2009-11

その優しい星で…  Navi:32

 
 「灯里もそうだったけど、衛宮さんも何気に知り合い多いよね」
 
 と、そんなことを藍華が急に言いだした。
 言われてみて、指折り数えてみる。アイナだろ、女将さんにアキナさんとアミ、アイラ、アントニオ……。まぁ他にも知り合いといえば知り合いなのはいるにはいるが、先に名前をだして数えた人たちよりは話すことなんてないし、会っても会釈くらいで、済ますし。
 そんなに多いとは思えないのだが。
 
 「ていうか、衛宮さんの知り合いに“女性”が多いってのが問題よね」
 
 「なにを……」
 
 ――ガチャン!
 藍華がそんなことを言い出したばかりに、後ろで洗い物をしていた(いつものごとく無理矢理「私がやります」と押し切られた)アリシアが皿を一枚落として割ってしまう。
 ……なんていうか、彼女からの好意に気付いてしまったばっかりにこういう反応をされると、なんといいますか、近づきづらい。
 
 「あらあら、ごめんなさい。すぐ片付けますから……」
 
 「いいよ。俺がやるから」
 
 「でも、私が割ったんですし……」
 
 「商売道具に傷でもついたらどうすんだ。ほら、離れてろ」
 
 こうでも言わないと、アリシアは離れてくれない。
 “商売道具に〜”なんて言っておいてなんだが、もちろん嘘だ。正直に言ってしまえば、アリシアに、なのだが、そんなこと恥ずかしくて言えたもんじゃない。
 だからと言って、俺ももう少し言いようがないものだろうか。
 こんなことをしていて、これもいつものことになりつつあるのだが、アリシアはいつも申し訳なさそうな顔以上に、悲しそうな顔までする。それに気がつかないふりをしている、俺も悪い。
 
 「お皿、ごめんなさい。士郎さんが買ってきてくれたものだったのに」
 
 「いいって、そんなの気にしなくても。それより、怪我、ないのか?」
 
 「はい。おかげさまで」
 
 「ほんとか? ほっておいたらそこから菌が入ってくるんだぞ?」
 
 「本当に大丈夫ですよ」
 
 手の平を上にして俺に見せてみる。
 確かに、皿の欠片で切ったような傷はない。
 ようやく安心して、俺も反省することにした。これは俺が俺に科す罰だ。
 
 ポン、とアリシアの頭を撫でる。
 
 「?」
 
 くすぐったそうに肩を寄せながら、アリシアが見上げてきた。
 
 「あんまり悲しそうな顔するな。アリシアがどうにかなったら、俺はどうすればいいかわからなくなるんだからな」
 
 精一杯の、今までのお詫びを兼ねた言葉だった。
 それで今までの分が帳消しになるだなんて思ってもいないけど、それでも、遠まわしでもいいから、正直なことを言っておきたかった。
 はたして、アリシアは顔が桜色に、文字通り花のように微笑んでくれた。
 
 「で、藍華。俺がなんだって……?」
 
 「あ、いやー。衛宮さんの知り合いには女の人が割かし多いんじゃないですかって話ですけど」
 
 「そんなことはない。そう思ってしまうから、そう感じるだけだ。実際、数えてみれば五分五分くらいの割合だぞ」
 
 「私の知らない人も知り合いにいるってことですよね。ってことは知り合いが多いってことじゃないですか」
 
 「そうでもないと思うけど……」
 
 10人前後だと思うのだが。
 それで知り合いが多いなんて言われてちゃ、灯里はホントにどうなるんだ。
 
 「えー。私もそんなにいないと思うんですけど」
 
 と、あっけらかんと言う灯里の知り合いは本当に多い。
 散歩に出れば、友達が絶対に増えているという、ある意味特殊能力持ちなのだから。
 まぁ、意図して友達を増やしてるわけじゃないんだろうけどな。
 
 それにしても、なんでいきなりこんな話しになったんだ。
 
 「藍華、ところでなにがどうなってそんな話になったんだ?」
 
 「いやいや、衛宮さんてさ、アクアに来て丸々〜2年だっけ? そんなに経ったんだな〜って思って」
 
 適当な態度を崩さず、藍華が首を揺らしながら机の上で頭を転がしている。
 そういえばそうだったな。実に3年目。ここに来て、すでに2年。地球歴で数えれば、4年が経ったことになる。
 そうか。もうそんなに経ってたんだな。
 
 「って、そうだ藍華、アリス。明日予報じゃあアクア・アルタが来るって言ってたぞ。あんまりゆっくりしてると帰れなくなるぞ?」
 
 「でっかい心配無用です」
 
 「そ。だって私たち二人とも泊まる前提で来てますから」
 
 「聞いてないぞ……」
 
 「今さっき決めましたからね。ねぇ、後輩ちゃん?」
 
 「と言いながら、実は結構前からこれは計画されていたりします」
 
 「だと思ったよ。どうりでいつもより荷物が多いと思ったし、やけにゆっくりしてると思った」
 
 心配はしないのか、と訊くと、二人とも許可は取ってきているらしい。
 さすが、結構前から計画されていただけはあるな。用意周到だ。
 
 「だとしたら……困ったな……」
 
 「どうしたんですか、士郎さん?」
 
 アリシアが不思議そうに覗きこんできた。
 何を隠そう――――
 
 「ああ。食糧がない」
 
 一瞬訪れる沈黙。
 現在は夜の7時前。明日が予報通りアクア・アルタでなくても、予報が出ている、という時点で店は早めに閉店しているに違いない。
 いつもならまだ開いているだろうアイナの店も、もう閉めているだろうし、困ったな。
 
 「いや、完全にないってわけじゃないんだ。上がってくる水量が少なければ、まぁ、無理言ってアイナのところで買い物させてもらえばなんとかなる。ただ、そうなると朝食がなぁ……」
 
 「えー、適当でいいですよ」
 
 とは藍華。
 
 「甘いぞ、藍華。一日の始まりは朝食にあり。朝食はしっかり取ってしかるべきものだ。一日の全て朝食にあると言っても過言ではないのだから」
 
 「じゃあ、その朝食をどうしようっていうんですか、衛宮さんは」
 
 「……まぁ、残り少ない食材でも出来ることはある。きちんとした食事は出す。約束だ」
 
 「えへへ。期待してます」
 
 「でっかい楽しみです」
 
 「いや、だから……きちんとはしてるが、期待してもいいようなヤツは出来ないと思うから、そこらへんは勘弁してくれよ?」
 
 了解です、と藍華とアリスがビッと敬礼する。
 調子がいいもんだ。だけどまぁ、実際どうするかだよな。
 
 朝になればなんとかなるか。作っていてなんとかなるなんて、よくある話だ。
 
 「それじゃあ、ふたりは灯里の部屋で?」
 
 「はい。一応は」
 
 「わかった。あとで布団を持って行くから、灯里、ちゃんと片付けておけよ」
 
 「ええっ、そんな散らかってませんよー」
 
 「一応だ」
 
 「はーい」
 
 灯里が一足先に自分の部屋に上がっていく。それに続くように藍華とアリスも3階の灯里の部屋へ上がっていく。
 それを見届けながら、やはり考えるのは明日の朝食。
 どうにかなってくれれば万々歳なわけだが、どうにもならないのが現実ってもんだったりする。
 
 「士郎さん、ちょっといいですか?」
 
 「うん?」
 
 「お話、しませんか?」
 
 「なにか話すことでもあるのか?」
 
 「いえ? なんとなくですけど。なにか用事がなくちゃ士郎さんと話しちゃいけないんですか?」
 
 「あ、いや。そんなことはない、けども」
 
 「よかった!」
 
 女の子らしい笑顔が見れた。
 大人っぽいいつもの微笑みではなく……、俺といるときにしか油断して見せようとしない、笑顔。
 この笑顔を見ると、いつも思う。
 
 ――――俺なんかで、本当にいいのか?
 
 それはアリシア自身のことではなく、俺のことだ。
 アリシアが俺といてどうとか、そういうことじゃなくて、俺がアリシアを背負うことが出来るか、と、そういうことだ。
 アリシアは俺といて、楽しいんだろう。だから、ああやって笑うんだろうし、感情を見せてくるんだろう。
 それを、俺は……どうしたらいいんだ。
 俺は、アリシアのことをどう思ってるんだ?
 妹? 友人? それともただの仕事仲間?
 
 それとも、アリシアをアリシアとして?
 
 俺はアリシアに、俺が『正義の味方』になれるように、見ていてくれと、信じていてくれと言った。
 俺はそれに安心して、否、それよりももっと酷い、ある意味すがっていたのかもしれない。
 元より目指していた『正義の味方』になれないと気付いて、一度は違うやり方でと思って、それでも諦めきれずに『正義の味方』をもう一度目指して……、でも、それは……アリシアの優しさを利用してしまった結果なんじゃないのか?
 俺に、アリシアを幸せに出来る保証も、ましてや自信もない。
 
 俺は、『正義の味方』になる以前に、俺は、本当に俺だったのか?
 “エミヤシロウ”は、本当に“衛宮士郎”になれたのか?
 歩き出していたと思ったあの一歩は、本当は、一歩づつ、彼女から離れて行くためのものだったんじゃないのか?
 それがいつのまにか……――――。俺は、どうすればいい。
 
 俺は、どうすればいいんだろうか。
 
 「お茶でも入れるよ。アリシアは先に座っておいてくれ」
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 翌日。朝起きたら、予報通り外にはアクア・アルタがきていた。
 いつもは人が通る街道も、今は小魚がちょろちょろと泳いでいた。
 
 「くふぁ……ああむっ」
 
 「にゅっ」
 
 「あ、おはようございます、アリア社長」
 
 いつものようにベッドの脇から顔だけをひょっこり出している。
 ベッドの横を見ると、ほとんど雑魚寝みたいになってしまった布団の上に、藍華ちゃんがまだ寝ていた。
 アリスちゃんはどこだろう、と部屋中を見回しても見当たらない。と、首をかしげていると、階段を彼女が上ってきた。
 
 「おトイレです。まだ春って言っても冷えますから、ちょっと」
 
 恥ずかしそうに言う。
 ごめん、と一言だけ謝って、私も着替えるとする。
 アリア社長はといえば、藍華ちゃんの上に乗っかりながら、彼女を起こそうと身体を揺すっていた。
 
 「あと5分〜」
 
 「ありゃりゃ。なんてお約束な」
 
 「でっかい寝坊すけです」
 
 そんな藍華ちゃんに、ちょっといたずらをしたくなった。
 耳元まで近づいて、そっとささやく。
 
 「藍華ちゃん、下にアル君が来てるよ」
 
 「にゃにゅっ!?」
 
 すごい勢いで起き上がり、さっさと身だしなみを整え始めたところでポテン、とまた寝ころんだ。
 
 「……だまされたー」
 
 掛け布団をずるずると頭の上まで持って行き、おまんじゅうみたいに丸まってしまう。
 あう〜、と布団の中からくぐもった唸り声みたいなものが聞こえてくる。相当恥ずかしかったらしい。
 
 「アル君、いないよ?」
 
 「知ってるわよ、それくらい。ていうか、今日アクア・アルタでしょ? 知ってて出てくるなんてありえないもん」
 
 「そうなの?」
 
 「そうなのってあんたね。水路あったでしょ、地下への。水位が上がってんだから、下手したら地下世界なんて洪水よ?」
 
 「うわっ、そうだね。危ないもんね」
 
 「そゆこと」
 
 アル君ならきっと昨日のうちにでも〜、と、さも一緒にいました、とも聞こえるような口調で話す。
 ……うんうん。そんな藍華ちゃんも可愛いなぁ。
 
 「あー、うー。眠いなー」
 
 「えっと、なんだっけ? しゅんみん、あかつきをわすれて?」
 
 確かそんな感じの
 
 「ええ? ポニ男がどうしたって?」
 
 「違いますよ、藍華先輩、灯里先輩。『春眠暁を覚えず』です。確か、春の夜は短いし、寝心地もいいからとっても眠たいってことらしいです」
 
 「よく知ってるねー、アリスちゃん」
 
 「この間、学校で習いました」
 
 えっへん、と胸を張って自慢するアリスちゃん。
 それに対して少し悔しそうにしている藍華ちゃん。
 朝から賑やかだなぁ。
 
 「おーい、起きろーって、起きてたか。食事出来たぞ。降りて来い」
 
 『はーいっ』
 
 士郎さんが顔だけを出して言い、すぐに下に降りて行った。
 藍華ちゃんの着替えを急かし、私たちは先に降りて手を洗う。洗い終わるくらいに藍華ちゃんが降りて来て、入れ替わりで手を洗い始めた。
 
 もちろん、先にテーブルについて、朝ごはんと対面する。
 テーブルの上には大皿がふたつ置いてあった。
 ひとつにはこれでもかっ、と言わんばかりの様々な種類のパンで作ったサンドイッチ。
 もうひとつには、果物が盛られていた。
 
 士郎さんを見ると、目があった。苦笑いをしながら、こちらに近づいてくる。
 
 「結局こんなのしか思いつかなくてな。パンがあってよかったよ」
 
 「朝食は和食の士郎さんにしては珍しいですね」
 
 「でっかいおいしそうです」
 
 もうひとつ苦笑い。
 士郎さんがテーブルにつくと、藍華ちゃんもすぐにやってきた。
 
 「あれ、サンドイッチなんて珍しー。やっぱり泣く泣くですか?」
 
 「まぁな。仕方ないって言ったら、なんだか負けた気分になるけど、結局こんな形になっちまった」
 
 パンで総量を誤魔化して、朝食を作るには足りない食材はすべてサンドイッチの具に。
 だからと言ってなんでもかんでも詰め込んだミックスサンド、というわけではなさそうだった。
 食事のバランスなんてあんまり深くは考えたことなかったけど、士郎さんの作る食事を長い間見ていたら、嫌でもそれなりの知識として頭に入ってくる。
 何が言いたいかというと、とてもおいしそうだ。
 
 「あれ、アリシアさんは?」
 
 「ああ、すぐ来るよ。今ゴンドラのところにいるだろうから」
 
 「あ、そういうことですか。言ってくれたら手伝ったのに」
 
 アクア・アルタは水が満ちる時よりも、ひいていく時のほうが危ない。
 特に、元から水の上にあるゴンドラなんて、下手をすると家の壁を壊したりする。
 そうならないために、持ち主さんは、潮が満ちている間に“そうならないため”にゴンドラを管理する。
 つまり、安全な位置まで移動させる、ということ。
 
 「泊めてもらってるんだし、私たちも手伝ったのにね?」
 
 「そうですね」
 
 手伝うつもりなのは私だけではなく、藍華ちゃんとアリスちゃんも同じだったみたいだ。
 と、
 
 「あらあら、いいのよ。それに、もう終わっちゃったしね」
 
 アリシアさんが階段を上がってきた。
 制服のワンピースの裾を膝上でくくり、水で濡れないようにしていた。それをほどき、しわを叩いて伸ばす。
 流れるような動作で士郎さんの隣へ着席。
 
 「お待たせ」
 
 「よし、それじゃあ、いただきます」
 
 『いただきまーす』
 
 大皿に盛らているサンドイッチのひとつを手に取って口に運ぶ。
 さくっ、とした食感のクロワッサンの中で、しゃきっ、とした野菜の食感。
 野菜の水気で程良く湿ったパン生地が、なにやらとても味わい深い。
 
 「おいしー」
 
 「それはよかった」
 
 大皿の上には、他にもフランスパンやライ麦パン、定番の食パンのサインドイッチと、むしろどうしてパンだけこんなにあるんだろう、と疑問に思うほどのパン祭りだった。
 割合、食パンの数が少ない気もする。
 
 「……フランスパンとかライ麦パンは結構保存が利くからな。でも、そろそろ夏も近づいてくるだろ? だから、あんまりほっとくのもダメだと思ったしな。ちょうどいい機会だった」
 
 「むぐ……。ん? それって、これが結構前のパンだってことですか?」
 
 藍華ちゃんに言われて初めて気がつく。
 士郎さんが言ったことの意味は、そういうことだ。
 
 「って、言っても一週間も経ってないヤツだぞ。ちゃんとカビもないか、腐ってないかも確認した。まだまだ全然消費期限、賞味期限内のパン達だったぞ」
 
 「調べるって言っても……」
 
 「忘れてもらっちゃ困るが、俺は“魔法使い”なんだぞ?」
 
 すっかり忘れてたけど、そういえば士郎さん、魔法使いだったっけ。
 って、言っても、私は士郎さんがハッキリと魔法らしきものを使ってるところを見たことがないんだけどね。
 確かに、凄いなー、とは思うけど、それを「見たい!」と言ってまでみたいとは思ったことがない。
 なんでだろう、と考えたこともある。藍華ちゃんやアリスちゃん、時々練習を見てくれる晃さんにも言われてるから、さすがにちょっとは自覚してるけど、私は不思議なものとか、綺麗なものとか、とにかく、少しでも興味があったらふらふらーっとして、自分でもわからないうちになにか行動を起こしてしまう事がある、らしい。
 でも、士郎さんの魔法には、ちっとも反応しない。
 だから、今まで聞いたことがなかった。見たことがなかった。
 
 「ちゃんと調べてる。腹が痛くなったら俺が責任を持つ。でも、食べすぎて、なんてオチはいらないからな」
 
 静かに微笑みながら、士郎さんがそう言う。
 じゃあ、食中毒とかの心配はなさそうだ。と、言っても、士郎さんが作っている手前、そんなことは天地がひっくりかえっても起こらなさそうだけど。
 
 そう言っているうちにもサンドイッチはなくなっていく。
 いつもよりも少し短めの朝食は、いつもよりも少し楽しかった。
 たぶん、藍華ちゃんにアリスちゃんもいるからだと思う。
 
 そう言えば。
 
 「アリスちゃん。学校は大丈夫なの?」
 
 「はい。アクア・アルタの場合休校になりますから」
 
 「んー? それじゃあ、あんた今日が予報外れてアクア・アルタじゃなかったらどうるつもりだったのよ?」
 
 「一応制服と学校の用意は持って来てましたよ。もちろん」
 
 もちろん、の言葉に少し棘があった気もするけど、まぁ、準備があるなら心配なしだね。
 朝ごはんも無事に終わり、さて、どうしようかと悩んでしまうのがアクア・アルタの困ったところ。練習しようにも危険だし、散歩しようにもやっぱり危ないし、部屋にこもっていてもきっといつか飽きる。
 こういうときは、たいてい予約の電話待ちか、緊急のお買いものだ。
 
 そう言えば、お買いもの。
 
 「士郎さん、おかいも――――」
 
 「はーい、灯里。あんたの部屋もっとよく見せてよ。なんか面白いものないの? マンホーム時代のアルバムとか」
 
 「藍華先輩?」
 
 藍華ちゃんが急に口を押さえてきた。
 それを不思議に思っていると、藍華ちゃんが小声でこしょりと呟いた。
 
 「ばかね、あんたら。アリシアさん見てなんか気付かないのっ?」
 
 「え、アリシアさん?」
 
 「全然わかりませんが」
 
 「だからおこちゃまーズは」
 
 おこちゃまーズって、なにげに酷くないかな?
 は、別にいいや。どういうこと、と訊きかえす。
 
 「あんたらねぇ。この頃のアリシアさんの態度見てたらわかるでしょ? 士郎さんとか」
 
 「へ? だっていっつもあんな感じだし」
 
 「ですね。特に不思議に思ったことありませんが」
 
 「あんたら素敵なほど恋愛感覚麻痺してるっつーか……」
 
 「えへへ、ありがとう?」
 
 「褒めてないから。……や、もういいや。とにかくあんたの部屋に行くわよ、灯里」
 
 「はひ……?」
 
 なんだかよくわからないまま、私とアリスちゃんは、藍華ちゃんに背中を押されながら階段を上がっていったのでした。
 
 
 *  *  *  *  *
 
 
 「別にいてもいいんだぞ?」
 
 「手伝いたいんです。どうしてもダメだって言うなら、やめますけど」
 
 「そこまでじゃないんだけど……まぁ、アリシアがいいって言うなら」
 
 「ありがとうございますっ」
 
 いつものスニーカーから、サンダルへ履き換える。
 ジーンズの裾を膝辺りまで折り上げ、アクア・アルタで浸水してきた海面に足を浸けた。
 アリシアはワンピースのスリットを畳むように、膝上で括って同じようにサンダルを履いて海面へ。
 ざぶざぶと水を蹴りながら路地を進んでいく。アクア・アルタの時期が来たってことは、そろそろボッコロの日も近かったかな、なんて思って、去年の事を思い出してしまった。
 
 『ここは、士郎さん用に取っておいたんですよ?』
 
 思い出してから後悔した。しばらくアリシアの顔をまともに見れそうもない。
 俺が渡した薔薇を、迷うことなく胸に飾り、笑ってくれた。
 
 「? どうしたんですか、士郎さん」
 
 「いや、なんでもない」
 
 少し早足になってアリシアの顔を視界から外す。
 アリシアがうしろにしっかりついてきていることを水を切る音で確認しながら、怪しまれない程度のスピードで視界から彼女を外して歩く。
 一度思い出したもんだから、なかなか頭から離れない。何度も何度もあの言葉がリピートされている。
 ああもう、切れ切れ。思考停止思考停止。無心だ、無我だ、明鏡止水だ。
 
 やっとの思いで例の思い出を宝箱に押し込めた。
 ちょうどその頃、アイナの店に到着した。
 
 「やっぱり閉まってるな」
 
 「あらあら」
 
 「でもまぁ、アイナのことだから……」
 
 近所の悪ガキどもとでも遊んでるに違いない。
 アリシアには店の前で待っていてもらうことにして、俺はアイナを探しに路地のさらに奥に進んでいく。
 この先を少し行けば広場へ繋がっており、おそらくそこで――――
 
 「うわ、エミヤンあぶな――――っ」
 
 「は、あっ!?」
 
 路地を抜けたと同時、アイナの声が聞こえたかと思ったら、目の前にあったのは水の塊。
 バケツをぶっちゃけたような量の水が襲いかかってきた。
 
 「っでぁ!」
 
 水を払うように腕を振り抜く。
 パン、と水塊が弾け飛ぶ。飛び散ったしぶきがかかるが、それほどの量ではない。
 おおー、と子供たちの歓声が上がる。
 
 「なにしてんだ、お前ら」
 
 「水遊び」
 
 「いや、まぁそうだろうよ」
 
 「み・ず・あ・そ・びぃん」
 
 「やめろ気色悪い」
 
 変にくねくねとしながら艶っぽく言うもんだから怖気が走る。
 ちぇ、と舌打ちしながらこちらへ近づいてきた。
 
 「どしたん?」
 
 「いや、食糧が切れてな。店、開けられるか?」
 
 「お母さんは今日は閉めるって言ってたけど、エミヤンが頼めば開けてくれんじゃないかなぁ」
 
 そういうアイナは、水浸しだった。
 いつもはハネている髪の毛もしっとりと濡れて落ち着いている。
 どうでもいいが、そろそろそういうのをやめた方がいい気もするんだが、まぁ、近所の子供からは評判がいいみたいだし、文句は言うまい。
 だからと言って、大の女性があれでいいのか、と心配にもなる。
 まったくもって、どこかの虎教師を見ている気分になってくる。
 
 「まぁ、ほどほどにな」
 
 「わかってるってばー、まっかせんしゃい!」
 
 これ以上付き合っていたら俺まで巻き込まれそうだ。
 アリシアも待たせているし、アイナの言うことを信じて店の扉を叩いてみるとしよう。
 
 「……ん、あれ」
 
 戻ってみると、アリシアと女将さんが楽しそうに話し込んでいた。
 
 「アリシアちゃんも、あのトウヘンボク相手じゃ大変でしょうにねぇ」
 
 「あらあら、そんなことないですよ。士郎さんはいい人ですし、それに、今一番一緒にいたい人、ですし」
 
 「おやまぁ、妬けるねえ。はっはっはっ!」
 
 なんだか大変聞いてはいけない会話をしていた。
 ややこしい話になる前に、早々に用事を済ませるとしよう。
 
 「アリシア、女将さん」
 
 「おや、帰って来たかい」
 
 「おかえりなさい、士郎さん」
 
 「あの、女将さん、悪いとは思いますけどお店開けてもらっても大丈夫ですか?」
 
 「構わないよ。入んな」
 
 「ありがとうございます」
 
 と、いうものの、やはり正面から入るワケもなく、裏口に案内された。
 どうやら倉庫らしい。
 
 「まぁ、昨日仕入れたヤツらばっかりだから、痛んでるとかはないと思うけど、確かめて買っていってくんなよ」
 
 「じゃあ、さっそく」
 
 「私も手伝いますね」
 
 アリシアとふたりで並びながら、昼はどうしよう、夜はどうしようという話をしながら野菜を選んでいく。
 結局、どうせひとりでは抱えて持って帰れないような量になってしまった。
 
 「まいど。小舟貸そうか?」
 
 「助かります」
 
 小舟に荷物を乗せて、改めてお礼を言い、店を後にする。
 ちょうどその時アイナが帰って来たようで、一緒に見送ってくれた。
 
 「騒がしいな、ほんとに」
 
 「あらあら、うふふ。いいんじゃないですか、楽しくて」
 
 「だな」
 
 笑い合う。
 どうしてだろう。
 こうして笑い合えるのに、どうして、俺はこんなに苦しいんだろうか。
 それはアリシアの事を思って? それとも、俺自身の事を思って?
 保身のためか、それとも本当に彼女を想っての迷いなのだろうか。俺のなにが心に引っかかっているのだろうか。
 
 まだ、アリシアの気持には応えられない。
 ……違うな。俺自身の気持ちが俺自身で分かっていないんだ。
 
 いつかの理解。
 
 わからないという事がわかった。
 
 それじゃあ、もうダメなんだ。
 わからないことを、わからないと言っているのは、それはつまり、自分自身を閉ざしているということなんじゃないのだろうか。
 自分を閉ざして、それで誰かの気持に応えようなんて、それはどうなんだ。
 だから、だろう。
 俺は誰かを、誰かに、想い想われる資格なんて、ないんじゃないのか?
 
 こうして生きてきて、俺の手は、もうとっくに黒い。
 アリシアの手は、あまりに白い。
 
 「アリシア、今年のボッコロの日も、渡すから」
 
 「え?」
 
 「薔薇。渡すから」
 
 「……あ、はい。待ってますね」
 
 「ああ」
 
 だけど、だけどそんな俺でも、なにか出来ることがあるとするならば、すがってみたい。
 それがわからなかった答えだったとするのなら、誰かどうか、今すぐ俺に教えて欲しい。
 情けない。
 初めてだった。
 純粋な、生命にかかる絶対的な恐怖でもない。
 聖杯戦争、それ以後、幾度となくかけられた殺気のどれよりも、今、俺はアリシアが怖い。
 
 アリシアを傷つけてしまう事が、傷つけられることが、なにより怖い。
 だから、アリシアのあの好意が、どんな“死のカタチ”だろうと敵わないほどに、怖い。
 俺に本当に関わらせるということが、とんでもなく怖い。
 
 「アリシア。……アリシア」
 
 「? なんですか、士郎さん。私はここにいますよ」
 
 「ああ、うん。いや、なんでもないんだ。ごめん」
 
 「あらあら。変な士郎さん」
 
 とんでもなく、ああ、どうしようもないほどに俺は。
 
 アリシアが、彼女の事が―――――…………
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ……――――好き、なんだ。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                Navi:32   end
 
 
 
 
 

テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

どうでもいい話と、拍手レス。

ども、草之です。
学校の空き時間に学校のオープン端末室のパソコンでパチパチと投稿用のプロット段階の小説を書くことが空いた時間の暇つぶしになりつつある草之です。
この時期から考えるなんてしたら、まぁ、あれですけどね。
ただ、『歯車屋敷』の方もないがしろにはしたくないので、家ではこっち。学校では投稿用。とけじめ(?)をつけて書いています。実際一週間に6時間ほどしか授業の空き時間なんてないですしね(笑)。
 
どうでもいい話でした。
 
それにしても、『魔乳秘剣帖』はいいものだ。
1巻が出る前からずっと知って読んでましたが、今日4巻が発売されてたので即買いしてきました。
短編集も同時発売だったのでそれもいっしょに。1400円オーバー。財布の風通しがよくなりました。
なんていうか、ああいう力強い線が大好きです。ごんぶとが大好きです。岩原祐二先生とかも大好きです。いばらの王の劇場版が楽しみだなぁ。DTBも発売されてましたけど、さすがに自重。財布に風穴が開きますし。ベヨ姉に会えなくなっちまうぜ。
 
異能力ものって、書くのは大好きなんですが、どうやらわりと苦手らしい。
やはり、群青劇が肌にあってるのだろうか。『優星』効果がここまで感染してきてるというのなら、さすがARIAというべきだ。
まぁ、だからといってどんなジャンルにも手をつけてみたいんですけどね。
ただ、ホラーとかは勉強不足だろうなぁ。全然読まないし、映像関係でもあんまり見ないし。でも、夢とかに見ちゃう性質なんで、寝不足になるのだけは嫌だなぁ。けっこうささみチキンです。
 
 
題名通り、どうでもいいことをつらつらと書きましたが、草之は元気です。
 
ということで、以下拍手レスです。
 
 

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テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

こう、いざ作ってみると胸が苦しくなった。

ども、草之です。
 
『優星』の最終年度(本当は4年目の夏まであるけど)の行事予定表を組み立てました。
こうして見てみると、夏と冬にイベントが固まっていることがよくわかった。イベントがやり易いから、とかなんだろうか?
 
さておき。
とりあえず、目標としては、すべてのイベントの回収です。
数えただけで14個(実は15個の予定ですが)もありました。+ストーリー上の展開、つまり原作の時間軸上のお話も書いていくので、平気で60話以上いきそうなことを今知りました(笑)。
 
これは平気であと1年はかかる計算だったりします。今のままの連載ペースだと、ですが。
これからも『優星』と『歯車屋敷』をよろしくお願いします。ついでに草之もよろしくです。
 
というわけで以下拍手レスです。
草之でした。
 
 
 
 
 

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テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

ちょっと外れた俺とネコ  『二章』

 
 とにかく、暑かい。
 夏休みに入ってから千尋はほぼ毎日のように、学校でもこんなに早くは起きないという時間に起床し、学校でもこんなに早くは家を出ないと言う時間に家を出ていた。そのことについて、彼は面倒だとは考えないようにしている。考えてしまえば最後、すぐにでもバイトの辞表を提出してしまうだろう。
「帰りは楽だけど……行きがキツイんだよなぁ」
 傍らを進む自転車には乗らず、千尋はそう呟く。なぜ自転車を持ち出しておいて乗ろうとはしないのか。それは、行き先が山の中腹近くの喫茶店だからである。彼の学校よりもまだ高い位置に、看板がなければ分からないほどの、大きさはそれなりなのに廃れた感じの喫茶店があるのだ。
 喫茶店の名前は『喫茶ひかり』。店長である女性、佐倉光緒の名前の一文字目をとっての命名だそうだ。
「……ふぁあ……ああく」
 大きな欠伸をひとつ。まだ重い瞼を擦りながら、千尋はその喫茶ひかりに向かう。今日はそこでバイトを始めて、4日目の朝だ。特に夏休みの予定がなかったからと言って、時給が時価のバイトなど受けなければよかったと、彼はこの4日で痛感していた。それでも受けてしまったものは仕方がなく、続けなければなるまい。彼はこれも社会勉強だ、と割り切ることにしている。
「……しっかし、あそこで社会勉強とか出来てんのか、俺」
 バイトを始めて4日。まったくと言ってイイほど、店には客が来ていない。一日で20人も来ればいいところだ。それでよくバイトを雇おうなどと思ったもんだ、とバイトの相方ネコと千尋はいつも店内で堂々と話している。その度に光緒に睨まれているものの、光緒自身、それを怒ろうとはしない。図星だからだ。
「でもま、なんか今日は違うとか言ってたし……。なにが違うかは知らんけどさ」
 自転車のチェーンがカチカチ鳴りながら回転している。それとは違うリズムで、後ろから靴底をずって進む音が聞こえ始めた。振り向くまでもなく、隣に一人の少女が並んだ。篠原美鈴だ。千尋からだけ、「ネコ」というあだ名で呼ばれ、彼女もそれを嫌がるそぶりを見せない。気に入っているわけでもなく、ただそう呼びたいなら呼べばいい、というだけの理由である。
 どちらとも、何か話すわけでもなく、朝の挨拶などもしない。傍から見れば、友人同士の朝の散歩に見えないでもないだろうが、挨拶も会話もない友人の散歩など、聞いたことがない。喫茶ひかりに着くまで、ふたりの間に会話はなかった。
「おはーす」
「はーす」
「おう、おはようさん。そんならどっちか表の掃除よろしくなぁ」
 あまりに理不尽だ。千尋は顔をしかめた。上り坂じゃ使えない自転車をえっちらおっちら押し上がってきて、多少疲れているところにさらに追い打ちをかけるように「掃除しろ」だ。彼は隣にいる美鈴に視線を向ける。彼女の方もしかめっ面で千尋をじとりと見た。
「……お前やれよ」
「あんた頭湧いてんじゃないの?」
「てめ……」
「だって、私昨日やったじゃん」
 美鈴はしれっと言い放つ。だからあんたがやればいい、と暗に言っている。だが、と千尋は思い出す。初日と二日目は確か俺が掃除をしたのではなかったか、と。回数的に考えれば、美鈴が掃除をするのが妥当である。そう言いたいのだ。しかも、手ぶらの美鈴と違って、千尋は自転車という全く役に立っていない文明の利器を押してこの山の中腹まで来ているのである。
 とにかく、どういうことがあろうとも彼は美鈴に掃除をさせたかった。
「ネコ、お前やれって」
「はぁ? ちょっと店長、こいつ頭おかしいんですけどー」
「ウチに振んなや。ええから、さっさと掃除してこんかアホ。給料引くぞ」
 給料と聞いてふたりは反応した。時価とかいう条件を出しておいてさらに引くつもりなのか。もう一度視線を合わせ、ふたりして頷き合う。
「お前がやれ」
「あんたがやれ」
 堂々巡りだった。これにはいよいよ光緒も怒りだす。読んでいた新聞をカウンターに叩きつけ、大股で歩いてふたりに迫る。その表情は元からの顔つきの悪さも相俟って、まさしく鬼の形相だった。一言も声を出せずうろたえるふたりを余所に、光緒はふたりを前に仁王立つ。
「ふたりで仲良ぅ行ってこいや、ボケェッ!」
 つーん、と耳に響く大音声。ざわざわと鳥肌が立つほどの声と迫力だった。
 千尋と美鈴は逃げるように店の外へ飛び出し、そそくさと掃除を始める。幸い、まだ日が昇り切っていない太陽は気にするほどのものではなかった。だが、暑い事には変わりない。ただ日光が少なくてある程度過ごし易いというくらいだった。千尋は掃除用具箱から箒を一本取り出し、適当に掃き始める。美鈴も遅れず適当に掃き始めた。
「なぁ、お前さぁ」美鈴が急に口を開いた。「レディファーストじゃないけど、女の子にやらせようとすっかよ」
「はぁ? つってもお前まだ1回しか掃除やってなかったじゃん。俺、2回してたからね?」
「かっは。なにそれ。わざわざ言うことかよ、ガキじゃん」
「うっせー馬鹿」
「馬鹿っつった方が馬鹿なんだよ」
「なら今からお前も馬鹿だ、馬鹿」
 お互いに舌打ちを終了の合図にして掃除に戻る。アスファルトを削るようにガシガシと箒の先を擦りつける千尋と、慣れた手つきでさっさと掃いていく美鈴。違いはあるものの、どちらともしっかりと掃除はしている。
「……水、汲んで来てよ」
「お前行けばいいだろ」
 すると、今までの言い合いが嘘のように美鈴は素直に自分で水を汲みに行った。少なからず肩透かしを食らった千尋は木陰に潜り、直射日光を避けて彼女を待っていた。気にしてもしょうがない、と言わんばかりに涼んでいる。
 1分もしないうちに、美鈴は水が一杯一杯入ったジョウロを持って帰ってきた。木陰にうずくまっている千尋を一瞥した後、ジョウロを傾けて、店の前に打ち水を撒いていく。今日も天気はよさそうなところを見ると、きっと1時間もしないうちに乾き切ってしまうだろう。そう考えると、今していることがどうにも無駄なことのように思えて、千尋は店内に戻った。
 冷房が効いた店内は、外と比べると天国だった。間を置かず美鈴も店内へ戻って来る。ふたりが揃ったところで、光緒は次の指示を出す。
「ほんなら、次、アレな。買出し」
 ほれ、とメモを差し出され、ふたりはそれを受け取る。書いてあるものは大体が業務用の調味料や、もしくは食材配達の依頼などが主だった。配達依頼などは電話で済みそうなものだが、どうやらそれは違うらしい。
「そこなぁ、ウチの知り合いがやってるとこでな。電話で頼んだら一般とおんなじ値段で売られるんやけど、直接行ったら格安で売ってくれんのんよ。やから、電話では済まされへんのやな〜、これが」
 なるほど、とふたりは納得する。配達の理屈にではない。今日は大変だ、という光緒が言った言葉にだ。
「……今すぐっすか?」
「見て分かるやろ〜、ん〜? 今から行かな、夕方までに間に合わんで、それ」
「どんだけ働かせるつもりよ。それで時給は時価って、やってらんないわ」
「文句は金貰えるくらい働いてから言え。ほらほら、これ、昼代と電車賃な。住所とかは裏に書いてるから間違えんようにな」
 いってらっしゃ〜い、とひらひらと手を振られる。千尋は美鈴と何となしに顔を見合わせ、お互いに嫌そうな顔をしているのを確認してから、諦めの色のこもったため息を吐いた。それに気が付いてないのか、気が付いているのか光緒はケラケラ笑っていた。
 ふたりが店の扉をあけ外に出ると、あまりの気温の高さに、あんなに意地の悪い店主がいる店でも恋しく思ってしまうから不思議だ。
 千尋は店の前に止めていた自転車を持ち出し、またがった。少々考えて、ため息交じりに後ろを向いて美鈴を手招く。
「乗れよ」
「やらしー」
 そういいながらも、彼女は飛び乗るように荷台にまたがり、千尋の脇を小突いた。早く行け、という合図だろう。
 しぶしぶと千尋はペダルに片足をかけ、もう片方でアスファルトを蹴る。最初はよろよろとしていたものの、ある程度のスピードが出てきたところで、車輪のブレが安定してきた。それでも、荷台にいつもは乗っていない余計なものが乗っているからだろうか、千尋はどうにも違和感を感じていた。
「重い……」
「あんだって?」
「……重いって言ってんだよ」
「それさ、女の子に言う事?」
「ネコは別だろ。これが彼女とかだったらお前、俺だってその子に案外軽いんだな〜程度は言ってるってーの」
 言い返してくるだろうか、と千尋は思い、続く言葉を予想しながら返答を考えているときだった。いつまで経っても返事が来ないので、不思議に思った彼は顔だけを後ろを向けた。
 美鈴は、顔を真っ赤にして涙を流していた。
 これにはさすがにぎょっとして、千尋は自転車を止めた。自転車に乗ったままで、彼は必死になにかを喋って慰めようとするものの、いい言葉が出てこない。頭をガリガリと掻いて、小さく「ごめん」とだけ謝った。
「う……っ、うぅっ」
 それくらいで泣きやむ筈もなく、さらに言うと今にも声を出して泣いてしまいそうであった。
 こうなってはどこをどう言えばいいのかも分からず、千尋は「ごめん」を連呼するだけだった。ときどき「本当に」をつけるだけだ。だから何が変わった、と言えば何も変わってはいない。
(勘弁してくれよ……)
 自分が悪かったのは認めるが、さすがに泣くのは……。というのが千尋の考えであった。
「…………あの、ねっ」
「な、なんだよ……」
 声をしゃくり上げながら、美鈴は続けた。
「アンタって、さっ。……うぐっ、ホント……っ、さいてーだよっ!!」
「だから、悪いって謝ってんじゃんかよ。しつけーっつの。どうしろってんだよ」
「…………私、じゃっ、嫌なの……っ?」
 勘弁してくれ。彼は今度こそ心から願った。
 冗談じゃない、なんてレベルじゃない。ありえない。コイツが、俺を? 自問自答が頭の中でぐるぐる廻る。
 だが、そこは自意識過剰気味な思春期の少年。ありえない、と単純に言い切るほど、色恋沙汰が愛しくないわけはなかった。美鈴はその見た目のだらしなさから、あまりいい印象を受けることがない。だが、素材はいいのは確かだ。有体にいえば美人だった。ちゃんとしてれば。
「お前……マジかよ」
「こんなのでっ、嘘、つくと……っ、思うっ?」
 いよいよ彼の心臓が暴れ始めた。絶対に騙されてる、と信じて疑いつつ「本当だったら……」という考えも頭から離れず、もうどうしていいか判らず、彼自身も泣きたい気分になってきていた。
 それでも美鈴は容赦なく「どうなのっ?」と詰め寄って来る。どうなのもこうなのも、千尋は腹を括った。
「……別に、嫌、じゃあないけど……」
「え?」
「だからっ! えっと……嫌じゃないっつってんの……」
「……ほ、ほんとに……っ!?」
 くしゃくしゃの前髪から覗く目が、涙のせいなのか千尋には輝いて見えていた。
「ふ、ふふふ」
「な、なんだよ」
「か、ふふふ……」
 嬉しいのだろうか、と千尋が思っていると――――
「かっはっはははははは!!」
「んなっ!?」
 なぜか、美鈴から出たのは爆笑だった。
 彼の背中に、嫌な汗がどっと溢れてくる。
「ひーっ、ひーっ、かっは!」
「…………」
 言葉が出ない彼を差し置いて、美鈴は笑う笑う。仕舞いには腹が痛いとまでのたまった。さすがの彼もこれには参るしかなかった。
「お前……」
「あーっはは。嘘じゃ、ないって……ぶはっ、ひーっ!!」
 当てつけのように、彼は乱暴に自転車をこぎ始めた。それでも後ろから聞こえる笑い声は、視界の横を通り過ぎて行く景色のようには後ろへ飛ばされてはいかなかった。そのうち、耐え切れなくなったのか、背中をバシバシと叩かれた。バランスを崩しそうになりつつ、なんとか持ち直す。
「ふひっ、ひひひひっ、あーおかしぃーっ、あははっ」
「ちょっとなんなんだよ、ほんとなんなんですか、ほんとなんなんだお前。こっちにも我慢の限界というヤツがだなぁ」
「万年不満ブータレが何を今さらっ、かっはははは! やだこっちむかないで……っ、まじで、腹、よじれるっ」
「よじれて死んじまえ、ちくしょうめ」
 ぎーこぎーこと自転車が唸りを上げる中、笑い声が周囲にこだましていく。
 爆笑する後部の女子に、むっつりした運転手の男子。傍から見れば、わけのわからない、シュールな光景ではある。その証拠に、追いぬく人や、向かいから歩いてくる人は何事かとこちらを見ては妙な視線だけを残して景色と同化して後ろに流れて行く。
 そんな状態を引きずったまま、ふたりは駅前まで降りてきた。千尋が駅前の自転車が無造作に置かれている溜まり場に適当に駐車して、鍵をかけた。美鈴を連れて、行き先の駅名の金額と時間とを見てみることにした。
 光緒の知り合いがやっている小売業の店は、ここから急行で乗り継いでも3時間近くかかる場所にあるようだった。ちょうど、向こうについたあたりで昼食時だ。
 なるほど、とふたりは納得した。住所だけではどれくらいかかるかが分からなかったが、こうして見てみると「夕方までかかる」の意味が十分理解できた。同時に、なんて割に合わない仕事くれやがったあのクソオーナーが、と全く同じ事を考えていたことは、このふたりがお互いに一生知ることもないことだった。
「それでこれ、片道ひとり3千円近くかかるから、6千の、1万2千? ……なんで1万3千しかないのよ、これ。ふざけんなっつーの。餓死させる気がってーの」
 美鈴が電車賃とお昼代やで〜、と渡された茶封筒を覗き、ぶちぶちと文句を垂れている。
 いや、確かに。と千尋も頷いた。昼代が千、とんで3百円程度しか残らないのか。ハッキリ言って、それで食べられるものと言えばファストフード店の一番安くて量のないセットメニューか、全国チェーンの安いの旨いの早いので有名なフレーズの牛丼店の牛丼(並)プラス味噌汁のセットくらいだ。
 この面倒な仕事を受けるんなら、どうせならもっといいものが食べたい、と切に願うふたりであった。
「やってらんないわ、ほんと。帰ろっかなー、これ持ってさーバックレてさー、パーっとデートしない?」
「もうそのネタいいから。ちんたら言ってないでさっさと切符買うぞ」
「真面目だねぇ、ほんとアンタってば。じゃあ、よろ〜。電車乗る前に一服しとくからさ」
 そう言って懐をまさぐって煙草のケースを取り出し、慣れた手つきでパッパと口に咥え、さっさとライターで火を点けてしまった。呆れた様子で千尋がそれを見ていると、美鈴はそれを一瞥してから咥えた煙草を手に取り、ニヤリと笑いながら言った。
「吸いたいんだ?」
「い、いらねえ!!」
「あっ、ごめぇ〜ん、吸いたいんじゃなくて、舐めたいとかの人だったっけ?」
「な、なめ……!?」
「え、ちょ、やめてくんない? 半径2m以内に近づかないでもらえます? その反応マジできもい」
「お前が言い出したんだろ、変なことぉっ!!」
 千尋は正直、こんなことになるなら一人で行きたかった、と考え始めていた。
 むしろ、帰りたいなら帰って下さい、と、丁重にお断りを入れて帰ってもらいたくもあった。それを光緒に連絡して、バイト代を独り占めするのが一番いい、とも。
 泣く泣く切符を買い、美鈴が煙草を吸いながら待っているだろうところまで戻ってくると、彼女は面倒くさそうな顔のまま、口に咥えた煙草を軽く揺らしながらこちらをにらんだ。
「遅い。ナンパされた」
「……ナンパされるんだ、お前」
「そりゃうら若き乙女が暇そうにしてたら声かける男くらいいるでしょうよ。面倒なことですわー」
「なんだよ、それ。バイト嫌だったらそのまま遊びに行ったらよかったのに」
 千尋としては、割と本気で口にした言葉だった。
 それを聞いて、美鈴はどこから出しているのか分からないような低音で「あー」と唸ったと思うと、地面に煙草の吸殻を捨て、踏み潰すように火を消した。その上ストンピングまでし始め、とどめとばかりに踵ですり潰していた。フィルターまでがぐしゃぐしゃになって飛び散り、今にも噛みつきそうな獰猛な視線を千尋に寄こしてきた。彼は思わず一歩後退り、息を飲んだ。
「行くんでしょ、買い物。切符寄こせよ」
「あ、ああ。これ……」
 一枚渡した切符を握りつぶさんばかりの勢いで奪い、鼻で笑ったかと思えばずかずかと改札を目指して歩いていった。
 わけのわからない行動を起こされ、半分放心状態だった彼が現実に戻ってくる。なんだあの態度、と千尋も半ばキレかけの状態で美鈴のあとを追った。無言のままプラットフォームに昇り、適当なベンチの端と端に座る。どこから取り出したのか、いつの間にか美鈴は火の点いていない煙草を咥えていた。駅構内は特定の場所を除き終日禁煙である。
 そのまま電車が来る間、一言も交わすことなく待つことになった。電車が来て乗り込んでからも美鈴は口から煙草を離すことはなく、他の乗客から妙にうざったそうな視線で見られていた。ただ平日の通勤ラッシュが終わったあたりだったので、客の数それ自体があまり多くなかったことは不幸中の幸いだと言える。
 そんな視線は全然気にしている風ではないのに、時折何かを思い出しては舌打ちをする。
 客の中にいた生真面目そうな青年も、最初は美鈴を注意しようとしていたのだろうが、彼女の態度を見ては、その身体から滲むように出る空気に気圧されて、喉まで出かかった言葉もすとんと体の中に落ちていったようだった。
「……ち」
 これで何回目なのか、まったく見当がつかないほどの回数の舌打ちがまた鳴った。
 かつ、かつ、と電車の床を叩く音まで聞こえてきている。
「なぁ、ネコ」
「ああ?」
「……なんでンなにイラついてんだよ。他の客に迷惑だろ、いい加減にしろよ……」
「はぁ? んだよ、カス」
 取りつく島もなかった。いつもの突き合うような「馬鹿」の応酬ではなく、千尋の事をカス、と切って捨てた。
 相当頭に来ていることが容易にわかった。
「あんたさぁ、私の機嫌取りとかやめなよ。なんか逆にムカつくんだけど」
「誰が誰の機嫌取りしてるって? 誰がお前に構うかってんだボケ。お前をナンパしたヤツも目ぇ腐ってたんじゃねえの?」
「そりゃあ当たり前じゃん。かっるい男がいい男なわけねーだろ」
「そのかっるい男にナンパされるお前が尻軽に見えてるってことだろ、なぁ?」
「はぁ? 論点ズレてね?」
「ズレてねーし。お前が勝手にイラついて、勝手に俺に当ててんだろハゲ」
「それのどこをどう見て私が尻軽だってんだよ、マジカスいんだけど。きもいってホント」
 電車の中で口喧嘩が過熱していく。座席の端と端で相手の顔も見ずに罵倒だけが重なっていく。
 他の客もほとんどおらず、電車の揺れる音で罵声もほとんど通っていない。
 その中で、お互いに疲れたのか、どちらともなく口をつぐんだ。
「次、降りて乗り継ぎだぞ」
「そ」
 無言は、いつ終わるともわからなかった。
 
 
「でか……」
 目的地に着いた途端の感想がこれだった。
 無駄にでかい気がしないでもない。受付らしいところで光緒さんのところの使いだと伝えると、ああー、と変な納得の仕方をされ、奥に通される。
 部屋の一つに入れられると、その部屋にひとりの男性がいた。座っているものの、それでも背が高いのがよくわかる人物だった。パソコンんのディスプレイに向かって、焦点がなくなった眼でキーボードを凄い勢いで叩いている。
 千尋と美鈴が入ってきているのに気が付いていないのか、2分ほど経って初めて口を開いた。
「二千はいりました〜っと、それで、あんたらが光緒ちゃんとこのお使い?」
 なにが二千はいったのかは謎だが、ふたりが入ってきてるのには気付いていたらしい。
 年齢は光緒とそれほど変わって見えるわけではないが、「光緒ちゃん」と呼んでいたことから年上ではあるらしい、と千尋はアタリをつけた。
「そうですけど」
「お疲れさまーっと。まぁ、用事が済んだら適当に帰ってちょーだいね。一応来ただけで値引きはしてるから。なんか欲しいもんとかある? いまオレ機嫌いいから適当になんか言ってもなんでも揃うよ」
 曖昧すぎるものだったが、なぜが先の「二千」という言葉が頭から離れず、妙に本当な臭いがした。
 そこで、美鈴が口を開いた。
「じゃあさ、ライブチケットとかありなの? もう売り切れで、転売もクソ高いし」
「誰の?」
「こ、『神戸幸[こうべ・こう]』のライブチケット……」
「ふーん。君、幸のファンなんだ。いや嬉しいねー、誇らしいねー」
 そういって、男性は携帯を取り出して電話をかけ始めた。
 どうも電話の相手は親しい人らしく、かなり砕けた話し方をしていた。と、言っても千尋と美鈴と話していてもかなり砕けた話し方をしてはいるのだが。
「えー、と。君名前なんてーの?」
「は? えっと、篠原美鈴、です」
「しのはらみりんって名前だってー。そっちの君は?」
「藤原千尋、ですけど」
 ふじわらちひろだってー、いや男だよ、ほんと紛らわしい名前だわなーと、なにげなく言ったことなのだろうが、千尋の心がまたひとつ荒んでしまったのは言うまでもない。
 携帯を切り、めんどくさそうな笑顔を向けて男性はこう言った。
「チケットサイン入りで送るってさ。住所でも書いといてくれたらそこに送るよ」
「サイン?」美鈴は訝しげに聞き、「あんた誰と電話してたの?」
 別に、友達だけど、と何でもないように男性が零す。
「オレの昔からの悪友っつーかねー。それで手に入るんだよね。チケット」
「は? ちょっと、今の電話って」
「幸本人だけど」
「はああああああああああああ!?」
 美鈴が驚きつつも、興奮を隠せない様子でいる。証拠に、その顔がかなりにやけていた。
 千尋は声には出さないものの、内心とてもホッとしていた。またあのささくれた状態で帰るかと思うと。ぞっとしない話に、彼の体中から血の気が引いた。
 と。
「……ところでさ、神戸幸って、誰?」
「あんた知らないの!?」
「あ、うん。知らね」
「だからあんたはカスだって言ったのよ、なんで、あー、あんた人生の10割損してる。ていうか、あんたの人生がもうすでに損の塊みたいなもんだから来世まで損してる」
「ひでえ……」
 千尋は、芸能関係に明るくはない。というよりも、世間に疎い。ニュースは見ないし、雑誌も見ない。ならネットを徘徊するかと言えば、否。彼に世間の情報が入ってくるのは、クラス中の話からか、街中の誰とも知れない人たちの会話である。そんな彼を一瞥して、美鈴が続けた。
「大学在学中の頃からプロデビュー。カバーから、オリジナルまでそつなくこなす、若手実力派ギタリスト。主にインストを扱ってるんだけど、この頃はゲストギタリストとして有名な歌手のバンドメンバーとしても名を連ねてたりしてる。聞いた音は一回で覚えて、忘れることはないってゆー、完全聴覚記憶能力って体質らしくて、なんかすごいんだって。……まぁ、ルックスも話題ねー。あれで20代後半? ってくらいに若いのよ。もうあんたと並んでても同い年ぐらいにしか見えないくらい」
 次から次へと説明を述べて行く美鈴を横目に、千尋は完璧に引いていた。
 あの『ネコ』が、饒舌なうえに人の事を評価しているのだ。驚きを通り越して気味が悪い。
「俺さ、初めてお前のこときもいって思ったわ」
「な――――っ」
 千尋の感想としては、どこぞの貿易港みたいな名前のギタリストがどうした、といった感じだ。
 そもそもギタリストなんて、誰がなにを弾いても変わらんだろ、とまで呟いた。
「あんたちょっと、そのいらない耳切断したげるわ」
「なんだよ、音楽とかあんまり知らねえんだよ、悪いかよ!」
「もうそれは世界的な悪ね! 歌で世界を救った人だっているんだよ、わかってんの、ちょっと、ねえ?」
「なんか、ほんときもいぞ、お前」
 千尋の声など耳に入っていない様子で、彼女はまだ続ける。
「まぁ、とにかくね。その人のファーストライブが決まってて、それのチケット、手に入れられなかったのよ。ちょうど夏休みのあいだだから行けるって思ってたのにね…………で、この状況ね。ていうか、あんた何者ですか?」
 流れで気づいたのか、美鈴は机に突っ伏して我関せずを貫く男性に問いかける。
 んあー、と面倒くさそうに起き上がりつつ、片手でキーボードをパチパチと弾いている。あのパソコンのディスプレイには一体なにが映っているのか、気にはしつつ、美鈴はもう一度質問した。
「だから、あんたは一体何者ですかって訊いてるんだけど」
「それにしちゃ何かを訊く態度じゃねーよな。ネコ?」
「あんたは黙ってなさいよ」
「……名前は、針井歩人[はりい・ふひと]。歩く人、でふひと。意味はいつか成る歩のような人に育て、だそうな。両親ともに北島のおじさまの大ファンですとさ。あーい、五百いただきましたー」
「自己紹介しろって言ってんじゃないんだけど……まあ、ある程度はわかったわ。ハリーさん」
「ハリーじゃない、針井だ馬鹿者」
 美鈴が針井をハリーと言った瞬間に、彼は反応した。今までの倦怠的な動作とは打って変わった素早い反応速度だった。
 どうやら、ハリーと呼ばれることがよっぽど気に入らないらしい。
「まぁ、あれだわ。幸と一緒に高校のときに馬鹿やってた悪友っつーかねー。武勇伝は数知れずーってな感じ。あーい、四百いただきましたー」
 どんどん少なくなっていく数字の単位にどことなく現実味を感じつつ、針井が机からなにかを取り出すのを黙って見ていた。
 取り出したものは紙。なんの変哲もない、B4程度のコピー用紙のような紙である。それと一緒にボールペンが取り出され、無言で美鈴に差し出される。
 頭の上に「?」を浮かべつつ、美鈴はその紙とボールペンを受け取った。ただ、これをどうすればいいのかがわからない。
「なに、君ら連絡したらここまで取りに来るの? チケット。それだけでチケット2・3枚分はかかる金額払ってここまでまた取りに来るの? 最初に言ってでしょうに。住所教えてくれたらそこに送るからって」
「……あんた、書きなさいよ」
「なんで俺? チケットはお前のだろ」
「あんたホント耳削げ落とせよ。あんたの名前も聞いてたじゃない」
「だからってなんで俺なんだよ。お前ン家でいいだろ……めんどいなぁ」
「あんたねー」美鈴は呆れたように呟くと、すっと胸のあたりに手を添えながら「私、これでも女なんですけど」
 その台詞を聞いた針井は「オレが犯罪者みたいだからやめてね」と言ってた。だが、美鈴はそれを聞き流す。
「だから?」
「だ・か・ら。私、女の子、あんた、男の子。ほら、あんたン家の方が安全でしょー。それに私一人暮らしだしね」
「えばっていうことか。一人暮らしの方がいいだろ、馬鹿か」
「私は女の子でしょー!?」
「俺ン家は親がいんだろーがボケ!!」
 また終わりのない“いつもの”不毛な言い争いが起きる。
 それが数分のあいだ続き、お互いの息が切れ始めた頃、針井が口を開いた。
「幸の親父さんは警察のお偉いさんだぞ。そんなのにケンカ売るようなことするかよ」
「えっ、そうなんですか?」
「プロフとかでも全然公開してないけどな。すっげ堅物だわ。あとヤーさんともパイプ持ってたりする警察らしくない人」
 千尋にはもうなにがなんだかわけがわからなくなっていた。
 正直港みたいな名前のギタリストなんてどうでもいいし、チケットだって転売したいぐらいだ。と彼は考えている。美鈴がどうしてあれだけはしゃいでいれるのか、よくわからない。
 ……それにしても、と彼はふと思う。
(……あいつのはしゃいでるのなんて、見たことなかった)
 いつもの言い争いもはしゃいでると言えばそうだが、ここまで女の子してるはしゃぎ方は見たことがなかった。若干頬に朱色が混じっているところなんて、本当に――――
「そぉいっ!!」
「な、いきなりなによ、あんた」
「なんでもなーい。なんでもなーいですよ。ほんと何でもない。俺ン家の住所でいいだろ、もう、ほら書くから」
 美鈴から紙を奪ってガリガリと紙面に住所をなぜか「日本」というところから書き始めている。心なしか文字も震えているような気がしないでもない。針井に住所を書き終えた紙を押しつけ、美鈴を引っ張ってその場をあとにする。
 これ以上ここにいたら、どんどん知らない彼女を見ることになる。彼はもはや意地で動いていた。
 最寄の駅前まで戻ってきて、やっと落ち着く。
「あーあ。神戸幸の話、もっと聞きたかったのに」
「そりゃ、すいませんでしたねェ」
「…………、なんであんたが拗ねてんのさ」
「拗ねてねーよ、なに言ってんだ馬鹿」
「馬鹿って言った方が馬鹿だ馬鹿」
「じゃあお前も今から馬鹿決定だ、ちくしょうめ」
 駅前で人も多いのでここで言い争いは終わる。
「そういえば、メシどうすんのさ?」
「メシぃ? どっかそこらへんの牛丼屋でも行きゃいいだろ?」
「別に。あんたなんか考えてなかったのかな、とか思ったから」
「なんだそりゃ」
「なーんでもなーい。じゃあ、あの角のとこ、あれそうじゃないの?」
 言われてみて、初めて千尋はそこにあることに気がついた。
 じゃあ行こう、と二人が絶妙な距離感を保ちつつ並んで歩く。横目には、同じ方向に歩いている他人と見られてもおかしくない距離感である。牛丼屋に入って、カウンター席に座っても、隣に座ることはなかった。ひとつほど席をあけ、別々に注文を受ける。
 運ばれてきたのはほとんど同時。黙々と食べ続け、会計時のこと。
「あ、こっちと一緒ね」
「は? あの、こちらの?」
 店員が美鈴の方を見て確認する。千尋がこくりと頷いても、まだ信じられないのか、美鈴の方も向く。彼女は苦笑いしながら頷いた。ややこしいだろ、と言いたそうな顔だった。店員の方も、なんだコイツラ、と言いたそうな顔で会計を済ませてくれた。
 店外へ出ると同時、後ろから気の抜けた「ありがとうございましたー」が聞こえてくる。おそらく、こんな客はもう二度と来ないだろう。
「……さて、帰るかなぁ」
「これからまた電車かよ……」
 文句を垂れながらも、帰るための手段は電車しかない。タクシーなんて使って料金オーバーでもしたら、光緒に殺されかねない。
 来る時よりも若干多めの乗客にうっとおしさを感じつつ、千尋と美鈴はやはり離れた場所に立っていたり座っていたりする。誰もこの二人が恋人だとか、友達だとか、果ては知り合いだなんて思わない程の距離感だった。
 しかし、降りる駅になればどちらともなく片方に合図をしていたので、他の乗客はびっくりして目を丸くしていたりした。たまたま居合わせて、「あ、居たんだ!」という空気ではなく、お互いがお互いを認識したうえで、無視しているのだ。驚くのは当たり前だった。
 この関係は、他人から見ればありえないものだった。
 
 友達以下、知り合い以上。
 
 一言しゃべりはじめれば、それはそれで友達同士の会話として聞こえるだろう。
 だが、この二人にしゃべり合うような話題はない。あったとしても、それを積極的に行うほど、二人は仲がいいというわけではない。言い争いをしているのは、お互いが気の知れた、知り合いだからだ。もうひとつ言っておけば、適度に“嫌い合う”ためでもある。なんだ、こいつイイ奴じゃん、と思えば、ハッと我に返ってやっぱり嫌いだ、と確認し直す。
 地元の駅まで帰ってきた頃には、日が傾きかけていた。
「はぁ……これから山登んの?」
 美鈴がぼやく。電車に乗って身体がこったのか、くぅっ、とあまり聞くことのないだろう気持の良さそうな声を出しながら伸びをしていた。
「登んの、って、お前絶ェ対自転車の後ろ乗ってくつもりだろ」
「……やらしい」
「はァ!?」
「その、さも当り前みたいな言い方、ほんときもいからやめたほうがいいよ」
「余計なお世話ですよ、もう乗せてやんねーからな!」
「乗せてやんねーからな、だってよ! かはははっ、ほんときもいってそれ。なに、そこいつから私の席になったの?」
 いつもはあんまり干渉しあわなかったから、今になってよくわかった、と千尋は諦めたようにため息を吐いた。それでもケラケラ笑うのをやめない美鈴に向かって、一言。ほんの一言だった。
 
「俺、お前のこと嫌いだわ」
 
 はっきりと、明確な意思をもって千尋は言い放った。
「俺、バイトやめる。チケットはちゃんと渡してやるから、お前はお前で勝手に行けよ」
 これには美鈴もぎょっとした。なにが驚いたって、なにかわけがわからないということに驚いた。
 彼女自身が知らぬうちに、心臓が早打ちを始めていた。
「な、なにそんなに怒ってんのよ。ちょっとした悪ふざけっしょ? 今までもこんなのあったじゃん、なにいきなり、やめるとか、ちょっといきすぎでしょ?」
「なんでお前がそんなに慌ててんだよ。いいだろ、別に。お前のぶんの配当上がんじゃねーの?」
「バイトとか、じゃなくて、あれぇ? いや、あんさ、えっと、ほら……あれだよ、あれ」
「どれだよ」
「えっと、そう! 私の負担が増えるじゃないのよ。やめんなって。それに、ほら、金! お金欲しくないの? 今やめたらぜってー安いはした金しかもらえねーって絶対」
「金は欲しいけどさ」呆れながら、千尋は言い切る。「お前が嫌だから」
 ここにきて、美鈴は本当に言葉を失った。しばらく黙ること、千尋が自転車を持って来るまで。
「あっそう。んじゃ、やめりゃいいじゃん」さっきまでの粘着はなくなり、あっさりとした言葉だった。「やめりゃいいじゃん」
「そうする」
 チキチキと自転車のチェーンの回転音がやけに大きくて耳に障る。
 そのまま店までお互いに無言を貫いていた。千尋は無言で自転車を押し、美鈴は煙草を咥えながら彼のあとを他人の距離で歩いてついていく。
 学校の前に来ると、空がすっかり茜色に染まっていた。
 校門からは夏休みの部活を終えた生徒が下校していく様がチラホラと見える。
「…………」
「…………あんさぁ、あんた」
「……なんだよ」
「私とさー、いるのってさー、そんなにさー、嫌?」
「……うぜえ」
「…………じゃあさー、もっかい訊くけどさ。朝の、あれはどうなん? あのまま私が本気でさー、付き合おうとか言ってたら、今みたいになってたりしたらさー、あんたはさー、我慢とか、したの?」
「我慢しねえ、かもしれねー。んなの知るかよ。もしもだろ。お前あれ、からかってただけだろ」
「ほんっとあんたなんにも覚えてない」
 少しでも話したからか、店までの道のりが短く感じた。
 千尋は店の端に自転車を置くと、見慣れないバイクが置いてあるのを見つけた。首をかしげながら、美鈴に続いて店内に入っていく。
 おかえり、と軽い調子の光緒の言葉。店内を見回しても、客は見当たらなかった。
「店長ー」
「なんやー」
「表に停めてたバイクって店長のっすか?」
「ちゃうよ。高校大学って世話ンなってた先輩のやつ。今来てもろてんねん」
「彼氏?」
「ぶっ、あっはっはははは!! ないない、あの人彼氏ンするんやったらお前彼氏にするわー」
「そりゃ酷い話だね、光緒」
 ぎょっとして光緒が固まる。店内の奥から現れたのは、少し背の高めの男性だった。歳は30前半といったところだろうか。
 美鈴ほどではないものの短い癖っ毛で、目は開けてるのかよくわからないほど細い。はて、と美鈴が男性の顔を見て首をかしげる。
「どっかで見たことある気がする」
「雑誌とかじゃないかなぁ。僕、こういう者です」
 どうぞ、と美鈴に名刺が渡される。そこにはこう書かれていた。
 ――――インテリアデザイナー 榊原 実[さかきばら・みのる]
 他にも所属している事務所や、個人的な、おそらく仕事用のメールアドレスと電話番号などが書かれていた。
「建築士志望やってんけどな、何の因果かそんな職についておられんねんで」
 皮肉っぽい光緒の補足説明。
 それに対して、榊原は笑ってるかどうかがよくわからない顔だった。
 それがどうしてこんな喫茶店ともわかりづらい喫茶店を見ていたりするのだろうか、と千尋は本気で考えた。
 昔のよしみとはいえ、それはあまりにも横暴ではないだろうか。店長が。と声には出さず美鈴は本気で考えた。
「えーっと、改築でもするんですか?」
「まぁ、そないなとこかな。そんなに言うほど資金ないから、こうして先輩に来てもろて、合いそうな雰囲気のインテリアを見繕ってもろて、ほんで、いらなさそうなヤツはリサイクルショップにでも売りに行こうかと」
 廃棄しないところが光緒らしいといえばらしかった。
 それくらいならこちらのバイト代にも響かなそうだなー、と他人事のように美鈴は考える。それに千尋もやめると言っている。増えること間違いないはずだった。
 と、千尋がいよいよ切り出した。
「あの、店長。バイト辞めます」
「…………ちょっと表出て正座して待っとこか、千尋君。すぐに包丁研いで持ってってあげるさかいに。んで、エンコ詰めな」
「ヤクザかよ!?」
「うちの知り合いにはヤクザの一人娘とかリアルにいるから」
「あ、嘘みたいに聞こえるけどホントね。僕とも知り合いだし」
 どんどん洒落にならなくなってきた、と彼の額に玉のように汗が浮き上がってくる。
 それに、と光緒がつけたした。
「改装するっつってっしょ? 男手がいんねん、男手が。いいところ見せてみっちゃん惚れさせたらええねん」
 何言ってんだこのババア、とは口には出せない。
「みっちゃんって言うな」
「ええやん、カワエエて、みっちゃん」
「いやよ。なんか安っぽいし」
「おーい千尋ー。この子こんなん言うてるでー」
「俺が知るかよ」千尋は改めてため息を吐きながら、もう一度訊いた。「辞めてもいいんですか? ダメなんですか?」
 それに対して光緒は頭を掻きながら答えた。
「奮発するからさ、な。夏休みの間は辞めんといてや?」
「…………別に。店長がいうんだったら」
「おおー。このっ、憎いねー。みっちゃん辞めへんねんて、千尋」
「なんで私に振るかな。辞めようが辞めまいがそいつの勝手でしょうに」
 くしゃくしゃの髪の間から千尋を覗き見る。
 ぶすっとしている彼は、彼女にはどことなく嬉しそうに映った。
 
 夏休みは、まだ続く。
 
 
 
 
 
 

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

今私達の前には3択の選択肢がある。第4の選択として拍手レス。

ども、草之です。
 
アルトネリコシリーズといえば、謎の第3の謳姫がいるのが常。
一作目はシュレリア様。二作目はジャクリ。
 
さて、では今回は?
ということで、今考え得る選択肢は三つある。
 
1.第3塔の管理人。レーヴァテイルオリジン。
2.ハーヴェスターシャ。
3.ココナ。
 
さぁ、どれになるんだろうか。
個人的には、3の可能性は限りなく低い。なぜなら、ココナは後衛で謳っているよりも、前衛で戦った方が効率よく戦えるからだ。前衛で戦っている間にも、小さな詩魔法なら紡いで攻撃出来るほど。
そしてもうひとつの理由としては、パーティーキャラになるかどうか。物語上登場するだけのキャラクターか、最悪敵キャラとして登場しかねない。
 
次に可能性が高いのが、ハーヴェスターシャ。
ジャクリ=ミュールの知り合い、ということで、ココナを通して協力してくれるかもしれない。
しかし、アルトネリコ3の舞台設定上、どうなるかは疑わしい。
 
安定した可能性としては、レーヴァテイルオリジンの「ティリア」が最有力候補か。
だが、やはり舞台設定がどう絡んでくるか。そのままの設定でいけば、彼女は本当に神格化された、いわば現存する神として扱われているはずだからだ。
 
 
むむむ。
期待が膨らみますなー。
 
 
それはさておき。
実はアルトネリコの前に、買いたいゲームがもう一本。
ベヨ姉さんに会いたいです。なに、あのエロカッコカワイイ美人。
ああいうアクションはそんなにやったことないんだけど、それでも喉から手が出るほど買いたいです。
親父の前でプレイしてたら、親父が「おおっ(笑)」とか本当に言いだしそうで怖いです(笑)。50も半ばのおっさんがなにしてるんだ、と言いたくなります。以前もギルティの説明書をなぜか見ていて、「イノってええなぁ」とかほざきやがったぐらいですし(笑)。
 
ということで、以下拍手レスです。
草之でした。
 

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……ふふっ。

ども、草之です……。
 
ふ、ふふふふふっ。
自分の名前なんて正直どうでもいい。
どうでもいいほどのことが起きてしまったなバーニー!!ひゃっはぁっ!!
 
 
『アルトネリコ3 世界終焉の引鉄は少女の詩が弾く』 
 
 
待っていたのだよ、このときをっ!!
プラットフォームがPS3? はっ、持ってないですが、なにかっ!?
買えばいいんですよ、買えばねぇえ!!!
それで諦めるほど、草之は甘かァないんですよ。
 
まぁ? 出来れば、箱○でも発売してくれれば万々歳ですよ。
それこそバンプレストとガスト崇拝してもおかしくない勢いですよ。
 
もし一年後に移植とかされたらそりゃ、それも買いますよ?
だってアルトネリコだもん。
 
それにしても、今回の3はなにかとワクワクしますね。
 
おそらく、アルトネリコシリーズ最終章になるであろう今回。
もしかしたら今までのキャラが出てきてもおかしくもなんともない。
 
だって、草之の予想では今回の3、ストーリーは
『塔を救うのではなく、星を救う』ことになりそうだからです。
 
死の雲海と呼ばれる大地を覆う、有毒な雲。
それから逃れるために人々(レーヴァテイル)にアルトネリコ(塔)を創りあげさせ、そして、彼女らとの共存と繁栄を営む。
しかし、2にてジャクリ、こと世界最強のレーヴァテイルβ種、ミュールが
 
「死の雲海を、この星を救えるかもしれない」
 
と、言ったのだ。
もうおこれは3発売の複線でしかねーだろちくしょー、いつ出るんだいバンプレストとガストさん!! と興奮が続いたのもつい2年前。
いよいよ来たか。
 
このときを、どれほど心待ちにしていたことか。
そもそも、アルトネリコの世界設定ってありえないくらいに練られてるんですよ。
一ゲームのはずなのに、まるで歴史の教科書や資料集を見てる気分にでもなるほどの壮大な世界観。
精神世界という、人の汚い部分までストーリーに組み込むその勇気。
それを受け止め、絆が生まれ、そして、謳が紡がれる。
 
 
期待を胸に、興奮を魂に!!
 
心待ちにしてるぞ、アルトネリコ3ぃ――――――!!
 
 
 
 
追伸。
今回は時間がないので拍手レスはまた次回です。
 

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プロフィール

Author:草之 敬
趣味:絵を描くこと(友人に「お前が描くのがムカツク」と言われる程度)・小説を書くこと・ドラムス
    
性格:優柔不断。ここを作ったのは英断だと思ってる。

語り:この頃やっと自分のブログに自信が持ててきた。
 作品が増えていくたび、愛着が出てきて困る(いい意味で)
 心の聖典は『イエスタデイをうたって』『ああっ女神さまっ!』

小説を読む前にガイドラインを読んでくれると注意書きとか載ってます。

リンクフリーです。相互リンクも大歓迎です。

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