2009-11

背徳の炎  track:8

 
 「では、アクセル君」
 
 結果発表、とか言って金曜日、つまり合格なら初勤の朝に呼び出された。
 何を発表するのかは置いといて、今は朝の5時。
 …… 早ェよ。
 
 「今回の戦闘から、高音君の報告を聞く限り …… 」
 
 ごくん、とつばを飲み下す。
 別に教師になれないってことが嫌なんじゃない。この歳になってイヂメとかされるかもってことが嫌なのだ。
 
 「『信用に足る人物』と判断できると、そう報告を受けたわい。その後の高音君は、魔法先生・生徒の集まりでもそのことを言い回っとったよ」
 
 「お、ぉおお!」
 
 グッと腕を天井に向けて突き上げる。
 
 「っしゃぁ!!」
 
 振り下ろして大げさにガッツポーズ。それくらいしたくなるっつーの。
 遅刻とか、戦闘後の面倒とか …… 本当にかけまくったんだからよ。
 
 
 =  =  =  =  =
 
 
 「行くぜェ!!」
 
 恐れず突っ込む。
 自分に言い聞かす。キレたダンナのパンチ程じゃ絶対ねぇ!! と。
 大将が大きく右拳を振りかぶる。
 見極めろ、アクセル!
 
 「くらいな!」
 
 鎌を投擲する。狙いは右肩。
 どっかで読んだコミックに描いてあったんだ、技の出始めを、つまり始動点を叩けば勢いはなくなるってな。
 狙いは外れることなく肩に直撃、したんだけどっ!?
 
 『ぬるいわ!!』
 
 トラックが真横を通りすぎた後みたいな轟音と衝撃。
 図体が違いすぎるのか?
 大将の左に回りこむように走ってスキを窺がう。
 ツェップの筋肉ぐらいの図体しやがって、それでこんなに速いとかアリかよ。
 スキをどうにか作れないかと、ちくちく鎌を投げながら考える。
 アレを出すのはいい。決めた。でも、どうする?準備にゃ百重鎌焼以上の時間が要る。
 どうする ――― ?
 
 大将がまた右拳を振り下ろす。
 ビシビシと砕けた地面の欠片を受けながら、ある違和感を感じ取る。
 ―――― ?
 
 『何の真似じゃい』
 
 足を止める。
 大将も俺様のスーパーブレインにはついてこれてねぇみたいだ。
 この違和感を確かめるには、こうするしかない。
 
 「来いよ、止まってやったぜ。男らしく打ち合おうぜ?」
 
 『いーい度胸じゃ、なら、遠慮なく …… !!』
 
 筋肉の軋む音がする。ミチミチと千切れるくらいに張られた、力を込めた腕。
 振り上げられるのは右腕。その大きさは、元からデカイ樹の幹はありそうな腕がさらに膨れ上がったもの。
 コイツまじかよ。
 
 『おおおおおおおぉぉぉぉォォォォッ!!』
 
 集中しろ、見ろ。
 ギリギリで体をずらす。紙一重、体の半分が吹き飛んだかと思ったぜ。
 
 『貴様 …… っ!』
 
 「避けちゃダメって言ったっけ?」
 
 にひひ、と笑う。
 流石にあれをくらうのはごめんこうむる。
 
 『ぬかせ、腑抜けがぁっ!!』
 
 右にステップを踏んで回りこむ。
 大将は、“右拳”を振り上げる。へ、やっぱそうか。
 
 「見えたぜ、大将!」
 
 『潰れろっ!!』
 
 チャンスは一瞬。どこぞの髭紳士に一回だけ成功した防御法。あれ以来怖くて使えたもんじゃなかったが、ここはンなこと言ってられない。
 
 鎖を張って、防御の姿勢。体と、鎖に法力を集中。
 ヒットする一瞬前、その法力を全開放。金色の環状法力波を伴って、受けるはずの衝撃が激減される。
 
 スラッシュバック、成功だぜ。
 
 「ノリノリだぜ!!」
 
 猛禽が大きく羽根を広げるが如く。
 鎌をツバサに見立て、大きく体を開く。動きを止めてまでの法力の練り上げ。
 法力は波動となって体の外に溢れ出す。陽炎の如し法力の奔流。
 
 『は! させるかっ!!』
 
 大将はわざわざ“右拳”を振りかぶり直す。その一瞬が、命取りだぜ!?
 
 「うおぉらァッ!!」
 
 懐に潜り込むようにして拳を掻い潜る。
 同時に、鎖鎌は際限がなくなる。ガラスにヒビが一気に張り巡るように、大地に鎖が張り巡らされ、大将の足をすくう。
 
 「らァッ!!」
 
 『何だとォっ!?』
 
 鎖の嵐。
 中空に浮く大将目掛け、鎖が暴れるように叩きつけられていく。
 叩きつけられて叩きつけられて、いつしか、それは蜘蛛の巣のように大将を絡め取る。
 
 込み上げる火山噴火のような、自分の爆発寸前の法力を鎖に流しこんでいく。
 その全てを詰めこんで、鎌は迸る。敵を討ち抜けと、大将の体で搗ち合わす。
 今出来る限界域の出力を以って繰り出されるは、我が鎌閃奥義!!
 その名を ――――――――
 
 
 「 ―――――――― 亂髪[みだれがみ]」
 
 
 昼夜が逆転する。
 近く木は薙ぎ倒され、遠く音は森を激震させる。
 名には違わぬ。その炎が起こす爆風は誰もの髪を平等に亂れさせる。
 
 「Good Luck!!」
 
 鎖鎌を収め、キメる。
 鬼の大将の巨体は落ちることなく虚空に消えゆく。
 その消え去る直前。
 
 『また、喧嘩したいもんじゃ』
 
 その言葉に俺は答えない。
 ただ、そちらを見ずに、背を向け手を振るのみ。
 その行動には精一杯の気持ちを込め、メッセージとした。
 
 『二度とするか! バカ野郎!!』
 
 と。
 
 
 =  =  =  =  =
 
 
 と、まぁ。
 そこで格好付けたまではいいんだよな。
 案の定、バカみたいな戦い方をした俺はガス欠でダウン。タカネちゃんとメイちゃんにかなり迷惑をかけちまったってワケだ。
 そりゃそうだ。覚醒2発に奥義1発って …… 今になって思えば俺どんだけ無茶してんだよ。
 
 まぁ、結果的にイヂメは免れたわけだ。もしやられたとして、イヂメかどうかはわからんけど。
 
 「さて。君が副担任として担当するのは3−Aじゃ。主に相談役としての配置じゃからそこまで気負う必要はない。人生の先達として生徒らをしっかり導いてやってくれい」
 
 「おう、まっかせな!」
 
 と、言ったトコロで仙人が急に顔を曇らせる。
 着任早々大変な仕事が回ってきそうだな、こりゃ。耳栓したい。
 
 「週明け、火曜日から3年生は京都に修学旅行に行く」
 
 「しゅーがくりょこー? ってーとアレか。学生旅行みたいなもんだな」
 
 「そうじゃ。しかし、の。ちょいと問題があってのぅ …… いやいや、君には直接関係はないと思う」
 
 たぶん思いっ切り嫌そうな顔でもしてたんだろう。ほら、俺正直者だから。
 は、置いといて。
 
 「場合によっちゃ、イノが出てくるかも …… とか考えてんだろ? 言えよ。聞くから」
 
 「そうかの? いや、それはありがたい。実は ――――― 」
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 私、佐々木まき絵を中心に何人もの人が大変なことに巻き込まれています。
 
 「ひっ、ひぃぃぃ〜っ!!」
 「亜子! がんばって!」
 「うぉぉっバスケで走り込んでてよかったぁぅおぉおぉぉっ!!」
 
 亜子、アキラ、ゆーな、そして私。
 横一線にまだ他何人か。そして、後ろにはなぜか恐竜。
 そして、またひとりふたりたくさんと逃げる人が増えていく。
 
 「止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ!!」
 「ぎゃあぁぁっ、開発費がまた弁償代で消えるぅ〜っ!!」
 「しゃべるな! 手を動かせ、手を!!」
 
 たぶん、大学ロボ研のいつもの暴走。
 いつもの暴走。たまったもんじゃないね、これは。
 
 「ちょ、ヤバイって! なんかまき絵が悟った顔しとる!!」
 「まき絵、しっかり!」
 「ひとりで勝手にトリップするなぁぁっ」
 
 今の私なら何でも出来そうな気がする。
 すごい、すごいよ。今なら何でも出来るんじゃないかな!?
 
 「みんな、ここは私にまかせて! 今の私は何でもできそう!!」
 
 「アカンアカンアカン! なんもできへんって、まき絵は所詮まき絵やから逃げとけばええんやよ!!」
 「まき絵、残念だけど、私たちに出来ることなんかないよ」
 「本格的にヤバイ空気が漂ってきたんですけどォォォッ!?」
 
 「ううん、そんなことないよ。今なら何でも出来る。止まれぇっ!!」
 
 『うわぁぁっ!! 何してるのッ!?』
 
 ――――――― ド……ッ
 
 「あれ?」
 
 恐竜が止まる。いや、止まってない。だって、恐竜が空を飛んでる。
 お腹のあたりを思いきりへこませて、恐竜が空を飛んでる。
 
 『まき絵がやったぁぁぁぁ〜〜〜〜っ!?』
 
 ――――――― ガッシャァッ!!
 
 恐竜が落ちていく。後ろを追いかけて止めようとしてた大学ロボ研の人たちに落ちていく。
 と、恐竜が今度は空中分解を起こした。真っ二つに千切れてロボ研の人たちもケガはないみたい。
 え?これホントに私がしちゃったの?
 
 「チ」
 
 「やれやれ」
 
 舌打ちと、聞きなれた声が響く。
 もくもくと煙が立つなか、動く影がふたつ。
 
 「みんな、ケガはないか!」
 
 その中のひとりが声をあげて全員の無事を確認する。
 いつもの白いスーツ姿で煙から出てきたのは高畑先生。
 
 「デスメガネだ!」「つええ、アレ真っ二つかよ!?」「どうやったんだアレ!」
 「終った。開発もここで打ち切りか …… 」「会長 …… 」「諦めてどうする!?」
 
 とかなんとか。
 高畑先生がこちらに気付いて歩いてくる。
 
 「大丈夫かい?」
 
 「あ、はい!」
 
 代表してアキラが言う。
 突然、高畑先生の姿を見て、急にホッとしたからなのかなぁ。
 
 「う、ふぐぇっ …… ぐずっ …… うぇぇ〜ん!」
 
 「まき絵!?」
 
 「おっと?」

 高畑先生に抱きついて泣いていた。
 ぽんぽん、と背中に優しい手の感触。
 本当に、怖かった。
 
 「もう大丈夫 …… 大丈夫だから」
 
 「ご、ごわがっだぁぁ …… ぶぇぇ …… ん!」
 
 「君たちは? ケガはない?」
 
 「あ、はい」
 「まき絵よりかは …… 」
 「高畑先生相変わらずスゴ …… 」
 
 私は、泣き続けた。
 本当に怖かったから、高畑先生が優しかったから。
 と、ざわつきが大きくなる。
 
 「おい誰だアレ」「部外者か?」「見かけねぇよな」
 「デスメガネの前ってアイツが吹き飛ばしたのか?」「おい、まさか。デスメガネじゃあるまいし」
 「そうそう、あんなのが二人もいたらって、じゃあアレ誰だよ」
 
 まだしゃっくりみたいに泣いてる私も気になって、高畑先生の横に顔を出して見てみる。
 そこにはひとりだけ。煙が晴れて、姿が見える。
 ムキムキの体。黒のタンクトップと、白のジーンズ。あれ、なんだっけ …… はちまき? と、ベルトについてる大きなバックル。
 ここからだと見えにくいけど何か書いてる。『FR …… E、E』?『フレー』?
 
 「『フリー』だよ、まき絵」
 
 「あ、あはは」
 
 ということで、その人がこちらに近付いてくる。
 高畑先生の横に立って気付く。背ぇ高っ!
 明らかに人が出せる目力を超えた鋭さで高畑先生をにらんでいる。
 背筋が、痛いほど堅くなる。
  
 「テメェらの大将はとんだ茶番好きらしいな」
 
 「そんなこと言わないでやってくれ。これも『仕事』だよ」
 
 「チ …… ッ」
 
 男の人はそのまま振り返って歩いていく。
 人ごみにまぎれて、見えなくなる。
 
 「あの、あの人は?」
 
 「あぁ、まき絵君はもう大丈夫なのかい?」
 
 「あ、はい」
 
 「で、あの人のことだったよね。学園長先生直属の『仕事屋』ってとこかな」
 
 よくわからなかった。
 だいたい、この学校でそんなのがあったかなぁ。
 いろいろと疑問を持ちながら時計に目を移す。8時5分くらい。
 
 「うわっ遅刻するよ! 亜子、アキラ、ゆーな、行こう!先生、ありがとうございました!!」
 
 「あぁ、気を付けてね」
 
 そのまま、私たちは走り去った。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「学園長先生直属の『仕事屋』ねぇ?」
 
 「そうなのそうなのっ! ね、ね?ちょっと気にならない!?」
 
 教室の反対側、窓側で繰り広げられている他愛ない会話に珍しく反応してしてしまう。
 『仕事屋』か。おそらくアイツ、あの男 …… 。
 高等部の高音という先輩から聞くところでは、「害はない」とのことだが、どうだか。
 
 「どうした、刹那」
 
 「なんでもない。お前こそどうした」
 
 「いや、なんでも」
 
 今しがた登校して来たのか、龍宮が「何か?」と聞いてくるが、なんでもない。
 アイツは、何者なのだろうか。
 突然現れ、時間切れという結果であるにしてもあのエヴァンジェリンさんを倒し、刀子さんを圧倒した。
 魔力でも、“気”でもない、不可思議な力を使う人物。いや、人か?
 私と同じ …… 私以上の化け物じゃないのか?
 
 「気になるって言ったら、まぁ嘘じゃないね。よし、じゃあまかせてよ!」
 
 「さっすが報道部! さっすが朝倉!」
 
 片肘を突いて事の成り行きを見ていると、どうやら朝倉さんがあの男のことを調べるらしい。
 
 「どれ …… 」
 
 「? …… 龍宮?」
 
 「ふ、なに …… 報酬は貰うがね」
 
 自分の鞄も置かず、その話の輪にズケズケと入っていく。
 意外な人物の登場に、朝倉さんのみならず、周りを取り巻く全員が龍宮に注目する。
 ただ金が欲しいだけなんじゃないのか、アイツ?
 
 「いい情報があるんだが …… 朝倉、いくらで買いたい?」
 
 「お、おぉ。何何? 例の男『仕事屋』の情報?」
 
 「そうだ。ちょっとしたものだがな」
 
 「うむむ ………… コレで!!」
 
 ピッと手の平を広げて『5』を示す。
 
 「五万?」
 
 「うぇえい! 違うよ、五百円!!」
 
 「ケチるな、それじゃ何も教えられない」
 
 「じゃ、千円!!」
 
 「変わらん。が、まぁいいだろう。デスメガネ高畑曰く …… 」
 
 なんであんな言い方をするのか。おそらく副担任としての高畑先生ではなく、学園内で恐れられている『デスメガネ』としての方が伝わり易いと踏んだからだろう。
 朝倉さんは朝倉さんでメモを取りだし、さっそく舌なめずり。
 
 「『僕では到底敵いっこない』と、言っていたかな? 千円で言える情報はここまでだ。あとは本人にでも訊くといい」
 
 「 …… え?」
 
 取り巻く全ての人がぽかんとする中、龍宮だけが悠々と自分の席に戻って着席。
 朝倉さんは「えっと〜?」とどうにか反芻しようと頭を回しているのがわかる。
 まぁ、無理もない。
 
 「え? っと。それってつまり …… アレ?」
 
 意外にも一番早く戻ったのは早乙女さん。
 続くようにフリーズが解けていき、ざわつきが大きくなっていく。
 
 「この学園で、敵無し …… みたいな?」
 
 結論を下したのは、例によって朝倉さん。
 どうだろう、エヴァンジェリンさんが全開、パートナーありでならまだ分からない。
 と、こんなことを思っても、詮無いことだ。私は私の仕事をすればいい。
 …… そうだ。私は、私。化け物は、化け物。変わらない。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「さてと。どうだいネギ、俺キマッてる?」
 
 最後にネクタイをきゅっと絞め直して身支度完了。
 頭のバンダナはもちろん外して、俺の長くてさらっさらの金髪は首の後ろで結んでまとめる。
 なんてーの。デキる男って感じ?
 
 「はい、バッチリですよ!」
 
 改めて、スーツってのはなかなかキマるもんだな、と確認。ま、俺ってば何でも似合っちまうからな。参るぜ。
 
 て、ことで教室前。
 ざわつく気配から、やっぱり女子校なんだなぁ …… と再認識。
 
 「じゃあ、呼んだら入ってきてください」
 
 「はいよ」
 
 と、ネギが教室に入るとざわつきが喧騒に変わる。
 何が起こったんだよ。
 しばらくして、呼ぶのではなくドアからネギが出てくる。なぜか疲れた様子で。
 
 「どしたの?」
 
 「いえ。入ってくれて大丈夫です」
 
 どこからどう見ても大丈夫でなさそうなヤツに言われてもねぇ。
 教室に先に入ったネギに続いて俺も入っていく。
 一瞬で教室の音がシン、と無くなる。うわ、気持ち悪。なにこの落差。
 
 「ネギ、これ大丈夫だよな?」
 
 「ええ、はい。ちょっと驚いただけだと思います」
 
 と、慣れでついつい英語でしゃべってしまう。
 
 「こほん。えー、みなさん。聞いて下さい!」
 
 と、ネギが日本語にシフトする。
 目だけで話しかけてきて、おそらく自己紹介してくれってことだろう。
 と、いうことで俺もせき払いをひとつ。
 
 「みんな美人だなァ …… 」
 
 と、英語で切り出す。
 ネギは慌てるが、手で制しておく。
 この言葉に反応したのは数人。耳まで赤くしてるやつもいる。可愛いなぁ。
 
 「と、今日から …… 急だけど、このクラスの副担任ていうか、保護責任者っていうか。まぁ、このクラスの一員になるアクセル・ロウだ。よろしくっ!!」
 
 ビシィッとキメる。
 少なくともマイナスイメージは植え付けたくないからな。
 
 「相談とか、ネギには話せないような悩みは俺にでも相談してくれ。特に恋愛に関しちゃ手取り足取り …… もとい、自信がある」
 
 ちょっとしたジョークもいれてみたが、イマイチ反応がよろしくない感じ。
 失敗しちゃった?あちゃぁ、まじでか。
 
 「えっと …… じゃあ、質問のある人、手を挙げてください」
 
 困っていると、ネギがフォローしてくれた。さすが先生だね〜。俺も今やその人種だけど。
 す、と真っ先に手を挙げたのは窓際一番前の子。将来有望だね〜。
 
 「はいじゃあ …… と、アサクラ …… ?」
 
 「朝倉和美です」
 
 「じゃあ、カズミちゃん」
 
 す、と手を挙げたときのように立ち上がり、なぜかメモ帳を取り出す。
 そこかしこから「あちゃー」だの「まずいねー」だの「でも朝倉しか手挙げなかったじゃん」とか。
 そういうのやめてくんない?すっげー不安になるから。
 
 「なぜ、このような中途半端な時期に?」
 
 「えーっとな、タカミチ先生がどうしてもってな。なにやら副担任も兼任していたら出来ないような仕事が入ったとかで、俺に回ってきたってワケ」
 
 「では、アクセル先生は ――― 」
 
 お、アクセル“先生”だってよ。くすぐったいねぇ。
 
 「高畑先生の紹介で赴任してきたと?」
 
 「そうなるね」
 
 と、こういうことにしておけ。とは仙人。
 確かに一番ありがちであっさりした答えだよな。
 ふむふむ、とメモになにか書き込む。
 
 「では、以前はどこで?やはり外国?」
 
 「まぁ、そんなところ。ちなみにイギリスね」
 
 「へー、ほぅほぅ。ちなみにこのクラスで彼女にするなら?」
 
 からかい半分で聞いてるに違いない。
 
 「君」
 
 即答してやる。できるだけ本気で聞こえるように。
 その方が面白い。
 
 「 …… ふむふむ、私。えぇっ!?」
 
 「あっははは」
 
 「からかわないでくださいよ。まったく」
 
 と言いながら顔が赤いぞカズミちゃん。
 ぐりぐりとメモ帳を塗り潰す。行動がいちいち中学生だな〜。面白いわぁ。なんたって俺の知り合いロクなのがいないからなぁ、全員顔とスタイルは完璧なのに。
 
 
 もういいだろ、と言いたくなってきた。
 あれから10分は経ったか?カズミちゃんの質問は延々と続く。
 と、授業開始のチャイムが鳴る。おお、神よ。信じてないが今だけはありがとう。
 
 「おっと。では最後に …… 日本語がお上手ですが、どこで?」
 
 「ベッドの上。以上!」
 
 確か1時間目はネギの授業だっけか。
 じゃあ、と後ろへ移動する。
 
 「じゃあ、皆さん。教科書の10ページをひらい ――― 」
 『『『『えええええぇぇぇぇぇっ!!?』』』』
 
 移動し終わり、し終わった瞬間爆発。
 長いな、フリーズ。ってことはそんなに悪くはなかったのかなぁっと。
 
 「ちょっとネギ君なにアレ!」「なんかけっこーイケてない!?」
 「やばい、大人ぁ〜」「日本語は『ベッドの上』ってキャァ〜ッ!!」
 「なになになに!? も〜やらすぃ〜!!」「ついてけねぇ …… 」
 「バカばっかです」「髪きれ〜」「シャンプーなに使ってるんですかー!」
 
 うぉおお …… なんだコレ急に来たなオイ。
 ぎゃあぎゃあと固まって騒ぎ始める。当の俺抜きで。
 
 「み、みなさーん! 落ち着いて、落ち着いてーっ!!」
 
 ネギがこの騒動を治めようと奮闘するも、善戦むなしく蹴散らされる。
 ネギには悪いけど、こういう騒ぐのは好きなのであえて口は出さない。放っておこう。
 
 「アクセル・ロウ …… アクセル先生でよろしいかな?」
 
 ニヤニヤして眺めていると、横から声が掛かった。
 って高ッ! 俺よりあるし! へこむから並ばないで欲しい。
 
 「君、背高いねぇ …… 180? 中学生?」
 
 「よく言われるでござる」
 
 と苦笑い。
 おっと、つい。
 
 「いや、大人の魅力に溢れてるぜ?」
 
 「またまた」
 
 ははは、と今度は本当に笑ってくれた。
 発育いいなァ。こりゃ生殺しとかマジに覚悟しなきゃだな。
 
 「おっと、自己紹介がまだでござったな。長瀬楓でござるよ、よろしくでござる」
 
 「おぅ。にしても元気なクラスだわ。飽きないわ」
 
 ギャーギャーと絶え間なく騒ぎ立てる中心を眺めてそう呟く。
 
 「オイ」
 
 「はいっと、あらぁら。君は ――― 」
 
 見たことがあった。
 確か飛ばされてスグの橋の上でいたな。ダンナの殺気にも耐えた子だ。
 
 「なぜここにいる」
 
 「タカミチ先生に聞いてくれよ。それとも、お嬢様が気になる?」
 
 「貴様 …… ッ」
 
 飛びかかられそうになったので手で制する。
 それで止まってくれたのはたぶんクラスでいるからだろう。
 
 「俺もせんに …… 学園長に頼まれたの。君のことも今朝聞いたし、何、仙人俺のこと言ってないの?」
 
 「聞いてない」
 
 「あの …… ジジィめ」
 
 俺が怒るのは分かるけど、なんで彼女までキレてんだ?
 キレてるって言うか、悔しそうって言うか。
 
 「 …… し …… では …… ぶ …… はないと!?」
 
 呟くように言った。よくは聞き取れなかったけど、相当キレてるぞこの子。
 なんとかなだめようとしたその時
 
 「アクセルせんせーこっち来てよー!!」
 
 でも、と言う前に睨めつけられ、小声で「行け」と言われた。
 まだ自己紹介もしてもらってないと、心配なんだとも言えずに、俺は嵐のような女子校生の質問攻めに再び身を投じたのだった。
 
 



               track:8  end



テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

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自己紹介 (1)

プロフィール

Author:草之 敬
趣味:絵を描くこと(友人に「お前が描くのがムカツク」と言われる程度)・小説を書くこと・ドラムス
    
性格:優柔不断。ここを作ったのは英断だと思ってる。

語り:この頃やっと自分のブログに自信が持ててきた。
 作品が増えていくたび、愛着が出てきて困る(いい意味で)
 心の聖典は『イエスタデイをうたって』『ああっ女神さまっ!』

小説を読む前にガイドラインを読んでくれると注意書きとか載ってます。

リンクフリーです。相互リンクも大歓迎です。

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