああああああああああ!!」
 
 とんでもない早さで口が詠唱した。
 早口言葉のようだ。呪文は魔法を組み立てるための骨組みとなる部分だ。ひとつひとつを確認しながら、適切に組み立てるのが常。なのに、今の僕はまるでそれを無視している。
 適当に組み上げた呪文の上に、魔力で無理矢理カタチになるようにしている。
 
 「く、多い!」
 
 50近い本数の魔法の射手が放たれ、それらが檻のように、雨のように刹那さんへ降り注ぐ。
 
 「っく! まだ!?」
 
 魔法の射手を捌き、避けながら刹那さんが愚痴る。
 一斉に襲いかかるわけではなく、次々とそう、まるで回転銃などのように、撃ち出していく。
 こういう撃ち方もあるんだ……。
 
 「うがああっ!!」
 
 ほとんどを撃ちきったあと、残った魔法の射手を全弾発射した。
 それも綺麗に捌き切り、刹那さんはその剣の流れのまま、斬空閃をもう一度放った。
 地面を切り裂きながら、斬撃が飛んでくる。ひとつだけのそれを避けることは、今の僕にとって大したことではなかったみたいだ。ひらりと最低限の動きで回避して見せ、刹那さんに再び杖先を向けた、ハズだった。
 ――そこに刹那さんはいなかった。
 
 「ぐ、ううううっ」
 
 瞬間、視界が暗くなった。月明かりを遮られ、影が落ちたのだろう。
 つまり、刹那さんは背後。
 
 「斬岩――――」
 
 反転から、流れるように腕を突き出す。
 その先は刹那さんの刀の柄頭。一瞬で魔法の射手が3本紡がれる。
 
 「しま――……ッ!?」
 
 刹那さんが退こうとして、びたりと固まった。よく見ると、柄頭を僕が掴んでいたからだった。
 魔法の射手の種類は風。捕縛属性を持つ、戒めの矢。
 
 ゼロ距離、入った。そう思った。
 
 「っせあ!!」
 
 「あああああああああああああああッ」
 
 景色が廻る。蹴られた。
 しばらくして、急いで立ち上がると、今度は距離を詰めてはこなかった。
 代わりに、蹴られた横腹から血が滲み始めた。そんなに痛くなかったのに……!?
 
 「ジレンマだなぁ、刹那。お前、別にぼうや自身を助けようとは思っていないだろう。ぼうやを助けなければお嬢様が悲しむ。お嬢様の悲しむ顔を見たくはない。だから助ける。それはいいさ。だが、助けるべき対象を蹴り殺そうとしちゃ、元も子もないだろ? だが、殺す気で挑まなければ、今のぼうやには到底敵わない。だが殺してはならない、だ」
 
 「黙ってくださいませんか、エヴァンジェリンさん」
 
 「だが、救うつもりなら、なぜあの矢を受けなかった? あれを甘んじて受け、その上で強力な魔法をぶち込まれれば、ぼうやの死は免れたかもしれんのになぁ? ああ――――、そうだった、すまんな刹那。お前が死んでもお嬢様が悲しむ。クックック」
 
 「黙れ!!」
 
 刹那さんはまた構え直す。
 今度の眼は、本気だった。明らかに先程とは違う殺気を放ち、一心にこちらを見据えている。
 
 「――斬空掌・散!!」
 
 複数の気弾がこちらに殺到する。
 それに紛れるように、刹那さん自身もまっすぐに飛び込んできている。
 
 「斬空閃!」
 
 半分ほど距離を詰めたところで斬空閃を追加し、また突っ込んでくる。
 飛ぶ刃の気と、飛ぶ拳の気。それらが壁となってこちらに向かってくる。
 
 「うおああっ!!」
 
 めちゃくちゃな魔力の使い方をした。
 無理矢理足に魔力を送り込み、地面が爆発したような勢いで横に吹き飛ぶ。
 案の定、足の筋肉がおかしくなっていた。
 
 「はァッ、ハァっ」
 
 「明日菜さん!」
 
 「えーいッ!!」
 
 「――――!?」
 
 アスナさんが後ろから抱きつくようにして僕の身体を固定した。
 いつの間にか回復したアスナさんが、いた。
 刹那さんはそのままエヴァンジェリンさんのところへ跳んで行く。
 
 「う、うううう、うあッ!」
 
 「落ち着きなさい、ネギ!!」
 
 本当にこれで仕掛けは終わりなのだろうか。
 本当に、これで?
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「解毒薬、受け取りに来ました」
 
 「ふむ。約束だ、渡そう」
 
 「……確かに」
 
 「どうするつもりだ? それには私の操作薬を打ち消す効果があるが……」
 
 「あの魔力の暴走を止める効果はない、というのでしょう。操作さえ解ければあとはネギ先生自身が魔法を放ってどうにかするでしょう」
 
 そう言って、刹那はネギのいる場所まで戻り、ネギに解毒薬を無理やり飲ませた。
 しばらくすると、せき込みながら、苦しそうにぼうやが空に向かって魔法の射手を放ち始めた。
 
 「操作薬の効果を打ち消す効果があるが、“長続きはしないぞ”?」
 
 「……え?」
 
 空に向かって撃ち出されていた魔法の射手は、いつの間にか、上空に停滞するようになっていた。
 その数は多い。先程刹那に向けて撃った魔法の射手よりも、さらに倍近く。
 
 「に、げて……ください……!」
 
 ぼうやが手を振り下ろす。
 それと同時に、上空の魔法の射手が一斉に落ちてくる。ぼうやの近くにいた刹那や神楽坂明日菜のみならず、戦力外のギャラリーごと巻き込んで。
 避けられる者はまだいい。
 避けられもせぬ者は、傷つき、ぼうやの心にも傷を残す。
 
 愉快だ。
 
 「エヴァ……ジェリンさん!!」
 
 「ふむ。調合量を多くしすぎたか。しゃべれるとはな」
 
 「どうして、こんな……みんなを巻き込むんです!?」
 
 「どうしてもこうしてもないだろ。お前が連れてきたんだから。巻き込むんじゃなくて、お前が巻き込んだも同然だろうが」
 
 「――――あ」
 
 思い至ったところで遅い。もう、巻き込まれているのだから。
 そして、無事に帰る、という選択すらもうなくなってしまっている。
 
 さぁ、ぼうや。
 その自責の念に圧殺されるがいい。
 
 「ぼく、僕のせい……?」
 
 戸惑う心とは裏腹に、身体は勝手に杖を向ける。
 視線をギャラリーに戻す。なんとか、と言った表情の刹那と神楽坂明日菜がこちらを睨み、恐怖に目を開ききった一般人が数名。
 そりゃそうだ。あのネギ先生が攻撃を仕掛けたんだからな。
 
 「さて、私の予定ではそろそろメインの登場のはずなんだが?」
 
 「なぜ私に訊くのです」
 
 「呼んでるんだろう、カイ。ソル=バッドガイを」
 
 「なぜ私がヤツを。まだアクセル、彼を呼んだ方がマシです」
 
 「……ふむ?」
 
 ソルが来ると思っていたのだが。なんだコイツら、仲悪いのか?
 確かにちょっと険悪そうな空気が漂ってたような気がしないでもないが。まぁ、いい。あの金髪でも元のぼうやよりかは実力が上だろうからな。だが、今のぼうやを止められるか、は微妙だな。
 
 「で、そのアクセル先生には連絡がついたのか?」
 
 「いえ。まぁ……正直に言ってしまえば、私も彼を訪ねました。手を貸してはくれないか、と。ですが――――」
 
 「? 女好きなあの先生が見せ場のある場所に来ないと?」
 
 「違いますよ。昼前から誰にも会っていないというのです。街で訊いてみても誰一人彼を見たという人がいなかったんです」
 
 「あの目立つ容姿でどういうかくれんぼしたらそうなるんだ」
 
 不思議なこともあったもんだ。
 茶々丸がいうには休日の日中はいつもいつもナンパしてると聞いていたんだが……今日は休業でもしてたか。
 
 「――!」
 
 「ん、どうした、茶々丸」
 
 「空間の歪みを観測。場所は近いですが、まだ弱く観測しきれません」
 
 「空間転位か? まさかあの白髪のガキじゃあるまいし、空間転位など」
 
 「いえ、訂正します。“時”空間の歪みを観測しました。場所は、広場中央。ネギ先生から五時の方向10m地点です」
 
 時空間、だぁ?
 なんだ、青色ネコ型でも出てくるのか。
 ……下手すると、またこいつらの世界の住人か?
 おいおい、これ以上は勘弁してくれ。
 
 「―――――――さよなら俺の先生ライフ!! 心残りはセツナちゃんを落とせなかったこと…………ってアレ?」
 
 場が凍る。
 空間を歪ませ、出てきたのがアクセル先生。しかもわけのわからん戯言付きで。
 
 「……なんつーか、今いつ?」
 
 「……日曜日、夜中の3時ちょっと。とりあえず訊こう。なぜここにいる?」
 
 「いや、半日かー。よかったわ。また世界を駆けちゃうんじゃないかって心配だったんだよね、俺。で、なんでここにいるかだよねエヴァちゃん」
 
 「エヴァちゃん言うな」
 
 「タイムスリップっつって納得する?」
 
 「ありえんな」
 
 「ですよねー」
 
 タイムスリップだ?
 それで茶々丸が時空間がどうのと言っていたのか? いや、それにしても時間旅行だと?
 信じたくない話だな。
 
 「彼の体質だそうですよ」
 
 「体質って……タイムスリップが?」
 
 「こちらにきて落ち着いた、とも話してくれましたが」
 
 タイムスリップ体質って、どんな面白人間だ。
 じゃあ、何か。
 
 「昔へも飛べるってことか」
 
 「いえ、不確定不定期だそうですから、狙ってどこかに行く、ということは出来ないそうです」
 
 「傍迷惑な奴だな、チクショー」
 
 めんどくさくなってきた。
 
 「アクセル先生!? 逃げてくださ……!!」
 
 「おう、ネギもいるじゃん……って、逃げってってオイ、なんで杖をこっちに向けてますかお前は!?」
 
 「だから、逃げて……!!」
 
 「おわぁっ!?」
 
 アクセルがギリギリで魔力砲撃を避けてみせる。
 おちゃらけた悲鳴とは違って、その動きはきびきびとしたものだった。
 出来るのか、弱いのか分からん奴だ。
 
 「逃げて、アクセル先生……っ」
 
 「無理。そいつあ聞けない相談だな、ネギ。事情は知らんけど、やられたらやり返す。これ常識」
 
 流れはどうあれ、やる気にはなってくれたようだ。
 まぁ、私のシナリオとは違ってきたが、だいたいあってるからよしとするか。
 
 「それに、なんかお前操られてるっぽいじゃん? んで、後ろには女の子。ここで助けたら俺様モテモテみたいな下心なんてありませんよ、ありませんとも。もとい、いい機会だ。ちょっと前からお前に言いたい事あったんだよね、俺様。てことでネギ、ビシッ! と行こうぜ!!」
 
 さて、ギャラリーは……。
 刹那が全員を気絶させて、その上に結界、か。
 どうせ後で記憶も消すだろうし、心配はないだろう。それまでちゃんとぼうやが立ってるか、だが。
 
 「さて、と。面白くなってきたじゃないか」
 
 アクセル先生の実力も見れる。
 ついでにぼうやは、試験を続けられる。
 このまま合格したら事だが、まぁ、その時はその時だ。
 
 「…………っ? エヴァンジェリンさん?」
 
 「お前の実力で立っていて見せろ。でないと意味がない」
 
 「……はい。…………ではアクセル先生、行きます!!」
 
 「おう! ちょっとだけ本気出しちゃうぜぇ?」
 
 操作薬による強制介入を一時中断。
 これからはぼうやだけの実力で切り抜けねば意味がない。どうせ、そろそろぼうやのディスペルも完成する間近だったみたいだしな。あの状況下でそれだけ出来れば本当は合格にしてやっても良かったんだが……、まぁ、めんどくさいしな。
 
 ここで最後だ。
 ぼうや、見事朝日を拝んで見せろ……!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
               track:28  end
 
 
 
 
 
 

テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

病気になってからいいネタが出てきた。あと拍手レス。

ども、草之です。
タイトル通り、腸炎になってから各作品のいいネタがどんどん、ではありませんが、ひとつずつぐらい出てきましたよ。
 
具体的には、『優星』はニヤニヤ。『背炎』はドロドロ。『B.A.C.K』はラストシーン。
全然具体的じゃないのはネタばれになるから。
 
さて。
GG2をイージーでクリアしました。
今はもっぱらCPUと喧嘩してます。鳥にしか勝ってない。栗鮭使い勝手よい。
イライラしたらBBで「大三元!」を聴きに行く。ライチかわいい。今はラグナよりも使ってる気がする。
BBの本腰はきっとGG2にある程度飽きてきてからだと思う。
 
 
 
ということで、更新予告です。
『B.A.C.K』を金曜日の夕方に。
『優星』を来週頭に。
 
来週のほとんどは合宿にいってるので、返事等も遅れると思われます。
また、頭に更新できなかった場合、そのさらに来週にまで伸びる可能性があるので、そのあたりはご了承ください。
 
では以下、拍手レスです。
草之でした。
 
 
 

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テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

B.A.C.K   Act:5-2

 
 「…………」
 
 ぼろぼろに崩れ去った六課隊舎を見上げる。
 昨日の事が嘘のように空は晴れ渡り、だけど、こっちの気分まで晴れやかとはいかない。
 
 「酷いことになってしまったな」
 
 「シグナム隊長……病院の方は?」
 
 「重症だった隊員たちも峠は越えたそうだ」
 
 「そうですか……、よかった」
 
 「高町隊長は?」
 
 「中です」
 
 「様子はどうだ?」
 
 シグナム副隊長にしては、珍しく聞き込んできている。
 そりゃそうか、なんて言ってもなのはさんのことだ。この人たちは私よりも長くあの人を見てるだろうし、だから、無理してるんじゃないかとか、心配してるんだろうな。
 
 「いつも通りです。しっかりお仕事されてます。攫われちゃったヴィヴィオのこととか、負傷した隊員たちのこと、確認だけしたら……あとは少しも」
 
 「……そうか。……こちらは私が引き継ぐ」
 
 手にしていた被害報告書をぱっと取り上げられる。
 
 「お前も病院に顔を出してやるといい」
 
 「で、ですが……」
 
 静かに、二コリとシグナム副隊長は微笑んだ。
 
 「行ってやれ」
 
 「あ……はいっ」
 
 我ながらゲンキンな奴だと思う。
 機動六課の瓦礫を背に、念話を飛ばした。
 
 ――なのはさん、ティアナです。
 
 ――ああ、何?
 
 ――シグナム副隊長が現場を代わってくださって、ちょっと、病院の方に行ってきます。
 
 ――そう。……フェイト隊長もむこうに向かってるはずだから。
 
 ふと、ついさっきなのはさんから聞かされた事を思い出す。
 あれ、言ってもいいのかな。
 
 ――はい。……あのさっき伺った話って、スバルとかシャーリーさんに伝えても?
 
 ――そうだね、伝えて元気が出るようなら教えてあげて。判断は任せるよ。
 
 ――了解しました。行ってきます。
 
 ――うん。気をつけて。
 
 念話はそこで終了。
 淡々とした喋り口は、仕事中のなのはさんそのもので、本当に変わりがなかった。
 そう言えば、ユークリッド隊長も同じ病院で入院してるらしい。ただほとんど匿うような状態で、面会が出来るような状況じゃないとのことだ。出来れば、会いたい。
 隊長たちは会える状態らしいのだが、たかだか教え子だったというだけで会わせてくれるとは思えない。
 ダメ元で訊いてみると意外とイケるかも。
 
 今夜あたり、隊長陣でお見舞いにでも行こうか、という話になっているらしい。
 それについていければ、と思ったんだけどな。
 
 「あら?」
 
 「え?」
 
 六課と公道を繋ぐ連絡通路を抜けるあたり、ふよふよと浮かんでいる人とばったり会った。
 綺麗な白髪と、なぜかその毛先がギラギラと赤く光っているのが特徴的な美人だった。……そういえば、昨日の襲撃で六課を手助けした魔導師がいるって聞いたけど……この人かしら?
 
 「おはようございます、お嬢さん。機動六課の方ですか?」
 
 「え、と……はい。あなたは?」
 
 「ワタクシはクリームヒルト。誇り高きベルカの騎士ですわ」
 
 「クリームヒルト……。あ、えっと、アタシはティアナ・ランスターです」
 
 「フラウ・ランスター。いいお名前です。ここでひとつ相談なのですが、よろしいでしょうか?」
 
 「え?」
 
 
 リニアレールが停車駅でまた止まる。
 乗客が乗って来る度、アタシの手元に目が行く。別に見られるだけなら構わないんだけど、奇異な目を向けられるのはどうも……。
 
 「あの……」
 
 「はい?」
 
 「融合騎……ユニゾンデバイスだったんですね」
 
 「ふふん、そうですわ」
 
 それにしても驚いた。切符も買わずに改札をくぐろうとするものだから、駅員に止められ、なにやら会話の噛み合わない問答を繰り返し、駅員の一言でいよいよキレた。
 
 『貴女、もういい大人でしょう!? ガキじゃあるまいし、人ならちゃんと切符買って下さい!』
 
 『んまーッ!! 人、人間だって言うんですの、このワタクシがッ!? ワ、タ、ク、シ、はっ、デバイスです!!』
 
 『はぁっ!?』
 
 キラリと光ったかと思うと、リィン曹長サイズの人がふよふよと空中に浮かんでいた。
 駅員さんも私も眼をしばたかせて、踏ん反り返る彼女を見ていた。基本、ミッドチルダでは“道具”というカテゴリに入るデバイスは切符を買う必要がない。と、いうか基本的なデバイスはストレージでもインテリジェントでもアームドでも、アクセサリーとして携帯しているのだから、切符を買うという概念がない。そこにユニゾンデバイスだ。
 そもそもユニゾンデバイスは一般には知られていない。教習本にもページの隅にちっさく書かれているような存在で、だからリィン曹長を見たとき、ユニゾンデバイスという言葉を思い出すのに至らなかった。だから使い魔かなにかなんだ、と。
 駅員も使い魔か何かなのではないのか、と疑ってかかったが、クリームヒルトの――――
 
 『脱いで証明してもよろしいのよ!?』
 
 という言葉で折れた。さすがに脱げとは言えなかったらしい。
 ――――というかアタシが止めるわよ、そんなの。
 
 「んー」
 
 「どうかしまして、フラウ・ランスター」
 
 「いえ、知ってるユニゾンデバイスとはえらく違うなって」
 
 リィン曹長は、どちらかといえば逆だ。
 切符はいらないのに、むしろ自分から「子供扱いするなですーっ」と言って買いに行きそうだ。
 みんなと同じ方がいいから、なのだろう。――……ということをクリームヒルトに話すと、彼女はまぁ、と驚いていた。
 
 「自らがデバイスなのに、人でありたがるとは」
 
 「不思議なことですか?」
 
 「デバイスは人ではないのです。デバイスはAIという疑似人格を持つ、機械なのです。ワタクシのこの思考も人の起こす電気信号ではなく、AIに溜められた経験や情報をもとに造られた機械信号でしかないのです」
 
 彼女の話を聞いていて驚くことが多い。
 世の中にはデバイスは機械ではなく、人の思考を持った仲間だ友達だ、という考えを持つ人たちもいる。アタシはここまで極端ではないが、それなりにクロスミラージュを仲間として意識している。
 そんな彼らの主張を、真正面から、撃ち崩すような考えだった。
 
 「ワタクシはデバイスである自分自身に誇りを持っています。それを捨てるような思考を持つことなどナンセンス以外の何ものでもありません。むしろ、腹が立ちます。ワタクシは機械ですわ。それを『キミは人間だ』と言われること、この上ない皮肉だとは思わなくて、フラウ・ランスター?」
 
 「言われてみれば、そんな気もしますね」
 
 まだなんとなくの考えのなか、上の空で頷く。
 道具として生み出されたデバイスに対して、「人間だ」と言うことは、確かに失礼にあたるのかもしれない。
 まぁ、考えても詮無いことなのかもしれないけど。
 
 「大切に扱って、一緒に闘い抜くことこそ、デバイスとしての本懐。機械の宿命。格好いいじゃありませんか、そうは思いませんこと?」
 
 「は、はぁ……」
 
 うう。なんだか饒舌になってきてるよ、彼女。
 そして周りからの目がどんどん白けて痛くなってきてるよーぅ。
 
 『ミッドチルダ北部、ミッドチルダ北部ゥー。聖王教会、聖王医療院に御用の方は、お乗換えの――――』
 
 「あ、お、降りますよっ」
 
 「あぁ、わかりましたわ」
 
 そして、彼女の相談事。
 『ユーリのいる病院へ連れて行ってはくれませんこと?』、だ。
 まぁ、元々行くつもりだったから、それじゃあ一緒に行きましょう、という話になったのだ。
 それでこの長話に付き合わせられたっていうんだから、たまったもんじゃないわ、まったく。
 
 「まぁ、それではユーリは優秀な先生でしたのね」
 
 「あ、はい。隊長は無愛想に見えますけど、なんだかんだって言いながらアタシたちのこと見てくれてて……でも、被撃墜数は六課で一番多かったりするんですよね、あの人」
 
 「無茶は昔からですわ。子供の頃から数ランク上の魔法生物と殺し合い――――」
 
 「え?」
 
 「なんでもありませんわ」
 
 「そ、そうですか」
 
 殺し合いとか聞こえた気がするんだけど、ま、まぁ、そんな時代の生まれなんだろうし、ね。
 そういう言葉がポロッとこぼれてもおかしくはない気がするんだけど、なんでユークリッド隊長の話をしてる最中に?
 
 「さ、行きましょうフラウ・ランスター」
 
 「あ、はい」
 
 気にするだけ時間の無駄なのかもしれない。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「なんで病院におるんか不思議やったけど……ティアナに連れてってもろたんかい」
 
 「そういうことですわ」
 
 昨日の夜、つまり襲撃から一晩目に私たち隊長陣はユークリッドのお見舞いに行った。
 そこにはなぜかこのクリームヒルトがいて、私たちは三人揃って口をあけ驚いたものだ。……と、そんなことはどうでもいい。
 その経緯を説明を受けたのは、単に暇つぶしだったりする。
 
 「ホンマは私も一緒に行きたいんやけどな。あとで聞く」
 
 「本部にご用事?」
 
 「ん、まぁ、そんなとこや。……あっ、シグナム~、こっちこっち」
 
 手を大きく振ると、むこうもこちらに気づいて走り寄って来た。
 隣にいるクリームヒルトを一瞥してから、軽く眉を寄せて低い声音で言った。
 
 「私はタクシーではないのですよ、主はやて。車もテスタロッサのものを借りるくらいなら、テスタロッサ自身に頼めばいいものを」
 
 「すまんすまん。でもな、シグナムに会わせときたかってんよ。こちらクリームヒルト、ユークリッドの……」
 
 「パートナーでしょう、テスタロッサから聞いています。では、こちらへ。お送りします」
 
 「ええ。よろしく頼みますわ、鮮炎の将」
 
 「? ……鮮炎?」
 
 「おや、“こちら”はそうは名乗っていませんの?」
 
 こちら、ということはミルヒアイスの方か。
 そう言えばクロノ君が言うてたっけか、ミルヒアイスは『鮮炎の騎士姫』って呼ばれてたとか。
 んで、ヴィータの話も考えると、間違いはなさそうやな。
 
 「フラウ・ヤガミ。まだお時間はおありで?」
 
 「まぁ、あるけど」
 
 「お二人には話しておきましょうか。『闇の書』のこと」
 
 私はあまり動揺はしなかった。始めて会ったときから『闇の書』について彼女から少し言われたこともある。
 なにか知っていることはわかってはいた。
 
 「喫茶店はこの近くにありますか? 立ち話……それも往来でこんなこと話すものでもないでしょう?」
 
 「ええとこ知ってる。ついて来ぃ」
 
 案内したのは、普通の喫茶店。
 ちょっと笑いを取りに行こうかとも考えたが、まぁ、そんな空気やないわな。
 ただここの喫茶店、店の奥の方に店内からも外からも見えにくい場所がある。声はもうどうしようもないけど、ある程度堂々としゃべってたら気になれへんもんやしな。
 
 「いらっしゃいませ」
 
 「紅茶でエエやろ? ストレート3つな。奥の席おるから」
 
 「かしこまりました」
 
 適当な注文をつけてから席の方へ。
 私とシグナムが並んで座り、対面にクリームヒルトが座る。
 
 「さて。ほんなら聞かせて貰うで、クリームヒルト」
 
 「ではまず……夜天の魔導書がどういった目的で造られたかは――――?」
 
 「知ってる。一応持ち主やで? 各地の魔法の蒐集、研究目的。収集蓄積型の魔導書型ストレージ。始めの頃は蒐集した魔法が行使できる、なんて機能はついとらんかった。いつからか、誰かがプログラムを改変。破壊や殲滅の力を揮う、災厄の魔導書『闇の書』として変化……というよりも進化したというべきか、時代的に」
 
 進化っつーのは元々周りの環境に対応するべくとる、生物の生存本能や。
 戦乱の時代に対応するには、ただの資料本やったら間に合わんかった、てことやろうね。
 
 「そこまで分かっていれば、もう予想はついてるんじゃありませんこと、フラウ・ヤガミ?」
 
 「大体な。けど、予想でしかない。事実はアンタしか知らへんよ。この子らも転生を繰り返し過ぎて昔の記憶が曖昧になってるから、よくは覚えてへん言うてるし」
 
 旅をする機能が転生機能へ、復元機能が無限再生機能へ。
 永久不滅の災厄として成長していった……と。日本の地震雷火事親父より性質悪いわ。ロストロギア次元犯罪者次元断層戦禍の飛来、と、数えれば数えるほど次元世界でも性質の悪いもんはぎょうさんある。
 
 「では言い切りましょう。夜天の魔導書から『闇の書』へシフトした時期は、まさにベルカ戦乱期。ワタクシたちラインハルト仕えるギプフェルと、聖王が戦争を起こしている最中の出来事ですわ」
 
 「やっぱりな。それで、どっち側の魔導師の仕業なんかな、それ」
 
 「もちろん聖王側ですわ。その時代の闇の書……つまり初代は自滅でしたが、それでも我らギプフェル軍と聖王軍の両方を巻き込んだ大規模な魔力縮退爆発でしたからね。あれはさすがに死ぬかと思いましたわ」
 
 魔力縮退爆発て。
 縮退爆発……ってことはアレか、フェルミの方やな。大方広域魔力を闇の書一点に集めてしもうたがゆえに、闇の書蓄積量を大幅に超え、やむを得ず圧縮したら今度は魔力が超高エネルギー体になって、今度は闇の書が飽和状態になってしまって耐えきれずドカン、てな感じかな。想像しただけで震えが止まらん。その時代の大規模戦争がどれくらいの人員を配置してたんかは知らんけど、相当数やったんは確かやろう。その相当数の騎士から一斉に蒐集まがいのことしたんやったら、納得できる話ではあるけどな。
 
 「その時、守護騎士システムもいじられていた、と言って信じますか?」
 
 「信じよう。始めはヴィータが言っていたことだが、そもそも我らは意思を持つ必要がないのだからな」
 
 「そう。夜天の魔導書の守護騎士システムというのは、元々は獣や意思らしい意思を持たないゴーレムのような無機物でしたの。それをどうして意思のあるカタチへ向かわせたのか。――――……答えは単純、より強きを求めたからですわ」
 
 「より強き、か。確かに、意思を持たねば願うことも叶わぬことだ。それで、この姿か」
 
 「……まぁ、守護騎士全員と顔を合わせたわけではありませんが……鮮炎の将――――」
 
 「烈火だ。今はそう名を戴いている」
 
 「失礼、烈火の将は間違いなく我らが王、ミルヒアイスをモデルにプログラミングされていますわ。まぁ、聖王の欲望だと簡単に想像がつきますがね。いやらしい……」
 
 「当時敵対し、仲間にすらならなかった王を聖帝と呼び、そのうえ姿を模した烈火の将シグナムを従える。とんでもないオナニー野郎やな、聖王って」
 
 隣にいるシグナムがぎょっとして目を見開くものの、私は気にはせん。
 別に男の人が同席してるわけやないんやし、一言くらいもれもするっちゅうねん。
 
 「お待たせしました、ストレートティーでございます」
 
 「どうも」
 
 ウエイトレスが順々にティーカップを置いていく。置き終わると一礼し、「ごゆっくり」と決まり文句を言ってから下がる。
 まずは来た紅茶に口をつけ、喉を潤す。クリームヒルトは相変わらず舌先でちびちびと舐めとっていた。
 
 「…………まぁ、女性、なんですけどね。聖王って」
 
 「ブ――――ッ!?」
 
 「うわっ、ちょっとフラウ・ヤガミ!」
 
 「おお、すまん。いや、それホンマなんか?」
 
 「戦乱期のベルカの王といえば女性が一般的でしたわ。『強化』が成功した事例はほとんどが女性。ですから、自然と王位を継ぐ者が女性となるのも自明の理。証拠に、ミルヒアイスも女性ですもの」
 
 女性か。
 いや、それはそれで置いておくとして。今は『闇の書』のことを聞かなアカン。
 それをクリームヒルトに伝えると、わかりましたわ、と上品にカップを置いて、改めてこちらに向き直った。
 
 「ワタクシが知る限り、闇の書の守護騎士プログラムのモデルはミルヒアイスを筆頭に、聖王配下の王や、強力な力を持った騎士、と選び抜かれた精鋭がそれとしていました。ただ、劣化コピーなのは推して知るべし、ですわ。証拠に、烈火の将はミルヒアイスのレアスキル『母なる竜の揺り籠』を持ち合わせておりません。…………ただ、烈火の、この頃頭痛を経験などは?」
 
 「この頃はマシになってきているが、一番酷いときで鼻血が出た。あとは……不思議な感覚が出てくるときもある」
 
 「不思議な感覚?」
 
 「いや、第三者の眼と言うべきか。五感で感じる情報全てを統括した視界が見えるようになる。まるでゲームの視界のように、自らの背が見え、意識だけが外へ放り出される感覚だ。その感覚が続く間、時間が間延びしたような、ありえない速さで動けるようになる」
 
 「――――竜の感覚、ドラッヘンズィン。貴女にはドラッヘンズィンが使えるのですね……!?」
 
 「……テスタロッサも言っていたな。何なんだ、それは」
 
 「真竜に代表される、古代希少種の魔法生物に宿る“超感覚”のことですわ。ヒトで使えるのはミルヒアイスだけ。ですが、その劣化コピーである貴女にも、それがまた使える。……いえ、この場合、共鳴して一時的に使えるようになっている、というべきですか」
 
 「?」
 
 シグナムと顔を見合わせる。
 ドラッヘンズィンが一体どういうものなのかはわかったが、共鳴、という言葉の意味がわからない。
 クリームヒルトはひとりでぶつぶつと呟き始め、仕舞いにはデバイスサイズになってぷかぷかと浮かんで考えだした。
 それほどかからず、クリームヒルトが顔を上げ、アウトフレームをフルサイズにまで大きくし、紅茶を一口で飲みきった。
 
 「確率計算をしましたが、十分ありえる範囲です。烈火の、貴女はミルヒアイスと共鳴している」
 
 「……共鳴とは?」
 
 「完全同位体である貴女たちは、どちらかが魔法を行使するときに波が発生します。これはまぁ、仮に魔導振動などと名付けておきましょう。その魔導振動が空気中を伝わり、もう片方にその魔法の情報が流れ込む。頭痛の原因がこれです」
 
 「……ちょい待ち。確率計算言うたけど、まさかそれ、魔導振動? の届く距離とか、一から計算したんか?」
 
 「そうですけど、何か?」
 
 アホ言うな。
 そもそも魔導振動なんて言葉はない。というか、魔法がそういうものを発生させているということすら言われたことがあっても、それが何の意味を持ってどんな効果を与えるのかなんて、あまりに無意味な研究材料だ。
 なぜなら、魔法そのものに効果があるからだ。その余波には魔力素というものが含まれているだけで、他には何も無い。
 だが、クリームヒルトが言っていることはその根底をくつがえず。
 つまりだ、クリームヒルトが言っていることは、まったく同じ魔導振動を持つ者同士ならばその能力を共有しあえる、お互いがブースターとして成り立つ……。そんなことを言っている。
 研究者が数年は賭けて取り組むような議題であり、また確率計算とあっさり零していたが、それがどんな難解な計算であるか想像に難くない。しかも、しかもだ。実験なしで、計算だけでここまでくるものなのか?
 
 それをこの短時間で解いてしまうのか。
 学会で発表すれば博士号間違いなし、そのうえ賞すら取れるだろう答えを、たった数分で。
 
 「あんたの能力が今やっとはっきりわかったわ。昨日のレアスキルの説明やったらピンとせえへんかってんけど、今のでわかった」
 
 「? ありがとうございます? ……とにかく、魔導振動により情報の共有化が出来た貴女たちは、そのレアスキルすら共有した、とそういうことです。ですが、所詮烈火の将は劣化コピー。ドラッヘンズィンはその五感すべての情報を統括する感覚能力。烈火の将の能力が追いつかず、むしろ諸刃の剣として機能してしまっているのではなくて?」
 
 「確かに、それは言える。今でこそ何でもないが……右腕にヒビが入った」
 
 「…………見方によっては、活路が見出せたというべきでしょうか。あと……あとひとつ足りませんわね」
 
 ミルヒアイスはそのまま思慮モードに突入。
 私は私で紅茶を啜り、物思いにふける。と、言っても耽るようなこともあんまりないんやけど。
 
 ……なんか、タイミングずれっぱなしやな。
 ユーリ、なんか……会いたい。
 
 「…………そう言えば、お時間、よろしいのですか?」
 
 「あ、そろそろか。んじゃ、出よか」
 
 「主はやて、私が払います」
 
 「ん。じゃ頼んだ」
 
 クリームヒルトと一緒に店を出て、シグナムを待つ。
 しばらくして、シグナムが出てきた。クリームヒルトをシグナムに任せ、私は地上本部へ足を向ける。
 また胃が痛くなりそうなことをしに行かないといけないのか、と考えると足が重い。
 
 「くっそ、なんなんや、この気味の悪さ……背中がムズムズする」
 
 街中の復旧作業ひとつひとつが何か歪んで見える。
 実際そんなことはないだろう。ただそう見えて、そう感じるだけ。
 お告げ、とかそういう類のものやろか……。
 
 「気にしても始まらん。出来る事を今はやる。出来ることがあるだけマシや!」
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「……あとひとつ、どうにかして埋まらないものかしら」
 
 「…………訊きたくはないが、それほど考えるまでに、私の勝機は薄いのか?」
 
 「薄い……? いいえ、ゼロですわ。貴女に勝機を見出すためにあとひとつ、何かあればと考えているのです」
 
 車に乗り込むとき、「何があとひとつ足りないんだ?」と訊いてみたところ、私とミルヒアイスが戦って勝利するための要因だそうだ。
 つまり、クリームヒルトは私がその要因なしに勝利はないと考えているということになる。
 それを今訊いたのだが……、見ての通りのようだ。
 
 「そもそも、ミルヒアイスをヒトの域で倒そうと考えるのが前提違いなのです。対人戦とは考えない方がよほど懸命ですわ」
 
 「どんな化け物だ……」
 
 「その通り。ミルヒアイスは化け物です。人を超え、竜を超えた魔人。それが彼女なのですから」
 
 聞こえはいい。
 人では相手にならず、竜すら退ける。
 なるほど、聖王と渡り合えるだけの力があるはずだ。
 聞こえはいい。
 
 「今の管理局の武装隊一個大隊でかかっても、数分持つかどうか。彼女が遊べば十分耐えることは出来るでしょう。本気なら最悪一振りで勝負は決しますわ。彼女の一番怖いところ、それは彼女ひとりがもはや一国の軍隊であるということ。『母なる竜の揺り籠』は、それほどの力を持ったレアスキルなのです」
 
 「それと私が戦って勝てると、お前は思っているんだな」
 
 「ええ、思っています。ですが、先ほども言った通りあとひとつ足りないのです。……まったく、こんなときにブリュンヒルドはどこに行ったというのですか……」
 
 聞き慣れない単語が出てきた。
 ブリュンヒルド。名前だろうか。どこに行った、ということは人物……で間違いないだろう。
 
 「それは、誰だ?」
 
 「ミルヒアイスが造り上げた融合騎ですわ。ワタクシの義妹に相当します。私とは違い、万人に使いこなせる汎用性の高い子でしたが……出力だけは馬鹿に出来ない子でしたわ」
 
 「…………」
 
 「魔力光はミルヒアイスと同色の紅。ただ、ミルヒアイスが造ったにしては少々子供っぽ過ぎる性格が難ですが。……まぁ、わからなくもありませんよ。彼女の考えはね」
 
 「どういうことだ?」
 
 「彼女の体質にも関係がありますわ。後ほど、話す場を設けていただいているのでしょう、今日は」
 
 頷く。
 これから向かう陸士108部隊でその場は設けられている。
 参加するのは部隊長のナカジマ三佐、なのはとフェイト、私とヴィータの隊長陣。その場には集まることが出来なかったが、クロノと騎士カリムも通信越しに参加する。……直通で六課隊員にも筒抜けになるそうだが、こちらは一方通行の通信。つまり放送だ。
 ……まずはスバルについて、ナカジマ三佐から直接訊く。ナカジマ三佐には辛い話にもなるだろう。
 
 「……クリームヒルト」
 
 「あの、烈火の……。ひとつよろしいでしょうか?」
 
 「なんだ?」
 
 「クリームヒルト、という呼び方はどうにかなりませんかしら? むず痒いのですけれど……」
 
 「……では、クー、だったか」
 
 「ええ、それで呼んでもらえると楽ですわね」
 
 「ならお前も烈火の、などと呼ばずにシグナムと呼ぶといい」
 
 クリームヒルト、クーは一瞬だけ顔を歪ませ、その次には呆れたように微笑んでいた。
 頷くことも、返事をすることもなく、ただ深々とシートに座り直すだけだった。
 
 「クー、お前はミルヒアイスがこちらに戻るとは思わないのか」
 
 「さぁ、会ってみなければどうとも言えませんわ。彼女が本気かどうかはね」
 
 ……私がミルヒアイスと戦う。
 それを知ったユーリはどう思うだろうか。怒るだろうか、心配するだろうか。心配するとして、一体どちらを心配するだろうか。
 私? ミルヒアイス? 詮無いことだ。……こんなことだから、ヴィータにも『恋する乙女』だのと言われるんだろう。まったく、そんな気持ちは一欠片もないというのに。
 
 「ユーリのことは、心配か?」
 
 「どうでしょうね。ただ、あの子は……今までのラインハルトの騎士とは違う運命を辿っています。切り開き、前へ進むことに関して、ことユーリは歴代のラインハルトの騎士の中でも最高位に位置します。だから、信じてみませんか、あの子を」
 
 「……信じている。クー、お前に言われるよりももっと前にな」
 
 「それは結構ですわ。まぁ、心配せずとも打開策は考えておきましょう。貴女が勝てるように、ね、シグナム」
 
 アイツが……ユーリが起きたら、まず真っ先に殴ろう。
 そう思った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                Act:5-2  end
 
 
 
 
 

テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

特定記事を先頭にするのってどうやるのかわかった。そして拍手レス。

ども、草之です。
ブログの先頭記事を『作品一覧』にしました。
 
これで携帯からでも探さずに飛べるはず。
あとで自分のケータイで確認しときます。
それに伴い、パソコンの方でご覧の方には追記から一覧を開いていただくカタチになってしまいます。
お手数おかけします。
本当の最新記事……つまり『作品一覧』の次に表示される記事が見づらくなりますがご容赦を。
 
 
今週末は岸和田だんじり祭りですね。もし近所の方がいたらどうぞ足を運んでみてください。
ただ、当日はシルバーウィーク真っ只中なうえに、それでなしともそれなりの人数が来る祭りなので、人の波などには十分ご注意を。
 
 
 
さて、更新予告の方ですが。
『優星』はなんとか明日イケそうな気がします。
『B.A.C.K』を来週中に更新予定。大学が始まる前に一本更新します。
 
 
では、以下拍手レスです。
草之でした。
 
 
 

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テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

その優しい星で…  Navi:30

 
 「結局これか……」
 
 晃ちゃんがため息交じりに目の前のものを見て言う。
 もっと言うなら、これを教えてくれたのは灯里ちゃんだ。
 
 「……むぅ」
 
 腕を組んで、目の前のモノを観察する。
 きっと晃ちゃんの頭の中では、今でも灯里ちゃんのあの言葉が繰り返されているんだろう。
 
 『――それなら、日付も近いですし、日頃の感謝も込めるんならうってつけのイベントがあるじゃないですか』
 
 晃ちゃんはいくつかを手に取って、こちらを向いて問うた。
 
 「なぁ、アリシア、アテナ。どれがいいと思う?」
 
 「溶かしちゃえばどれも一緒じゃない?」
 
 「なっ? アテナ、お前まさか……」
 
 「あれ、そうじゃないの?」
 
 違うの? と首をひねるついでにこちらを向いて確認するアテナちゃん。
 苦笑いで応えて、私は晃ちゃんに向き直した。
 
 「晃ちゃんは、手作り、しないの?」
 
 「うぐぐ……」
 
 手に持ったモノを握りつぶさんばかりの力で握りしめている。
 面倒くさい、という理由なのか、それとも手作りはさすがに恥ずかしい、と思っているのか。どちらにしろ、私たちが手作りするって言ってる手前、きっと負けず嫌いな晃ちゃんのことだから、お店で買ったものを直接渡すということに抵抗を感じているんだろうと思う。
 
 「…………作るよ」
 
 「なら、あっちの業務用をひとつ買ったらいいんじゃないかな」
 
 アテナちゃんが指を差している棚には、どかん、とひとつが数キロという大きさのものがあった。
 
 「いや、あれは……デカ過ぎ」
 
 「でも、保険として」
 
 「保険でもあんなにいらないだろ……。あんたは一体どんだけ失敗するつもりなのよ……」
 
 さっきまで悩みに悩んでいた晃ちゃんが、先導するようにぱっとふたつほど適当な箱を手に取る。
 それを掲げながら、胸を張ってこう言った。
 
 「適当でいいんだよ、溶かすんだから」
 
 さっきまでそれ、私たちが言ってたんだけどな……。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「って、ことらしいんだけどね、藍華ちゃんとアリスちゃんはどうする?」
 
 「どうするったって、いいんじゃない?」
 
 「でっかい賛成です」
 
 じゃあ、練習が終わってから買いに行こう、ということになった。
 その日の練習中、私は特に意識していなかったにも関わらず、ミスを連発。どうやら、無意識に意識していたらしい。
 灯里からは笑われ、後輩ちゃんからはあきれられる始末。この三人の中で一番の先輩がこんなことでどうする……。ああ、先輩としての威厳がなくなっていく……。
 などと冗談混じりに言ってみると、灯里は苦笑いしながら「そんなことないよ」と言ってはくれたものの、苦笑いが全てを物語っていたりするところを見ると、灯里はやっぱり灯里だった。
 後輩ちゃんに至っては「威厳?」と首をひねってくれました。始めっからそんなものあったんですか、と言外に言ってくれましたともさ。いや、確かにね、操舵技術では負け……ちょっとだけ負けてるのは認めるわよ。でも、先輩に対してそれはないんじゃない……?
 
 「あー、参ったなぁ……」
 
 今日の失敗の数々に対して、だ。
 なんていうか、練習に身が入らなくなるほど楽しみにしてる自分がいる、ということに今さら気がつく。
 そりゃあ確かに、衛宮さんには普段からお礼だけじゃ足りないくらいのお世話をしてもらってるのはわかってるけど、だからってこれはない。練習を二の次にしちゃったら本末転倒ってやつだ。
 
 「……あー、のさ。午後の練習止めにして、もう買いに行っちゃったりしない?」
 
 「何言ってるんですか、藍華先輩。練習はきちんとしようって言ったの先輩ですよ」
 
 「そりゃ……そうでした」
 
 昼食を終えて、私としては渋々と練習に戻る。
 逆に考えるとしよう。意識出来たんだから、それに注意を払っていれば午前中の練習みたいにミスを連発することはなくなるはず――――っ!
 
 ――ガン。
 
 「あ」
 
 本日幾回目かの壁とのキッス。
 ごめんよ私のゴンドラ、どこの誰とも解らない人が住んでる家の壁にキッスなんて……。
 ……あらゆる意味で痛いわ。
 
 「でっかい不注意です」
 
 「面目ない……」
 
 「こ、こんな日もあるよっ、藍華ちゃん!」
 
 「こんな日だからぶつかってんでしょーが」
 
 せっかくの灯里のフォローも自ら潰しつつ、気を取り直してもう一度狭い水路を視界に納め直す。
 まずは、そうだ。あの橋まではぶつからないように漕いで行こう。
 
 「よっし」
 
 今度こそ、ぶつかりはしないぞ。
 そんでから、あの橋まで行ったら、また新しい目標を見つけて、そこまでがんばる。
 それを続けてたらきっともうぶつかる心配はない。
 
 「…………」
 
 なにかを考える暇もなしに何かに集中したら、大丈夫。
 大丈夫だいじょ――――
 
 ――がこん。
 
 「う、わっ!?」
 
 しまった、今度はゴンドラ同士――――じゃなくて、落ちるっ!?
 
 「わ、わ、わ、わっ」
 
 バランスを崩し、一歩二歩とたたらを踏む。
 視界がどんどん上を向いていく。
 灯里たちの顔が見えるけど、もう助けられる位置じゃない。
 そのまま青空を見上げるまで上を向いて…………
 
 「よっと」
 
 「ほ?」
 
 「大丈夫か、藍華」
 
 上を向ききった視界の横に、見知った顔があった。
 水路の端から手を伸ばし、水に落ちる寸でのところで私を支えてくれている。
 ……衛宮さんだった。なんというか、タイミングのいい……。
 
 「あ、ありがとうございます」
 
 「よっと……立てるな?」
 
 「あ、はい」
 
 腕の力だけで私の身体をゴンドラの上まで持ち上げ、ぶつかったゴンドラの人に一緒に謝ってくれた。
 どうも、今まで買い物をしに行っていたらしい。こんなところまで? と訊くと、紙袋の中からひとつ、新聞紙で包まれたものを出した。「開いてみな」という衛宮さんの言葉で、渡された灯里がカサカサと音をたてながら包み紙を開くと――――
 
 「わぁっ」
 
 「この前見たとき、えらく気に入っちゃってな。とりあえず6枚ほど買ってきた」
 
 ネオ・ヴェネツィアンガラスで出来たお皿だった。
 キラキラと光を反射しながら、灯里の手に収まっているお皿は、なぜだかとても誇り高いもののように見えた。
 じっと見つめていると、衛宮さんに苦笑いしながらそろそろ行くぞ、と声をかけられた。包み紙に包み直して、衛宮さんに手渡した。
 
 「やっぱり、皿が違うと味も変わって感じるからな」
 
 そう言って衛宮さんは笑って去って行った。
 だから、また食べに来い。そう言ってるようにも聞こえた。なんだか都合のいい解釈にしか思えないけどね、自分でも。
 だけど実際、衛宮さんは大勢で食べた方がおいしい、と言っていた気がする。だから食べに行くのだ。
 
 「やっぱり、お昼から買いに行きましょう」
 
 「え?」
 
 「アリスちゃん?」
 
 正直、これには驚いた。
 あの後輩ちゃんが練習をほっぽり出してでも買いに行こうと言い出したのである。
 だけど、驚くと同時にいじり甲斐も出てきたもの事実。
 
 「なに、改まって?」
 
 「いえ、その……」
 
 口ごもる後輩ちゃん。
 追い打ちをかけるように、ニヤついて見せると、真っ赤になりながら睨んできた。
 あはは、かわいいかわいい。
 
 「その……お世話になりっぱなしなのは悪い気がして」
 
 「でもさ、衛宮さんって実際そういうの全然気にしてなさそうだよね。ね、灯里?」
 
 「うん、きっと気にしてないよ。士郎さん優しいもん」
 
 優しいってのとはちょっと違う気もするけど、優しいのもまた事実。
 というか、今回に限ってならお世話をかけたのは私だし。
 
 「それじゃ早速買いに行きますか?」
 
 「うんっ」
 
 「はいっ」
 
 私たちが繰るゴンドラは、一路お菓子屋へと進んだ。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 異変を感じ取ったのは今朝のことだ。
 いや、異変なんて大仰なものじゃない。なんというか、今朝からアリシアを筆頭に灯里、藍華、アリスがそわそわとしているのだ。
 俺に何をしているのかバレないように、“何か”をしている。もうすでに何かをしていることはバレてるってことだ。何をしてるのかはさっぱりだが……。
 だから、というのも変な話だが、あえて訊かないようにしている。
 
 「どうしたんですか?」
 
 「ん、いや、なんでもない」
 
 隣で夕食の皿を洗うのを手伝ってくれているアリシアが不思議そうに首をかしげた。
 どうやら、顔に出ていたらしい。
 
 「あらあら、うふふ。変な士郎さん」
 
 「…………」
 
 変なのはお互い様、と思わず口にしそうになって飲み込んだ。
 ここでバラしてしまっては、せっかくの好意――かどうかは知らないが――を無駄にしてしまうというものだ。
 それにしても、と思う。
 
 「……帰って来てから、アリシアから甘い匂いがするんだけど……香水とかつけてたっけ?」
 
 「えっ?」
 
 「なんというか、こう……バニラに似てるんだよ、匂い」
 
 ちょうど夕食の準備を進めていたときだろうか。
 ふとすれ違ったときに始めて、ふわりと漂ってきたのだ。
 灯里からはそれらしい匂いは漂ってはこなかったのだが……。
 
 そう言えば、今朝は予約がなかったのに早くから出掛けていたな、アリシア。
 何か関係が――――あるに決まってる。お菓子、だろうか。
 
 「……えっと、そんなに匂います……?」
 
 「ん、気にはならない程度にな」
 
 あはは、と苦笑い。
 微妙な笑顔のまま、こちらを向いた。
 
 「もうすぐ分かりますよ」
 
 「楽しみだ」
 
 ちょっとした皮肉のつもりだったのだが、今度はなぜか嬉しそうに笑った。
 どうやら、俺の皮肉を素直に受け止めたらしい。楽しみだ、といわれて、嬉しいのだろう。
 
 食器の片付けも終わり、いつものように食後のお茶を飲んでいる時だった。
 不意に、電話が鳴った。
 
 「あ、私が取りますよ」
 
 俺が腰を上げた瞬間のことだった。アリシアは一声だけかけると、トタトタと階段を駆け下りて行った。
 しばらくして、一階から灯里を呼ぶアリシアの声がした。それになぜか待ってました、という反応で妙に張り切りながら降りて行った。
 
 数分は待っただろうか。
 長いな、と思っていたところに階下から声がかかった。
 
 「士郎さーん」
 
 「ん、なんだぁ?」
 
 「ちょっと降りてきてくださーいっ」
 
 灯里の声だった。
 残った紅茶を飲みほしてから、階段を降りて行く。
 
 「えへへ、どうぞー」
 
 そう言って、灯里が扉を開けた。
 外に出ろ、ということなのだろう。いよいよ“何か”が始まるらしい。
 さて、なにが出てくるのか……。
 
 「士郎さんっ」
 
 隣で歩いていた灯里が突然声をあげ、ととと、と走ってバルコニーの角を曲がって行った。
 追うように曲がると、そこには――――
 
 「士郎さん、いつもありがとうございますっ」
 
 「衛宮さん、お世話になってまーす!」
 
 「でっかい感謝のしるしです」
 
 「あらあら、うふふ」
 
 「この晃様が直々に企画立てしてやったんだ、感謝しろっ」
 
 「ありがとう」
 
 「――――お?」
 
 わけがわからなかった。
 灯里、藍華、アリスだけではなく、忙しいはずの三大妖精までそろい踏み。
 これは――――驚いたな。
 ……いや待て。ありがとうって、なんだ?
 
 「今日は何月何日ですか?」
 
 アリシアが二コリと笑って尋ねてきた。
 確か――――
 
 「2月の14……あ」
 
 いくらなんでも、この俺でも、わかる。
 地球でいう、もっと限定すると日本で言うバレンタインデー。
 趣旨は違うが、どうやらそういうことらしい。
 
 「は、はははっ」
 
 笑ってしまう。
 笑ってしまうくらいに――――……俺は嬉しかった。
 
 「は、はは、はははは!」
 
 ポカンとする六人を置いてけぼりに、俺は止まらない笑いを止めようともしない。
 なんて、あたたかいんだろう。
 
 「いや、ごめんごめん。はは、いや、ありがとう、だな」
 
 「はい」
 
 目に溜まった涙をぬぐいながら、呟いた言葉にアリシアが返事をする。
 六人はそれぞれ手の平サイズの箱を取り出し、順番に俺に渡していく。そうか、甘い匂いがしたのは、チョコレートを作ってたからか。
 にしてもバニラって……鼻でも詰まったかな。
 
 「ありがとう」
 
 そう言うだけで、目の前のウンディーネたちはパッと表情を明るくする。
 ひとつひとつの箱を見る。どうやら灯里たち後輩組は市販のものをそのまま贈ってくれたらしいが、アリシアたち先輩組は手作りのもののようだ。どうして違いが分かるかというと、包装紙の包み方だ。
 
 「食べてみてもいいかな」
 
 「もちろん。しっかり味わって食べることだな」
 
 「なんで偉そうなんだか……」
 
 踏ん反り返る晃に一言突っ込みつつ、ひとつ箱を選ぶ。
 あ、と声を上げたのはアテナだった。
 
 「アテナの?」
 
 「そうだよ。どうぞ」
 
 「それじゃ……」
 
 カサカサと包装紙を取って、箱を開け、中身を見た。
 形はそれほど凝ったものではなかった。溶かしてそのまま固めたような、丸っこいビー玉サイズのものがコロコロと数個。
 その中のひとつをつまんで口の中に入れた。じわり、とチョコが解ける。
 
 「うん、美味しいよ」
 
 「よかった……」 
 
 アテナはほっと胸をなでおろした。
 ただ、なにが美味しいのか、と訊かれると返答に困るんだか……。普通に美味しいのだから仕方ない。
 今度の箱に手をかける。途端、晃がニヤリと笑った。どうやら晃のものを引いてしまったらしい。
 
 「……食えるものなんだろうな?」
 
 「なっ、私だって人並みに料理くらいできるわっ!」
 
 アテナのチョコの箱を一旦戻し、晃のチョコの箱を開けた。
 料理が出来るというだけはあるみたいだ。形、というよりも、中身が凝っていた。
 くるみ入りだ。
 
 「本当に好きだな、お前」
 
 「美味しいものに美味しいものを足して不味くなることはない。足したら増える、これ常識」
 
 「偉そうに言う事でもないぞ、それ」
 
 苦笑しつつ、ひとつを口に放り込む。
 カリカリとしたくるみの食感と、チョコレートの甘さがいい感じに混ざっている。絶妙なくるみの量だ。
 素直に驚いた。
 
 「美味しい。意外だな……」
 
 「さっきから失礼だなっ!」
 
 「はははっ、これくらいがお前に対してちょうどいいんだよ」
 
 と、言いながらももうひとつパクリ。
 さて、と残った箱を見る。もちろん、アリシアのものだ。
 
 「どうぞ?」
 
 なかなか開けようとしない俺を不審に思ったのか、首をかしげながらアリシアは催促した。
 心なしか、彼女の頬に朱が差しているような気がする。太陽が沈みきっているのでよくは分からないが、なんとなくそう見えた。
 前の二人はあっさりと箱を開ける事が出来たのに、どうしてか恐る恐るとアリシアの箱を開けた。
 
 「……これ……凄いな」
 
 「あ、あらあら」
 
 菓子細工だった。
 そんなに精緻なものじゃなかったけど、土台になるチョコの上に人を模してさらにチョコを重ねている。
 そのチョコの見た目は、アリシア自身と俺だった。とりあえず、それが誰なのか、ということが分かる程度には上手く作ってあった。
 俺だけならわかるんだけど……アリシア自身って……どういう意味で入れたんだ、これ。
 
 「…………」
 
 ど、どうする。
 俺の形のチョコを食べるか、アリシアの形のチョコを食べるか。
 一つ間違えば、即エンドな気がしてならない。
 
 「……い、いただきます」
 
 「あ」
 
 手に取ったのは、俺の形のチョコの方。
 聞こえづらかったが、アリシアが切なそうな声を出した気がした。
 それでも手を止めず、口の中に俺型のチョコを放りいれた。……うん、味は美味しい。
 
 「ど、どうですか……?」
 
 「美味しいよ、これ。うん、美味しい」
 
 「あ……良かった……」
 
 そして、自分でも気づかず、いつの間にかアリシア型のチョコも手に取って、パリ、と食べてしまっていた。
 気づいた時には、遅かった。
 
 「あ……あ、あぁいや、お、美味しいよ?」
 
 「う、あ、あ、や……はい」
 
 どうして真っ赤になるんだ、アリシア!?
 反応に困る、困るんだ……っ。
 
 もはや味なんてわからない。
 甘いも苦いもわからない。
 
 「あ、あははははは…………」
 
 「あ、あらあら~」
 
 笑い合うしかなかった。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「脈ありだな」
 
 「はい?」
 
 晃さんは、突然私の部屋に来たと思えば、急にお茶を要求してそんな言葉を吐いた。
 なにが脈ありだというのだろう。
 
 「お前、意外と鈍感だな」
 
 「意外ってなんですか、ちょっと」
 
 「まぁ、お前はわからんないんだったらそれでいい」
 
 「なんなんですか、もー」
 
 仕返しにと少し乱暴にお茶を出した。
 ム、と唸ってから、口をつける。
 
 「あと、紅茶の入れ方くらい衛宮から習っとけ」
 
 「あのですね、晃さん? 私は晃さんの専属お世話係とかじゃないんですよ?」
 
 「やかましい。後輩が先輩に尽くさず誰に尽くすって言うんだ」
 
 「アリシアさん」
 
 「ぼけっ!」
 
 かつん、と軽く叩かれる。
 何事かわからないまま、また晃さんはしゃべり始めた。
 
 「とにかくだ、祝うことになったらちゃんと祝ってやれっていってんだ」
 
 「はぁ……?」
 
 「気のない返事禁止」
 
 「はい」
 
 わけがわからない。
 ……もしかして、晃さん、私をプリマに……!?
 やば、これ、ちょっと洒落になってないかも……!
 
 「お茶の入れ方、今度衛宮さんから習っときますねー」
 
 「な、なんだ突然……」
 
 「いいえ、なんでもないですよ?」
 
 私の時代は近い……っ!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                Navi:30   end
 
 
 
 
 

テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

ただいま帰りました。そして拍手レス。

ども、草之です。
地獄に仏、そして合宿場所がお寺というアレ。
 
この4日間でのどが逝かれました。
なのにカラオケに行きたいこの衝動はどうしてくれようか……ッ!!
というわけで、4日間の合宿に行って参りまして、帰ってきてこれを書いております。
 
いや、一日11時間が練習時間って……どんだけ……。
 
ともかく。
今週のマガジンやばかったよね。面白さが。
特に『一歩』と『我間乱』。
『エア・ギア』もよかったけど……3週休み……だと……!?
あと、地味に『むつみさん』面白いですよね(笑)。
むつみさん、マガジンのヒロイン(?)の中で今一番輝いてる気がする(笑)。
 
 
合宿帰りになんばのソフマップに立ち寄って、ネギま!のOADとペルソナのライブDVDを買ってきたりもしました。これから見ようと思います。とても楽しみです。外の空気がこんにおいしいなんて知りませんでした(笑)。
 
 
 
さて。
ということで、更新予告です。
とりあえず『B.A.C.K』を来週の月曜日に更新したいと思います。
今なら光速で書ける気がするので、筆が乗ったりしたら日曜にあげるかもです。
 
では、以下拍手レスになります。
 

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テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

B.A.C.K   Act:5-3

 
 『ぐあああっ、ああああああッ』
 
 「ドクター、もう制御が……」
 
 「判っているとも。もう制御する必要はないよ……もう、ね」
 
 モニターの向こう、実際は数々の魔力遮断性の壁や、衝撃緩和の壁を数百と折り重ねた最下層になるが――――そこで暴れまわるひとつの影。
 すでに十を超える障壁を斬り刻み、潰し、砕いたその影は、今もなお疲れることを知らずに暴れ続けている。
 
 「障壁の全破壊までの所要予測時間は……あと約5日です、ドクター」
 
 「十分さ、クアットロ。彼女が激昂するまでには、ね」
 
 「今でも十分怒っているようには見えるのですけれども?」
 
 「まさか。今の彼女はただ苛立っているだけだよ」
 
 『スカリエッティーッ!! 聴こえているのなら、いい加減返事をしなさいっ、ぐ、あ、あああああああああああッ』
 
 おそらく、今の彼女の体内では急激に仕込んでいたナノマシンが数を減らしていることだろう。
 常人を操るには十分の数の、さらに数倍の濃度で仕込ませていたものも、あと数日持つかどうか、といったところだろう。
 ふむ、さて……。
 
 「クアットロ、繋げてくれ」
 
 「はい」
 
 「ごきげんよう、ミルヒアイス」
 
 『フーッ、フーッ……、スカリエッティー……』
 
 若干の苦しみを顔に出しつつ、平静を取り戻したミルヒアイスは静かにその場に佇んだ。
 
 「君は覚えているだろう。聖王が使った機動魔導兵器『聖王のゆりかご』を」
 
 『……あれをどうしようっていうのかしら……?』
 
 「どうもしないさ。ただ動かして、理想の研究環境を作るだけだよ」
 
 『覚えておきなさい。それを“どうかする”っていうのよ』
 
 そう言って、彼女は壁を一度殴った。
 ただでさえボロボロだった壁にさらにクモの巣のように亀裂が走り、ガラリと他の場所の壁が崩れた。
 
 「そうカッカしないでくれ。君には……まだしてもらいたいことがあるんでね」
 
 『フン、もう無駄よ……。あなたが仕込んだ小細工なんて、ハァ……、もう、ほとんどが役立たずになってるわよ』
 
 「承知しているよ。ただ……そうだね、物事にはタイミングが重要になってくるということくらい、理解しているだろう? そういうことさ、タイミング……君は、私が仕込んだナノマシンなんてなくても、私が望むように動いてくれるだろうね」
 
 『…………ッ、どういう、ことなの……?』
 
 「どうもこうもないさ。とりあえず、それだけは伝えておくよ。それでは、ごきげんよう」
 
 通信を切るようにクアットロに指示を出す。
 モニターの向こうで、またミルヒアイスが暴れ出す。それを横目に、クアットロに指示を出す。
 
 「クアットロ、君はそろそろあの子の方へ行っておいてくれ。私もすぐに行こう」
 
 「了解しましたわ、ドクター」
 
 クアットロは頷くとすぐに踵を返し、奥へ奥へと進んでいった。
 古代の最高傑作と、私の最高傑作……さて、さてさて。
 
 「どちらが、先に手を下せるのだろうね……」
 
 面白いゲームになりそうでなによりだ。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 『――――……さて。次は……』
 
 「くぁ……ふっ」
 
 クリームヒルトは欠伸を挟みながら、緊張感の欠片も感じさせない様子でふよふよと浮いている。
 戦闘機人の話をしてから、ということにしていたのだけど、どうも退屈していたようだ。普通に聞いていれば重々しい、価値観が揺すられそうな話だったというのにだ。
 
 『キミは……なんでそんなに……』
 
 「はい? 戦闘機人なんて、まだまだ人道的ではありませんか。それに、マン・ナカジマもおっしゃっておられたでしょう? 『戦闘機人が実用化に至った例はない』と。それなら人間爆弾でも作っている方がよっぽど役に立ちますわ」
 
 『…………』
 
 ……あぁ、そうか。
 価値観から違うんだ。戦争というものを経験した者と、戦争というものを知る者とでは、天と地ほどの差があるんだ。……だから、なんて気持ちで理解してもいい問題じゃないことは分かってる、けど。
 
 「まぁ、緊張感を持っていなかったことについては謝罪しますわ。実際、相手側にミルヒアイスがいるのですからね」
 
 『……では、気を取り直して。ミルヒアイスのことについて……教えてもらえるか?』
 
 「ええ、もちろんよろしくてよ」
 
 クリームヒルトが腕を軽く横に振ると、モニターが数個ほど展開した。
 私が見たことのある文献や、戦記、聖王繋がりのもの、と関係のありそうなものが一挙に羅列していた。
 その中でも目を引いたのが、写真だ。
 
 「――――ああ、間違いねー」
 
 「ヴィータ、ちゃん?」
 
 「こいつだよ。こいつがミルヒアイスで間違いねーよ」
 
 本局の制服を身にまとったミルヒアイスと、その隣の同じく本局の制服を着た小さな少年――おそらく、ユークリッドだろう――と、その肩に腰かけているクリームヒルトの集合写真だった。
 ヴィータは女性……ミルヒアイスを睨みながら続けた。
 
 「……私のアイゼンと、リィンを叩き落とした」
 
 『……言葉がないですね、本当にシグナムそっくりだわ……』
 
 ヴィータは悔しさに歯を鳴らすほど食いしばり、騎士カリムはその姿に驚いていた。
 ……そう。その通りだ。見れば見るほど、シグナムそっくりだ。違う、と言えるところがあるとすれば、髪型とその色。淡い色合いとポニーテールのシグナムに対し、ミルヒアイスのそれは鮮やかな色合いと流れるようなストレートというところだけ。
 
 それ以外、何が違うのかがよくわからないほど似ている。
 
 「ミルヒアイスは、私のオリジナルだそうだ。間違いないな、クー」
 
 「ええ。シグナムが守護騎士システム、ヴォルケンリッターの将であるならば……間違いはありませんわ」
 
 『どういうことだ? 闇の書絡みの話か』
 
 クロノが身を乗り出して食い付いた。
 ……そうか、クロノのお父さん、延いては知らぬ私のお父さんは、確か……。
 
 「その話は後々シグナムから直接聞いて下さいませ。今はミルヒアイスのこと、でしょう。それを話すとあまりに話が逸れてしまいますわ。どうぞご容赦を」
 
 『う……すまない』
 
 腰を下ろしながらクロノは目を伏せた。
 しばらくは表情が暗く、数秒して首を横に振った。クロノのいつもの表情に戻り、前をすっと見据えている。
 ミルヒアイスはそれを待ってから、一度頷くとまた話し始めた。
 
 「今で言う古代ベルカ戦乱期、ギプフェルの最後の女王として君臨したのが、彼女……ミルヒアイス=ブルグンド=ギプフェルです。話しを聞いた通り、すでに齢千を超えていますわ。さて、ここでこの戦記の一部から引用しましょう」
 
 モニターのひとつがパパッと光り、ひとつの本が映され、本文の一部がずらずらと流れる。
 よく見れば、それは以前クロノが用意した戦記であった。
 
 「“強化ではなく進化を求めた王族”、“すでに人ではない”、“世界の蛇と体を共にした”……。これは比喩ではありません。事実です。どうもあなた方は『進化』をより完成度の高い『強化』程度に思っていたのでしょうが、その考えはお捨てなさい。間違いなく『進化』ですわ。……次に“人ではない”という一文についてですが、これは前文が示している通り、人が『進化』したのです、もちろん彼女は人ではありませんわ。言い表すなら、そうですわね……“魔人”、これが一番しっくりくるでしょう」
 
 クリームヒルトはなんでもないことのようにすらりと説明した。
 しかし、その“魔人”という単語の意味……。ヴィータとリィン、頑丈なはずのグラーフアイゼンすらを砕いた力を入れて考慮すると、その天井が計り知れないものだということにすぐに行き着く。
 そして、“進化”という単語の、本当に意味する内容――――私の考えが正しいなら、“世界の蛇”という存在が絡んでいるに違いないはず。
 
 「そして“世界の蛇と体を共にした”という内容……フラウ・ハラオウン、どうやらお気づきのご様子ですが?」
 
 「……うん。もしかして、っていうおぼろげなものなんだけどね。“進化”っていう単語と、関係があるのかなって」
 
 「ヤ、ご明察ですわ。……世界の蛇、こちらは調べておいではでないのかしら?」
 
 ミルヒアイスはモニターの向こうにいるクロノと騎士カリムに視線を向けた。
 それに対して、騎士カリムが口を開いた。
 
 『ええ、一応調べたわ。驚いたことに、この漠然とした単語にひっかかったものはひとつだけ』
 
 『…………“世界の蛇”、アルハザードの流れ子、皇竜、永遠の疾駆者……。たったひとつの存在に対して、多くの名が付いた古代希少種』
 
 「――――そうですわ。真名を、守護真竜“ヴィルヘルム”。あなた方が『サベージ』と呼ぶ雑兵の母体。延いてはミルヒアイス自身」
 
 『!?』
 
 この放送を聞いているほぼ全ての人が驚いたことだろう。
 私も正直、何を言っていいのか、何を言っているのか、分からなかった。
 
 ――――ミルヒアイス自身。
 
 ――――『サベージ』の母体。
 
 ……つまり、それは、どういうことだ。
 ダメだ、頭が回ってくれない。驚きが大きすぎて、なにがなんだか……わからない。
 
 『……『母なる竜の揺り籠‐Main Blut ist Welt Schlangene Karb‐』、か?』
 
 「Das ist richtig(その通り)。マン・ハラオウン、中々に優秀ですわね」
 
 『皮肉として受け取っておこう』
 
 「素直ではないですわね、そういう男性は好きませんわ。……こほん、ミルヒアイスのレアスキル『母なる竜の揺り籠』、それこそが『進化』の真髄であり、またヴィルヘルムでもあるのですわ」
 
 「よくわかんねーよ、ちゃんと説明してくれ」
 
 ようやく、と言ったらヴィータに失礼だけど、こんがらがって来たのは事実だ。
 そもそも彼女は相手を試すような説明ばかりで、あまり説明上手とは言えない話し方をしている。
 癖なのだろうけれども、こういうときまでされると面倒くさい、というのが正直な感想だ。確かに理解は深まるだろうけど、ね。
 
 「ふむ。幼いながらも紅の知将と呼ばれた彼女とは大きなズレがありますわね、あなた。ま、それはともかく。詳しく説明してほしい、とのことですが……レアスキルの説明をすれば事足ります。それでよろしくて?」
 
 「ああ、それでかまわねーけど、なんだ、その“紅の知将”って。私は紅の鉄騎ってのが夜天の魔導書から戴いてる名だぜ?」
 
 「確か、どこの国でしたか、の、軍師様の二つ名ですわ。戦争がはじまって聖王の軍門に下っていたはずですが……」
 
 「ふむ、それがヴィータのオリジナルというわけだな。知将、か。くく、似あわないな」
 
 「笑うんじゃねー! シグナムのお姫様だって想像できるかってんだ!」
 
 真っ赤になりながらヴィータはシグナムを睨んでいる。
 まぁ、確かに。“聖女”とまで言われた性格のミルヒアイスだけど、シグナムが、という点では確かに想像できない。
 と、いうか笑える。
 
 その光景を見ながら、顎に手を当て、クリームヒルトは渋い顔をしていた。
 どうしたというのだろう。
 
 「この際ヴォルケンリッターの全員分を話しておいた方が追々の説明時に面倒にならずに済みますかね?」
 
 「う、う~ん……? どうだろうね、クリームヒルトが話に出さずにいれば問題ないと思うんだけどな、私は」
 
 なのはが言って、クリームヒルトがまたしかめっ面をする。
 ……自己顕示欲、というか、彼女はナルシストのきらいがあるようだ。自分の知識や能力に絶対の自信を持ち、それを他人に知らしめたい、という……考えを持っているようである。
 ただ、それが嫌味に聞こえないのは、彼女の先生気質――つまり、あの試すような説明や質問だ――のせいだろう。
 むやみやたらに自慢するようなことはせず、それを質問や説明の中でさりげなく――とは言えないが――の中で言う、という癖のおかげなのだろう。……もしかしなくても、自分の性格を知って、こういう癖をつけたのかもしれない。
 
 「ま、いいでしょう。話を続けますわ」
 
 『あ、ああ。そうしてくれ……』
 
 頭に手を当てながら、クロノが言う。
 それを聞いてクリームヒルトは頷き、こほんと咳ばらいをした。
 
 「では。……ミルヒアイスのレアスキル『母なる竜の揺り籠』。昨日、私はここにいる隊長方にフラウ・ヤガミを加えたご婦人方に、この能力は簡単に言えば『竜生成・使役』だと説明しましたわね? それは本質として、生成・使役ではなく、『身体分裂』と表した方がより正確ではありますの。『母なる竜の揺り籠』における、『サベージ』の生成の元になるのは、ミルヒアイスの血液、つまりヴィルヘルムの血液でもある、ということですわ。それに魔力を注ぐことで竜を生成することが出来るのですわ」
 
 「それは、血液や魔力の量によって強さが変わったりする、と考えていいのか?」
 
 シグナムがそう訊いた。その問いに対し、クリームヒルトは頷いて答えた。
 今までに確認した『サベージ』は全部で4体。
 1体目は、リニアレール上での襲撃。
 2、3体目はホテル・アグスタでの襲撃。
 そして4体目は先の地上本部強襲時。
 
 その全てにおいて『サベージ』の大きさや強さはマチマチだった。
 
 その原因が血液や魔力の量であるとするのなら――――最後の『サベージ』の戦闘後に発見されたレリック……あれが魔力の供給源であるとするのなら、確かに辻褄は合う。
 ……なら、なぜ最初からレリックを使って来なかったのか。使いたくなかった理由があるのか、それとも『サベージ』……『母なる竜の揺り籠』の能力を計りあぐねていたのか。おそらく後者だろう。
 
 「……先日の襲撃時に現れた『サベージ』は、どのくらいの強さなんだ?」
 
 これもシグナム。
 どのくらい、というのは大本のヴィルヘルムに比べて、という意味だろう。
 
 「遜色ありません、と言えればいいのですが……あれは本来のヴィルヘルムの数分の一の力も持たない雑兵の中でも高等兵なだけの存在ですわ。……あの竜を倒せたのは、一重にヴォルテールの力が大きい。もし、ヴォルテールがいなければユーリやここにいる者たちの大半はもっと酷いことになっていたでしょう。さすが真竜、と改めて畏敬を抱きましたわ」
 
 あのときはヴォルテールよりもユークリッドの方がダメージを与えられていたように思っていたんだけど、どうやらそうではないらしい。
 ヴォルテール。キャロが操る、二騎の竜のうちの一騎。キャロが一族を追放される切っ掛けともなった、大きすぎる力。
 だけど今は違う。あの時のキャロの言葉や、瞳。
 あの子の中で、なにか答えを見つけることが出来たようだった。
 迷いなどなく、受け入れるだけの強さを見つけられたようだった。
 
 「…………まぁ、いろいろと話しましたが……。ここからはミルヒアイスの体質……個人としての強さを言っていきましょうか? どうします、聞きますか?」
 
 今更な質問ではあった。
 だが、その質問の意味を考えてみればすぐに思い至る。
 それだけ強い、と言っているんだろう。
 
 「私は聞こう」
 
 シグナムが言い、
 
 「私もだ。自分を倒した奴がどんくらい強いか、知りたい」
 
 ヴィータが続き、
 
 「私も、かな。知らないで絶望するより、知って光明を見つける方が……言っちゃえば建設的だよね」
 
 なのはは苦笑しながら言い、
 
 『僕もだ。敵の情報を聞かずにいるなんてありえない』
 
 『私もです。聖王を追い詰めた実力のほど、興味がありますしね』
 
 「俺も興味があるな。聞かせてくれや」
 
 クロノと騎士カリム、ナカジマ三佐も同意した。
 あとは、私だけだ。
 
 「…………聞くよ」
 
 頷いた。
 ハァ、とクリームヒルトがため息をついて、肩を落とす。
 顔を上げたクリームヒルトには、呆れの表情が張り付いていた。
 
 「知らぬが仏、などとよく言ったものだと思いますわ。知らなければよかったことを知ってしまったが故に巻き込まれ、死んでいく。……マン・ナカジマ、あなたのことですわよ? おわかりになっていらして?」
 
 「あぁ。……だからこそ、知りてえんだよ。人間ってなぁ、面倒くせえ生きもんなんでなぁ」
 
 「本当に、人間は面倒なものですわね。デバイスでよかったですわ」
 
 いいでしょう、と改めて腕組み、足組み、空中に浮かび直す。
 
 「あなた方は、これから戦争の頂点に君臨した女帝の強さを知ることになりますわ。結果、統一戦争には敗れましたが、それはそれ。聖王という存在の再確認にもなるでしょう。ワタクシが記録した彼女の強さ、とくとご賞味あれ」
 
 新たなモニターが展開した。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 ……黒い。
 ぐずぐずとした痛みが胸に広がっている。それも加速度的に引いていってる。
 外の音がどんどん近付いてくる。さわさわ、と布ずれの音がする――――……。
 
 「……う、ん……あ」
 
 「――――っおぅ!?」
 
 薄く眼を開けていく。
 何か声が聞こえた……のに、その人が上手く見えない。
 魔力のめぐりが少し鈍い。リンカーコアの回復が万全ではないのだろう。
 
 「あ……う……」
 
 「ユー……リ、あぃや、ユークリッド?」
 
 「その声……は……は、やて……? 無事、だったんだな……よかった」
 
 「無事……って、あのなぁ……ほんま……っ」
 
 っひ、としゃくりあげるような声が上がる。
 上半身を上げ、目をこする。やっと目がはっきりと見えるようになってきた。
 ぼんやりと映る赤い部屋に、茶色の髪の毛がよく映えている。
 ――……よりはっきりと見えて……え?
 
 「ひっく……うぇ……ええ…………ええええっん!!」
 
 「はやて? どうした?」
 
 「ど、っどうしたも、ひぅっ、こうしたもっ!」
 
 どん、と胸を軽い力で叩かれる。
 一回、二回、と続けざまに胸を叩かれる。
 
 「あほぉ……っ! ユーリぃっ、ゆーりぃ……っ」
 
 どん、どん、どん、どん。
 罵倒と、力ない抵抗。泣き顔と、泣き声。
 いつの間にか、オレは……
 
 「――……あ、え?」
 
 「……なぁ、はやて。言いたい事、あるんだ」
 
 「……今さら、なんやねん……うっく」
 
 はやてを、抱いていた。
 オレの胸を叩いていたはやての腕を引っ張って、ぎゅっと抱きしめていた。
 それに抵抗も、嫌がるそぶりも見せず、はやてはぐりぐりと顔を押しつけてきた。
 
 「あのさ、好きだ」
 
 「……あほ」
 
 「うん」
 
 「私の方が、お姉さんなんやで……っ?」
 
 「うん」
 
 彼女の顔は見えない。
 オレの胸辺りに顔を押しつけているからか、声も曇って聞こえる。
 
 「言い訳はしない。これが、オレが選んだ道だったから」
 
 「知っとるよ。あほ、ホンマにあほやわ、ユーリ……」
 
 「せめて不器用って……同じか」
 
 ぽんぽん、とはやての背中をあやすように叩いた。
 いつの間にかはやての癇癪も収まり、静かに顔をうずめているだけになっていた。
 それくらいの間そうしていただろうか。
 
 赤かった部屋は、薄暗くなっていた。
 
 「ユーリって、呼び直しても……ええんかな?」
 
 「いいよ。……むしろ、その……呼んでもらいたい」
 
 はやては押しつけていた顔を上げた。
 若干赤くなった目元を見て、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
 
 「言いたい事、いっぱいあってんよ? やねんけど……なんていうか、安心? したら、一気に頭ン中真っ白んなってしもうて……ゆえること、ひとつしかあらへん」
 
 「何?」
 
 「ユーリ、好き。今度こそ、掴まえたから」
 
 今度は頭をなでてやった。
 くすぐったそうに肩をすくめて、ふわりと笑う。
 
 「ユーリ……訊きたい」
 
 「何を?」
 
 「身体が治って、何をしたいんかを」
 
 「復讐だ。親父の仇討ち」
 
 「ユーリ……」
 
 名前を呼ぶだけで、その他はなにも言わずに寄り添ってきた。
 判ってるつもりだ。復讐なんて意味はない。一時の感情の暴走でしかない。
 ただ……これだけは……オレがケリをつけなきゃならない。
 
 「復讐のあとには……何も残らないって、言うだろ?」
 
 「言うなぁ」
 
 「オレは違う。なんでか、わかるか?」
 
 「私……やったらすんごい嬉しい」
 
 「正解」
 
 嬉しい、と言っておきながら、はやては笑いもしなかった。
 眉を顰めて、とん、と胸を一回叩くだけ。
 
 「オレの居場所になってくれないか、はやて」
 
 「くっさい告白やね」
 
 「……。わるかったな」
 
 とんとん、からどんどん、へ。
 胸を叩く力が強くなっていく。ただ、これは抵抗じゃない。
 悔しさ、なのかもしれない。
 
 「……好きって言うてくれた」
 
 「ああ」
 
 「……居場所になってくれって言うてくれた」
 
 「言ったな」
 
 「……なんでなん?」
 
 この言葉たちを言ったのはなぜか、という質問ではないだろう。
 ……そこまで言って、オレが言っていない言葉があるのはなぜだ、という問い。
 
 「なんで、“一緒に戦おう”って……言うてくれへんの!?」
 
 「…………」
 
 言葉を返せない。
 理由なんてなかった。
 
 「なんで、なんで……一緒に……並ばせてくれへんの?」
 
 「…………」
 
 「居場所になってほしいんやったら……男やろ。それなりの方法、あるんとちゃうん?」
 
 言い返せないが、その言葉だけは聞き捨てならなかった。
 頭に血が一気に昇る。気がつけば、はやてをベッドに押し倒していた。
 
 「…………ユーリ、ホンマにあほやわ」
 
 「知ってる……ごめん。……はやて」
 
 「うん?」
 
 押し倒した格好のまま、頭を下げた。
 唇と唇が重なる。くにゅっとした感触が、背筋がぞくりとするほど扇情的だった。
 
 「ちゃあんと……帰って来るんやで?」
 
 「約束する。居場所を、護りたいから」
 
 「不器用、あほ、そんでもって……すけべやな」
 
 「……は。わるかったな」
 
 もう一度だけ、はやてと唇を重ね合わせた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                Act:5-3  end
 
 
 
 

テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

ズンタカポコテン……だと!? そして拍手レス。

ども、草之です。
 
『ARIA The BOX』を買いました。
6300円を安く感じたのは、これが初めてです。はい。
 
さて、選りすぐりのサントラ、ボーカル曲集、サントラ未収録集、と。
この3枚のCDと曲の解説とか、インタビューとかが載ってる冊子がついてきます。
ん、なにこれ販促?
 
もとい。
サントラ未収録集にはなんと、桜の木の回の灯里のあれ。
「ズンタカポコテンズンタカポ~ン」が収録されていましたんですよ、奥さん!!
なんだこれ、可愛すぎるだろ……アリア社長の合の手とか……反則だって。
まぁ、それ以外の曲も間違いのない澄んだ曲ばかり。
 
きっと、あなたも欲しくなーる欲しくなーる。
6300円が安く感じてくーる感じてくーる。
と、ここいらで止めておきましょう。
まだ死にたくありませんし(笑)。
 
 
 
ということで更新予告です。
日曜日あたりに、『背炎』を更新できそうな予感。
あと、『優星』は次は番外編を更新する予定です。更新日は未定。
 
では、以下拍手レスです。
草之でした。
 
 

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テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

背徳の炎  track:29

 
 「あ、アクセル先生?」
 
 もう十分摩訶不思議事には慣れたと思っていたけど、なんなの、これ。
 ていうか、なんなの、あの人。
 なんて……穴が……?
 
 「アスナー、あれ、アクセルせんせーアルね?」
 
 「あ、うん、たぶん……ていうかきっとそう」
 
 「どこからわいて出てきたアルか?」
 
 「……私に訊かないでくれない、かな?」
 
 正直、これはないと思う。
 人間ビックリ大賞とか出たら間違いなく金賞モンよ、あれ。
 ネギとかが出ててもなんの不思議でもないくらいに。
 
 「なんというか……アクセルせんせーって……ぎゃっ!?」
 
 くらり、とくーふぇの体が傾く。
 その後ろで当たり前のように立っていたのは刹那さんだった。
 見回してみると、ほかのギャラリーもとっくに気絶済みだった。刹那さんは倒れたくーふぇを抱えてみんなのところに持って行くと、修学旅行でも見たようなお札を取り出して結界……だっけか、を作っていた。
 
 「……あとはあの人に任せておけば大丈夫でしょう」
 
 「え?」
 
 「アクセル先生ですよ。確かに、何を考えてるんだか分らない人ではありますけども……」
 
 「そんなことないえー。アクセルせんせー優しいよー。この間かてお茶とお菓子おごってもらったもん」
 
 「あいつ……また蹴り入れんとわからんらしいな……」
 
 「刹那さん、地でてる。地」
 
 さっきまでの緊張とは遠く離れて、緊張感の欠片もない会話を交わす。
 もしかしなくてもアクセル先生が出てきたからだと思う。
 
 「……こほん。とにかく、今は傍観を決め込むしかないでしょうね。下手に出て行って巻き込まれるのも癪です」
 
 癪って……。
 いや、まぁ、私もそうは思うけどもさ。
 ネギとアクセル先生は睨みあったまま動こうとはしない。
 そう思った時、アクセル先生がぱっと構えをといた。
 
 「なんつーかさ、お前ってホント子供っぽくないよな……。その構えだってしっかりしてっけどさ、なんつーか、こー……」
 
 「言いたい事って、そんなことなんですか?」
 
 「ややや。そんな顔すんなって、ネギ。俺様だってさ、やっぱ年上じゃん? そりゃちょっとは説教臭くもなるっつーもんだよ」
 
 「…………」
 
 ネギは、修学旅行から帰って少し変わった気がする。少し、じゃないかもしれない。
 
 「走りたいのはわかるけどさ、あんまり急ぎ過ぎるとコケるぜ、ネギ。その前に一回立ち止まってみ?」
 
 「そんな暇があれば、僕は、もう立ち止まってます。今は一歩でも遠くに、早く行きたいんです」
 
 ハァ、とため息を吐いてアクセル先生は頭を掻いた。
 もう片方の腕でスーツの後ろをごそごそとまさぐっている。
 
 「仕方ねえ……。そんじゃ、イッチョ戦りますかっ」
 
 アクセル先生が取り出したのは……
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 ぴゅん、と風を切るように鳴ったのはナイロン製の紐。
 その先端には同じようにプラスチック製のグリップ。それもお粗末程度にガムテープで滑りにくくしてあった。
 
 「なわ、跳び……?」
 
 「おう。本気の得物でやるわけにもいかねえだろ。だから、これ。100均ってホント便利だよなぁ」
 
 パシパシと、数回前跳びをして見せ、調子づいて2重、3重、4重跳びと滞空時間が長くなっていく。
 スタッと着地しては、どんなもんだい、といった表情でアクセルはネギを見た。
 
 「ジャパンの昔のえーと、ジダイゲキ? ってヤツにもさ、こう、おもちゃで悪者をズババーってやっつけるやつってあるじゃん。あれ、カッコイイよな~?」
 
 いつもの鎖鎌のように、アクセルは縄跳びを構える。
 油断だけはしないように、ネギはそれを見据える。
 
 「……行きます、アクセル先生!」
 
 ネギの足元に魔法陣が展開する。
 少ない数の魔法の射手を一気に紡ぎ出し、アクセルに向かって放つ。アクセルはそれをギリギリまで引きつけて、横へ横へ、ネギとの距離を保ちながらステップで避けて行く。弾幕が一旦止んだところへ、アクセルがグリップを投擲する。
 しかし、それはプラスチック製の軽いものだ。ネギはそれを手の甲で簡単に弾き、もう一度魔法の射手を唱える。
 
 「もう一丁!!」
 
 投げたグリップを引き戻し、反対のグリップを勢いづけて詠唱中のネギに向けて放った。
 それをネギは避けない。いくら勢いをつけたからといって相手はプラスチック。詠唱の妨げにもなりはすまい……、そう考えたのだ。
 しかし、
 
 「――――ッいた!?」
 
 脳が揺れる。
 見事に顎に当たったグリップが衝撃を伝え、目の前が一瞬黒く染まる。
 なんで、どうして、と考えるより先にそのグリップが答えを出した。
 
 ――ごつん。
 
 やけに重い音を響かせて、グリップが石畳を打った。
 明らかにプラスチックが響かせる音ではないのは確かだった。
 
 「う、づ……っ」
 
 「そっちだけ重り入り。油断したもんだね、ネギ」
 
 「だけど……そうとわかったら、これからは油断しませんよ」
 
 「そうかい?」
 
 アクセルはまだフラついているネギに一気に肉薄する。
 ネギは霞む目を首を振って払い、杖を背に、構えを取り直す。
 
 「ッヘイ!」
 
 アクセルの蹴りがネギを襲う。
 ネギはそれを避け、踏みこむ。アクセルの軸足すら通り越した、深く鋭い踏み込み。
 
 「ハァッ!!」
 
 下から突き上げるように、ネギの肘鉄がアクセルの鳩尾を狙い打つ。
 どすん、と重い衝撃がアクセルの体の芯を襲う。
 
 「っぐぁ!?」
 
 「もうひとつ……!」
 
 たたらを踏んだアクセルに迫撃し、もう一歩強く踏み込む。
 脇を絞り上げ、両の腕を突き出す。
 
 「でぇあっ」
 
 「んっぎ――っ!」
 
 アクセルの腹を強く打った双掌が内臓を揺らす。
 ――これがガキの打つ威力かよ……。アクセルは悪態を心の中でつく。
 彼は大きく吹き飛ばされた後の着地の足で踏ん張る。視線を空からネギに移した時、アクセルはぎょっとした。
 
 「――――『白い雷』ッ!!」
 
 ――轟ッ!!
 アクセルの姿が白雷にかき消える。石畳が弾け飛び、下にある土塊が煙を立ち上げる。
 細かな粉塵が、白雷の残りで次々と弾けていく。
 
 「…………、ッはぁ」
 
 ネギは肩で息をする。
 緊張が一気に解け、どっと汗が噴き出してくる。
 
 「はぁっ、は、……く、ハぁっ」
 
 バチバチと、電流が蛇のように煙の周りを這い続ける。
 この魔法を直撃させて、無事でいるはずがない。確かに、威力は期待できるようなものにまで練り上げられなかったが、それでも気絶させるには十分な威力を持っていたはずだ。
 
 「ハ、あ……ん、く、ハァ……っ」
 
 煙が晴れていく。
 あそこには倒れているアクセルが――――
 
 「……な、うそ……だ」
 
 「ふいー。っぶねぇ。ギリギリ間に合ったぜ……けど、おかげで法力すっからかんだわ。また一から練り直しだよったく」
 
 緑色の燐光が煙に混ざって溶けていく。
 フォルトレスディフェンス。絶対防御の法術。
 しかし、それを為したアクセルの体からは白い煙が立っている。少なからず、ネギの魔法が通った証拠だった。
 
 「おいおい、ネギ、肩で息をしてんじゃねえか。俺様、まだまだ余裕だぜぇ?」
 
 「っく、そ」
 
 ネギがふらつく。
 エヴァによる強制操作と、無理矢理な魔法停止、そしてこの戦闘。
 それがネギを追い詰めていた。
 
 「大人しくなったところで聞いとけ、ネギ。言いたい事がある」
 
 「ハ…………はぁ」
 
 「とりあえず、お前、それでいいのか?」
 
 「はぁ、え?」
 
 「お前の目標とか、そんなに急がなくちゃいけない理由だって知らねえよ。けどな、一応言っとくぞ。欲しいものが、あんまりにも早く手に入り過ぎると、人生つまんねえぜ?」
 
 「知りません。わかりません、そんなこと……! つまらないかどうかなんて、それは僕が決めることです、あなたが決めることじゃない……!!」
 
 「そりゃそうだ。別に俺様はお前を諭そうなんざ爪の垢ほどにも思っちゃいないし、だから強制だってしなねぇ。俺様は訊いてんだよ、お前は、それでいいのかってな」
 
 「っ……」
 
 ネギが息を飲む。
 まだ肩で息をしながら、眼だけはアクセルを向いたまま、杖を固く握り締める。
 
 「どうなんよ、ネギ」
 
 「ここに僕がいることが、その答えです」
 
 「つまり、だ。走り続けるんだな、お前は。んなら、もひとつ訊いとくぜネギ」
 
 「……なんですか」
 
 「ってことはだ、最初にも言ったけどお前、コケる覚悟出来てるんだろうな?」
 
 「コケる覚悟?」
 
 ネギが素っ頓狂な声をあげて疑問をぶつける。
 アクセルはそれに首肯して、縄跳びを弄りながら問いを続けた。
 
 「もっと分かりやすく言やぁ、挫折ってやつだ。言い換えてもいいんならいくらでもあるぜ……」
 
 「それくらい、あります」
 
 「ふーん?」
 
 アクセルは首をひねりながらネギを見詰めた。
 それに怖じることなく、ネギはアクセルを睨みかえす。
 
 「エヴァちゃーん」
 
 「エヴァちゃん言うな。なんだ、色呆け」
 
 「うわ、辛辣~。これ、今何してる最中? イジメ?」
 
 「そうとも言う。まぁ、ぼうやの私への弟子入り試験というヤツだ」
 
 「ふーん。合格条件ってなに?」
 
 「朝日を拝むまでくたばらないこと、だ」
 
 「あ、そ」
 
 「あと、NGワードを言わないこと。『やめて』『ごめんなさい』『許して』の3つだ」
 
 「ほー。へー。そーですか」
 
 アクセルは頭を掻く。
 ネギから見える彼の表情は、どことなく沈んだものだった。
 
 「あんまりこういうことやりたくないんよ、俺様。そこんとこ勘違いだけはごめんだぜ、ネギ」
 
 「はぁ……?」
 
 「お前は、コケる覚悟があるって言ったな。それってつまり、今俺様に勝って無事に朝日を拝むってことだろ?」
 
 「……手を引いてくれるつもりは……ないんですね?」
 
 「んじゃ、勝負再会だ、ネギ。そんじゃ行くぜ……!?」
 
 縄跳びを投げ捨てる。
 それと同時、アクセルの身体を炎が包み込む。法力による炎力付加。
 ネギは生唾を飲み込む。明らかに違う。先程までのアクセルとは、雰囲気から、ごっそりと違う。
 
 「特別サービスだ、鎖鎌は使ってやんねぇよ……っ!!」
 
 どん、とアクセルが踏み込んだ。
 消えるほどのスピードではない。鋭い移動術でもない。
 ただ、単なる疾走。
 
 しかし、だからこそその威圧感が凄まじい。
 
 「う、あっ!」
 
 急いで詠唱を始める。
 少ない本数の魔法の射手を紡ぎ出し、迫りくるアクセルに向かって放つ。
 
 「ちぃっ」
 
 飛んでくる射手に反応して、アクセルは横へ横へステップしていく。
 アクセルに今遠距離を攻撃できる術はない。それを知ってか知らずか、ネギは魔法の射手を細かく撃ってアクセルを近づかせない。
 お互いに隙を窺い合う。しかし、負担で言えばネギの方が明らかに大きい。
 
 「そらそらっ、どうしたネギぃ!!」
 
 「アクセル先生こそ……どうしたんですかっ」
 
 「セツナちゃーん、あのほら、ズパッと移動するの、どうすんのー!?」
 
 「誰が答えるものか」
 
 問いかけられた刹那本人は我関せずの態度を貫いている。
 アクセルはおどけながらもネギからの魔法を確実に避け続けている。それも含め、ネギの疲労心労は着々と溜まっていく。
 
 「んじゃ、試しに一発やってみたり……」
 
 アクセルは足に法力を集中させる。
 それだけで若干の速度をあげながら、魔法の切れ目を狙いすます。
 
 「ここだァっ」
 
 法力を爆発させる。エアステップの要領だ、と思いこむ。
 それを極々低空で発動させると思えばいい。大気中に造った法力の不安定な足場じゃなく、しっかりとした大地を踏んで跳ぶ。
 一瞬ののち、アクセルはズッこけた。ネギの真横で、だ。
 
 「ありゃ?」
 
 「っ!?」
 
 「っと、失敗」
 
 素早く立ち上がり、ネギに迫撃する。
 
 「ネギぃっ!!」
 
 「しまっ」
 
 どずん、と思い音を響かせて、アクセルは思い切りネギの腹を叩く。
 どっと吐き気がネギを襲う。続けざまにネギの腹に膝蹴りを叩き込む。腹を押さえながら、ネギはよろよろと後退する。
 
 「ぐ……かはっ」
 
 「ネギっ!」
 
 明日菜が走り寄って来る。
 刹那はそれを止めようともせず、ただじっと見ていた。
 
 「アクセル先生! ちょっと、これやりすぎでしょっ!?」
 
 「やりすぎ? ただのケンカだぜ、これ」
 
 「ケンカぁ!? これのどこがよっ」
 
 「どっからどうみても殴り合い蹴り合いのケンカじゃん?」
 
 しれっとした様子でアクセルは言い切る。
 肩を震わせながら、明日菜はアクセルを睨みあげた。
 
 「んー、やっぱりアスナちゃんもかなり可愛いよね」
 
 「こんな時に、何言ってんのよ……!!」
 
 「こんなときだから、とかだったりして」
 
 「は?」
 
 「アスナさん、退がって……!」
 
 「嫌よ。エヴァちゃんも言ったじゃない。仮契約者も含めて本人の力だって……。だから、私も戦うんだから……!!」
 
 「――――言ったね」
 
 「……え?」
 
 「あ、アスナさん逃げて……!!」
 
 あ、え、と戸惑う明日菜はどうすればいいのかも分からない。
 そんな明日菜を見て、ネギは瞬時に判断する、
 
 「『契約執行――――』……」
 
 「女の子だからなっ、顔だけはやめといてやるぜっ」
 
 膝に法力が集中していく。
 容赦なく、それは明日菜の腹に吸い込まれるように――
 
 「――――……『90秒!!』」
 
 「アクセルボンバァーッ!!」
 
 「……げっふ!?」
 
 ボン、と炎が明日菜の腹で膨れ上がる。
 ネギごとを巻き込んで吹き飛んで行く。
 
 「…………いいか、ネギ、明日菜ちゃん。こんなもんじゃない……こんなもんじゃないんだよ。俺様が言う“コケる覚悟”は“挫折”ってのぁ、そんなもんじゃないんだよっ!!」
 
 興奮しきった声で、アクセルは怒鳴った。
 説教をするつもりはない、と彼は言った。だけど、言っておきたい事がある、とも言った。
 つまりアクセルは、知ってほしかったのだ。
 
 「ネギ、お前さ……、修学旅行で何見たんだよ。死にかけたアスナちゃん見てさ、何を思った? ダンナの力を見て、何を思った?」
 
 「何、て?」
 
 「怖くなかったかよ、もう嫌だって思わなかったかよ。俺はいっつもそんなこと考えて戦ってる。人の命ってな、思ってる以上に簡単になくなるんだ。軽いんだよ、命って。吹きゃそれだけで消えちまうロウソクの灯みたいなんだよ。だからだろ……だから、大切なんだろ。だから怖いって思うんだろ」
 
 ちがうよな、とアクセルはかぶりを振った。
 自分の手を見ながら、ちがう、と呟く。
 
 「俺は戦ってなんかいない。いっつもケンカ止まりなんだよ。俺は人を殺したくないし、だから殺さない。どうしてもって時は絶対に容赦はしない。けど、絶対に一撃一撃ごとに迷っちまう。“覚悟”が出来てねえからだ。だから俺は走らない。歩くだけだ。それも立ち寄ってばっかりの、愚鈍の歩みってやつだ」
 
 「アクセル先生……」
 
 「けどな……楽しいぜ。めぐみには……や、彼女なんだけど、可愛いヤツでさー……。ん、もとい。めぐみにはもうずいぶん会ってないけど、それでも楽しい。毎日毎日、すっげえ楽しい。そりゃそうだ、走ってばっかじゃ疲れるだけだ、歩いて寄り道すりゃ、景色だってなんだって楽しめる。もしかしたら、走ってまで見つけたい答えが結構身近に落ちてるかもしれないぜ?」
 
 「アクセル……先生……」
 
 世界樹の向こうの地平線から、光が漏れる。
 時刻は4時を回ったところ。ネギが目算した5時よりも、まだ1時間早い。
 
 じりじりと少しずつ朝日が昇って行く。
 ネギは、それが眩しくて目を細めた。
 光が目にしみて、涙があふれてくる。堪らなかった。
 今のネギには、その言葉も、朝日も、なにもかもが眩しくて堪らなかった。
 
 「これが、言っておきたかったことだ。走り続けるか、立ち止まってみるかはお前ら次第だぜ。んーまぁ、説教臭くなっちまったね、こりゃ。まぁ、人生の先達としてのアドバイス的な……何か? みたいな感じで捉えといてくれな」
 
 あと殴って蹴ってごめん、と深々とふたりに謝った。
 朝日はもう半分以上が顔を出していた。あと数秒もすれば、完全に夜明けだ。
 
 「…………アクセル先生。『やめて』ください。謝らなくちゃいけないのは、僕、かもしれません。『ごめんなさい』。アスナさんも、『許して』なんて言いませんけど、ここまで、いつの間にか巻き込んでしまっていて……」
 
 「……ぼうや、お前……」
 
 「NGワードを3つともの発言を確認しました」
 
 「エヴァンジェリンさん。まだ僕には早かったみたいです。僕が僕を認められた時、もう一度だけ、弟子入り試験を受けさせてもらえませんか?」
 
 力なく、しかし清々しくネギは笑った。
 エヴァはそれに面くらい、言葉を失う。
 
 「な……な……そ、はぁ?」
 
 「マスター。今のネギ先生の言葉から、わざと試験をお降りになられたものと思われます」
 
 「それくらいわかっとるわっ!!」
 
 問題は、とネギを指差す。
 
 「あのぼうやだ!! なんなんだ、あの身勝手は!! 弟子にしてほしいと言っておきながら、自分から断るゥ!? どんな神経しとんだアイツはっ、ええい忌々しい、親子揃って私を舐めくさって、馬鹿にするのも大概にしろ、無理矢理にでも弟子にしてその根性叩き直してやらんと気が済まんわぁっ!!」
 
 エヴァはどすんどすんと階段を降りて来て、最後にはネギの胸倉を引っ掴み、高らかに弟子にしてやる宣言を叫ぶ。
 きょとん、とするネギを余所に、安っぽい悪党がする下品な笑いを口に、もう自棄にしか見えないほどエヴァは笑顔だった。
 アクセルはアクセルで、その様子を子供の突き合いを見るようにして笑っていた。
 
 長い夜は終わりを告げる。
 朝が、来た。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「ねーねーアスナー。昨日の夜さ、途中から記憶がないんだけどっていうか、最初からの記憶があいまいっていうのかな。なんか、そこにいたのにそこにいなかった……みたいな? なにを言ってるかわからねーと思うが、オレもなにをされたかわからなかったぜぃ、みたいな?」
 
 「なんかカッコいいこと言ってる、みたいに言ってるけど、全然カッコよくないわよ、まきちゃん」
 
 登校時、まき絵さんと出会った僕たちは、昨日の夜のことについて、まき絵さんから本人自体なにを訊いているのかもよくわからない疑問をぶつけられていた。
 アスナさんがそれに付き合っているけど、いつなんの拍子で思い出されることか、そばで聞いていてハラハラする。
 
 昨日の晩、つまり今朝。
 エヴァンジェリンさん……“マスター”は僕の代わりに忘却の魔法をかけてくれたのだ。もっと言うと、魔法ではなくて、魔法薬、なんだけども。
 
 『これでここ数時間の記憶は消える。まぁ、完全ってわけじゃないけどな。ところどころ、大きく虫食いになったような感覚になるだけだ。だから、何かの拍子で思い出すこともある、かもしれん。だからって私は責任は取らんぞ。記憶は消してやったんだからな。事後処理は全部ぼうやの責任だ、アーハー?』
 
 なんとも無責任な師匠だった。
 
 「ネギくん、どないしたん?」
 
 「え、あ?」
 
 「なんか、嬉しそうやったで?」
 
 このかさんが隣に立ちながら、顔を覗き込んでくる。
 それに苦笑いで返しながら、答える。
 
 「……なんでだろう、って思ってました」
 
 「?」
 
 「いつも見てた景色なのに、なんだか違う風に見えて」
 
 「あはは、なんでやろねー?」
 
 解らなくてもいいかな、なんて思っていた。
 ……“コケる覚悟”か。
 
 きっと僕は、まだなんの覚悟もできていない。
 巻き込んだことへのこと、これからのこと、戦うこと、傷つけること、傷つけられること。
 アクセル先生だって出来ていないことを、僕が出来ないのは当たり前――――なんて言うこと自体が、もう間違いなのかもしれない。
 覚悟の仕方も、人それぞれだと思う。
 それがどんな覚悟で、どんな道で、どんな結果をもたらすのかは、本当に人それぞれ。
 
 僕は僕らしい、僕だけの道を探したい。
 例え、それが罪を背負うものだったとしても、だ。信じたいひとつの道を、覚悟を見つけたい。
 
 「さ、そろそろ急がないと、遅刻しちゃいますよ」
 
 前を向いて、自分のために。
 一歩歩いて、明日のために。
 もう一歩で、いつかのために。
 
 走っていたら、前だけしか見えなくなってしまう。
 
 ――――張り過ぎてはならぬ。緩すぎてもならぬ。真ん中が一番ちょうどよい。
 
 どこかの弦楽家が唄に歌ったというこの歌は、とある人物に悟りを啓かせたそうだ。
 今まで辛く長い修行を耐え貫いたのち、彼の人物はたったこれだけの言葉に、数十年もの月日追い続けた答を見出した。
 
 わからないものだ。
 人は、なにが切っ掛けで自分を見つけるのだろう。
 
 僕は、なにをきっかけに答を見つけるのだろう。
 
 今から、楽しみだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
               track:29  end
 
 
 
 
 
 

テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

ちょっとずつ快適なものになれれば。あと拍手レス。

ども、草之です。
 
というわけで、更新予告はこれから記事ではなく、先頭記事、つまり作品一覧の頭に書いていこうと思います。
 
そうすればパソコンからなら一目で分かるよね。
……全然予告を守ってないけど(涙)。すいません。
ケータイからの人もそこから確認していただければ~、と思います。
 
さて。
ちょっとした報告といいますか。
『優星』の設定にて。我らが八百屋の看板娘、アイナのキャラ画像をアップしました。
その他、キャラ紹介も追加です。遠坂ちゃんと間宮ちゃんはまた後日となります。(ただのド忘れの書き忘れ。しばらくしたらまた書きます)
 
ということでここらでオリジナルキャラクターであるアイナについて。
 
ふと出したキャラクターだったのですが、割と人気があったりなかったり。
これをカルト的、なんていうのでしょうか?
個人的にはとても気に入っています。草之が今まで書いてきた一次もののヒロイン像が全開、とまではいきませんが、結構盛り込まれたキャラクターではありますね。ちなみにここで発表してる作品じゃないんですけど、短編とか見てみると結構似てたりするかもしれませんね、ヒロインたちに(笑)。
 
でも、悲しいかな、彼女は虎の宿命(型月的ムードメーカーは攻略対象にはなれないという。ルビはタイガー・サガ)ともいうべきものを背負ってしまったがゆえに、士郎の眼中にはないという。あくまで友人、ということですね。アイナルートとか結構面白そうではありますけどね(笑)。書きませんよ?
 
あと、デコかわいいよね、デコ。
 
 
 
 
というわけで以下拍手レスです。
草之でした。
 
 

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テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

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草之 敬

Author:草之 敬
ブログは若干放置気味。
『優星』の完結目指してラストスパート中。
 
現在は主に一次創作を書いて活動中。
過去作を供養する意味もあって、いい発表の場はないものかとネットをさまよっている。

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