B.A.C.K Act:4−4
「はぁ……っ、はぁっ」
容赦なく襲う熱波。喉も肺も焼けつき、頭がくらくらする。
それでも、私は進まないといけない。
「もうちょっと……っ」
――――どどん!
六課の隊舎がまた大きく揺れる。ふらつく足下が火でチリチリと炙られる。
じわりじわりと血が滲んでは熱でパリパリに乾いていく。
こんなことなら、グリフィスの言う通りに彼に任せておけばよかった。そんな考えが何度となく脳裏によぎる。
その度に、違う声がグリフィスの提案を追うように頭を駆け抜けていく。
『お前が適任だからだ。理由は嫌でもそのうちわかる。ヴァイスにも頼もうとしたけどな、止めたよ』
ユークリッド隊長が言った言葉。
私が適任で、その理由はきっとこの鍵を使えば分かるという。ヴァイス陸曹に頼もうとしたのは仲が良かったからなんだろうけど、それでも私を選んでくれた。そこに意味がきっとある。
私に頼む意味……。
「つ、ついた……!」
ユークリッド隊長の執務室。今は誰も使っていない、空き部屋となった場所。
地上本部から証拠品として大量の私物が運び出されたけど、ただひとつ、カプセルだけが残っている。八神部隊長が「自分のものだ」と嘘をついてまで残したモノ。
それを開けなくちゃいけない。
「……っく!? な、なんで開かないの……っ」
ユークリッド隊長から渡された鍵をカードリーダーに読み取らせて執務室の扉を開けようとすると、ドアロックは解除されたはずなのに開かない。
体当たりをしても、蹴ってもビクともしない。その場にズルズルと座り込んでしまった。
ここまで来て、扉があかない。こんな馬鹿なこともない。
「はぁ……っ、はぁあ……っ」
目が霞む。
意識を保てそうにない。声が出せるのなら精一杯叫んで謝りたかった。
ごめんなさい、って。
「……あ、れ?」
ふと、ちょっとした違和感に襲われた。
そういえば、私はなにか忘れている気がする。いや、勘違いと言ってもいいかもしれない。
なにか、とんでもない勘違いをしている気がする。
『どうしても、どうにもならない時にオレの部屋に入って、パスキーを言えばいい』
パスキーを“言えばいい”。このカードキーはあくまで“部屋”の鍵だ。
ハッとして、もう力が入らない体を無理やり起こし、扉の隅々まで調べていく。
どうやら、今回のドンパチで建てつけが悪くなってスライドしなくなってしまったらしい。これならまだ、なんとかなるかもしれない。いや、これくらいなんとかして見せる。
「はぁっ、くっあぁっあああああ!!」
手近に突き出していた鉄パイプをどうにかして引っこ抜いた。
かなり重い。振り上げるのにも一苦労する。息を荒げながら、その鉄パイプを扉と壁の隙間にに叩きつける。何度も何度も叩いて叩いて、扉がへこんだ場所にパイプを突き立てた。
「はぁっ、くぅ……ん、はぁっ!」
鉄パイプをテコ替わりに、扉をどうにかしてこじ開けようろとする。が、当然女ひとりの力で開く筈もなく、膝をついて虚しく刺さる鉄パイプに寄りかかった。
一度呼吸を整える。余計な熱も入ってくるが、もうそんなことをいちいち気にするような体ではなくなっている。
「もう、一回……っ!」
全身に鞭打ってもう一度鉄パイプを握りしめる。
首筋が攣りそうになるほどに歯を食いしばり、足に腹に腕に力を込める。鉄パイプは徐々に熱を帯び始め、掴んでいるのが辛くなってくる。だけど、諦めたくない。
「開いてぇぇえええっ!!」
――――ガリリッ。
コンクリートが思い切り擦れ合ったような音が出て、扉が5センチ程度開いた。
たった、5センチ……。
「十分……っ」
一体何が起こるのか。起こってしまうのか。
それとも、何も起こらないのか。起こってはくれないのか。
それも、ここで諦めたら何もわからないまま終わる。ユークリッド隊長がなぜ私に鍵を渡したのか、それもわからないまま終わる。
「あ、アルター・トゥーム!!」
Altertum、古代。
隙間の奥、炎が燃え盛る音の中で、何かが開くプシュッという音がした。
続いて、なぜか欠伸が聞こえた。……え、あくび……?
「あの、誰かいるんですか……!?」
逃げ遅れた人かもしれない。ユークリッド隊長の執務室という場所から逃げ遅れた人、という意味での可能性は限りなく低いだろうけど、だったら、あの欠伸は一体何なのだろうか。
説明がつかない。
「んー。あぁ、扉の向こうですか。……どういう状況ですの、これは?」
この業火の中、妙に涼しい声でそう訊いてくる。
状況はどうですか、なんて訊かれても……最悪に決まってるじゃないか。
「ふむ? 『最悪』の定義を話し合いたいところですがそんな状況じゃないのでしょう。扉の前からどきなさい。出ますわ」
「で、出るって……」
魔法を使う、ということだろうか。
だとしたら、なぜ今までそこにいたのか。いや、寝てたんだっけ?
とりあえず、扉の脇に寄って中に合図を出す。すると、今度は足音が聞こえ始めた。
「ふんっ!!」
――バガンッ!!
「うぇっ!?」
扉が勢いよく対面の壁にぶつかる。
今まで扉で閉じられていたところには、一本の脚がスラリと伸びていた。
「襲撃でもされてるみたいですわね」
「さ、されてます……」
中から出てきたのは長身の女性。
真白い雪のような長髪に、整った貌。若々しい筈の顔には、玲瓏に磨き上げられた表情が張り付いていた。
若いのか、それとも見た目以上に年を取っているのかわからない女性だった。
「そう。ちょっとだけ待ってくださる? 今シールドを張りますから」
言うが早いか、私の足元には剣十字の魔法陣、つまりベルカ式の魔法陣が展開していた。
デバイスならいざ知らず、魔法関連に専門家ほど詳しいわけではない私にも一目で解った。このシールドは硬い。デバイスという補助器具なしでここまで硬いシールドを張れるものなのだろうか。
「そこから動かないようにしてくださいまし。この建物が崩れても大丈夫だとは思いますが、一応ね」
二コリと微笑むと、彼女の体がふわりと浮いた。飛行魔法だ。
それと同時、真白い羽根を寄せ集めたような髪の先端に周りを埋め尽くす赤い炎のような色が灯った。どうやら、彼女のリンカーコアは外部の魔力素に敏感らしい。ゆらゆらと揺れる赤髪はまるで本当に燃えているようで、勇ましいの一言に尽きた。
「あぁ、お名前を聞き忘れましたわね。教えて下さる?」
「しゃ、シャリオ・フィニーノ……です」
「そうですか。ではフラウ・フィニーノ、また後で」
私はその時に名乗りましょう、と口に出して言いはしなかったが、そう言っているようだった。
崩れそうな通路に恐れなど抱かず、彼女は高速で飛び去って行った。
「――――っはぁ……!」
落ち着いてみると、この中はなんて新鮮な空気が詰まっているんだろう、と驚いた。
気が抜けると、一気に脱力して尻餅をついてしまった。そのまま凶悪な程の眠気が襲ってくる。
気持ち暖かなシールドの中で、固い廊下の上で、私は眠りに落ちて行った。
* * * * *
「げぇっほ! あ、は……くっ、エリオ君っ、フリード……っ!」
精一杯の力でふたりを岸に引き揚げた。
肺の中に入ろうとした海水を出そうと体が咳を止めてくれない。体がかなりだるい。それに咳で上手く呼吸も出来ないから息苦しい。
「げふっ、こほっ、う、うぅう……」
見上げた空は、赤かった。
星屑のようにガジェットが空に飛び交い、どこを探してもヴィヴィオを連れ去った人達は見つからない。
「あぁ……うぁあ…………あっ」
『これより5分後に上空の大型ガジェットと航空戦力による、施設の殲滅作戦を行います。我々の目的は施設破壊です。人間の逃走は妨害しません。抵抗せず、速やかに避難してください』
避難……?
ここまでしておいて、避難?
「なんで……こんな……」
どうして……。
私たちが遅かったから……?
私たちが弱かったから……?
私たちが、間違っていたから……?
「う、うう……」
もう、嫌だ。
なにが嫌だって、決まってる。
なくしたくないから。私を受け入れて、今まで育ててくれたみんながいる場所を。
私が今、ここにいる、いることのできる、この場所を……!!
「竜騎、召喚――――!!」
巨大な魔法陣が瞬時に描き上げられる。
体から流れていく魔力は、今までにないほどに澄み切っている。
憎しみという、私の居場所を奪った敵に対しての、純粋な感情で澄み切っている。
「ヴォルテェ――――ルッ!!!!」
背後に強烈な気配がせり上がって来る。黒き竜鱗、赤い鎧殻。雄々しき翼は空を抱く。
其が真竜の名をヴォルテール。アルザスの守護竜、黒き炎塊の竜。
焼き尽くされたモノは容赦なく、灰塵に帰す。大地の鳴動を放つ、星の火を宿す炎。
「壊さないで……私たちの居場所を……」
――――ギオ……
「壊さないでぇ――――――――ッ!!!!」
――――エルガ!!!!
咆哮するが如く炎が迸り、天空を引き裂いてゆく。
残ったものはガジェット数十機。数百を数える数が、たったひとつの砲撃で消えた。
その威力を見て、私は、この力にまた恐怖した。
「なんで……どうして……っ」
「…………なぜ、どうしてと訊く前に、誰にそれを訊くか、考えたことはおありですこと?」
「っ!?」
驚いて振り返ると、見知らぬ女の人が浮いていた。
真っ白い髪の毛。その先端だけが、ゆらりゆらりと紅めいていた。
「だ……っ?」
「……考えたことは、おありですか?」
頑として質問を変えない。
ただそこに敵意のようなものはなく、単純に、問いかけられているんだと理解できた。
ゆっくりと、その質問に首を横に振った。誰かに訊こうと思って口に出した言葉じゃない。意味なんてない、ただ不思議に感じたから出た、独り言のようなもの。
「そうですか。結構」
彼女は目を瞑り、こくりと頷いた。
「あ、あの……あなたは?」
「ワタクシですか? そうですね、しがない通りすがりのお姉さん、でしょうか?」
答えになっていなかった。
しかし、そんなことも気にせずに女性は続けた。
「見えますか……? いえ、見えないでしょうね。地上本部上空に巨大な竜が召喚されています」
地上本部の方向を狂いなく指差すと、そんなことを言った。
ここから地上本部まではざっと50km以上はある。それを見ろ、なんて馬鹿げていると思う。
それに、それが本当かどうかもわからないのに……。
「……あなたが、倒すのです」
「えっ!?」
「あなたと、真竜で……倒すのです」
「む、無茶です……!」
「何が無茶だというのです? 自分の力を信じられないのですか?」
違う。信じ過ぎているから、無茶な話だった。
ヴォルテールは、確かに強い。強すぎるほどに、人が相手になったら、手も足も出ないほどに強い。たとえ、なのはさんやフェイトさん、八神部隊長とが協力しても、僅差で勝てないだろう程に、ヴォルテールは強い。
だから、怖いんだ――――。
私なんかが、持てる力じゃない。持っていていい力じゃない。
だから――――。
「…………そうですか。なら、ここで逃げるのですね。良い選択です」
「え?」
「怖いのなら逃げる。一般人として賢い選択ですわ。さて、ここで質問ですわ」
「う?」
その話の流れ方がどこか誰かに似ている気がして一瞬戸惑ったものの、彼女が口にした質問にそんな考えも吹き飛んだ。
そして、私は――――
「あなたは、どうしてここにいるのですか?」
どうして、ここにいるか。
それは私が……管理局員だからで……。
「あなたはどうして、ここに留まり戦ったのです?」
それは、私の――――
あ。
「よろしい。合格です」
顔に出ていたのか、女性は二コリと微笑み、私の頭を撫でてくれた。
そのときにエリオ君が目に入ったのか、さらに微笑みを増してエリオ君を抱き上げた。
「起きなさい、少年」
ぺちぺちと軽く頬を叩いてエリオ君の目を覚まさせた。
ごほっ、と海水を吐いてエリオ君は目を開けた。
「う、うわっ!?」
目の前に見知らぬ女性の顔があったからか、エリオ君は彼女の腕の中で少し暴れ、私がいることに気がつくとすぐに落ち着いた。
彼女はエリオ君をゆっくりと立たせ、それから二コリと微笑んだ。
「あなた、ワタクシを護衛なさい。ワタクシは今から竜を牽制しますから」
牽制する、と軽々しく口にした後、5分経過を告げるブザーが機動六課上空に鳴り響いた。
残った航空戦力が一斉に爆撃を開始した。まだ若干残っているシールドが衝撃を情けなく緩和してはいるものの、いつそれが切れるかも分からない。
「さぁ、話している暇はありませんわよ? 選択するのはあなたがたです。私の指示に従うか、運命に従うか。好きな方を選びなさい」
私が戦った理由。
それは私が、私の居場所を守りたかったから。
だったら、だったら運命に流されてちゃいけない。この人が誰だっていい。私の居場所を一緒に守ろうとしてくれている。
彼女が言ってることが嘘か本当かなんてもう、とっくに関係なかった。
「行きます。行こう、ヴォルテール……!」
「守ります。僕があなたを、きっと……!」
声が重なった。
よろしい、と彼女は本当にうれしそうに笑った。
途端、厳しい顔つきになって指示を出してくれた。
「私が竜を牽制しますわ。真竜と共にあなたは全力で接敵しなさい。牽制する間、君は私の護衛。わかったかしら? 一言でまとめてあげましょう。近づいて、倒す! ですわっ」
ヴォルテールの手の平に乗り移り、私たちは飛び立った。
後ろ手に六課が粒のようになった頃、頭上を一筋の閃光が翔け抜けた。爆発音を伴って飛んで行く閃光は瞬きの一瞬で見えなくなっていた。何が起こったのか、詳しいことはわからないけど私は飛び続けた。
私の居場所を守りたいから。みんなで笑い合える場所を、作っていきたいから……!!
「行こう……ヴォルテール……っ!!」
* * * * *
「演算開始……第一、第二、第三加速環状魔法陣、展開開始……」
巨大な蒼色の剣十字のベルカ式魔法陣が展開される。
徐々に形取られていく環状魔法陣を尻目に、さらに分割同時演算を展開していく。
「超伝導外郭魔法膜、冷却開始。超伝導外郭魔法膜、第二展開開始……」
超伝導外郭魔法膜。
マイスナー効果による磁場消滅による重力からの解放。魔力といえど、存在する限りなんらかの磁場を持つ。ゆえに星に引っ張られ、長射程の射撃や砲撃が難しいとされている。落ちるからだ。
それを防ぐための、魔法膜がこれ、『超伝導外郭魔法膜』。射撃魔法自体の魔力を冷却するのではなく、外郭、つまりまわりを囲むシールドを冷却し、中の射撃魔法を保つ。それをさらに多重に展開。
極超音速で魔力弾が飛翔するこの魔法は、空気抵抗がとてつもなく激しい。ゆえに魔法膜はあっという間に加熱され、マイスナー効果をなくす。
緻密な演算と、固定するための集中力。
さらに、これらに加えて――
「第十三加速環状魔法陣、展開完了――――。超伝導外郭魔力膜、第百三十七展開開始……。目標確認、誤差修正……」
ターゲットのロック。
一つの過程に数十数百の工程を賭し、それを三過程。
つまり、加速式演算、超伝導式演算、目標固定式演算の三過程。
「全三過程、終了。オートロード、準備開始」
その三過程を乗り越え、魔法として成り立つ。
その魔法の外見は、環状魔法陣が50近く設置されているところから、まるで砲身を持つかのようである。
また、その魔力弾の姿は弾丸。鋭く引き伸ばしたそれは、あるいは槍ともいえるだろう。
「翔けなさい、天粒……!!」
投槍が如く、体を弓なりにしならせ、投擲態勢をとる。
残すのは、発動をするためのトリガーワードを叫ぶのみ。
「アヴァランチ……ッ」
腕が振り下げられる。
加速環状魔法陣の第一陣目を通過する瞬間――――
「レーゲンッ!!」
視力を失うかと思うほどの白光が迸る。
ひとつひとつの魔法陣を通過する度に、薄い蒼がかった白光が雪崩のように発生する。
そこから落ちる一粒の雨粒。加速しきった、魔力弾。
「第二射、オーヴァロード!!」
過程をコピーした魔力弾を即生成。
若干の誤差を数秒単位で修正し、もう一度発射。
わずかにずれていく計算と、命中精度。
時間はそう多くは稼ぐことが出来ないだろう。せいぜい5分が限界だ。
「まったく……頭がパンクしそうですわっ!!」
第十射を超えたあたりで、女性から初めて弱音が漏れた。
それでもまだ着弾誤差が1センチと違っていないことを考えれば驚異的である。
人には真似することのできない演算速度と処理能力。
それを垣間見たエリオは、驚きで動きが止まってしまっていた。
「す、すごい……」
そういうしかなかった。
他になんと称賛の言葉をかければよいだろう。
発射されるたび、空気が振動する。近くの間合いでは衝撃波も凄まじいらしく、エリオが落とし漏らしたガジェットが押し戻される始末である。
第五十射を超えたあたりで、エリオは残ったガジェットの二分の一を破壊していた。
残りの半数は衝撃波ですでにスクラップ同然。
エリオ自身も、その衝撃波には気をつけながらの戦闘行為だ。ストレスと疲労はあっという間に溜まっていく。いわずもがな、魔力も同様で、すでにギリギリのところで踏みとどまっていた。
「はァ……っ、ハァ……ッ!」
肩を上下させ、エリオはストラーダを杖代わりに片膝をついた。
ガジェットはまだ数機残ったまま。誰だか分からない女性も、まだとんでもない射撃を行い続けている。
「ストラーダ……ッ、フォルムアインス!」
《ja! Speerform!》
あとは腰を据えて迎撃するしかない。
そうエリオが判断した時だった。上の方から怒鳴り声が聞こえた。
「たとえばですわ! 突撃するしか脳のない猪が、その場で動かず頭を振り回すだけで相手を倒すことは出来ますか!?」
エリオは最初、馬鹿にされたのかと思った。猪のように突撃するしか脳のない野郎だ、と。
しかし、それが誤解だと知るのにそうはかからなかった。
「あなたは、今までどうやって戦ってきたのです? 今までどうやって戦場を駆けてきたのですか!?」
「僕は……」
《Dusenform!!》
エリオの意思とは関係なく、ストラーダは勝手にフォルムツヴァイへ移行する。
それにエリオ自身が驚きつつも、答えは得たとばかりに頷いた。
ストラーダを構え、息を落ち着ける。残り少ない魔力で、どこまで戦えるか分からない――そんな考えを拭い去る。
……――魔力が続く限り、僕は翔け続ける。スピードだけが取り柄の、突撃屋。
「ブースト……!」
《Start!》
弾けるように上空へ。同時に、一体のガジェットを貫いた。
残り、5機。それを確認した後、エリオはバーニアを吹かし、敵の方へ方向転換する。
「行くぞストラーダ! 魔力尽きるまで、翔け抜ける……ッ!!」
《Jawohl!》
まるで稲妻。奔る雷閃のように次々にガジェットを貫き翔けて行く。
最後の一体を貫いたところで気が抜けてしまったのか、最後の着地を確認する前に上空で気を失ってしまった。
地面に激突するより早く、その身体はまた宙に舞い戻って行った。女性が引き揚げたのである。
「……ふぅ。まったく、無茶をしろとまでは言ってませんでしたけどね。突撃屋さんは、こういう性格が多いのでしょうか」
呆れたように、また懐かしいものを見るように彼女は呟いた。
計100射。射撃はとうの前に終わりを告げており、それはまた、作戦が次の段階へ移行したことを示している。
つまり、ヴォルテール対『サベージ』。
竜対竜の、一騎打ち。
地上本部そのものを消し飛ばしかねない、破壊の戦い。
彼女は地上本部の方向を眺めながら、額の汗をぬぐった。
「……ワタクシは、どれほどの間眠っていたのでしょう……」
その事実を知るという恐怖を払拭するため、ただ一心不乱にアヴァランチ・レーゲンを投げ続けた。
それでも拭えぬ不安は、どうして出てくるのだろうか。こんなこと、よくあったのに。
「慣れ合いすぎたのか、それとも……ワタクシがユーリに恋していたのでしょうか?」
言ってから、彼女は首を振った。
エリオを寝かせ、そのまままた空へ上がった。今度は牽制のためではなく、戦線へ出るためにである。
「ラインハルトに仕えし、竜毀の姫騎……“クリームヒルト”。いざ……ッ!!」
彼女――竜毀の姫騎、クリームヒルトは六課から地上本部へ一直線に飛び立った。
Act:4−4 end
テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学
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